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yapの四国遍路日記 コミュの遍路宿  四国遍路その7

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メガネくんと別れ、先をいそぐ。
自然と歩みも早足になってしまう。
次の13番寺大日寺までは、およそ後5キロ
宿泊予定の遍路宿がある17番井戸寺までは
まだ14キロ以上もある。
今までのうち独りの歩くペースは、だいたい時速4キロだから
寄り道しないで歩けば後4時間、
18時には、たどり着ける計算になる。

・・・・・計算通りにいけばいいんだけど・・・


程なくして、目の前にコンビニが見えてきた。
時計は14時を廻っているが、今日始めての食事。
コンビニの前に腰掛けておにぎりをほおばる。
眺めの良い所に移動して食べたい気もするが、
お遍路中に一番困るのは、ゴミだ。
道中にもお寺にもほとんどゴミ箱が置いていない。
なるべくゴミを持ち歩きたくないため
どうしても、コンビニの前で食べることになってしまう。
もっとご当地の物も、食べてみたい気もするが
ドライブコースからはずれているのか
お店屋さんには、ほとんどお目にかかれない。


二つ目のおにぎりを食べながら13番寺までの道順を
地図で確認していると、
水着姿の女の子がコンビニの中に入っていった。
びっくりして、鮎喰川を見に行くと
あれだけ浅く流れも速かった川が
大きなプールほどの深さで、水もゆったりと流れ、
たくさんの人たちが水浴びや水泳で楽しんでいた。

うはぁ・・・あんな所で泳がなくても、こんなにいい場所が
あったのか・・・ちょっと早まったなぁ・・。
こっちで、泳いでみたかったが
17番までたどり着くには、
すぐにでも出発しなければ間に合わない。

食事を終え、鮎喰川沿いの道を早足で歩き始める。
川では,川岸にテントを張った家族連れや、
若者たちが楽しそうに遊んでいる。

それにしても、なんてキレイな水なんだろう・・・・。
川の深さは一番深いところで2メートルくらいありそうなのに
川底まで透けてて、ホントに水色をしている。
これだけキレイだったら、毎日だって川遊びに来ちゃうよ


13番寺  大日寺  15時4分

お参りを済ませ、宿に連絡をする。
『さきほど電話したものですが、
今ようやく13番にたどり着きました!
これから、そちらに向かうところです』
『あら!!まだそんなところなの!?
そこからだと夜になっちゃうわよ?
16番寺の近くにも遍路宿があるから
今日は、そこにしたらどうかしら?』と、宿のおばさん

ぐお!?おばさん、逃げ腰!?ことわりモードに入ってる!?


お遍路は朝早く宿を出て、早いうちに宿に入り
明日のために体を休めるというのが基本だと、
なにかに書いてあった。
他にもお客がいるんだろうし、
ひとりだけ、夜にたどりついたりすると
食事やお風呂の支度に手間がかかるので
イヤなのかもしれない。

でも、明日メインとなる17番と18番間は、
20キロを越える長距離だから
できれば距離をかせいで、17番まで行っておきたいし、
夕方近い今から他の宿に電話を入れたところで
泊まらせてもらえる保障もない・・・・・。
なんとしてでも、泊まらせてもらわないと・・・・

『なんとか、急いで向かいますので
おねがいします!』
ちょっとすまなさそうに、切羽詰った風に言ってみる。
おばさん、なんとか納得してくれたようだ。

次の14番までは2.3キロ
14番から15番までは1キロ
15番から16番まで2キロ
16番から17番までは3キロと
5つのお寺が密集しており、
全部足したとしても8キロほどだ。
おばさんが、逃げ腰になるような
ものすごい距離なわけではない。
メガネくんがいない今、
スピードも格段にちがうわけだし。

後はうちががんばるだけだ!


第14番寺  常楽寺   15時40分

境内に入ると左手に大きな石碑があり、
ここに眠っている無縁仏のために
祈ってあげてください。との、立て札があった。

ここは、お寺だからそういう霊を祭っているのかな?

静かに手を合わせ、眼を閉じる。
『この世に未練など残さず、安らかに眠ってくだされ。』


第15番寺  国分寺    16時10分

お寺にたどり着く途中、歩いている二人の外国人を見かけた。
ここらへんには、目立った観光地はない。
あのふたりは、お遍路をしているのだろうか?

国分寺は、山門にも大師堂にも、おびただしい数の
赤ちゃん用?の、よだれかけが奉納されており
ちょっと異様な雰囲気。夜とか怖そう・・・。
子宝とか子供の無病息災の祈願だろうか?


