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シークレットゲームコミュのシークレットゲーム 〜エピソード7〜 第15話[明かされた因果]

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第15話[明かされた因果]                              〈作・桐島成実〉

【残りの生存者数・・・6人/13人】

〈現在の状態〉

             PDA      状態     解除条件
[グループA]
 御剣 総一     (2)        健康    JOKER破壊  
 桜姫 優希     (6)       健康    JOKER5回使用
 色条 優希     (4)       健康    首輪3個収集

 綺堂 渚       (10)      健康    首輪5個作動
 麻生 真奈美    (J)      健康     24時間共にしたプレイヤーの生存

 姫萩 咲実     (?)       ??      ??






5階の警備室で、桜姫と総一が再会するほんの少し前、運営側が滞在しているメインコントロールルームにも、ある異変が生じようとしていた。

その異変のきっかけとなったのが、カジノゲーム総責任者である稲葉が、ここの様子を見に来たことから始まった。

ディーラー「これはこれは、稲葉様」

ディーラーはお辞儀をする為座っていたイスから立ち上がろうと足を動かずが、当人によって制された。

稲葉「そのままで構わんよ。少し様子を見に来ただけだからのぉ」

高齢に差し掛かった稲葉は、威厳を携えたまま、至極落ち着いた口調でそう述べる。

稲葉「はっ・・・」

その言葉に甘んじ、仕事を再開するディーラーだったが、やはり上司にあたる人物が間近に居ることが気になるのだろう。一度チラリと横目で、その上司の様子を窺う。

稲葉「ふむ、今回も盛況であるな」

数々のモニターに釘付けとなっている観客達を遠くから見据え、異常がない事を確認する稲葉。

そんな中、ふと真横に置かれているスタッフ用のモニターに目を向けた時、何かしらひっかかるものを感じたらしく、眉をひそめて考え込む。

ディーラー「・・・?どうかされましたか?」

顔を上げて、不思議そうに尋ねるディーラー。何かミスを犯してしまったか?そんな不安に駆られたものの、どうやらそうではないらしい。

稲葉「ううむ、何か、忘れているような気がするが・・・はて?」

稲葉が先ほどからモニターを見て回っている。注目しているのは、人物が映されている画面。それを一つ一つ確認するかのように目を泳がせている。

稲葉「何だったかのぉ。何か重大な・・・あ、キミ!」

ディーラー「は、はい!」

稲葉「今回のゲームの資料をもう一度見せてくれんかね?」

稲葉が指差したのは、ディーラーのコンソーラーの横に置かれた資料の束だった。

ディーラー「あ、はい」

そそくさとその資料を渡すと、稲葉はペラペラとヘージをめくり始めた。

そして、ある資料を目にした時、稲葉の目がカッと見開かれた。

稲葉「・・・!!、き、キミ!?」

ディーラー「は、はいっ!なんでございましょう」

大げさに返事を返すディーラーだったが、彼が本当に驚いたのは、稲葉の今までに見たことも無いほどの青ざめた表情だった。

稲葉「こ、こ、これはどういうことかね!?」

稲葉様ほどの敏腕が、動揺している・・・。それは言い換えれば今までにないほどの緊急事態を暗に示している。その事を悟ったディーラーは、慌てて稲葉の持つ資料を覗き込む。

