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シークレットゲームコミュのシークレットゲーム 〜エピソード7〜 第16話[決意を胸に]

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第16話[決意を胸に]                              〈作・桐島成実〉

【残りの生存者数・・・5人/13人】

〈現在の状態〉

             PDA      状態           解除条件
[グループA]
 御剣 総一     (2)    右肩・わき腹負傷     JOKER破壊  
 桜姫 優希     (6)       健康         JOKER5回使用
 色条 優希     (4)      右腕負傷        首輪3個収集

 綺堂 渚       (10)     右手負傷        首輪5個作動
 麻生 真奈美    (J)      腰を負傷     24時間共にしたプレイヤーの生存



姫萩咲実という少女は、最初から殺人鬼だった訳ではない。

事が起こったのは、事業を桜姫の父親に乗っ取られ、家族がバラバラになり、親戚の家に引き取られてからしばらくの事だった。

今からおよそ3年ほど前になる。咲実が中学3年の時だった。

彼女は総一達よりも前に、この狂ったゲームに参加させられていた。

咲実「はあっ、はあっ、つ、うぅっ・・・!」

文香「くっ、しっかりして!咲実さん!」

必死になって咲実の手を引張る文香。そんな2人を追いかけるのは・・・。

郷田「いつまでも逃げられると思っているのかしら?・・・漆山さん、お願いね」

郷田は、共に追いかけている中年の男性に、そう願う。

漆山「ま、まてぇ〜!!」

漆山もそれに答えるかのように、鬼のような形相で2人を追いかける。

郷田も漆山も、かつては咲実達と行動を共にし、色々あったものの、少しは気を許し始めていたほどだった。

しかし突如、郷田が反旗を翻し、漆山も郷田の誘惑によって取り込まれたのだ。

そして他のプレイヤー共々、ゲームという名のカオスにからめ取られていった。


・・・・・


咲実「文香さん!文香さんっ!!」

文香「は、早く逃げなさい!咲実ちゃん!!」

戦いの末、文香は足に銃撃を喰らい、今は漆山に組み伏せられ、ナイフを突きつけられる寸前だった。

漆山「彼女の、愛しの彼女の為なんだぁ!!」

いつもは考えられないほどの強靭さで、ナイフを力任せに押し込もうとする漆山。文香は漆山の手を掴んで抗うものの、踏ん張るのが精一杯だった。

―――ここで、文香さんを見捨てたりなんか出来ない!じゃあ、やっぱり、やるしか・・・。

悩みぬいた挙句、手に持っている銃を撃つ決意を固めた咲実。そして・・・、

ガァーン!!

銃を撃った。その弾は、ナイフを持つ漆山の手に当たった。

漆山「ぐあぁっ!!」

しかし、それは同時に、抗っていた文香の手さえも、貫く結果となってしまった。

そして、運の悪い事に、力の行き場を失ったナイフは、軌道を外れ、文香にそのまま突き刺さった。

文香「あぐぅぅっっ!!」

咲実「!!!」

驚きのあまり、瞬間的に固まる咲実。

漆山「く、くそぉぉ〜!!この小娘がぁぁぁっ!!」

激怒した漆山は、ナイフを文香から抜いて、真っ先に咲実に突進していった。

その際、噴出した鮮血が、漆山を、そして咲実の視界を赤く彩る。

咲実「き、きゃぁぁっっ!!」

錯乱した咲実は、反射的に銃の引き金を何度も引いた。迫り来る銃弾になすすべもなく崩れ落ちる漆山。

それを見た咲実は、そんな事をしでかした自分に心底怯えた。だがかろうじて正気に踏みとどまった咲実は、文香の元へと駆け寄る。

文香「だ、だいじょう、ぶ?さ、咲実、ちゃん・・・」

咲実「文香さん・・・!ごめんなさい。私の、私のせいで・・・!」

文香「いいのよ、咲実ちゃん。あなたが無事だっただけで―」

ガァン!!

