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シークレットゲームコミュのシークレットゲーム 〜エピソード7〜 第8話[突きつけられた現実]

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第8話[突きつけられた現実]                              〈作・桐島成実〉
〈現在の状態〉

[グループA]    PDA      状態    総一との関係
 御剣 総一     (2)        健康      
 桜姫 優希     (6)       健康      愛情
 北条 かりん    (?)       健康       良好
 北条 かれん    (Q)       健康      良好
 色条 優希     (4)      健康      普通
 姫萩 咲実     (?)      健康      普通

[グループB]
 矢幡 麗佳     (7)      健康     知らない
 葉月 克己     (K)    背中を切傷   知らない
 高山 浩太     (?)      健康     知らない
 綺堂 渚      (?)      健康     知らない

 手塚 義光     (?)      健康     知らない

 長沢 勇治     (9)       死亡      普通

総一以下6人は、ひとまず2階への階段へと足を運んでいた。

総一が先行して階段を上ったものの、結局誰とも遭遇する事なく、2階へと進むことが出来ていた。

今目指しているのは3階への階段である。

その間、結局かりんと咲実の解除条件を聞くことが出来なかったが、当人達が上の階に進むことに異議がなかった為、ひとまずその方針に落ち着いた。

総一「エレベーターが使えないってのはやっぱりキツイな」

桜姫「うん。でもしょうがないよ」

咲実達の証言から、エレベーターを使って6階へと進んだとしても、地図上にはないシャッターで道を塞がれている事はわかっている。

とすれば、他の階でも同様になっている可能性は十分にあった。

それにもしそんな状況で敵に襲われでもしたら、今度こそ命はないかもしれない。

咲実「でも、階段でも同じ待ち伏せがあったりしないのでしょうか・・・?」

咲実は不安そうな表情で、身体をブルッと震わせる。一度襲われた身だから当然ではある。

総一「だからと言って、このままじっとしているわけにもいかない。警戒だけは怠らないようにしないと」

総一はそう言って右手に持っているスタンガンを強く握り締める。

総一たちは階段へと行く途中、いくつかの部屋を調べていた。

最初の部屋で見つけたのは、総一の持つスタンガン。

護身用にと手に取った総一だったが、その次の部屋に入った時には心底驚かされた。

なにせ斧だの棍棒たの、果ては大きな鉈まで部屋中に置かれていたからだ。他にも、かつて総一が使っていたツルハシと同じ物が数本置かれてあった。

あの時は何気なしに手に取った総一ではあったが、さすがにその異様な情景を前にしては、それすら手に取ろうという発想は出てこなかった。

結局武器らしい武器を持っているのは総一のスタンガンと桜姫の小サイズの手斧。それとかりんの小型の果物ナイフだけだった。

咲実は武器を持つこと自体に抵抗があるらしく、結局何も持たなかった。

幼い優希とかれんには武器は持たせられないと、大きい方の優希とかりんがそれぞれ反対した。

かりん「こんなの、使わなきゃいけないなんて・・・」

かりんはここに来る前にも果物ナイフを使ったことはある。もちろんそれは人に対してではなく、ずっと病院暮らしであるかれんに対して、りんごやその他の果物を切って食べさせてあげる為に使ったいた。

だからだろうか。かろうじて果物ナイフに対しては抵抗が少なかったのだろう。

総一「・・・そろそろ3階の階段に着くぞ」

その一言で、場の空気が張り詰める。そしてそれを暗示するかのごとく、その先に異変が起こっていることに気がついた。

かりん「明かりが、消えてる・・・」

階段が見えてくるはずの通路の先は、明かりといえる明かりがまるでなく、薄暗い情景を醸し出していた。

優希「あ、ホラ見て!けいこうとーが割れてる」

背の低い優希は、首を大きくもたげて天井を見上げる。そこには蛍光灯の白いガラスが、金具の先端にかすかに残っているのがうっすらと見える。

明かりがあるはずが無い、いや、無くされていると言う事は・・・?

