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霜月邸  『萌え』殿コミュのハロウィン企画 ヒノエ編 ケイさん作

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凛「ん〜・・・」
ヒ「おや?珍しいね、お前がそんな顔をしているなんて。どうかしたのかい」
凛「あら、ヒノエ・・・ん〜、ちょっとね」
ヒ「本気で煮詰まってるみたいだね、言ってみなよ。姫君。俺の手でよかったらいくらでも貸すぜ」
凛「・・・・・・・ふふっ・・・・・・」
ヒ「・・・・・・なんだい?そんなに嬉しかったのかい」
凛「ええ。・・・いえ、たいしたことではないの。これ、なんだけど」
ヒ「なんだい、それ?薬・・・にしちゃ、ちょっと怪しいね」
凛「そう・・・これ、ね(言いながらハンカチを出し、口と鼻を覆いながら瓶の蓋を開ける。中からはピンクの煙が一面に湧き出て一同、咳き込む)」
ヒ「えほっ・・・ごほっ・・・やってくれるね、凛」

(しばらくして煙が晴れたそこには・・・・・・)
ヒ「え?」


凛「私の世界ではない薬草ばかりを混ぜ合わせたら、偶然にも若返りの薬が出来たみたい。誰かに使ってみたかったの。しばらくすれば、元に戻るはずだから。協力、ありがとうね」



(ハロウィン企画 ヒノエ編 ケイさん作)
コミカルになりませんでした…_│ ̄│○‖
相変わらずのシリアステイストですが、お納め下さい。
よろしくお願いします。


------------------------------------------------------------

ある日 出会ったら
彼は 小さくなっていた


『小さな 大きな』


「………え?」
 彼女は最初、それが本当に彼だとは分からなかった。
 彼の親戚、もしくは歳の離れた兄弟…ではないかと。
 だが、数分彼の行動を眺めている内に、それが彼本人だという事が分かった。
 いや、分かったと言っても……まだ信じられない、というのが本音ではあるが。

「姫君…そんな憂い顔もいいけど、やっぱり愛らしい花のかんばせには、
 微笑っていて欲しいんだけどね。」

 小さい身体で自分の顔を覗き込み、見上げるその烈火の瞳に宿る意思は……。

「ヒノエ……くん?」

 熊野水軍の棟梁、そして、天の朱雀ヒノエ……その人のものだった。

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 怪しげな薬で小さくなったらしいが、その内元に戻るだろうと、至極端的で、同時に、至極意味不明な説明をしてヒノエは笑った。その間彼女の頭の中には「?」が飛び交っていた。要は混乱していた。


「……ってなわけで、ここでぼおっとしていても仕方ないし、
 せっかくだからどっか出かけようぜ。」


 小さくてもヒノエはヒノエ…恭しく自分の手を取ると、軽く口付けてその手を引いた。
 まだ「?」の世界から抜けきれていなかった彼女は、彼の行動の素早さについていけず、だがしかし行動は確かにヒノエでしかないそのヒノエっぷりに相変わらず振り回されながら、彼に手を引かれるままに付いていく羽目になった。


「ちょ…ちょっと待ってよ。ヒノエくん。」


 小さい彼が、良いから付いて来なって…と微笑いながら振り返ったその姿に、彼女は思わず顔を赤らめた。


(どうして?今のヒノエくんは小さいのに。)


 大きくなった彼に緊張するなら分かる。だが、今の彼は…幼稚園児か小学生と同じくらいの年頃だと言うのに……何故だか彼女はドキドキしていた。


 それから、市を一緒に見て周り、べっ甲飴やちょっとしたからくり細工などを見て回り……いつの間にか二人は、笑っていた。大きな声を上げて、青空に届くほどの屈託のなさで。


 一緒に歩く間握られた手は離されない。


 彼女の眼には、その背中は大層眩しく見えた。
 太陽の光を、波の煌きを、いっぱい吸い込んだ…真っ直ぐな背中に見えて…ああ、小さい頃のヒノエはきっとこうだったのだろうなあとしみじみ思う。


 ――――と、その瞬間だった。


「きゃっ……。」


 明らかに故意に誰かがぶつかってきて…彼女は咄嗟に彼の手を離し、一人で思い切り尻餅をついた。土の上とはいえ、かなり痛い。
 


「いったあ……。」
「大丈夫かい!?」


 どうも、尻餅をついたときに捻ったらしく、足首も僅かに痛む。
 ヒノエが血相を変えて彼女の元に駆け寄り、彼女の衣服の汚れを払い、立ち上がらせる。
 だが、今はそんな悠長なことをしている場合ではないようだった。 