その声は突如途絶えた。そして文香は2度と話す事はなくなった。

郷田「さあて?この場に残っているのは私とあなただけ。さて、どう出るかしら?」

郷田は狙い撃った銃を、今度は咲実に向けつつ、冷たくそう言い放つ。

咲実「い、いやぁぁぁぁぁぁっ!?!」

誘拐され、おかしなゲームに巻き込まれ、何度も殺されそうになり、仲間に裏切られ、唯一支えてくれていた文香を自らが傷つけ、そして文香は死んだ。

さらに、自らが人殺しをしてしまった。なのに、助けられなかった。なら、私は一体何の為に人殺しを・・・?

そんな疑問を考える間もなく、再び命を狙われる。

もう咲実の精神(こころ)は、限界だった。そして、脆くも崩れ去っていったのだった。


・・・・・


郷田「へぇ。まさか彼女が生き残るとはね」

一仕事終えて控え室へと戻った郷田は、ディーラーからの通信を受けていた。

ディーラー「はい。一番レートが高かった彼女が、まさかの生存。おかげで観客席はいつも以上に盛り上がっています」

彼女とは、咲実の事を指している。

郷田「生存ねぇ・・・。でもあれって生き残ったって言えるのかしら?」

郷田が最後に見た咲実は、すでに心が壊れかけていた。むしろこの状態で生き残れたのは奇跡に近かった。

ディーラー「・・・恐らくあの状態で元の生活に戻っても、まともな人生を歩むことはほぼ不可能でしょう」

郷田「そうよねぇ。じゃあ・・・」

何か言いかけた郷田を、ディーラーが遮る。

ディーラー「後で上に申請はしますが、あの娘を私に預けてもらおうと思いまして」

郷田「あの娘を?」

ディーラー「そうです。うまく使いこなすことが出来れば、私の考えている新たなゲームマスターが誕生するかと」

ディーラーの仕事は、何もゲームの管理だけではない。いかにゲームを盛り上げる為の要素を作り上げていくか、それが基本となる。

それ故、咲実を鍛え上げて、ゲームマスターに駆り出そうという狙いだった。

郷田「ふうん。でもあの娘にそんな資質があるのかしら?」

郷田が見る限り、逃げたり怯えたりの連続で、反撃らしい反撃を行えたのは、漆山との一件のみだった。

ディーラー「あの娘は元々、精神が不安定な所がありました。ちょうどあれぐらいの年齢ではありがちですが、それに家庭の事情が相まって、人を恐れる様になったのでしょう」

ディーラー「そして、今や彼女の心は壊れきっています。そこにゲームマスターとしての心を刷り込めば、可能だと思われます。・・・外見はひ弱な女子中学生ですし、客からすれば見ごたえはあるかと」

郷田「まぁ、いいわ。あなたの好きなようになさい」

まるで興味がないといわんばかりに、郷田は通信を切った。

そこから、咲実にとって地獄の日々だった。

ディーラーはまず、人を殺すのに必要な殺気と、狂気を植えつけることにした。

最初に行ったのは、様々な殺人シーンの映像を延々と見せ付ける事だった。

目を逸らそうとしても、耳を塞ごうとしても無理だった。様々な手段を用い、常に映像を、音声を、スピーカーから聞こえてくる悲鳴や怒声の数々を・・・。

なぜ?とも、嫌とも発することさえ、許されなかった。ただただ、残酷なシーンと常に共に居る生活を余技なくされた。

次に行われたのは、実際に自らの手で生き物を殺すことだった。

最初はアリをつぶす事から始まり、次にクワガタの足を一本ずつ引きちぎり、ウサギをナイフで切り刻み、ネコの足を口で噛み千切って。そして最後は、実際に人を殺させたのだ。