桜姫「誰かが割った、と見るべきかな?」

総一「恐らくは。けど、このまま立ち往生しているわけにもいかないだろ?俺が先に行って、誰か居ないかどうか確かめる」

桜姫「え、でも!」

総一の提案に、思わず止めようとする桜姫だったが、総一はポンと桜姫の肩に手を添えた。

総一「危なくなったらすぐ引き返すから大丈夫だって」

桜姫「総一は楽観的すぎるのよ。どんな危険が潜んでいるか・・・」

不安そうな表情を浮かべる桜姫だったが、総一はニッコリと笑って余裕を見せる。

総一「なに、こう見えて逃げ足だけは速いからな。知ってるだろ?」

桜姫「も、もうっ」

桜姫の心配をよそに、総一は先行して階段前のホールを調べる。

桜姫「気をつけてね・・・」

ポツリとそう漏らす桜姫。ここは総一を信じることにしたようだ。

ホールといっても1階での階段と違い、他の通路とほとんど変わらないほどの広さだった。どうやら階ごとに所々構造が違うようだ。

総一「誰もいないか、・・・ん?」

ホールの端の方にポツンと置かれたドラム缶が目に入った。

総一「これは・・・、中身は、カラか」

軽く両手で押してみると、意外なほどあっさりと傾いた。どうやら中身は全くといっていいほど入っていないようだった。

総一「なんでこんなものが・・・?」

疑問に思う総一ではあったが、さしあたっての危険はないと判断した総一は、後ろを向いて手招きする。

他の皆がぞろぞろと出てくるのを確認した後、総一は先行して階段を上りだす。

階段の部分も明かりは無くされていた。見落としがないように慎重に慎重に、一歩ずつ階段を上っていく。そして半分ほど上ったところで、その存在に気づいた。

階段の上に見える、通路の真横から突如現れた巨大な物体。それは暗がりでよく見えなかったが、先ほど総一が目撃したドラム缶と同様の物に思えた。

それはまるで意思が働いているかのごとく通路を転がり、そして階段の方に・・・!

総一「に、逃げろっっ!!」

総一の叫び声と共に、それは急斜面といえる階段へと落下してきた。

ガランガランガラン!!

総一「うわっと!」

総一はとっさにその場にしゃがんだ。というより、下りようとして足を滑らせ、そのまま段の上に身体を激突させた。

その上をドラム缶が勢いよく通り過ぎていく。

桜姫「危ないっ!?」

階段を上り始めようとした桜姫は、そのすぐ隣に居る優希を庇って共に地面に身を伏せる。

優希「きゃあっ!」

更に勢いづいたドラム缶は強く跳ね上がり、そのまま桜姫達のはるか上を通り過ぎる。

かりん「うわわっ!?」

他の3人はまだ階段を上っていなかった為、横に避けてなんとか難を逃れた。

総一「ひぇぇ」

段に身体をぶつけた痛みと、ドラム缶が通り過ぎる瞬間の恐怖に、思わずか細い悲鳴を挙げる総一だったが、階段の上に人が居る事に気がついて、とっさに顔をもたげる。

手塚「やれやれ、まるで成果がなかったか。運のいいヤツラだぜ」

総一「なっっ!?」

暗闇に慣れてきた総一の目に映ったのは、チンピラ風の男の姿だった。

その男は、かつて咲実から聞いていた人物像にこれ以上ないほど合致していた。

そいつがドラム缶を使って奇襲をかけてきたのだろう。

桜姫「総一っっ!!」

総一より先に体勢を立て直した桜姫は、手塚の仕業を知るやいなや、手元に持っていた手斧を構え、そのまま投げつけた。

ビュン!