いつもならこんな失礼な事は許されないが、今はそんな事に構っている余裕はなかった。

稲葉「な、なぜ!なぜ『この娘』がゲームに参加しているんだ!?」

ディーラー「この娘?」

稲葉が指差す一番前のページの資料は、ゲームプレイヤーの内の1人だった。

稲葉「わからんか!?・・・いや、わかるはずもないか。いいか、この娘は、この娘はっ・・・!」

その次の言葉を聞いた時、ディーラー以下他のスタッフの動きが、完全に固まってしまった。


稲葉「我が組織のトップに立っておられる、色条良輔様の一人娘だっ!!」

ディーラー「・・・はっ?・・・え!?はあっ!!?」

意味不明な返事を繰り返すディーラーだったが、それも当然のはず。本来ならありえない状況が、今起こっていることに気がついたのだから。

稲葉「何がなんだかわからんが間違いない。この娘の苗字も確かに『色条』だ!なぜ事前に気がつかなかったのか・・・!」

自身の見落としに、今更ながら悔いる稲葉。

稲葉「と、とにかく、このままにしておくわけにはいかんっ!今すぐ回収部隊を編成して・・・」

ディーラー「ま、待ってくださいっ!?今まさにラストゲームが始まる直前なんです!?プレイヤー達も集結しつつありますし、この状況で介入することは不可能ですっ!?」

仮に介入出来て、ターゲットを回収したとしても、辻褄合わせにダミー映像を作成する時間も余裕もない。

かといって、今ゲームを中断する事など出来るはずもない。主催者側にとって、権力者であり財閥のお偉いさんが集っているこのゲームを止める事は、信用を失う事に繋がるからだ。

そうなれば、組織は大きく揺らいでしまうことになる。その打撃は計り知れないだろう。

稲葉「ならばどうすれば良い!?・・・そうだ、ゲームマスターに連絡せよっ!奴らにターゲットの守護をせよと。命に代えてでも守りぬけと指令を出せっ!!」

ディーラー「それは無理です!?メインマスターである高山は、既に死亡しています。それにサブマスターは・・・!」

稲葉「くっ!そうか、ジョーカーか・・・。よりにもよって・・・!」

ジョーカーがいかに危険な人物か、稲葉もよく承知している。だがこの段階で使えるのはジョーカーしか居なかった。

稲葉「背に腹は変えられん。オペレーター!指令を出せ!・・・それとキミ!ダミー映像の作成を急げ!この際、限られた映像だけで構わん!」

オペレーター「ハッ!」

ディーラー「承知しました!」

稲葉「あとは・・・」

稲葉はディーラーの横に介入し、コンソーラーを操作する。

そして一つのリストを画面に呼び出す。そしてパネルを操作し、カーソルを合わせる。

稲葉「『コレ』を用意しろ!万一の場合の保険だ!」

それはPDA用のソフトの内の一つ。『進入禁止エリアへの進入を可能にする』ソフトであった。

これは特性上、ゲームの舞台である建物内に初期から設置されることはまずない。

これを手に入れてしまえば、首輪を解除出来なくて最上階の6階が進入禁止になっても生存出来ると、プレイヤーが思い込んでしまい、ゲームに対し熱が入らなくなる危険がある為である。

しかし実際は、バッテリーを大きく消耗するのでゲーム終了時間まで持ちこたえることは不可能なのだ。

だから、このソフトを設置する条件としては、1人のプレイヤーが首輪を外し、進入禁止となった下の階へと逃げ込んだ際、別のプレイヤーが追従出来る、といった限られた条件のみなのだ。

