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小説を書いて読んで楽しもうッ!コミュの『 存在定義 』

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……………
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………
……




……あれ?僕は一体……何か半年近く寝ていた様な気がするなぁ………ゑッ!?
何故か空を見上げていた僕は ふと腕の中に広がる柔らかさに我に返ると、ソノ侭 言葉を無くす。
ソレもその筈、今 僕の腕の中には見た事も無い美女が、哀しみを圧し殺す様に泣いているのだ。
しかも周りにいる皆の様子もオカシイし…一体 何があったのだろう?
頭にハテナマークを浮かべながら今 自分が何処にいるかを把握しようと首を巡らせると、
腕の中の女性が僕の事を見上げ、嗚咽混じりの声で話掛けてきた。


「…あ…おはよう…かへおれ君…。」


「お、おはようございます…。」


や、やばい…彼女の顔はおろか、名前すら思い出せない…。
ひょっとして以前会ったプヨって人とハッチーって子の知合いなのだろうか?
……ハッ!ま、まさか…酔った勢いで『オイタ』をしちゃったの…僕?
等と顔を青くしながら一生懸命 自分の記憶を辿っていると、
僕の気配に気付いたサラが一目散に駆け寄って来る。
そして僕と美女を強引に引き剥がすと、男の『アンタッチャブル ポイント』目掛けて、
『サラっちヘッド(中段)』を強行至近距離発射した。


づんんんっっ!


「ッッッ!?!?!……ッガ……ぅ…をぉおぉぁぁ……。
 …サ……サラぁ……オ、お前…って奴…は……。」


「この…超スーパー ミラクル スットコドッコイ エクセレント マーベラス馬鹿チンッッ!
 お前が今世紀最大のアンポンタンだったお蔭で、サラは大変だったなりよッッ!!
 …まったく…コラッ!ちゃんと聞いてるなりかッ!?もぅ一発クラわせるなりよッ!?」


ゲシゲシゲシゲシゲシッ!


蹲った【うずくまった】侭 動けない僕に、ストッピングの追い討ちを容赦無くかけてくるサラ…、
今は怒りよりも言い様のない、吐き気にも似た痛みが、下腹部の打撲個所から込み上げてくる…。


「…如何に凄まじき男でも、自分の一物をヤラれると、如何する事も出来んでござるよ…。」


「…私ニハ判リ兼ネル痛ミデスガ…ノタ打チ回ルかへおれさんヲ見テイルト、
 何トナク想像 出来マス…。」


…その声はイヴか…暫く見ない間に随分と垢抜けたな…一瞬 誰かと思ったよ…、
ってか二人とも、そんなトコで感心してないで助けてくれ…そろそろ逝きそうだよ…。
すると流石に見兼ねたのか、傍で呆然と見ていた美女がサラを持ち上げ、僕から引き離してくれる。
…後一分 遅かったら間違い無く涅槃【ねはん】を見ていたな…。


「ほらほらサラちゃん、それくらいにしてあげないと かへおれ君が死んじゃうわよ?」


「う”〜〜〜は〜な〜す〜な〜り〜ぃッ!後58発 踏みつけないと許せないなりぃッ!」

 
じたばたじたばた!!


空中でジタバタともがくサラ…コイツ…本気で僕を殺すつもりか?

それにしても…

親の仇の様に僕を睨むサラを優しく窘める美女…彼女は一体 何者なのだろう?
幾ら記憶を手繰り寄せても【たぐりよせても】断片すら思い出せない…。
未だ現状を理解しきれない僕が腕を組んで唸っていると、
いつの間にか直ぐ傍まで来ていたイヴがゆっくりとした口調で、今までの事を説明してくれた。


「…アノかへおれさん…コレカラ私ガ言ウ事ヲ シッカリト聞イテ下サイネ…?
 ………実ハ…」


約30分後…


僕は全てを聞き、只々唖然とした。

…自分の身体の中に『魔王』が居る…。
理解の許容範囲は到底 超えており、余りの不可解さに脳が酷く反発してくる。
しかも僕を取り巻く彼女等の顔を見る限りでは、冗談を言っているとも思えない、
寧ろソノ沈黙こそが全てを肯定しているようだ。
魔王…ソノ単語を想い浮かべるだけで肌が粟立ち、掌がジットリと濡れる。
これが普通の世界で聞いた話しなら、僕も一笑の元に笑い飛ばしたであろう、
だがココは通常の世界では無い…『魔界』であり、『異世界』なのだ。
僕は自分の胸に手を置くと静かに目を瞑り、精神を研ぎ澄まして『彼』を感じ様とするが、
手に伝わってくるのは心臓が脈打つ鼓動だけで、それ以上は何も変わった所を感じない…。