それは扇状の線を画き、そのまま手塚の元へと向かった。

手塚「よっと」

対する手塚も軽い身のこなしでそれをあっさりと避ける。

しかしながら、その表情は意外そうな顔をしていた。

手塚「この男以外は女子供だと鷹を括っていたが。なかなかやるな、あの女」

自身の不利を察知し、さっさとその場を後にする。

桜姫「待ちなさいっ!」

手塚「機会があればまた会おうぜ!」

そういい残し、その男は姿を消した。

その事を確認した総一はようやく起き上がり、桜姫達の無事を確認する。

総一「大丈夫か!?」

総一は階段を下りて桜姫達の元へと駆け寄る。

桜姫「う、うん、大丈夫。総一も怪我はないみたいね」

誰も怪我がない事を確認した2人はホッとため息をつく。

優希「あいたたた・・・」

頭をさすりながら、優希もようやく起き上がる。

総一「大丈夫か?優希」

ちゃん付けする事をすっかり忘れ、そのまま手を差し伸べる。

優希「う〜、頭打ったぁ」

総一は優希の頭をさすりながら、他のメンバーに目配せする。

かりん達はその意味は悟ったらしく、コクリと頷いて階段を上っていったのだった。


・・・
・・・・・

一方その頃、2階の階段で待ち構えていたはずの麗佳達は、今3階の部屋の一室に陣取っていた。そこに敷かれた毛布の上に寝そべっている2人。

渚「真奈美・・・」

渚が寝そべっているその隣で毛布に包まっているのは、他ならぬ真奈美の姿。そう。渚は親友の真奈美と合流する事が出来たのだった。

真奈美「すぅすぅ」

当人は親友に会えた喜びと心労からか、今は深い眠りについていた。

―――無事でよかった。

それは渚の嘘偽りのない想いだった。

真奈美と合流した時、真奈美の泣き喚く様子が思い出された。

その時は渚自身も喜びのあまり涙したのだが、その時の話では真奈美は最初に目覚めてからしばらく一人で建物内をさまよっていたらしい。

すると2人組と遭遇し、その場に転がる男性の死体が目に入って、慌ててその場を逃げ出したとのこと。

その2人組とは、葉月と麗佳の事である。

そして彼方此方している内に2階の階段へ、という流れであった。

真奈美「うぅ・・・」

うなされているのだろうか?軽く唸る声を挙げる。

渚「真奈美・・・」

部屋の外の見張りは高山達3人が行ってくれている。気を利かせて、親友である2人を一緒に休ませることにしたのだ。

本来ならば渚も休むべきなのだろうが、真奈美の事がどうしても気にかかって、眠りにつけないのであった。

渚「真奈美、一緒にこのふざけたゲームから抜け出そうね」

それは渚の密かな願いであった。


・・・
・・・・・

高山「すると、24時間行動を共にした人物の生存。それが君の解除条件ということになるわけだな」

休息を十分にとり、再び行動を開始する前の話し合いで、高山はこう切り返した。

真奈美「は、はいっ」

対する真奈美は、緊張しきった面持ちで自身のPDAの画面を前に出す。

そこにはダイヤの柄と共に、『J』の文字が刻み込まれていた。

渚「大丈夫よ、真奈美。この人たちは貴方を探すために協力してくれたんだから」

渚は努めて明るくそう振舞った。少しでも緊張を和らげようとする渚の心遣いなのだろう。

真奈美「う、うん、分かってるんだけどぉ・・・」

頭では分かってはいるものの、感情がついてこない。だからつい尻込みしてしまうという真奈美の心情は、渚にも十分分かっていた。

以前は互いにPDAの解除条件を明かすことを躊躇ったものの、やはりそれでは方針を立てられないとの事で、結局明かすことにしたのだ。

高山「条件が相対する可能性は十分にあるが、このまま内密にしておいてもラチがあかん。・・・やむを得ないだろう」

高山はしぶしぶと言った感じだったが、なんとか同意してくれた。少なくとも、葉月・麗佳コンビと渚・真奈美コンビに関しては、たとえ条件が相対してもすぐに決裂となる危険は少ないだろう、との葉月の目測だった。