稲葉「これをジョーカーに渡して、ターゲットのPDAにインストールして使用させよ。そうすれば多少は時間が稼げる」

―――最悪、ラストゲームが終了した段階で幕引きをすれば、違和感なくターゲットを回収出来る。

仕上げはこれでなんとかなる。あと考えるべきはどうやってターゲットを傷付けずにゲームを終えるか、だ。

だが、その目論見は後に、ものの見事に打ち砕かれることになる。

ジョーカーは、自身そして組織さえも顧みない無謀者だという事を、目先の事に捕われているせいで、完全に失念してしまっていた。



・・・
・・・・・


総一「そんな、そんなっ・・・!?」

咲実から事の成り行きをすべて聞かされた総一達4人は、あまりの非情さに、心が押しつぶされそうになった。

優希「かりんお姉ちゃんっ、かれんお姉ちゃんっ・・・!!?」

まだ幼い優希は、あまりに衝撃的な告白を聞きいたせいで、顔が青白くなり、支えきれずにその場に崩れ落ちる。

咲実「お楽しみいただけましたか?」

そんな総一達の心情を完全に無視し、咲実は毛布を捨てて立ち上がる。

その右手には、隠し持っていたもう一丁の銃が握られていた。

桜姫「どうして!?どうしてそんな事が出来るの!!?」

甲高い声で、桜姫は激しく非難する。

咲実「さあ?なんででしょうね?私にもわかりません」

これは実は偽りではなかった。人としての心が壊れて長い月日が経っている咲実には、自分の感情が欠落していた。

その為、自分が嬉しいのか悲しいのかさえも判らなかった。

咲実「それじゃあ、ラストゲームを始めましょうか?」

宣言通り、咲実は銃を構える。狙っているのは総一だった。

渚「―ッ!?」

素早く反応し、反撃しようと持っていた銃を構えたのは渚だった。しかし、咲実はその動きを読んでいたかのように、毛布に隠れていた左手から、何かを投げ込む。

―――あれは、首輪!?そういえば、咲実さんの首にあるはずの、首輪がない!

カラン!カラン!

円状のそれは、床を転がって渚の足に当たる。

『あなたは首輪の解除条件を満たすことが出来ませんでした』

首輪から発せられる警告の音声。渚はそれを以前に聞いていた。

その時の記憶が瞬時に蘇る。葉月さんの首輪が作動し、15秒後にワイヤーが飛び出して。

渚「よ、避けてっ!!!」

渚は足を蹴って後ろにジャンプする。そのすぐ後に、壁から出てきたワイヤーが飛び出し、渚が元居た場所に突き刺さる。

咲実「さすがね。でも・・・」

咲実の銃の狙いを瞬時に動かして、渚に照準を合わせる。

ガァン!!

避ける事に集中していた渚は、それに対応出来ない。

渚「ぐぅっ!!?」

渚が慌てて狙いをつける前に、銃を持つ右手を貫く。弾が貫通した衝撃で、銃が吹き飛ばされる。

真奈美「な、渚ぁぁっ!?」

真奈美の叫び声に誘われるかのように、咲実の銃が火を噴く。

ガァン!!ガァン!!

真奈美「きゃっ!!?」

総一「ぐわぁっ!!?」

銃撃は、銃を吊り下げている真奈美の腰に、そして銃を取り出そうとした総一の右肩にそれぞれ命中した。

桜姫「総一っっ!?」

桜姫はとっさに、持っていた手斧を咲実に投げつける。

ガキィン!!

