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法曹界 目指してますコミュの岩見 隆夫氏 のコラム

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別トピで興味深かったため転載させていただきます。
引用元はあります。指摘等あれば遅滞なく削除させていただきます。


以下、引用


「このままでは、医療過誤と同じように弁護過誤がどんどん増えてくる」

 と法務省高官から恐ろしいような話を聞いた。うわさには聞いていたが、やはりそうだったのだ。

 弁護士資格は持っているが、役に立たない、能力のない若い弁護士が毎年送り出されている、ということらしい。それでは法治社会の基礎が揺らぎかねない。

 一生のうち、弁護士の世話にならない人のほうが多い。しかし、もし不当な被害を受け、自力で解決できない場合は、法律専門家の弁護士に救済をお願いすればいい、とだれもが頼りにしている。そのめったにない弁護依頼に過誤の恐れがあるというのでは、たまったものではない。

 悪徳弁護士の話は聞くし、ニュースにもなる。うっかり頼むと法外な料金を請求する打算的な弁護士もいるという。その半面、正義の士や弱者に献身的な弁護士も少なくない。だが、無能弁護士の話はあまり聞いたことがなかった。

 八年前から鳴り物入りで始まった司法制度改革は、裁判員制度と法曹人口増員計画が二本柱である。どちらも不安がつきまとっているが、前者がメディアでもにぎやかに議論されているのに対し、後者はほとんど関心が持たれていない。

 しかし、事態は深刻である。早く手直ししないと取り返しのつかないことになる。ことの起こりは、二〇〇二年三月十九日に行われた司法制度改革推進計画についての閣議決定だった。次のような内容である。

〈現在の法曹人口が、我が国社会の法的需要に十分に対応することができていない状況にあり、今後の法的需要の増大をも考え併せると、法曹人口の大幅な増加が急務となっているということを踏まえ、司法試験の合格者の増加に直ちに着手することとし、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成二十二(二〇一〇)年ころには司法試験の合格者数を年間三〇〇〇人程度とすることを目指す〉

 この長い文章にマルが一つもない官僚作成の典型的な悪文だが、それはともかく、補足によると、それまで約一〇〇〇人で推移していた合格者を、二〇〇二年に一二〇〇人、〇四年に一五〇〇人と増やし、八年間で三倍増する大増員計画である。

 閣議決定にそって、法務省と文部科学省は全国の国公私立大学七十四校(現在)に法科大学院を設置、大学院三年(法学部卒業者は二年)の修了者だけに司法試験の受験資格を与える新制度に切り替えた。質の向上をはかるためだった。

 旧制度ではだれでも受験できたが、五年間の移行期間は新旧を併用し、旧を次第に減らしていく。〇七年度の合格者は新一八五一人、旧二四八人の計二〇九九人で、増員は計画どおり進行している。

 ◇見込み違いの増員計画で数は飽和状態、質は低下
 しかし、とんでもないことが起きていた。知人のベテラン弁護士が言う。

「新しく弁護士になっても就職できないんですよ。もう数は飽和状態、アップアップですから。弁護士会でも面倒見きれない。『どうするんだ』って、批判だらけです。完全な見込み違いですね。多少増やすのはいいとしても上限一五〇〇人くらいじゃないですか」

 法的需要が増えているから、大幅増員が急務という閣議決定は見通しの誤りだった、ということになる。新人弁護士はまず〈イソ弁〉(居候の意。弁護士事務所に籍を置いて給料をもらい修練を積む)になるのが普通だが、いまは〈軒弁〉がやっとだ。机一つだけ置かせてもらい、給料は出ない。

 それにもあぶれると、仕事を探して企業回りなどをしているが、企業側にもほとんど需要がなく、失業状態だという。数よりももっと深刻なのは質の低下で、法科大学院の中身にも問題がある。さきのベテランは、

「表面的な受験用の知識だけになっていて、法の思想、精神といった最も大切な原点が身についていない。知識のほうも教師不足でバラツキがあるようだ。困ったことになっている」

 と言うのだ。しかし、数の要請が先行して、大学院の修了も司法試験の合格も雑になる傾向がみられる、という話も聞いた。

 なぜこんなことになったのか。閣議決定のもとになったのは司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京大名誉教授、委員は作家の曽野綾子さんら十二人)の意見書で、二〇〇一年六月に提出されている。

 審議会の議論には増員をめぐり積極、慎重の両論があって、佐藤会長や中坊公平委員(弁護士)らの積極派は、

「弁護士人口五万〜六万人を十数年後に実現するために、とりあえず年間三〇〇〇人の養成を目標にすべきだ。これはミニマム(最小限)の数字である」

 と強く主張し、慎重派は、

「増員には賛成だが、質の確保が必要で、一気に三〇〇〇人というのは無理だ。法科大学院の整備状況などを見定めながら、段階的に増やすのがいい。当面は一五〇〇人か二〇〇〇人がせいぜいではないか」

 と三〇〇〇人案に反対した。しかし、中坊さんらは、

「法曹人口が過剰になってくれば、社会が自ずと調整して増加に歯止めがかかるものだ」

 と譲らなかった。慎重派のほうが多数だったが、押し切られた形になったという。

「あれは明らかに中坊さんの見込み違いだな。いまの弁護士人口約二万人を三倍の六万人にするというのだが、まあ適正規模は三万人だろう」

 と別の弁護士は言うのだが、このままでは増員計画がさらに進み、二〇一〇年には約三〇〇〇人の粗製乱造気味の弁護士が世間に送り出される。

 誤りがあれば早々に直すのは当然だ。しかし、そういう動きにはなっていない。〈法曹のあり方を考える若手議員の会〉のメンバーの一人は、

「役人は一度決めたことは、まずいと思っても絶対に変えようとしない。この習性はなんとかならないものか」

 と嘆く。しかし、放っておくわけにはいかない。質の悪い〈軒弁〉が増えていくような法治国家の将来は心配このうえないからだ。

<今週のひと言>

 なにかと揺れる超大国。

(サンデー毎日 2008年6月1日号)

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