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yapの四国遍路日記 コミュの家出    四国遍路その9

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『うぉー!?居たー!!』
そんな言葉が、口をついて出た。
まさか、連絡なしで会えるとは思ってなかったし、
いつのまにか抜かれてて、その上自分が待たれる身になるとは
予想だにしてなかったからだ。
メガネくんは、おそらくまだ自分の遥か後方を歩いていて
恩山寺で、待っていてあげよう
ぐらいに思っていたのに・・・・・

『ぼくも、今着いたばかりです。』と、メガネくんは言った。

メガネくんは、昨日うちと別れた後、
13〜16番寺まで順調に廻り、17番寺までの道のりの途中にある
タクシー屋さんの善根宿にて一泊、
徳島駅を抜けるコースを経由して、
ここまでたどりついたらしい。

しかも、善根宿を出発したのが、
うちより遅い8時ごろという話。

どうやら、眉山越えのコースは徳島中心部を抜けるコースより
遥かに遠回りコースだったようだ。

『うちは、山登ったり、大雨に降られたり、道に迷ったりで最悪だったよ・・・』

少し休憩してから本堂、大師堂と、お参りを済ませに行く。

そこに、後ろを歩いていた二人組のお遍路さんが
たどり着いた。

あれ??

なんだ、女性ふたりだと思ってたら、一人は男じゃん!!
肩まで伸びた長い茶髪を、遠目に見て女性だと
勝手に勘違いしてしまっていたらしい・・・・・。

メガネくんとふたりで、こんにちは!と挨拶をする。


ふたりは、岡山県に住む若夫婦のお遍路さん

男性のほうは、茶髪を肩まで伸ばし、サングラスを頭に掛け、
ソース顔のハンサムな顔立ち、若くして社長を勤め、
休みの日には高知の海でサーフィンをしているという、
サーファー社長さん。

そして、そのおとなりが、背中まで伸びたきれいな黒髪、
小雪のような、とっても美人な社長夫人さんだ。
日焼け防止のため、
夏の暑さにおよそ似合わない長袖Tシャツと、
つば広のキャップを目深にかぶっている。


ふたりは、週末などの、短い休みを
利用してお遍路に来ているらしく、
今回は一日だけの休みで、17番から〜19番まで歩き、
19番寺近くの立江駅から電車に乗って帰るらしい。

岡山県と四国は、そんなに離れているわけじゃないから、
すぐ行き来できるけど、そんな人もいるんだなぁ・・・・。

『じゃあ、12番のお遍路ころがしとか
すっごい大変だったんじゃないんですか?』
歩き遍路として、やっぱり話題に上るのは遍路ころがしだ。

『遍路ころがしは大変だったけど、
しっかり休み取って朝早くに
出発したから特に問題なかったよ』と、サーファー社長さん

『それよりも・・・・・なっ』と、ふたり目を合わせる。

『14番寺に、無縁仏の石碑があったの知ってる?』
小雪さんがしずかに口を開いた。

『ああ〜!!ありました!!』

『私ね、ちょっと霊感とか強いほうでね、
あんまりああゆうの拝んだりしないんだけど・・・
その時は、なぜだか拝んじゃったのよねぇ・・・』

『それで17番まで廻って帰ったんだけど、
その後にね、交通事故にあっちゃったのよ。』
と、小雪さんは笑顔で言っていた。

『でね、いろいろ不幸なことが続いちゃって、
おかしいなと思って、知り合いの霊能者の人に
見てもらったらね・・・
憑いてたらしいのよ・・・・・霊が・・・・』

『それで、そのままお祓いしてもらって、
事なきを得たんだけど
どうやら、14番の石碑を拝んだときに
連れて帰ってきちゃったらしいのよねぇ・・』

なに〜!?

うわぁぁ〜ん!!そういうことは、
もっと早くに言ってほしかったよ・・
うちももう拝んじゃった後だし!!!
いや・・・そんな話を聞いちゃったら、
あの真っ暗闇の焼山寺下りは
できなかっただろうから、
焼山寺の後、13番と14番の間で教えてほしかったよ!!