しかし、再び撃った咲実の銃撃が、空中に舞うそれに当たり、弾き飛ばされてしまう。

優希「真奈美お姉ちゃん!!総一お兄ちゃん!!?」

3人が床に倒れ、残っているのは桜姫、優希の2人だけだった。

―――な、なんて速さなのっ・・・。

この時桜姫は、自分の判断の甘さを痛感していた。

1人の咲実に対し、こちらは5人。増して咲実は怪我を負っている。

だから、あきらめて投降するのでは、と考えていたのだ。

だが一瞬にして、今度はこちらが追い詰められていた。このままでは全滅してしまうだろう。

優希「もうやめてよ!!こんな酷い事!!」

優希は皆を庇うかのごとく一歩前に出る。

桜姫「だ、ダメ!優希ちゃん!?」

桜姫の制止も聞かず、ただやめてほしいという、その願いのまま、咲実に訴えかける。

咲実「あ、そうだ!いいコト教えてあげよっか?」

その訴えはまるで届かず、咲実は満面の笑みを浮かべてそう問いかける。

優希の返事を待たずして、咲実は話し出す。

咲実「このゲームの主催者って、一体誰だと思う?」

優希「?!」

まるで見当違いの咲実の切り返しに、優希の言葉が詰まる。

咲実「実はね。なんとあなたのお父さんだったりするのよねぇ〜」

優希「・・・え?」

思わぬ言葉に、優希は目をパチクリさせる。その反応に満足したのか、咲実の口元が歪む。

優希「そ、それって一体・・・?」

咲実「だ・か・ら、あなたのお父さんはこの人殺しゲームを経営する人なの。もろろんここで人が殺される事も承知の上。だから、そうね・・・」

咲実はあえて優希が一番追い詰められる言い方をした。

咲実「かりんちゃんや、かれんちゃんを殺そうと最初に考えたのは、あなたのお父さん、って事かな?」

直接手を下したのは他ならぬ咲実だ。しかし、そのきっかけを作ったのは『組織』であり、その元締めである優希の父親が、きっかけそのものと言っても良い。

優希「そ、そんなの嘘っっ!?」

咲実「嘘じゃないわよ。なんならあなたのお父さんに直接聞いてみればいいわ」

そして咲実は銃口を桜姫に向ける。

桜姫「あなたは・・・あなた自身は一体どうして・・・?」

桜姫はそう問いかける。

咲実「前に言わなかったかしら?私の父親が事業に失敗して、家族がバラバラになったって。そこを付け込まれたのよ。『組織』にね・・・」

桜姫「事業?それって・・・まさか、姫萩事業所?」

その発言に、咲実がピクリと反応する。

総一「な、何か知ってるのか、優希?」

なんとか立ち上がった総一は、2人のやり取りに対し、そう問いかける。

どうやら全員の怪我は致命傷ではなく、渚と真奈美もそれぞれ立ち上がっていた。

その事に密かに安堵した桜姫だったが、やがてポツリと語りだした。

桜姫「ええ。私の記憶が正しければ、咲実さんの事業を潰したのは・・・私のお父さんよ」

総一「な、なんだって!?」

桜姫「私のお父さん。仕事一筋の人だったけど、外では鬼だ悪魔だって呼ばれているくらいヒドイ事を繰り返してきたの」

数々の他の事業を乗っ取り、その規模を大きくしていったものの、多方面から恨みを買うことになった。

又、事業を乗っ取られた人たちは、自殺に追い込まれたり、家族がバラバラになったりした。咲実もその内の1人だったのだろう。

桜姫「私は何度もやめてってお父さんに訴えかけたけど、止められなかった。・・・そして私が中学生の時にお父さんが亡くなったの」

結局、父親の悪行を最後まで止めることは叶わなかった。その時はまだ力無き桜姫にとっては仕方ないとはいえ、彼女はそれを言い訳にしたくなかったのだろう。

桜姫「だから、せめてもの罪滅ぼしに、ボランティアを始めることにしたの・・・」

父が亡くなり、残された遺品を片付けていた際、偶然乗っ取られた事業に関する資料を発見した。その時に姫萩事業所の名前を目撃していたのだ。

それを片手に、娘である自分が罪を償おうと・・・。

総一「そうか、だから・・・」

総一さえも知らなかった桜姫の家庭事情。それは桜姫がずっと1人で抱えてきたことなのだろう。しかしそれで合点がいった。

桜姫の必要以上に正義感が強いのも、その反動だろう。けれど父親のズルを止める事が適わなかった。その事を悔い、桜姫はすべてを背負い込んだのだ。

咲実「ふふっ、あっはっはっはっは!!?」

突如、咲実は狂ったかのように笑い出す。

咲実「そっか、あなたが!ディーラーもこの事を知ってたのね。ゲームを盛り上げるには最高の組み合わせだわっ!」

その様はその場に居る他の5人を唖然とさせた。すると咲実はとたんに笑うのを止め、桜姫に向き直る。

咲実「じゃあ、私が更に盛大に盛り上げてあげるわっ!!」

銃の照準を桜姫に合わせ、そして引き金を引く。

咲実は自覚していなかった。長い間心の奥底に沈んでいた憎しみや絶望感が、今噴出している事に。

その証拠に、目は鋭く桜姫を射抜いていた。

桜姫「くっ!」

咲実を不幸にしたきっかけを作ったのは、私の父親。その変わり様のない事実が、桜姫を縛りつけ、自らの行動を遅らせる結果となった。

咲実「引導を渡してあげる。あなたのお父さんにね!!」

ガァン!!