その仮定で、生き物の生命が途切れる加減や、様々な苦しめ方、殺し方を身につけさせられた。

他にも様々な拷問に等しい行いを、1年余りにも渡って繰り広げられた。

・・・もしかしたら死んでいた方が幸せだったかもしれない。しかし、死ぬことさえ許されなかった。いや、死を選ぶという発想を思い浮かべる余裕さえ、与えられなかった。

咲実「あはははははっ!!うふ、うふふ、あはははっっ!?」

1人の少女に過ぎない咲実に、正気で居ろ、という方が無理な話だろう。

もう元の彼女の姿は微塵も残されていなかった。あるとすれば、海の底ほど深い狂気を覆い隠すために同時に刷り込まれた、偽りの仮面だけだった。



・・・
・・・・・


桜姫「そっか。咲実さんの悲しむ顔が・・・」

総一は、先のすべてを夢として見たわけではない。ただ、咲実の悲しみや、助けを乞う叫びが、狂気となった咲実の姿から垣間見えたのだ。

総一「もしかしたら、いや、間違いなく彼女も、このゲームの犠牲者なんだろうな」

その咲実は、ゲームの主催者に裏切られ、命を落としてしまった。結局最後まで助けられなかった。本当はかりん達を殺した憎い相手のはずなのに、なぜかそう考えていた。

優希「・・・本当に憎むべき相手なのは、このふざけたゲームを考え、行っている連中なの」

桜姫「優希ちゃん!?」

いつの間にか優希も、渚達の後ろから、総一の話を聞いていたようだった。

その優希が発した言葉は、これまで聞いたことも無いほど、低く暗いものだった。

総一「その・・・大丈夫か?」

どう声を掛けていいか迷ったが、その言葉が口をついて出た。

優希「うん・・・。あのね、ひとまず私達の首輪を外す必要があると思うの」

優希は何かをグッと堪えて、努めて冷静にそう提案する。声が暗いのは感情を無理に抑えているせいなのだろうか?

桜姫「あ、うん。実はそれなんだけど、さっき渚さん達と色々話し合ったの」

桜姫はそう言って、プラスチックの箱を取り出す。

総一「ツールボックス?」

桜姫「うん、そう。コレが、咲実さんのすぐ近くに落ちていたの。で、何のソフトか調べていたんだけど・・・」

桜姫はそう言って、ソフトを自身のPDAに差し込む。すると、そのツソフトの説明書きが画面に示された。

[進入禁止エリアへの進入が可能になる。注意!バッテリー消費・極大]