14番寺で、うちや小雪さんが、
拝んだ石碑は慰霊碑なわけだから、
成仏しきれない霊が集まっていても不思議ではない・・・・。
そして、映画『シックスセンス』のようにその霊たちが
なにかしようと、なにか伝えようと後を付いてる・・・・・。


そういえば昔、まだ小さかった頃
だれかに聞かされた事がある。
道ばたで、交通事故に会った猫を見た時だ・・・・。

うちは、かわいそうだからお墓を作ってあげようと
その猫の死体に近づこうとした時に、
『さわるんじゃない!!猫は念が強いから、
下手に情けをかけたり、哀れんだりすると、
『可哀想だと思うなら、何故助けなかったぁぁぁぁぁ?!』って、夜中に
化けて出てくるぞ!?』

その話を聞いて以来、怖くて怖くて
道ばたなどで、動物の死骸を見つけ、
可哀想に・・・と、思ったとしても
『同情したら、化けて出てくるんだった!!』と、
無心!無心!無心!と、心の中で唱えていたものだ。

あのとき、化けて出る!と脅されたのは、
こういうことだったのかもしれない。

まぁ、うちは霊感が皆無で、今まで見たことないし
霊の存在を心底信じているわけではないけど
こういう話を聞くとやっぱり怖い。

死者を悼む気持ちは大切だけど
あまり無防備なのも、考えものか。


それにしても、このふたりはお遍路に出てきたがために
そんな怖い目にあったはずなのに、
どうしてまた歩くことを再開したのだろう。

そこまでしてお遍路を続けたいと思う理由はなんなんだろうか?
聞いてみたい衝動に駆られたが、聞かなかった。

ここに出てくる前に読んだ本に、お遍路に出てくる人には
それぞれの理由があり、
必ずしも前向きな理由とはかぎらないのだから、
あまり聞いてはいけないと書いてあったからだ。

今、お遍路はちょっとしたブームらしく、
年間、15万人もの人が、歩きや自転車、マイカーや
観光バスなどによって、巡礼に出ているらしい。

お遍路に出てくる理由は様々で、
観光的なものから、
願掛けのために遍路している人。
結願のご利益を得たいという人。
定年退職を機会に何かを成し遂げたいという人。
(ロマンスさんの2回目のお遍路の理由がこれ
一回目は、阪神大震災の慰霊のためだった。
ハゼさんは、彼女を見つけるため!!と意味不明・・・・。)

うちの場合は、冒険がしたいという思いと、お遍路のように
ひたすら歩いていれば、最近目立ってきたおなかも
少しはひっこむのではないか?というダイエット的なもの。

しかし、中には、お接待や托鉢(お坊さんではない)で
食いつなぎ、何週も何週もしている
お遍路が職業となった職業遍路の人。
うまく現代社会になじめなかった人。
愛しい人を亡くした人。

本当かどうかは知らないけど、重犯罪の逃亡者が
お遍路しているという話もある。

まぁ、このふたりはすっごい仲良さそうで
体力にあまり自信のなさそうな小雪さんが、
無理矢理連れてこられたって感じじゃなく
自らの意思で歩いている感じがするから、
心配はないだろうけどね。



ふたりは、電車の時間もあるから先を急ぐということで、
みんなで納め札の交換をし、ここで別れた。

また、メガネくんとの二人旅の始まりだ。

時間は15時ちょっと、次の19番立江寺までは4キロほど
後1時間も歩けば着くだろう。


道中、ひたすら歩いていて、
心を癒してくれるのは金剛杖の鈴の音。
杖を大きく突いたり、小刻みに振ったりして
音をわざと出して歩く。
ちりちりちり〜んと,心地よい。

しかし、後ろのメガネくんの鈴の音のほうが大きく
よく響き、うちのより遥かに良い音がしている。

ぬぅう、鈴がうちのより大きいからかなぁ・・・
今度は、もっといい鈴をつけよう!!


ほどなくして、目の前に立江寺が見えてきた。
後100メートルというところで、
すれ違い様におばさんに声をかけられる。

『お遍路さん?納経は?』
『いえ、してないです。』と、メガネくんとふたり答える。

現在の時間は、5時を10分ほど過ぎたところ
どうやら、おばさんはお寺の納経所の人だったらしく
もし、うちらが納経をしたい場合
今ここで納経を逃すと明日の朝まで待たなきゃならないと思い
声をかけてくれたようだ。

ん〜!なんて親切なんだ!