「………ようよう。ねえちゃん。
 俺にぶつかっといて、なにもなしはないんじゃねえか?」


 明らかに柄の悪い男が、ようやっと起き上がった彼女に詰め寄る。


「すみませんでした…。私、ちゃんと見てなくて。」


 彼女が頭を下げても、その男は引き下がりそうにない。
 益々頭に乗る様子に、堪忍袋の緒が切れたのはヒノエだった。


「オニイさんの方が悪いだろい。
 こんな綺麗な姫君の肩に、わざとぶつかっただろう。
 この広い道で、ぶつかるなんておかしいよなぁ?」


 確かに、市は賑わってはいるが、肩がぶつかるほど混み合っているわけではない。
 ヒノエが痛いところを付くと、柄の悪い男は、その器の小ささを露呈させるが如く、拳を振り上げた。
 ヒノエにとっては、見切れるものであり…怖くなどちっともなかったのだが…。


「あぶない、ヒノエくん!!」


 咄嗟に飛び込んできた彼女に…ヒノエの気が取られた。慌てて彼女を後ろ背に回し、頬に一撃拳を入れられたヒノエは、よろめきはしたが、転倒はせず、そこに仁王立ちする。

 口の端に滲んだ血を舌でペロと舐め、手で拭うと、好戦的な眼でごろつきの男を見遣る。



 ――――勝負は、見えていた。



 大きくとも、小さくとも熊野の棟梁。
 その眼に宿る信念は…ごろつき程度の男を退散させるには十分だった。


「い、行こう、ヒノエくん。」

 ごろつきの隙を突いて、彼女がヒノエの手を引っ張って走り出す。
 遠く、ゴロツキの息巻く声が聞こえたものの、所詮は虚勢だと誰が聞いてもわかるようなものだった。



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「……はあ、はあ…ここまで来たら、大丈夫だよね。」

 言いながら彼女が引っ張ってきたのは、どこぞの河原。
 紅葉葉と夕陽が、川面を彩り…唐紅の衣のようだった。

「なあ…どうして、逃げたんだい?」

「……だって……ヒノエくん、小さいから。」

「……小さい俺じゃ、姫君を護れないとでも?」

 言いながら、ヒノエは心の中に何か苦いものが広がるのを感じていた。
 確かに、あの程度の男ならどうにでもできる。だが実際に多勢に無勢でやって来たら…冷静に考えて、かなり勝算は厳しい。

「……そういうわけじゃないけど、でも……。」

 彼女の言いたい事は分かる。
 俺を、大事に思って逃げてくれた事も。自分に…少しは好意を寄せてくれている事も。
 一番かどうかは分からない。何せこれ程に自分を夢中にさせる姫。恋敵など吐いて棄てるほどいると言って差し支えないだろう。それでも……嬉しい。


 だが、今は……今の自分は……。――そう思うと、また胸が痛んだ。


「………ヒノエくん………。」


 ヒノエの黙りこくった表情に、彼女が心配そうに声をかけた。



「なあ…姫君…頼みがあるんだけど。」

「え?なあに?」

 努めて明るい声で、ヒノエは言った。

「膝の上に、座ってもいいか?」

「え?あ…いいけど。」

 言われて、慌てふためきながらも、彼女は頷いてくれた。
 そんなところが可愛いと思いながら…ヒノエは彼女の膝に座る。
 見上げれば、紅葉葉が、ヒラリヒラリと、舞い降りてきていた。

「………ねえ、ヒノエくん。あのね………」

 ―――――本当に、元に戻れるの?

 そう聞こうとして、彼女は聞けなかった。だが…聡いヒノエは皆まで言わずとも彼女の意図が分かったらしく、その頬を自分の少し小さく、柔らかい手で包み、おでこを彼女のおでこにくっつけて、微笑った。


「それは、姫君が心配することじゃないよ。
 俺は……譬え戻れなくたって、姫君を最後まで護るって、決めてるから。」


 そう、それは…小さくされた瞬間にもう既に思っていたこと。
 戻れるとかの人は言っていたが、その保障などどこにもありはしない。
 戻るかどうか分からない…それでも護りたいものは譲れはしないと。


「小さい分、頼りないのは分かってる。
 その分、障害がある事だって分かってる。
 それでも俺は、最後までお前を護りたいんだ。この俺の…全てでね。
 命をかけて。」


 どうしてだろう。
 どうした事だろう。
 小学生ほどの歳の子どもにこんな台詞を言われて…頬を染めている自分は、果たして正常なのだろうか。普段の生活の中で子どもに「大好き」と言われても、こんなふうにはならない。それなのに、今、自分は……小学生ほどのヒノエに“護りたい”と言われて胸が確かに高鳴っている。