優希「進入禁止エリアへ入れる・・・?」

桜姫「うん。だから、6階が進入禁止になる直前にコレを使えば、もしかしたら助かるかも・・・?」

総一「あ、そうか!」

このゲームのクリア条件に照らし合わせれば、何も首輪を外す必要はない。ゲーム終了時間まで、生き残ってさえ居ればいいのだ。

それに気づき、総一は表情を明るくするが、桜姫達は表情を変えずに返答した。

渚「けれど、バッテリーが持たない可能性もあるわ」

桜姫「うん。それに、コレは1つのPDA。つまり1人分しか使えないらしいの」

総一「え?それじゃ・・・」

桜姫「うん。コレだけじゃ、助かる事は出来ないわ。だから、やっぱり首輪を外す必要がある」

総一「そうか。ええと、首輪の解除条件は、たしか・・・」

総一が考え始めようとしたが、先に桜姫が答える。

桜姫「私と総一はJOKERが必要。それがクリア出来れば、私達の首輪が外れる。それに咲実さんの首輪は外れていたから、それも使えるはず」

皆は桜姫の説明を確かめるかのようにうなずく。

桜姫「これで計3個だから、優希ちゃんの首輪が外れるわ。あとは渚さんだけど・・・」

渚「うん。私は首輪が5個作動する必要があるの。・・・既に2回、首輪が作動しているのを見てるから、外れた首輪をすべて作動させればいいはず」

渚の見た首輪の作動は、葉月と咲実の分である。

総一「問題は、JOKERがどこにあるか、だな」

やはりそうなってくる。JOKERを発見しなければ、少なくとも総一と桜姫は助からなくなってしまう。

桜姫「うん。・・・こればっかりは分からないわ。JOKERを探知出来る方法があればいいんだけど、そんな都合の良いものが出てくるとも思えないし」

桜姫「一応、手がかりがあるかもって、咲実さんの身体を調べてみたけれど、持っていたPDAの2個共破損していたし・・・」

そう言ってため息をつく。もちろんその2つのPDAが、JOKERだったという可能性もある。しかし桜姫は悲観的には考えていないようだった。

桜姫「JOKERは下の階に居る誰かが持っているはず。だからその人達を調べれば、きっと出てくるはず」

総一「その人達ったって、全員か?そりゃ、いくらなんでも・・・」

言いかけて気づいた。

総一「!もしかして、その為にさっきのツールボックスを?」

桜姫「うん、それしか無いと思う」

桜姫は呟き、手に持っていたそれを渚に差し出す。

渚「・・・私に?」

桜姫「うん。この中でまともに動けるのは私か渚さんぐらい。私のPDAのバッテリーは、何度も首輪の探知に使ったから、時間的猶予はないの。だから・・・」

桜姫「渚さんに、このツールボックスを使ってもらって、4階から下に居る人達をそれぞれ調べてほしいの」

真奈美「4階から下?それじゃ、5階は・・・?」

桜姫「それは私が。5階での首輪の反応は5個、一つは咲実さんで、あとの4個は1箇所に固まってる。だから時間的には間に合うはず」

渚はしばらくじっと桜姫と、持っているソフトを交互に見つめていたが、やがてうなずいてツールボックスを受け取った。

危険な賭けではあった。だが他に手はない。

渚「それじゃ、方針を決めないと」

4階より下にいくつ反応があるのか、まず知るべきはそれだ。

桜姫「うん、そうね」

さっそく、首輪の探知機能を使ってみた。

桜姫「4階に1つ、1階と2階にもそれぞれ1つずつ反応があるわね」

その内のどれが、JOKERを持っているだろうか?