16番寺  観音寺  16時38分

観音寺付近から完全に街中に入った。
観音寺は民家の中にポツンとある感じ。
お寺自体も真新しい。

先があるので、とり急ぎお参りを済ませ寺を後にする。
まぁでも、このぶんだと18時前には宿までたどり着けそうだ。

17番へと向かう途中大通りに差し掛かった
帰宅時間とも重なっているためか、
たくさんの車が世話しなく行き交っている。
なんだか久しぶりの都会
いろいろな店もひしめき合っている。
歩いていると、張り紙のタクシー屋を発見!!
これならメガネくんも、迷わずたどり着けるだろう。

銀行も発見!
宿代のことも考えると懐が少し心もとない・・・
この先、銀行なんてあるかどうかわからないし、
ちょっと多めに降ろしておこう。


17時45分 遍路宿に到着。
17番寺とは、ホントに目と鼻の先
そこは、宿というよりも普通の民家といった感じ。
塀の外側から恐る恐る中を覗きこむ。

おばあちゃんが、家の中から出てきたので
あのぅ・・・と声をかける。
『あら?お疲れ様!!杖洗ってあげるから貸しなさい、』と、おばあちゃん
うちから杖を取り、ちゃきちゃきと洗い始める。

『あら?電話くれたお遍路さん?早かったのね!
電話くれた時、まだあんな所だったから
まだまだかかると思ったのに!』と
別のおばさんが、家から出てきた。
どうやら、こっちの人が電話のおばさんだったようだ。


『今日はもうひとり宿泊のお遍路さんがいてね
いっしょにご飯食べるって待ってるから
先にお風呂入っちゃって!』
おお!お風呂!さっそく入らせてもらえるんですね
焦らされたもんだから、歩くペースちょっと速くして
実はもうクタクタ・・・・。

家に上がるため、靴紐を解いていると
『杖はどうする?ここでいいかい?』と、
杖を洗い終えたおばあちゃんが玄関にある大きな壷を指した。
『ああ、はい!』と答える。


家の中は、旅館という感じはなく普通の民家で
ちょっと広めの居間には、大きなテーブルが置かれている。
奥には襖戸が4つくらい、
そのひとつに連れられ入る。
部屋は、4畳くらいでエアコンはあるが、テレビはなく
隣りの部屋とも襖で区切られている。

『お風呂はこの奥ね、汚れ物は洗濯してあげるから出してね』と、おばさん。
荷物を下ろし、置いてあった浴衣に着替え
今まで着ていた服(パンツ含む)と、
リュックの中の衣類すべてを
洗濯物としておばさんに渡す。

お風呂もいたって普通のおうちのお風呂。
水浴びはしていたけど、二日ぶりのお風呂だ!

お風呂をいただき、上がってくると
居間には夕食の仕度ができており
先にビールを一杯やり、赤い顔をした
ロマンスグレーのおじいさんが座っていた。
(以後ロマンスさんと呼ぶ)
テレビには、NHKのニュースが写っている。

今日の夕食はチキンカツとたまごどうふ、
お味噌汁におしんこと、
お遍路始まって以来、初めてのごちそうだ。

ロマンスさんは今年定年退職した、おじさまで
阪神大震災の後に、一度車で廻ったことがあるらしく
今回は定年退職を機に、公共機関と歩きでの完歩を目指し、
うちと同じ日から廻っているようだ。
12番の遍路転がしも、自らの足で越えてきたらしい。
あそこは、ほんときつかったですねぇ!と、ふたり盛り上がる。

ロマンスさんは、そこでひとりのお遍路さんと出会い
いっしょに歩いたのだが、
どうにも、ガマンならなくなりそのひととは
途中で別れたと、言っていた。

お遍路は、だれかと歩くものじゃないな!
ひとりのほうが、気が楽だ!!
にいさんも、だれかと歩いたりしないほうがいいよ!?
と、ロマンスさん

ふと、メガネくんのことを思い出した。
今日の宿に、無事たどり着けただろうか?
食事が終わったらメールしてみよう・・・。

テレビが、ニュースから天気予報に代わった。
一日中歩き続けなければいけない歩き遍路には
天気は一番重要だ。
ふたり、テレビに注目する。
明日の天気マークは雨のちくもり・・・・・
どうやら明日は雨の中歩かなくてはならないらしい・・・・。

画面が変わり、今度は天気図と一週間予報が流れる。
明日とあさっての二日間のみが、雨マーク
そして、残りの日はすべて晴れのマークだった。

ここで、うちの夏休みには珍しい快挙が判明する。
遍路の旅が終わる夏休みの最終日まで・・・・・

台風の襲来がない!!!のである。

まぁ、普通の人にとってはそれほど驚くようなことでもないが
雨男のうちにとっては、重大な問題だ

うちの夏休みには、必ずといっていいほど
台風が襲来するのだ。
夏なんだから台風が来るのは当たり前だが、うちの場合は
いつもひどい目にあってしまう。

ある年、九州にバイクツーリングに行った際には、
台風の後ろに台風、そのまた後ろにも台風が発生し
帰りのフェリーが欠航・・・・
台風の後ろにもさらに後が来ているわけだから
フェリーがいつ出航できるかわからない・・。
あえなく九州から神奈川まで台風接近中の強風の中、
陸路で帰ることになったり・・・

ある年には、台風の襲来を避けて、旅行の行き先を西から
東に変更、どこかで逸れるかと思いきや
青森まで追い立てられ、
青森の親戚の家でやり過ごしたり・・。

北海道旅行の際には、あまり北海道には上陸しないはずの台風が
しっかり縦断、通るはずだった国道に架かる橋が流され、
土石流流れる崖下の川を横目に
ガードレールのない道を
橋のある川の上流まで迂回したり・・・・。

・・・etc・・・・etc・・・・・

とにかく夏休みには、台風に会うことが多い。
その台風が今年は会わずにすみそうなのだ!
これもお遍路のご利益か?