高山「俺のPDAは『5』だ。首輪を解除する為には指定されたポイント24箇所をすべて回らなくてはならん」

葉月「え!?とすると・・・」

葉月は言葉を続けようとするが、高山が先にその問いに答えた。

高山「問題ない。1階と2階のチェックポイントは既に通過している」

麗佳「そ、そうなのですか。・・・いつの間に」

驚く葉月をよそに、高山は涼しい顔だ。

高山「簡単なことだ。4人になってから先頭を歩いていたのは俺だ。そうすれば余程目的地から外れでもしない限り、誘導する事は容易だ」

至極あっさりとそう答える高山に対し、他の人たちは唖然とする。言われてみれば2度ほど行き止まりに差し掛かって引き返した、なんていう出来事があったことを思い出した。

葉月「ま、まあ、問題はないし、いいじゃないか」

葉月はそう言うものの、抜け目ない高山の行動に、味方である筈なのについ警戒してしまう。

高山「それで、矢幡が『7』葉月が『K』。綺堂、お前は?」

渚「あ、はい。私のPDAはコレです」

渚は真奈美と同じくPDAを前に出す。そこに刻まれていた数字は『10』だった。

高山「『10』か」

渚「ええ。私の首輪を解除する為には5つの首輪を作動させる必要があります」

高山「なるほどな。ふむ・・・」

高山は頷きつつ、一本の煙草を取り出してライターで火をつける。

麗佳「話を総合すると・・・、まず私の首輪を外す為に他の参加者に遭遇して」

高山「それと平行して俺の首輪、すなわち24箇所のチェックポイントをすべて通過する」

葉月「そして真奈美くんが2日と23時間後に首輪が外れるだろうから、これで3人」

しかし、歯切れのよい言葉の羅列も、ここでプッツリと途絶えてしまう。

麗佳「問題は葉月さんの『K』と渚さんの『10』ね・・・」

そうなのだ。

まず葉月に関しては、この時点で使えるPDAは3台。渚のPDAを借りても4台。どうしてもあと1台足りないのである。

仮にこれをクリアして葉月の首輪を外す事が出来れば、外れた首輪は計4つ。

ただし、真奈美の首輪は2日と23時間が経過しないと外れない。
つまり渚の首輪の解除に使用できるのは3つ。残り2つをどうにかして作動させなくてはならない。

すなわち最低でもあと2人のプレイヤーの助力が必要になるわけなのだ。

煙草をふかしたまま、変わらぬ表情で高山が提案する。

高山「ふむ・・・。矢幡の首輪の解除条件は他のプレイヤーとの遭遇だ。その際に誰かに協力を求める。しかないだろうな」

誰かを襲って強制的に首輪を作動させる。という台詞が出かかった高山だったが、それは引っ込めておいた。

麗佳「そうですね・・・」

ともあれ、あらかた方針は決まった。高山のチェックポイントの件もある為、あまり悠長にはしていられない。

高山「さて、行くとするか」

そう言って高山は、吸っていた煙草を地面に落としたのであった。


・・・
・・・・・

手塚「ったく。失敗したぜぇ・・・」

通路の角に身を潜める手塚は、自身のしでかした失敗に思わず舌打ちする。

手塚が角から様子を伺う先には、数人の人影。その先頭に立つ人物は、今までに見た連中とは大きく異なっていた。

高山「観念したらどうだ。青年」

対する高山も、静かな威圧を放っていた。

麗佳「あ、あの・・・」

おずおずと後ろから声を掛けようとする麗佳だったが、高山がそれを後ろ手で制す。

高山「・・・あの男は只者ではない。油断していると付け込まれるだろう」