渚「2階の反応は葉月さん。葉月さんは恐らくJOKERを使われて命を落としてしまった。だから2階の反応は違う」

真奈美「そうだよね・・・。じゃあ1階の反応も違うかな?」

渚「うん。だから4階の反応の所へ行けば、JOKERがあるかも?」

そうと決まれば、さっそく行動を開始した。この勝負、時間がカギを握るからだ。

5階に桜姫、4階に渚、優希、真奈美は総一の看病。みんなでこの危機を乗り越える。その想いを胸に秘めて―



・・・
・・・・・


桜姫「うっ・・・」

5階の首輪の反応があった部屋に入った時、凄まじい有様に、思わずうめき声を漏らす。

4人もの死体。それぞれが血にまみれ、うつろな瞳は何も捉えていなかった。

その中に見知った2人が居た。

桜姫「かりんちゃん、かれんちゃん・・・」

ボランティアを通じて親しくなった2人。生前の面影はなく、2人折り重なるようにして倒れているのが、辛うじて姉妹の絆を感じ取れるほどだった。

桜姫「・・・ごめんね、助けてあげられなくて」

この時、桜姫は目に涙をためていた。そして無力な自分を責めた。この子達を助ける方法はなかったの?そんな後悔に捕われていた。

でも、そんな事をしても何も変わらない。それは昔の経験から知っていた。せめてと思い、2人のまぶたをそっと閉じた。

桜姫「あ!」

すると、2人のすぐ傍に、外れた首輪が転がっているのに気がついた。

桜姫「これは・・・かりんちゃんの?」

かりんの首には、首輪はなかった。と、すればこれは当人のものだろう。

それを拾い、4人のPDAをそれぞれ回収して、桜姫はその部屋を後にする。

その間、なんとか涙を堪えようと、必死で耐えようとした。泣くのはすべてが終わってから。そう決めていたから。

そして、その部屋を出た所で、突然天井に備え付けられているスピーカーから声がした。

渚『優希さん!?居る?』

桜姫「渚さん!?」

桜姫はスピーカーの方を向いた。渚の声はどこか慌てているように聞こえた。

渚『そ、それが!例の進入禁止のソフトなんだけど、バッテリーが持ちそうにないの!』

桜姫「な、なんですって!?」

渚『このままじゃ・・・!な、何か方法はない!?』

桜姫は慌てた。が、すぐに頭を回転させ、なんとか活路を見出そうとする。

桜姫「そ、そうだ、5階の警備室!」

渚は恐らく4階の警備室に居るのだろう。会話をする為には、互いにスピーカーをすれば可能かもしれない。そう考えたのだ。

桜姫「幸い、すぐ近くにある。待ってて!」

そう言い、5階の警備室へと急いだ。

桜姫「聞こえる!?」

警備室のマイクに向かって、そう声を発する。すぐ傍に、かつて咲実だったものがあるが、むせるような血の臭いに、なんとか耐える。

渚『うん!聞こえる!それで、えと』

桜姫「待って!今考えるから」

そう言って一度マイクから離れる。

桜姫「PDAに何か手ががりが・・・」

そう思い、先ほど手に入れたPDAを丹念に調べる。

桜姫「こっちはPDAを探知するソフト、こっちは罠を地図上に投影・・・あ!」

桜姫は、地図上に表示されている罠の内の一つに目をつけた。

桜姫「これなら、なんとかなるかも!」

そして再びマイクを手に取る。

桜姫「いい?今から私の言うとおりにして!」

PDAの探知のソフトを使いながら、渚を罠のある位置に誘導する。

桜姫「そこで待ってて!その罠は5階からじゃないと作動出来ないの!」

そう言って素早く警備室を出る、そして罠の真上に位置する場所へと走っていった。

桜姫「ココね!」

目的地にたどり着いた桜姫は、さっそく罠の起動スイッチを作動させる。

ガコン!

すると、床一面がポッカリと開いた。そしてその下に渚の姿があった。

渚「優希さん!?」

お互いに、相手の無事な姿を見て安堵するが、そうも言ってられない。

桜姫「良かった!えと、ちょっと後ろに下がってて!」

渚が言われた通り後ろに下がると、桜姫はある物を落とし穴に向けて投げ入れた。

それはかりんの首輪。しかもそれは警報アラームを発していた。

桜姫「ワイヤーが出てくるはずだから、それに掴まって!」

渚「ワイヤーって・・あ!そうか!」

葉月や渚自身に襲い掛かった、ペナルティのワイヤー攻撃。あれを利用しようというのだ。

そして―

シュッ!ガツッ!!