…何故?…何で?…どうして?…僕は誰?…理解不能…理解不能…理解不能……。

グルグルと頭の中を疑問符が飛び交い、身体中から嫌な汗が拭き出す…。
…確か平凡な『人間』としての人生が僕の自慢だった筈じゃ……イヤ違う…。
自分の記憶すら侭ならないのに、如何してそんなイイ加減な事が言えるんだ?
それに…眠っていた二日間…たったソレだけの期間で、こうも人生が代わってしまうモノなのか?
今まで内側で眠っていた不安が急に鎌首を擡げ【もたげ】、改めて自分の存在定義を揺るがす…。
…いつしか僕は地面にガクリと膝をつき、
自らの胸を握り潰さんばかりに、汗ばんだシャツを掴んでいた。


「…何なんだよ一体…僕は何の為にココに居るんだよ…どうして僕なんだよ…。
 ……なぁ僕って…なんかイケナイ事でもしたのかなぁ…皆…黙ってないで何か言ってよ…?
 ………何故………如何して…………僕は……………うわぁあぁあぁああッッ!!!」


頭を掻き毟りながら喚き散らし、溢れる涙を無視して頭を地面に打ちつけ様とも、
極限状態まで昂ぶった【たかぶった】感情は そう簡単に静まらない…。
そんな僕を見つめる皆の瞳…哀れんでいるのか?蔑んでいるのか?
可哀想とでも思っているのかッ!?
ギラギラと嫌な光を放つ僕の目には、ネガティブな考えしか浮かんでおらず、
出口の無い自己嫌悪の迷宮を彷徨っている…。

ちくしょうッ!ちくしょうッ!ちくしょうッ!ちくしょうッ!チクショウッ!!!

立ち尽くす彼等に救いを求め様にも、先走った感情が邪魔して、上手く言葉が纏まらない…、
そればかりか全てをブッ壊して、何もかも無に帰したい衝動にすら駆られてしまう。
…そんな誰もが立ち尽くす中、今まで俯いていたサラがキッと顔を上げると、
全速力で僕の元に駆け寄り、まるで飛び付く様にソノ頭をキツク抱き締めた。


「かへは何も悪く無いなりッ!絶対に悪く無いなりッ!!
 お願いだからもぅ止めてぇぇえぇえッ!!」


ギュゥゥゥ…


…この小さな身体に一体どれだけの力があるのだろう…。
どれだけの『想い』が込められているのだろう…、
サラは泣き崩れる僕を身体全部を使って癒そうと、只一心に僕の頭を抱き締める…。
そんな彼女の優しさに溢れ出る涙を堪える事が出来ず、
縋る【すがる】思いでサラの小さな背中に手を廻すと、
恥などかなぐり捨てて、大声を挙げながらガムシャラに泣いた。


「ウわァッああっあぁあアっあァァあぁぁっぁぁぁああアアァッーーーッ!!!!」


…………………


…どれだけ泣いただろう…僕の心は流した涙の分だけ、幾らか軽くなっており、
やがて気分が落ち着くに連れ、自分の執った行動が恥ずかしくなってくる。


「……ありがとうサラ…もぅ大丈夫だ…少し落ち付いたよ…。」


「…本…当なりか?もッ…ぅあん…な事…ッしない?…ひっく…。」


涙でグシャグシャになった顔を隠そうともせず、真摯に僕の事だけを心配するサラ…、
そんな彼女の暖かな優しさに触れていると、今まで重苦しかった胸の中がスッと軽くなる…。
だがサラはまだ言いたい事があるのか、言葉を紡ぐのを止め様とはしない。


「サ…ラは…サラは…ね?…ック…かへの事、ずっと…ずっと『かへ』って、
 思…ってるな…ッ…り…。
 …別…にね?変な目…で見たりし…ッん…ないしぃ…嫌いに…もならない…なり…ッ…、
 …だっ…て……だってかへは……ッかへはぁぁあぁあッ!!!」


「サラッッ!!」


ギュッ!