低く鋭い声に、麗佳もそれ以上声が出ない。それを確認した高山は、再び前方に集中する。

高山「わかっているハズだろう?その先は行き止まりだということを」

高山の言うとおりである。この2人が出会ったのはほんの偶然に過ぎなかった。

手塚が部屋から出ようとドアを開いた所、そのドアに隠れる形で高山達が通路を歩いてきたのだ。

とっさに手塚は対抗しようとしたのだが、高山の風貌と片手に持っている上物の日本刀を目撃し、只者ではないと瞬時に悟り、その場を逃げ出した、まではよかったのだが。

急な展開に、逃げ出した後の事まではさしもの手塚でも考えきれなかった。

挙句、自ら袋小路に飛び込む失態をしたのであった。

手塚「厄介なことになりやがったなぁ・・・」

余裕ぶっているものの、簡単には逃がしてくれない事はよく理解していた。

高山「安心しろ。何もお前の命を奪おうというわけではない。・・・ただPDAを一時期貸してくれるだけでいい」

葉月「高山さん・・・」

それは純粋に葉月の為の行為であった。

麗佳の解除条件である全員との遭遇は、厳密に言えば自身より半径1メートル以内にその人物が介入する事である。

しかし幸運なことに、手塚と高山が鉢合わせになった際に、その条件は満たされていた。

あとはPDAを1つ拝借して、葉月の首輪を外せば、今後の展開がずっと楽なものになるはずだ。

手塚「それを信用しろってか?PDAを明け渡した瞬間にその日本刀でバッサリやられちゃ、たまんねぇぜ!」

高山「信用するか否かはお前しだいだ。このまま交渉決裂となるよりかは、幾分かお前に利がある様に思えるが?」

そう言い合いながら、2人は一歩も動こうとしない。

手塚「それはどうだかな?」

手塚はあっさり受け流そうとするが、高山には通じない。

高山「隙を突いて攻撃しようとしても無駄だ。仮にそうなったとしても、俺を相手にしている内はお前が他の連中に隙を見せることになる」

そう切り替えされた手塚は、眉間にしわを寄せた。

手塚「・・・よくわかってらっしゃること。やっぱアンタは只モンじゃねえな」

観念したのか、手塚は角から身を乗り出す形で両手を挙げる。

高山「賢明な判断だ」

そう言いつつも、高山は構えを解こうとしない。

手塚「・・・やれやれ、ホント抜け目ないな」

言葉通りやれやれと言わんばかりの面持ちで、両手を振りかざして降参の意を示す。

手塚「で?あんたらにPDAを渡して俺に何の得があるってんだ?」

強引に交渉の場に引き出した高山は、やはり無表情のまま返答を返す。

高山「お前がPDAを貸してもらえば、こちらのメンバーの一人が首輪を外せる。その者のPDAをお前に渡そう。・・・構わんな?」

最後の確認の意は、手塚に対してでなく、葉月に対してのものだ。

葉月「ああ、こちらは問題ない」

葉月は頷くと、自身のPDAを取り出した。

手塚は暫く考えるそぶりを見せていたが、

手塚「わぁったよ。・・・幸い俺はPDAを2つ持っている。その内の俺自身のPDAじゃない方を貸してやる」

手塚はそう言い、一つのPDAを取り出して、通路の角から見える位置に置いた。

手塚「俺は少し奥の方でお前らがトンズラこかねえか見張ってるぜ。・・・もしそのPDAを持ち逃げした時にゃ、俺は死に物狂いでそれを取り返すぜ」

手塚のその言い分は恐らく真実だろう。なぜなら、交渉を破談する連中相手に、何を言ってもムダだから。そして袋小路に陥っている以上、戦わなければ逃げられない。例え不利な状況でも、手塚にはそうせざるを得ないのだ。