お遍路に出てくる前に調べた本やブログには
納経所の人は、恐ろしくカンジが悪い。と書かれていて
警戒していたのだけれど(うちが納経はいいやと思った理由のひとつ)
必ずしもそうではないようだ。



19番寺  立江寺   17時 18分

19番、27番、60番、66番寺は、
悪事を働いたもの、悪心持つものの遍路は
罰が当たって、そこから前に進むことができないというお関所。
すんなり山門をくぐれたってことは
うちが、善人であることをわかってもらえたらしい。

お参りをすませ、メガネくんと今日の夜の相談をする。
うちは、昨日の夜は宿でゆっくりできたし、
今日は野宿でも大丈夫だ。

メガネくんが一枚のプリントを取り出し、
うちに見せてくれた。

『善根宿でいっしょになった、おじさんにもらったんです。』
そのプリントには、四国88カ所お遍路のお寺の間にある
無料宿泊施設や善根宿の住所や電話番号が、
こまかく記されていた。
どうやら、四国のボランティアのかたが、
節約しつつ歩いているお遍路さんのために
作成してくれたものらしい。

それによれば、このすぐ近くの立江駅と、
ここから5キロほど先にも、個人が開いている善根宿があり
泊まることができるようだ。

すかさずうちの地図で駅の場所を確認する。
『もうここのすぐ近くだわ、この先のスーパーで
夜飯買って、そこまで行ってみるべ!!』

立江寺を後にし、スーパーにてお弁当を選ぶ。
レジに向かい、メガネくんの後ろに並ぶ。

メガネくんは、サイフからお金を出すのに
なにやらマゴマゴ、ちいさながまぐちのサイフから
お金をカウンターにばらまいてしまっている。

でてきたお金は、1万円札が一枚と小銭がじゃらじゃら

・・・・て、もしかしてそれが全財産か?
最初会ったとき、88寺全部廻るみたいなこと言っていたけど
メガネくんは1万円ちょっとの持ち金で、
残り69寺をも廻ろうとしているのだろうか・・・・・?

普通に歩いたら、後1ヶ月強も歩くんだぞ?


会計を済ませ、店の前に座り込んでの夕食。
まだ高知県じゃないけど、四国ならうまいだろうと
買ってみた『カツオのタタキ』を
メガネくんと分け合って食べる。
むぉ!!けっこううまい!!

食べ終わり、辺りを見回すが、やっぱりゴミ箱がない。
駅かどこかで捨てようと、リュックにくくりつけ
また歩き出す。


立江駅に到着。
どこで寝られるのだろうと、あたりを見渡す。
がらんとしたちいさな無人駅には、
薄汚れた丸椅子が5個ほど・・・
どこにもそれらしき場所はない。

・・・・・これはあれだな、

お遍路さんが雨風をしのげるように
夜間も解放しておくから自由につかっておくれっていう
そういうことだな・・・
お遍路転がしで見たような、雑魚寝のできる
プレハブ小屋のようなものを想像していたんだけどな〜
世の中そんなにあまくない・・・・。

ベンチではなく丸椅子、
床自体は寝られるだけのスペースはあるけど
コンクリだから、メガネくんは痛そうだし、

時刻表を見ると、夜中の12時くらいまで電車があり、
外にある自転車の数を見ると、12時くらいまで
人の往来が激しそうで、どうにも休めそうにない。


うちはテントがあるから、芝生があって人けがなければ
どこでも寝られるけど、メガネくんはそうもいかない。
『ここじゃ無理だな・・・次の善根宿にするか』
そうして駅での一泊はあきらめ、またふたり歩き出す。


18時をまわり、夕暮れも近い。
空は昼間の天気がうそだったかのように晴れ渡っている。
今日はもう雨の心配はなさそうだ。
そろそろ歩くのも疲れてきた・・・。
メガネくんの泊まるところさえ見つかれば
うちは、そのへんでもいいや。


『時間も遅くなってきたし、
とりあえず善根宿に電話してみたら?
あまり遅くに到着してもいきなりは
泊めさせてもらえないかもしれないし・・。
うちの地図ではそこの住所のだいたいの場所しか
わからないから、結局は聞かなきゃだめだし。』と、
電話させる。


数分後・・・・・。


電話を掛け終わったメガネくんが、真っ青な顔でこう言った。

『もうやってない!!!って切られました・・・・』

まぁ、やってないっと言うならやってないんだからしかたないよと
もう一度プリントを確認する。

『あぁ・・この先にはもう23番寺まで泊まれる場所はないみたいだな・・・』
それに、このプリントは去年制作されたものらしく
今の所のように、もうすでにやっていないなんて所も
けっこうあるのかもしれない。

メガネくんは、茫然自失。
頭をかかえてうずくまってしまっている。
もしかすると、焼山寺下での野宿が、
相当応えていたのかもしれない。

まぁでも、ここでこのままボーっとしていても始まらない。
暗くなる前に、どこか二人寝られる場所を探さなくては

『やってないもんはしかたないさ!どこか
野宿できる場所を探すべ!』と、
落ち込んでいるメガネくんを励ます。

あたりはもう既に薄暗く、カエルの低い声がひびいている。
道路脇には、どこまでもたんぼが広がり
水路には、おそろしく大きなウシガエルが何匹も何匹もいる。

すげぇでけぇ!!かっくいい〜!!