何かを一生懸命 伝えようと、涙を流しながら叫ぶ サラを見ていると胸が切り裂かれる様に痛いッ!
僕は彼女の名前を大声で叫ぶと、小さな身体を包み込む様に強く抱き締めた。


「嫌なりッ!もぅあんな かヘ見るの、絶対に嫌なりぃぃいぃッ!」


「…ごめんなサラ……ごめんなごめんな……もぅ絶対にあんな事しないよ…。」


「かへの馬鹿ぁぁあぁああぁぁあッッ!!!」


僕達二人が抱き合う姿を見て、タカとイヴも落ち着きを取り戻したのか、
バツの悪い表情を浮かべながら、静かに話し掛けてくる。


「……スマン…かへおれ殿…拙者、情けない事に、
 貴殿に掛ける言葉が見つからなかったのでござるよ…。
 …何を言っても受け入れてはもらえぬだろう…、
 相手にされないだろう…そんな事まで考えていたのだ…。
 …だがサラ殿の純粋な姿を見て、拙者は後悔…いや、逃げ出したくなる位 恥ずかしくなった…。
 簡単な事だったのでござるな…素直に…在りの侭の気持ちを、
 貴殿にぶつければ良かったのでござるな…。
 …拙者、『勇気』が足りなかった様だ…スマン…この通りでござる…。」


スッ…


そう言うとタカは深々と頭を下げ、僕に謝罪する…。
その姿は顔が見えないものの肩が小刻みに震えており、何かを耐えているかにも思えた。


「かへおれさん…。」


振り返るとソコには暗く瞳を落としたイヴが立っておリ、
僕と視線を合わせ無い様、地面を見つめている。
そして彼女もタカ同様 僕に向かって、自分の素直な気持ちを述べてくれてた。


「ワ、私…今更デスケド…何ト言ッテ慰メタラ イイノカ、全然 判ラナカッタンデス…。
 …恩人デモアリ、友人デモアリ、旅ノ仲間デモアルかへおれさんガ苦シンデイルノニ、
 声一ツスラ掛ケラレ無イナンテ…マッタク情ケナイ話デスヨネ…。
 最新アンドロイドガ 聞イテ呆レマス…。
 …シカモ私ハ頭デ考エルヨリモ先ニ、データニ何カ イイ言葉ガ無イカ検索シテシマイマシタ…。
 ソンナ『心』ノ込モッテ無イ言葉ヲ言ワレタ処デ、何ノ慰メニモナラナイバカリカ、
 寧ロ迷惑ナ事ニスラ気付キマセンデシタ…かへおれさん…、
 ゴメンナサイ……メ…ン…ナサ…ィ…。」


イヴはソコまで言うと両手で顔を覆い言葉尻を嗚咽に代え、
ソノ場に座り込んで泣き崩れてしまった。
…僕は自分が恥ずかしかった…僕一人の為に、
こんなにも心配してくれる…こんなにも泣いてくれる…。
僕は再び流れ出た涙を拭うと務めて明るい声を出し、掛替えの無い仲間に対して心から感謝した。


「皆…ありがとう…。」


不器用に笑いながら気持ちを言葉にするが、上手く伝える事が出来ない…。
しかしそれでも真意は伝わったらしく、次々と顔を上げては僕に向かって笑い掛けてくれた。
すると一人取り残された女性がクスリと笑い、僕達の事を こう言い出した。


「ん〜〜…今 思ったんだけど、何か君達って『オズの魔法使い』みたいだね?」


「オズの魔法使い?」


僕も聞き慣れたソノ名前を繰り返すが、彼女の言わんとしている意図が読めない。
だが彼女は腕を組んで右手の人差し指だけを上に向けると、更にその続きを説明してくれた。


「そ、オズの魔法使い…話くらいは知ってるでしょ?
 …あぁタカ君は気にしないで、未来の…しかも伴天連【ばてれん】の物語だから♪
 …さて話を戻して…私の目から見た感想は…サラちゃんが『陽気で心優しきドロシー』、
 かへおれ君が『人間になりたい案山子』…んで、タカ君が『勇気が欲しいライオン』、
 イヴちゃんは『心を知りたいブリキのロボット』って感じか…ナ?
 どぅ?結構 当たってるでしょ?」