食事を終え、ロマンスさんとうちのふたりは
それぞれの部屋にもどった。

時間はまだ9時前・・・。
いつもならまだ働いている時間だ。

ロマンスさんは、うちのとなりの部屋
携帯で奥さんに今日の報告の電話をしている。
となりと隔てているのは襖一枚なので、まる聞こえだ。
これだと、イビキとかも聞こえてきちゃうだろな〜

ふと携帯を見るとメガネくんからメールが届いていた。
どうやら無事にタクシー屋の善根宿にたどり着けたようだ。

部屋の中を見渡すと、ちいさな本棚があった。
本棚には、宿泊客用の何でも帳
そして、薄いお遍路の本が置いてあった。
こんなに薄くて3000円?!
た・・・高ぇ・・・・・
ペラペラと、中をめくってみる。
中には、うちも知らなかったことがいろいろと書かれていた。

お遍路とは?
『弘法にも筆の誤り』で有名な弘法大師空海様が42歳の時に
開き、その後高弟がその足跡をたどって巡拝したのが
始まりという説が有力なようだ。

白衣を着るのは死装束をまとい、
自ら死霊となり、他界である
聖地四国霊場を巡る滅罪の旅、と書かれていた。

滅罪の旅ということは、やはり、衛門三郎伝説のように
罪を負った人々の懺悔の旅ということだろうか・・・・。


菅笠の口語訳も載っている。(プロローグ参照)
迷故三界城
迷うが故に三界は城
悟故十方空
悟るが故に十方は空なり
本来無東西
本来東西は無く
何処有南北
何処んぞ(いずくんぞ)南北あらん

要するに、
迷うからこそ周りには壁ができ、
悟ることができれば、周りは空となる。
本来、東西なんか無いし、
南北すらもない。
ということらしい。

迷うからこそ壁につきあたる・・・・。

うちも、遍路を終えるころには悟りを開いて
周りの壁を空に変えることができるのだろうか・・・?

金剛杖についても載っている。
プロローグでも書いたように金剛杖はお大師様なので
一日の終わりには、足である杖の先を洗い
部屋の上座に置くというのが基本だったようだ。

それで、おばあちゃんはうちに杖をどうするか
聞いたのか・・・・
杖、玄関の壷の中だ・・・
お大師様、ごめんなさい。

また、橋を渡る時にも杖をついてはいけないという
決まりがあるようだ。
これは、お大師様が橋の下でお休みになったことがあり、
橋の下で休んでるかもしれない、お大師様を
起こさないように、ということらしい。


そして、
四国遍路の悲しい歴史もそこには記されていた。

どうやら昔、ある時代には四国遍路は
姥捨て山のように使われていた時代があるらしい・・・・。

年老いて働けなくなった者、
体が不自由になりうまく動けなくなった者、

貧しい家では、働けなくなってしまった者を
養っていくことができない。
そのため、食い扶ちを減らすため、お遍路に出すというのだ。

お遍路に行けば、『お摂待』で
生きながらえることができるかもしれない・・・・・。

お遍路に行けば、結願のご利益で動けなくなった体も
また元通りに元気になるかもしれない・・・・・。

そんな、一縷の望みに託して・・・・・・

また、ハンセン病が遺伝病で、
かつ伝染性があると信じられていた時代。
家族に発病者が出ると、人知れず町を出る。
ということもあったようだ・・・・。

昔のお遍路は、道路も舗装されてなかっただろうし
トンネルもなかっただろう。
コンビニなんてあるわけないだろうし、
自動販売機で飲み物を買うこともできない。
靴や雨具などの装備も、貧弱なものだったにちがいない。
今より、ずっとずっと過酷な旅だったろう。

衛門三郎のように20周どころか、
1周すらできないものがほとんどだったにちがいない。
もし、運よく88番寺まで辿り着くことができたとしても
そういう、故郷を追われて遍路に出てきた人たちは
それで終わりなわけじゃない・・・・。
帰る所など無いのだ・・・・。

道の途中で力尽き行き倒れたものは
身寄りも無く、死んだとしても帰ることはできない。

そして菅笠が棺桶に、白装束が死装束に、
金剛杖が卒塔婆になる。

そうか・・・・・・
14番寺にあった無縁仏の石碑は
こういう人たちの霊を祭ったものだったのか・・・・・。



今日歩いた距離  28.8km


徳島県最後の寺 23番薬王寺まで あと約85 km



つづく・・・・

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