宙に舞う首輪に向けて5階の天井からワイヤーが飛び出す。そしてそれは落とし穴をくぐり、4階の床まで突き刺さった。

桜姫「今よっ!」

渚はワイヤーにがっしりと掴まり、それに呼応したかのようにワイヤーは再び元に戻ろうとする。

渚「よっと!」

通し穴を通り過ぎた辺りで、うまく身をよじって床へと着地する。その運動神経の良さはさすがだった。

桜姫「よし!うまくいったわ」

計算どおり事が進んだことに安堵したものの、時間は迫っていた。

桜姫「私達が居る5階が進入禁止になるのは、多分3時間ほど。階段までは結構ギリギリかも」

けれど考える暇はない。なんとかそこまで急がないと。そう思って再び走ろうとした2人だったが、再びスピーカーから声が聞こえた。

優希『優希お姉ちゃん!渚お姉ちゃん!』

桜姫「え!?」

渚「・・・もしかして、6階の警備室から?」

驚く2人をよそに、優希は続ける。

優希『えと、2人が居るのはここだから・・・。えっと、今から私の言うとおりに動いてほしいの!』

優希『お姉ちゃん達から見て、一番近い階段の所に来て!お願い!』

渚「え?でもそこは使えない階段じゃ・・・」

そう。PDAの地図には確かに近くに階段が存在するが、×印が付けられており、使用する事は出来ないはず。

桜姫「優希ちゃんを信じましょう」

桜姫の迷いはないようだった。2人は、その階段へと急いだのであった。



・・・
・・・・・


階段の前に来た2人は、そこの情景に唖然とした。

桜姫「うわぁ」

渚「何もかもバラバラね・・・」

そこには本来、障害物が置かれているはずだった。だがしかし、そこにあったはずの障害物は、ものの見事に粉砕されていたのだ。

総一「ふぅ〜、なんとか成功、かな?」

桜姫「総一!?」

そして、階段の向こう側には、総一と真奈美の姿があった。

渚「い、一体どうやったの?」

渚の問いに、総一達が答える。

真奈美「う、うん〜。あれから6階のあちこちを調べたんだけど、そこに爆弾がいっぱいあったの。それでぇ〜」

総一「階段をあちこち爆破しておけば、イザと言う時通れるかなぁ、ってな」

渚と桜姫がやりとりした、スピーカーでの内容を、総一達も聞いていたのだ。

それで時間が切迫している事を悟り、こうして先手を打ったのだった。

渚「そ、そっか」

いささか強引にも感じたが、これで6階へといけそうだった。

総一「そっと渡ってくれよ?」

階段にもヒビが入っている為、崩れる危険があった。

桜姫「うん」

そうして2人は無事、6階へとたどり着いた。

桜姫「や、やった」

そこに総一達が出迎える。

総一「おかえり」

桜姫「ただいま」

そうして手を取り合う2人。ふと思い出した桜姫は、2つのPDAを取り出す。

桜姫「多分、このどちらかがJOKERだと思うの」

桜姫が取り出したPDAは、共に『Q』の文字が刻まれていた。しかし、

総一「図柄が、道化師に変わっていく・・・。やったな!優希!」

桜姫「うんっ!」

今回の賭けは、成功に終わった。総一達は勝ったのだ!

それから先は楽なものだった。当初の方針どおり、JOKERを使って最初に桜姫、次に総一の首輪を外した。

次に総一達と合流した優希、そして渚も無事、首輪を外すことが出来た。

残すは真奈美ただ1人。それも時間の問題だった。

5人は一つの部屋に集まっていた。ようやく訪れた休息の時だった。

桜姫「やっと終わったわね・・・」

一気に疲れが出てきたのか、珍しくだらしなく座る桜姫。他の人達も同様だった。

ただ1人だけ、暗く沈んだ表情を浮かべるものが居た。

桜姫「優希ちゃん・・・」

総一達と再び合流した時、やはり元の明るい優希の姿はなかった。やはりまだ立ち直れていないのだろう。

その思いを当人は読み取ったのだろうか。優希は視線に気づき、トコトコと桜姫の前に歩んできた。

優希「あのね、お姉ちゃん・・・」

桜姫「なあに?優希ちゃん」

優希「お願いがあるの」

いつしか、優希の目は輝きを取り戻しつつあった。そして意を決したかのように提案した。

優希「その・・・、かれんお姉ちゃんの首輪を外してあげたいの」

桜姫「え!?」

優希「私は、お姉ちゃん達を救えなかった。だからせめて、首輪だけでも外してあげたいの」

このゲームに捕われて命を落とした2人。せめて、首輪だけでも外して楽にしてあげたい。それは優希のせめてもの想いだった。

桜姫「・・・うん。わかった。じゃあ私が」

優希「私も、連れてって」

桜姫「そ、それはダメよ、だって・・・」

そんな事をしたら、優希にかりん達の凄惨な姿を見せることになる。そんな事をしたら、優希の心は壊れてしまうかもしれない。

優希「お願いっ!!」

しかし、優希の目には、一種の決意が窺えた。

総一「どうした?・・・優希?」

他の人達も、優希の様子に気づき、近づいてくる。

優希「私、目を背けない。・・・パパがやったひどいこと。胸に刻んでおくの」

桜姫「優希ちゃん・・・」

優希「それに、まだ、終わってないの」

桜姫「え?」

優希「まだ、このゲームは終わってないの」

総一「終わってない?あとは真奈美さんの首輪を外すだけだし・・・」

優希「ううん、そうじゃないの」

優希は首を横に振る。桜姫は優希の言わんとした事に気づいた。

桜姫「それって・・・」

もしかして、私達が参加しているこの『ゲーム』じゃなくって、『ゲームそのもの』を指しているんじゃ・・・。

優希「だから、みんなの力を貸して!これ以上犠牲を出さない為にも」

そして優希は、キッと前を見据えたのだった。

コメント(11)

優希は、このゲームを終わらせる為に、戦う決意を固めました。

次回は最終話[本当の勝利者]優希の、一世一代の戦いが幕を開ける。乞うご期待♪

それと、ちょっとしたおまけシナリオも用意しておりますので、そちらの方もぜひ♪
今週もお疲れさまです手(パー)それにしても咲実さんはかわいそうすぎるあせあせ(飛び散る汗)ぜひぜひ皆にとって良い未来を勝ち取ってもらいたいですぴかぴか(新しい)
もりへいさん、こんにちわ〜♪