ザシュッ!!

銃弾は放たれ、身体に貫通した。しかしそれは桜姫に対してではない。

桜姫「優希ちゃん・・・?」

そう、桜姫を庇った優希の身体に、弾が当たったのだ。

優希「お・・・お姉・・・ちゃん・・・」

そう呟き、優希は庇った勢いのまま、床に崩れ落ちる。

桜姫「優希ちゃん!!!」

総一「ぐ!!うおぉぉっ!!」

総一は傷む右肩を必死に堪え、2人の優希の前に立ちはだかる。

咲実「お互いを庇いあうのね。でもそんなの無駄な足掻き。結局は力のある者が勝ってしまうのだから・・・!」

かつての私もそうだった。そう言いたげにしながら、咲実は総一に銃口を向ける。

桜姫は銃を持っておらず、優希や渚達は銃を落としている。彼女達にはなすすべがなかった。

総一は優希達を守る!その一心で、銃弾が当たってでも咲実を止める覚悟を決め、咲実に突進していった。

ガァン!!

咲実の銃撃は、総一の脇腹を貫通した。

総一「ぐわぁぁぁぁっ!!」

悲鳴を挙げても、突進するのを止めようとしない。咲実の指が2度3度と引き金を引こうと指に力を込める。

しかし、この時咲実は致命的なミスを犯していた。

自身に課せられたミッションの事を。

色条優希を無傷で捕獲、もしくは守護をする様にと。

その優希は今・・・?

ガガガガガガッ!!!

部屋中に響く、連射式の銃声。それは壁から突如現れた機関銃が撃った音だった。

咲実「!?」

そしてその弾は、咲実の身体に瞬時に突き刺さっていく。

ザシュザシュザシュッ!!

咲実「くそぉっ!くそっ、くそぉぉぉっ!!?私を見捨てるつもりかぁぁっ!!?」

悲鳴を挙げることはなかった。代わりに憎しみの篭った言葉が口から次々と吐き出される。

咲実「がふぅっ!!?」

血が全身から噴出し、言葉を発することが出来なくなっても、その口の動きを止めようとしなかった。

―――両親に見捨てられ、親族にも見捨てられ、ディーラー達にも見捨てられ、一体私は何!?何なのよっ!!?

命を引き裂かれ、絶命するその瞬間まで、彼女はすべてを呪うのをやめようとしなかった。

総一「のわぁっ!!?」

突進していた総一は、驚きのあまり足のバランスを崩して床に倒れこむ。

そのおかげか、機関銃の連射に巻き込まれずに済んだ。

桜姫「・・・!!そ、総一!!」

桜姫が叫ぶが、その声も連射する射撃の音にかき消される。

誰も何も発しなかった。あまりに予想外の出来事に、自分がどうすべきか、その考えに至らなかったのだ。

そして長い銃撃が止み、開放された咲実の身体は、床に崩れ落ちていく。

グシャッ!!

