知られざるハリウッド・スターVol.2 Barbara Stanwyck バーバラ・スタンウィック特集 ■バーバラ・スタンウィックは30-40年代にもっとも活躍したハリウッドのスターである。絶世の美人というわけでもないし、とりたててセクシーというわけでもない。どちらかと言えば個性派の知性派の演技派女優だろうか。日本であまり名前が上がらないのは前回上映したジョン・ガーフィールドと同じく主要な作品が公開されていなかったことが大きいだろう。ホークスの『教授と美女』(42)やスタージェスの『レディ・イブ』(41)そしてフラーの『四十挺の拳銃』は制作当時公開されていない。30年代のサム・ゴールドウィンが製作したキング・ヴィダー監督『ステラ・ダラス』(37)の母親やフランク・キャプラの『群集』(41)でゲーリー・クーパーを利用しようとする女記者。そしてビリー・ワイルダーのフィルムノワール『深夜の告白』の悪女ぐらいであろうか。 しかし60年代には日本でも人気のあったアメリカのテレビ番組「バークレー牧場」(The Big Valley)のテレビ俳優としは知られている。この番組はアメリカでは1965年9月15日から69年5月19日まで4シーズン112話が放映されたテレビ西部劇。日本でも65年11月20日よりNET(現テレビ朝日)系列で91話が放映された。当時はクリント・イーストウッドの「ローハイド」(59〜65年放送)やロバート・フラーの「ララミー牧場」(1960年6月23日からNET(現テレビ朝日)で放送が開始された)など西部劇テレビドラマがブームであった。舞台は1870年のカリフォルニアでスタンウィックは夫を亡くし、女手一つで四男―女を育てる母親=牧場主。50年代には多数のB級西部劇に出演したスタンウィック。特にサミュエル・フラーの『四十挺の拳銃』の女牧場主の延長にあるような役であり、それをより優しくしたアメリカの理想の母親像でもあった。美人ママ・スタンウィックの「アップルパイ」を誰もが食べたがったのだろう。ニューヨーク生れでありながら、西部の母、西部訛りの撥音と低い声で口唇を少し曲げての喋り口調は先日上映したアルトマンの『ロング・グッドバイ』でも登場人物が物真似する。西部劇の世界で女でありながら男と渡り合える唯一の女優であった。30年代のベティ・ディヴィスの系譜。それをよりアメリカ的な、あるいは西部的な、カリフォルニア的で明快さを加えた女優といえよう。