高山「・・・いいだろう。俺がとりに行く」

高山は至極当たり前の様に言うのだが、さすがに危険だと思ったのか、葉月がそれを止める。

葉月「待ってくれ!気持ちはありがたいのだが、高山さんにそこまではさせられない。これは僕の問題だから、ここは僕に行かせてもらえないだろうか?」

麗佳「葉月さんっ!?」

驚きの声を挙げる麗佳だったが、それは高山も同じ様だった。

高山「危険すぎるぞ。いいのか?」

葉月「構わない。それに、もしこの間に麗佳君達の後ろから誰かが奇襲を掛けないとも限らないから、高山さんはそちらの警戒を頼みたい」

麗佳「葉月さん!ダメですっ!それなら私がっ・・・!」

大声でまくし立てる麗佳に対し、葉月は優しく微笑んだ。

葉月「いいんだ。こういう時は大人である僕の役目だ。それに、君を危険に晒したら、君の両親になんと言えばいいのか」

麗佳「葉月さん・・・」

娘を持つ親、葉月さんにとっては、その気持ちというのは痛いほど分かるのだろう。それを知ってか、麗佳は何も言わなかった。

葉月は恐る恐る近づいて、そのPDAを手に取った。

どうやら手塚は手を出す気がないようで、何も仕掛けてはこなかった。

手に取ったPDAを、自身の首輪に差し込んだ。

軽い電子音が響き、PDAの端子を抜き取る。

葉月「・・・ふぅ〜」

無事に終えた事に、思わず安堵が浮かぶ。

手塚「んじゃあ、そのPDAを地面において、さっさと立ち去ってくれ」

葉月「わかった」

葉月はじわじわと後退し、高山たちの元へと戻っていった。

高山「ふむ」

高山は頷くと、自身のPDAを取り出して葉月の首輪に差し込む。

再び軽い電子音が通路に響いた。

葉月「ありがとう」

そしてそれに続いて渚、真奈美、そして麗佳のPDAを受け取り、自身の首輪に差し込む。

麗佳「葉月さん・・・」

葉月「すまないね。僕だけ先に首輪を外してしまって」

麗佳「いいんですよ」

葉月「娘を助けるのに、僕が死んでしまっては意味がないからね」

葉月の目にはいつしか涙が浮かんでいた。早く娘も解放してやりたい。その想いがあふれたのだ。

葉月「あとは、僕のPDAを差し込んで、これで首輪は外れるはずだ」

そしてPDAを首輪に差し込む。

葉月「よし!これで・・・」

軽い電子音と共に、けたたましいブザーが鳴り出す。

手塚「首輪は外れたか?ならさっさとPDAをこっちに渡して―」

遠くから大声で呼びかける手塚以上の声が、その場で沸き起こった。

『あなたは首輪の解除条件を満たすことが出来ませんでした。15秒後にペナルティが施行されます』

それは首輪の解除を知らせるものではなかった。

葉月「ば、バカな!!?な、なんで・・・!」

驚愕の声を挙げたのは葉月だけではない。その場に居合わせたすべての人が、驚きの表情と声を挙げた。

麗佳「ど・・・、どうして・・・?」

その疑問に答えるものはいない。葉月は顔面蒼白のまま、ただ立ち尽くしている。

その間にも、けたたましいブザーと合成音声は流れ続けている。

有り得ない展開に、頭が真っ白の葉月だったが、聞こえてきた合成音声
が、辛うじて葉月の思考を取り戻させた。

葉月「!い、いかんっ!?僕から離れるんだ!!」

麗佳「え・・・?」

だが誰も動こうとしない。やむを得ず葉月は手塚の居る方へと走り出す。

手塚「お、オイオイ、コラ!なんでこっちに来るんだよ!」

さしもの手塚も驚いたが、それと同時に事が起こってしまった。

シュッ

その時、通路の角から一本の針らしきものが飛んできた。それは誰も針だと認識できないまま、葉月の身体へと突き刺さる。

一瞬何が起こったかは、誰も理解できなかった。葉月自身さえも。

それに気づいたのは、葉月が苦しみの声を挙げてからだった。

葉月「うおぉっ!!ぐぉっ・・・」

麗佳「は、葉月さんっっ!!?」

とたんに身体が痙攣し、自由に動かすことが出来なくなってしまい、力なくその場に崩れ去る。

誰も知る由もないが、それは強力な毒が塗られた針だった。派手さはないものの、その毒が体内に入った瞬間、その呪縛に逃れることは叶わない。

あっという間だった。 呼吸することもかなわず、悲鳴を挙げることも許されず、苦悶の表情を浮かべた葉月は、そのまま動かなくなってしまった。

麗佳「あ・・・、あぁ・・・!!」

麗佳はその場に崩れ落ち、今起こった現実に、まるで金縛りにあったかのごとくピクリとも動かなくなってしまった。

その目に映るそれは、もう物言わぬ死体と化してしまったのだ。

葉月は二度と娘の顔を見ることなく、この世を去ったのだった。


・・・
・・・・・

コメント(11)

突然の葉月の死。それはこのゲームの本当の恐ろしさを知らしめる結果となってしまったのです。

次回は第9話[乖離]残された麗佳達は果たしてどうなるのか?そして葉月の死の真相は・・・?乞うご期待♪

追伸:10000文字以内に収まらなかったので、コメント欄にはみ出ちゃいました(汗)
葉月さんが死んだのってPDAの一つがジョーカーだったんですかねあせあせだとしたら、手塚パパやってくれる手(チョキ)



だけど、高山さん達から逃げ出せるのか?という心配がすごく残ってるけど手(パー)
やっぱりこんなに早い話数で解除はできないですかねー。あせあせ(飛び散る汗)


とりあえずこのメンバーがJOKERを持ってるみたいですね。


でも、一番疑われる立場の手塚がJOKERを渡すとは思えないけど。


長沢のメモでルールを把握しているわけだし。
もりへいさん、こんにちわっ♪

実は事が起こったその後の様子も第8話に含まれていたのですが、文字数が収まりきらずにはみ出ちゃったのです(汗)所々文章は削ったのですが・・・。

結局葉月さんはどのエピソードでも生き残ることは叶いませんでした。もしかすると、最も不幸な扱いを受けたプレイヤーと言えるのかも?