床にぶつかった時の音は、まるで水溜りに落ちたかのような独特の音だった。

総一「・・・・・」

桜姫「・・・・・」

こうして咲実は、皮肉にもディーラーの横槍によって、あっけなくその生涯を閉じたのであった。



・・・
・・・・・


咲実の壮絶な最後を見せ付けられた総一達5人。その影響で暫くの間微動だにすることが出来なかった。

だが深手を負った総一がその場に崩れ落ちた事により、我に返った桜姫は、ひとまず手当てをする事にした。

本来ならば、どこかベッドがある部屋まで移動したかったが、総一の身体への影響を考慮して、通路に出るのが精一杯だった。

総一「ぐぅっ・・・、す、すまない、優希」

総一はそう返答するものの、内臓に傷を負ったのか、意識は朦朧としている。

桜姫「いいのよ、・・・痛かったら言ってね」

そう言いながらガーゼを傷口に当てていく。

先ほどの戦いで怪我を負っていないのは桜姫1人だけだった。渚の怪我は軽傷だったものの、真奈美と総一は独力では動くことが出来ない状態だった。

優希「・・・・・」

優希も、怪我はさほどではないものの、精神的に負ったショックは相当なものだった。

父親がこのゲームの主催者だった。恐らくあれはハッタリではなく、本当の事だろう。少なくとも優希はそう思っていた。

幼い割に洞察力の鋭い優希は、あの時の咲実の目を見て本能的に真実である事を見抜いていたのだ。

そして、それがかりん達を死に至らしめる結果を生んでしまった・・・。

その事が、優希の心を苛んでいた。

桜姫「優希ちゃん・・・」

手当てをしながら、優希の様子をチラリと見る桜姫。彼女は優希の気持ちが痛いほど分かっていた。

彼女自身も又、父親の暴挙によって多くの人が悲しみ、死んでいった人も居た。状況こそ違えど、受けた悲しみ、やるせなさは共に深いものだった。

そして、自分があまりにも無力だという事も、知っていた。

励ましても、それが気休めにさえならない事も・・・。



・・・
・・・・・


渚、真奈美、そして総一の手当てが済んだ5人は、ひとまず6階へと上ることにした。

つい先ほど4階が進入禁止になった所だ。2階からずっと9時間おきに進入禁止エリアが上っていった為、総一達が居る5階も恐らくは9時間後なのだろう。

とはいえ、このゲームの意地の悪さを考えると、それも確定的とは言えない。だから急ぐことにしたのだ。

総一は傷の痛みの影響か、いつの間にか意識を失ってしまっていた。だから比較的軽傷の渚と桜姫で総一を、優希は真奈美が、それぞれ担いで6階の階段近くの部屋まで連れて行った。

その間、誰も何も発しなかった。かつての仲間だった咲実が、実は殺人鬼だった事。それは5人の間に暗い影を差し続けていた。

真奈美「あ、渚!桜姫さん!総一さんが目を覚ましましたよ!」

たまたま総一の様子を見に来た真奈美が、向こうの方で調べ物をしている桜姫と渚に向かってそう呼びかけた。

桜姫「えっ?あ、うん!」

動かしていた手を止めて、総一に駆け寄る。

総一「ゆ・・・う・・き・・」

桜姫「うん、私よ。・・・大丈夫?」

総一は桜姫の問いかけには答えず、ポツリと独り言のように話し出した。

総一「・・・夢を見たんだ」

桜姫「夢?」

総一「咲実さんの、夢・・・?」

桜姫「?どういう事??」

訝しげに首を捻る桜姫。そんな総一の様子が気になったのか、渚と真奈美もそっとこちらに向かってきた。

総一「夢の中の咲実さん、悲しんでた・・・」



・・・
・・・・・

咲実との決着は、優希が自らの身を盾にした事で、決着がついたのでありました。しかし、総一達が負った心と身体の傷も、深いものでした。

次回は第16話[決意を胸に]総一が見た咲実の夢とは、咲実が初めてこのゲームに参加した時の事。彼女をあそこまで変えてしまった体験とは一体・・・?

そして、みんなで生き残る為に、そして悪夢を終わらせる為に、総一達の最後の戦いが始まるのでした。乞うご期待♪

コメント(9)

なるみさん、うpおつですー。

この流れが来ましたかー、ってことはエピソード7でラストになるのでしょうか?
ともあれ、次回の話はExゲーム・・・ってこれ前も言ってますねw

次回こそは!Exゲーム発動ですね!!w
おつです♪

咲実さんがいなくなってしまって、これからどうなるんだろうって感じですあせあせ(飛び散る汗)

5人そろって生き残る・・・のかなぁ・・・。
今週も楽しく拝見させてもらいました手(パー)それにしても桜姫のお父さんが関係してくるとは…でも、これなら桜姫の異常なまでの正義感にも納得ですねぴかぴか(新しい)