北海道出身のうちには、めずらしくてたまらない。



道路脇の水路を覗き込みながら
とぼとぼと歩いていると、
廃れたガソリンスタンドが、見えてきた。

スタンドなら屋根もあるし、あそこなら寝られそうか?
ちょっと見に行ってみることにする。

正面は屋根はあるが、道路には車通りがけっこうあり、
そこで寝るのは気が進まず、建物の裏にまわる。

裏には、建物の隅に木でできた台が幾重にも重ねて置かれていた。
『お!!この台敷けばここで寝られそうじゃね?』
積まれていた台を下ろし、建物の壁際に並べる。
2枚も並べれば、畳一畳分くらいになった。
メガネくんは、渋い顔をしているが、
このまま夜道を歩いた所で泊まれる所は、もうないんだし
木の台があるだけ、まだマシというものだ。

うちは裏手の草が生い茂っている所に
そそくさとテントを張る。

立江寺の途中で携帯ライトを買っておいてよかった!
手元を照らしながらテントを張る。

メガネくんは、まだ納得いかなさげ。

かまわず、テントにもぐり込む。
石がごろごろと痛いが、あたりはもう暗いし
もう歩きたくない・・・・・。

メガネくんが、家に電話をかけている。
また母親と、もめているようだ。
宿に入ったと、またうそをついている。

まぁ、母親がうるさく言うのは無理もないよ
高校生がたったひとりでお遍路の旅なんて、心配だもの・・・

母親であれば、メガネくんが
ぜんぜんお金を持っていないことも知ってるだろうし
後二日後の九月一日には学校も始まってしまう。
そんな状態で、お遍路だなんて
親として、だまっていられるわけがない。


テントの中でまどろんでいると、
メガネくんがテントの脇で、なにか言っている。

『すいません・・・。携帯なくしました。
懐中電灯貸してください・・・・。』と、あせりまくっている。


えぇえ!?なくしたって?どこに?

あたりは、もう暗く、電灯も近くにないため
探すのは、困難だ。
しかも、うちの携帯ライトもキーホルダーみたいなもので
光の範囲が狭い。
地面を当てて探してみるが、まるっきりそれらしきものはない。

『なくなるって言っても、そんな遠くとか行ってないよな?』
ちょっと、電話かけてみるわと、
メガネくんの携帯に電話をかけてみる。
着信すれば、音がなるだろうし、ライトもつくはずだ。

しかし、どこにも見当たらない・・・・・。

『いつも、リュックのここのポケットにいれてあるんですけど・・・』と、
泣きそうになっている。

『あ・・・』
ありました〜と、メガネくんはリュックの中から携帯を取り出した。


えぇえ!?

どうやら、家に電話をかけ終わった後、リュックにしまっていたのだが
しまう場所がいつもとちがっていたため
いつもの場所に携帯がない!?なくなった!!と、なってしまったらしい。

どんだけ、人騒がせなんだ・・・・。

でも、『リュックの中を探す』という、
だれもが一番考えつきそうなこともできないくらい
慌ててしまうなんて・・・・。


もしかしてあれか?

メガネくん・・・家出か?

そう考えてみるとメガネくんの今回のお遍路には不思議な部分が多い。

まず、高校生の夏休みなら7月末に始まっているのに
メガネくんのお遍路への出発が、
始業式間近の8/27日であること。

88寺廻るといいながら、着替えしかもたないなど、
装備があまりにも貧弱で、
所持金も1万円ほどしか持っていないなど、
なんの計画性もなく、いきあたりばったり感が否めない。

お遍路に、思いつきで出てくるなんて考えられない。
家には毎日連絡するようにはなっているようだから
本格的な家出ではないだろうけれど・・・


まぁでも、あれだ
メガネくんが家出なら、話は早い。
うちは、メガネくんより、ちょっとはお金を
持っているわけだから
少し援助してあげようか?と思っていたが、

ここはもう、ただ見守るのみだ。


家出ってのは、自分がいかに無力で、
いかに親に生かされ、守られているか
思い知らなくてはいけない。



そんなことを考えながら
弟のことを、思い出していた・・・・・。




今日歩いた距離  25kmほど・・



徳島県最後の寺 23番薬王寺まで あと約60km



つづく・・・・・・・

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