 返事をしない彼女を、自嘲的な眼で見つめて…落ちてきた紅葉葉を一つ手に入れると、ヒノエはそれに軽く口づけをし、彼女の美しい髪にさした。


「……唐紅の天女様。“今だけは”どこにも行かないでくれよ。」


 愛想を付かされても…今の自分は仕方のない姿だ。だが…今のこの時間だけは、二人でいたい。
 ヒノエはごろんと横になると、彼女の膝を枕にして空を見上げた。


「………ああ……綺麗だ……な……。」


 そう、呟いたヒノエの姿が、あまりにも哀しげで、儚げで。
 彼女は…彼をしっかりと抱きしめた。


「ひ、姫君?」


 彼女は、ヒノエの日に焼けた細い腕を辿り、そして柔らかな頬をその両手で包み込んだ時、大きな声で言い放った。


「大きくたって、小さくたって関係ないよ!ヒノエくんはヒノエくんだもの。
 私、ずっとずっと傍にいるから。大丈夫だから!」


 言いながら、ポロポロ涙を流す彼女の姿。
 傷ついていたのは、自分ではなく彼女の方だった。
 自分だけが、苦しい想いをしていたような気がしていた。だが、苦しいのは自分だけではなった。
 ここに……いたのだ。同じ様に、苦しみを分かち合ってくれていた人が。



「ねえ、姫君?」


 言うと、ヒノエは先程彼女の髪にさした紅葉葉の横に、美しい櫛をさした。
 それは…美しい紅葉葉を掘り込んだ、螺鈿細工のようだった。
 先程の市で、こっそり買い求めていたのだ。彼女にさぞ似合うだろうと。
 だが…姿が子どもの自分では、どう渡しても格好が付かないと、渡すのを躊躇していた。
 そんな考えは…彼女の、素直な一言によって、瞬時に氷解されていった。



「ありがとう……姫君。」


 自分の愛した姫君に、間違いはなかった。
 見た目だけで、人を選ぶような、そんな人ではなかった。
 目の前で、美しい紅葉葉にも、櫛にも負けぬ天然の美しさを放つ彼女からそれは見て取れる。



 そうやって、見つめ合い続けて…幾刻ほど過ぎた頃だろう。



 お互いに、頷き合って……静かに唇を寄せ合ったその時。
 ふわりと彼の…そして彼女の周りを紅葉葉のような唐紅の光が包み。



 口付けの後、眼を開けたそこには、確かに精悍な…元の年齢のヒノエが、照れ臭そうに微笑っていた。


「あー。もう終わっちゃったんだ。」
「……何だか不満げだね、姫君?」

 唇が触れそうなほど近い距離で微笑い合うと、彼女は悪戯っぽく微笑って言い放った。

「弟が出来たみたいで、楽しかったのに。」

 ヒノエはその一言に苦笑だけで答えて…先程まで下から見下ろしていた彼女を今度は少し高い胃目線から見つめて…抱きしめる。

「………った。」

 ――――よかった。

 これで彼女を、自分の最大限の力で護れる。
 そして……愛することだって、出来る。


 月明かりを紅葉葉の舞が散らす…その中で。

 二人は、暫く……一つの陰になっていた。



 彼が、小さくなった不思議な薬。


 ―――――それは、可愛い悪戯。そして……ちょっとした愛の魔法。




小さな 貴方でも
心はとても あったかくて

そして 大きい

ずっとずっと

その大きな心で
私を 見ていてね

(終)

コメント(6)


・・・ああぁ・・・さすがだな・・・・(ジリジリと尊敬のまなざし)

っていうか、私、
うっかり大きいヒノエよりちっこいヒノエの方に胸キュンしました・・・(笑)
前半部分見てたら、
「あぁ・・これは小さくなっちゃった設定じゃなくて、
本当に昔からこうやって女の子を護ってそうだな・・。
思い出話とかでも充分良い話だ・・・かっこいい・・」
とか思ってたんですが、やっぱりこれは
小さくなっちゃった設定だからこそ後半が映えるんですね・・・!

ううーーん!小さくなっただけでヒノエにときめくとはやられた・・・!
ちびヒノエ・・・
わ・・・私がちぅしたい・・・(爆)
『守る』ことがある意味当たり前な立場のヒノエにとって守りきれないというちびバージョンはさまざまな葛藤があるようで(悶)
ふふふっ・・・・そうやって悔しがっているヒノエ・・・悦いハート達(複数ハート)
ちっちゃくてもヒノエはヒノエというところを外さずに書くというのは、思いの外難しかったのですが、とっても楽しかったです。

最後のちぅは…ヒノエなら5歳でもやるだろうという事で(笑)

皆さん、温かいコメントをありがとうございました。
初めましてm(__)m

ヒノエ命のキモい人が通ります⊂(^ω^)⊃


超萌えです!!!!!!!
ちっちゃくったって、ヒノエはナイトなのですな〜(>艸<*)

ちびヒノに手をひかれて、私も歩いてみたい…
嗚呼、可愛い(*^ω^*)

でもやっぱり最後は元に戻った彼が1番ですっ。
望美ちゃんが羨ましい…

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