さてさて、来週からはEXゲームでしょうか?このままじゃ運営側も終わらせられないでしょうしあせあせ(飛び散る汗)
とらぞうさん、こんばんわ♪

ええ、予定ではエピソード『7』が最終です。この後は『おまけ』エピソードが続きますけれども。

実は最後の予告に書かれている【最後の戦い】とは、エクストラゲームを指すのではありません。これはエンディングにて明らかになります♪

やすのすけさん、おはようございます♪

本編のエピソード『4』と違う点は、まず敵対するプレイヤーが存在しない事。それと桜姫さん以外負傷している点を考慮して、強引なエクストラゲームは不要、と運営側が判断しちゃってたりしてます(汗)

これから、5人分の首輪を外すという流れになります。すると問題となってくるのは、PDAのJOKERの行方はどこか?ということになっていきますが・・・。

もりへいさん、こんにちわぁ〜ですっ♪

桜姫さんと咲実さんは、実はコインの裏表の様な関係だったのです。

あ、ちなみにこのゲームを見ている観客達には、一部ダミー映像が流れています。土壇場でのディーラーの介入を隠蔽され、咲実は総一、そして桜姫ともみ合っている内に、銃で撃たれた、という事実とは異なる映像が・・・。

今頃観客席では「ジョーカー、総一&桜姫ペアに敗れる!」と盛り上がりは最高潮に達しています、はい。



優希(大)は結構お嬢様!?
総一逆玉だ逆玉(うぉい

それは置いといて
JOKERが無いと総一と優希(大)は助からない
渚さんは首輪5つ作動。葉月と投げた首輪でまだ2回の起動(しか知らないはず)

この3人が助からないと、優希(小)の首輪3つも難しいし、どうなるんでしょうねぇ
優希(小)はディーラーの横槍が来る・・・としても将来が可愛そう;;
なるみさん、どうもです〜♪

大活躍を期待していた咲実さんタイムは、わずか1話で終了となってしまいましたけれども(泣)
これで敵対するプレイヤーは居なくなりましたね。真奈美さんは時間で外れるとして、JOKER次第になりますね。優希(投げた首輪+総一くん&桜姫さんが外した首輪)、渚さん(葉月さん+投げた首輪は作動済みで、あとは総一くん&桜姫さん&優希の外した首輪を作動させる)
JOKERが見つかれば意外と簡単かも?そんなに上手くいかないとは思いますけど(苦笑)
荒井熊さん、こんにちわっ♪

はい♪桜姫優希さんは、結構お嬢様だったりします♪とは言っても、それ目当てで総一が近付いた場合、見抜かれた挙句、キツい説教を喰らうハメになると思います(汗)

首輪を外す上で一番問題なのは、進入禁止エリアの時間が迫っていることです。それが勝負の大きな分かれ目になるでしょう。

レッドさん、こんばんわ〜です♪

咲実さんが暴走し、ものの見事に命を散らす結果となりました。本当はもう少し色々な展開を、とも考えましたが(実は渚さんと真奈美さんがダクトに隠れていて、奇襲を仕掛ける等)イマイチしっくりこなかったもので・・・。これが桜姫さんじゃなくて、手塚くんならやりそうですけど。

やはり鍵となるのはJOKERです。実は咲実さんもジョーカーと呼ばれていたので、咲実さんを総一が破壊(殺害)すると、首輪が外れる、なんて発想も出ましたが、没になりました(汗)
>なるみさん
>桜姫優希さんは、結構お嬢様だったりします♪
あ、でも優希(小)のがもっとお嬢様だぞ総一w
>荒井熊さん

両手に華ですか、やりますねぇ総一くん(笑)

とはいえ小さい方の優希ちゃんも、あれでなかなか洞察力の鋭い娘ですからねぇ。自分ではなく、財力や権力ばかり見ていると、嫌われちゃうかも??

そうでなかったとしても、2人の優希に尻に敷かれる総一くんの様が、容易に想像出来ますね♪

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