グライアイさん、どうもこんにちわ〜☆

おっしゃる通り、JOKERを使って葉月を騙した、というのが妥当な判断です。『誰が』というより、『なぜ』葉月さんを騙したのかと考えると、実は皆さん動機があったりするんですねぇ。麗佳さんとか渚さんとか。

犯人が判明するのは第10話ですね。いよいよここからが中盤戦。ゲームという名の牙が、いよいよ本格的に噛み付いてきます。
JOKERは誰が持っているのやら?
手塚の反応というか、この状況で渡したら自分が不利になるだろうから手塚出ないとすると、誰かが嘘をついているか、それとも参加者と見せかけた主催者側の人間がいるのか・・・考えれば考えるほど深みにはまっていってしまいますね。
一体JOKERの所有者は誰なのやら?
運営にしては珍しく即死のペナルティを・・・

※残念な報告ですが
 手塚「この男以外は女子供だと鷹を括っていたが。なかなかやるな、あの女」
 は”高を括る”が正しいのです
 昔戦国時代などの収入は石高(収入高)だったので、 それを括って(一纏め  にして)相手の戦力を知る→勝てる相手ならば相手を弱者と見る→現在の
 ような使い方になったのです
 細かい事ですみませぬ><・・・が後学のためってことでw
 
カンピオーネさん、こんばんわ♪

今の段階では誰が嘘をついているか、分からないように製作してます。分かってしまったら今後の展開が面白くないと思ったもので^^

裏切り者が仲間内に潜んでいると分かった以上、この後に待ち構えるのは悲劇の連続。誰が味方で誰が敵か。それが判別出来ないのがこのゲームの特性ですねっ♪

荒井熊さん、夜分遅くこんばんわ♪

ペナルティの内容はいくつか考案していたのです。小型レーザーで首を焼き切ったり、毒か密閉空間とかで呼吸が出来ずに窒息死するとか、PC版「キラークィーン」と同様で首輪が爆発するとか。

ですけれど、今回はペナルティはあまり重要でないのでオーソドックスにいきました。

はわぁ〜、私今まで鷹を括るだとずっと思ってました(汗)昔から鷹狩りが行われていたりしていたから、それにまつわるものだとばかり。

以前は漢字間違いもありましたし、高を括っていたのは私自身かも?反省(ペコリッ)

何はともあれ勉強になりました。今後もご指摘お願いしますねっ♪
なるみさん、どうもです〜♪

前回も前々回も最後の方まで生き残っていた葉月さんでしたが、今回は早めの脱落になりましたね。組織の件があったので、もう少し揺すられるかな?…と思っていただけに意外な展開でした!!

もう用済みとして、組織がゲームマスターに意図的に始末させたのか?あっさりな脱落なので、残酷サブマスターの可能性は無い…かな?
あるいは渚さん?PDAが10、渚さんは咲実さんとは違い出来るタイプ…。本来の渚さんはエピソード?でかりんに近いって話もありましたので、疑心暗鬼で真奈美さん以外は誰も信用してない…?
そもそも渚さんは…やっぱり組織側?
などなど…色々と想像(妄想)できますね♪

残るPDAも危険な条件なので、誰が騙しているのか?誰が組織側なのか?この段階じゃ読めませんね!

咲実さん…頑張って☆今までも見せ場が全く無いので(苦笑)
レッドさん、こんにちわ〜です♪

一番不憫なのは、葉月さんの娘さんかもしれませんね。と言いたいところですけれど、実は娘さんに関して重要な秘密が隠されていたりします。これが明確になるのもやはり第10話ですね。

本来の渚さんは活発で愚痴や文句を決して言わない辛抱強い娘です。で、真奈美さんの方が、組織側に所属した後の渚さんとそっくりだったりします。なので、2人の会話を書いていると、すごく違和感があったりします。

判明しているPDAがすべて本当だと仮定した場合、所在不明のPDAは『A・3・8』。対象者が咲実さん、かりんちゃん、それと手塚くんですね。後の2人はともかく、咲実さんにはキツイ解除条件かも?

総一くんご一行が6人も居ると影が薄い咲実さん・・・。運動神経はともかく、頭の良さを発揮する日が来る・・・かも?
はじめましてー。
ここでは初カキコとなります。

元々同人版の方のコミュには入っていたんですが、数日前にこのコミュを見つけてからは、
SSを楽しく読ませてもらってます〜。

素直な感想として、面白いです。
それによく話が練られていて違和感なく読めます。
読み始めたら一気に読むタイプなので、続きが気になりまする(ΦωΦ)

というわけでした。
続き、楽しみにしてますねーノシ
とらぞうさん、ようこそいらっしゃいませ〜♪

お褒めのお言葉をいただき、ありがとうございます☆ストーリーに関してはちょっと自信があったりします(^^)

更新は毎週日曜日なので、なかなか話が進まないですね(汗)その間にストーリーの展開について予想してみて下さい。私も頑張って作品を仕上げますから♪

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