咲実さんは、総一くん達より前に、このゲームに参加していた訳です。そして悲劇的な結果に終わってしまいました。

そして今、このゲームを止められる人物は、現状では恐らく優希だけでしょう。彼女がどのような行動に出るか、そしてどんな結末を迎えるか、がエンディングの見どころです♪
なんかしばらく見に来てなかったら、おもしろいことやってたんですねふらふら

このあとハッピーエンドになってほしいです。
咲美は不運が多過ぎたせいで精神が壊れて殺人鬼になってしまったのか………可哀相………
もし、総一が前のゲームに参加してたら、咲美は幸せになれたかも………
次の最終話、楽しみにしてま〜〜〜す。
グライアイさん、お久しぶりなのです♪

エンディングを飾るのは、色条優希ちゃんです☆彼女の活躍が、このゲームに終止符を打つことに・・・なるかも?

当初は脱落してしまった者の首輪を、他のプレイヤーが外して、その首輪を優希ちゃんの首輪を外す為に使用する、というシナリオでしたが、うまく調整出来ませんでした(汗)

ほわとと@千尋LOVEさん、どうもなのです♪

渚さんもかつてこのゲームで絆を失いましたが、今回の咲実さんは自らを失う結果となりました。そんな状態の咲実さんを救うエピソードも、あっても良かったかもしれませんね。

漆山・・・出てこないシナリオだから、初の生存(?)と思われてたのに
過去にやられてたんですね^^;
漆山と長沢に愛の手を(おぃw
なるみさん、うpおつです〜。

予想できない展開に読み応えがありました。
そしてまさかここで漆山がっ(笑)

他のSSでもありますが、侵入禁止エリアへの移動可能となるツールは使い所が難しいですよねー。
バッテリー消費が大きいから、確か1時間と持たないはずでしたし。
その中で今回のような行動は思いつきませんでした。

次回も期待してますねーノシ
荒井熊さん、こんにちわ♪

うむむ、漆山さんと長沢くん。どうしてもこの2人が生存する状況、というのが想像つきませんねぇ。増してハッピーエンドに持ち込むのなら尚更で・・・。

エピソード『7』のシナリオを考案中に、PDAの振り分けをどうするか?で2パターンあったのですが、その内廃案になった方の長沢くんのPDAが実は『7』だったりします。

とらぞうさん、毎度どうも♪です。

進入禁止エリアに進入出来るこのソフトは、恐らくバッテリーの消費が一番激しいソフトといえるでしょうね。下手をすると、自分のPDAが使い物にならなくなりますし。

さて、今回のエンディングはハッピーエンドで終わるのか?そして、次のおまけエピソードは一体何なのか?乞うご期待☆
なるみさん、どうもです〜♪

文香さんの出番…短いですね。まあエピソード5のヒロインでしたから、仕方ないといえば仕方ないですね(苦笑)
そして…やっぱり咲実さんはヒロイン以外だと不遇な運命を辿ることが証明されました。味方役だと総一くんがいないと戦力外、悪役だと自滅…。ちょい悪役やエロ親父役で輝く長沢・漆山とは違い、ヒロイン以外だと使いにくいキャラクターではありますよね(泣)
まあ咲実さんの活躍はシークレットゲーム本編で我慢しましょうがまん顔

思ったよりも簡単に全員の首輪が外れ、あとは優希の戦いになるわけですが…。首輪が外れた上に生き残りは優希の仲間になるので、ゲーム中は組織も下手な介入は出来ない→ゲームクリア後の話、の流れになるのでしょうか…?
レッドさん、すみません、返事が遅くなっちゃいました(汗)

文香さんの出番、もう少し多くても良かったような、と後悔している今の私です><

咲実さんは確かに使いづらい面が多々あります。周りの状況に振り回される事が多く、存在感を示しにくいからです。

まぁ、それでも話の流れをうまく組めば、彼女の良い面を十分生かす事も出来ます。・・・が、それを阻害しているのは彼女の人気がやや低い事が影響してたりします(汗)





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