確かに言われてみれば言い得て妙だ。
彼女の言った通りの配役が、恰も最初から決まっていたかの様にピタリと当て嵌まる。


「なるほど…面白い考え方ですね、…え〜っと…。」


興味深い意見に相槌を打ちものの、僕はココに至って彼女の名前を知らない事に気付く。
コレだけ話をしているのに、何とも間の抜けた話だ。
すると彼女の方も僕の落ち着かない態度に気付いたのか、自分の腕に僕の腕を絡めると、
ニコリと笑いながら、困った生徒を諭す様に名前を教えてくれた。


「フフ…困った坊やねぇ〜私の名前は琥潤よ、『ルー様 親衛隊々長』の肩書きも持ってるわ。
 し・か・も!不肖ながら君達の護衛をする事になったから宜しくね♪」


「ハイこちらこそ宜し――って、はぁァッ!?」


ヤ、ヤバイ…一旦 掴んだ現状がまた迷走しようとしている…。
…OK…まず一つずつ整理していこう…。


1:僕は2日間 寝ていた。
2:僕は今 魔界に居る。
3:僕の身体には『魔王』が居る。
4:僕達はコレから『次元回廊』に向かう。
5:僕達のパーティーに『琥潤』が加わった。


…な、なんだコノ安っぽいRPGみたいなノリはッ!?
しかも琥潤と名乗った女性が言った言葉は、他の皆は熟知しているらしく、何も異論を挟まない。
…一人だけ疎外感を味わう僕…果たしてこのままでイイのだろうか?
彼女の言葉に拠って渋い顔で悩んでいた僕だったが、ふと腕に伝わる柔らかさに心惹かれる。
どうやら琥潤は自分の賛同を快く思って無い僕に気付き、無言の抗議をしているようだ。
ソノ証拠に彼女は上目使いで僕の事を見つめ、あからさまに胸を密着させており、
恰もソノ表情は『ネェ駄目なの?ねぇ、ネェってば?』と、甘える様に言っているかに思えた。


「(…まぁサラは兎も角、タカとイヴも何も言わないンだから別にイイか?
  ひょっとしたら彼等が手に負えないような出来事が、起きるのかもしれないしな…。)」


僕はそう自分の中で区切りをつけると、演技掛かった溜息を吐き、
未だ上目使いで甘える琥潤に言葉の矛先を向けた。


「…はぁ…判りましたよ…イマイチ要領が掴めませんが、
 皆が何も言わない処を見ると、それがイイのでしょう…。
 コレから先、宜しくお願いしますね琥潤さん。」
 

「ん〜なぁんか引っ掛かるけど、まぁイイでしょう♪
 そ・れ・と、私の事は琥潤って呼び捨てにしてね?なんかシックリこないから。
 …でも良かったわぁ、貴方が『うん』って言ってくれなかったら、如何しようかと思ったわよ。
 だって君、このパーティーのリーダーなんでしょ?」


イキナリ突拍子も無い誤解をする琥潤…いつから僕がパーティーリーダーになったのだろう?
するといつの間にか大人しくなったサラが、肩を怒らせながら僕に詰め寄ってくると、
唾を飛ばす勢いで猛反発してくる。


「ベタベタされて 何、イイ気になってるなりッこのスカタンッ!
 パーティーのリーダーはサラに決まってるなりッ!」


ゴヅヅッッ!!


威勢良く啖呵を切っただけでは、彼女の憤りは収まらなかったのか、
サラは極限まで足を振り上げると、
つま先が木で出来たブーツで僕の踝【くるぶし】を蹴飛ばしてきた。


「ッッ!?ッ仝〆≦ッ!?≠♂Ψッ!!」


言葉では言い表せない激痛が僕の全身を舐め回す様に蹂躙【じゅうりん】し、思考を麻痺させる。


「…地味な場所だが、的確な攻撃でござる…。」


「アソコノ痛ミハ ジワジワ キマスカラネェ…。」


タカとイヴもあからさまに顔を顰め、僕の事を同情するが、
とばっちりをクラわないよう、遠巻きにヒソヒソと何か喋っている。
…たった二日 会わなかっただけで、随分と したたかになったなぁ…をぃ…。


…僕は復活して早々、前途多難な旅を予測しながら、コレからの在り方を心から憂いた…。

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