ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

語部夜行 〜カタリベヤコウ〜コミュの「海」

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「退避を!」

黒崎が促すと聴衆の多くが玄関からか、階段の上層階へと駆け出す

残るのは、運悪くか好奇心の固まりか義理と信念

その中に幽寺と圭一の姿があった

二人の目の前には、白いスクリーンと黒い記憶

そして、トラウマの映し出されたメビウスのフィルムから抜け出せない湊

「どうすればいいっすか!!ひ、ひ、ふぅーーーの呼吸法で波紋を呼び起こすすか」

幽寺が圭一に一瞥をくれる

「落ち着いてください、これは湊さんのトラウマ、ならば湊さんの記憶さえどうにかすれば収まるはずです」

「そうっすか、で、どうすれば?」

「簡単です、出力が出来たんだ、入力も出来るはずです」

ドン

「え?」

勢いよく幽寺が蹴りをくれると、圭一がスクリーンの向こう側へおちていった

「ちょっとーーーーー、おーーーーーーーーーーーー?」

ダッバーーーーン

高らかに波しぶきを上げ、四方には陸地の見えない海に投げ出される圭一

ゴポゴポと泡があがり、暫くすると圭一が浮かんでくる

「プハッ、ちょ!何するんすか!!」

圭一が声を上げると、眼前の虚空に不自然に浮かび上がる四角形

そして、そこに映るは幽寺の姿だった

「すみません、やりすぎました!大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃあないっすよーー」

圭一は手を上げて抗議するが、幽寺はそれに目もくれず一方向を指差す

その先には豪華客船

「きっとあそこに湊さんがいます」

圭一が振り向く

「そして、ここは湊さんの心象風景」

「ならば、事件を解決することで、湊さんのトラウマを緩和し、この状況も打開できる」

「なるほど、了解したっす」

「お願いします」

暫く、圭一が考え込んだ後、続ける

「と、言うことはですよ幽寺君」

「はい、なんでしょう?」

「湊さんの幼い頃の記憶を若干操作するってことっすよね?」

「えぇ、そうです、そのために射影機を持つ圭一さんに言ってもらったのですがね」

「ということは、幼い頃の湊さんを再教育して、おしとやかにしたり、圭一△にしたりが可能なんですね!!」

「やめなさいそんなGS○神の二番煎じ!!」

幽寺君の顔がスクリーンいっぱいに広がった

「心ってのはとてもデリケートなんです、あまり改ざんしないようにお願いします」

「冗談っすよ、了解っす」

圭一はニパと笑うと、懐より一枚の写真を取り出した

「アブクより生まれアブクへと還る蒼海の雫、半身を人にして人にあらず、半身を魚にしてその美しさは永久のもの、いでよ、マーメイド」

写真を水平に掲げるとそこから泡が渦を巻き、現れる

それが光を帯びると人魚が生まれ出でた

湊そっくりな…

「あれ?」

「んえ?」

「ほぇ?」

キョトンとする圭一と幽寺

「湊さんじゃあないっすか」

「よう圭一!どうした?」

湊は異変に気がつかない

ふと、周囲を見回しプチパニックになると、今度は自分の下半身の異変に気がつきピチピチと動かしてみては右往左往する

「なんじゃこりゃあああああああああああああああああああ」

ここは湊の心象風景

「あるのは大海原と一隻の船

世は正に、大海賊時代

ありったけぇのぉーーーーゆぅめをーーーーーーー」

「この現実逃避っぷりといい、湊さんに間違いないようですね」

スクリーンの向こうで幽寺が腕組みをしながら嘆息する

「しかし、これは一体」

幽寺が考え込む

「あれじゃあないすか?」

圭一が身振り手振りを交えて説明した

「この術式は周りにあるものを使って構成する

自然霊に近いマーメイドを構成しようとして、湊の心象風景で出来たモノを素材にしてマーメイドを構成させたから湊さんでまず間違いないかと」

圭一の説明が終わると幽寺はうな垂れる

「まぁ、わかりました、つまりこの人魚は湊さんの一部なわけですね」

「そういうことっすね」

圭一がうなずくと、マーメイドに向かって高らかに宣言する

「さぁ、湊さんマーメイドよ!我を事件の渦中へとみちびけぇぇぇい」

圭一の言葉に呼応するかのように、くるりと背中を圭一に向けると、親指で自分の背中を指差した

「乗れってことすかね?」

どれどれと、圭一が近づく

そして、よーく見るとそこには

百円という文字と、硬貨投入口

「間違いなく湊さんですね、はい」

圭一はうな垂れ、ポケットからガマグチを取り出すと百円を投入する

「さぁ、お願いしますよ」

圭一は背中に乗り込もうとするが

「幽寺君、姉さんを呼んできてくれないっすかっづぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

いきなり、お姫様抱っこをされたかと思うと、下半身がジェットエンジンへと変形し光の速度で飛び立った

圭一のセリフの後半は聞き取れていない








「…え?」







あまりの出来事についていけない幽寺であった







「グおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

飛び始めてからどの位時間が経ったかわからない圭一と湊マーメイド

「んぬぅ、すぬ、死ぬ、シヌシヌゥ」

高度八千の高さを高速で飛び交っている

声は声にならず、ただただ寒い

鼻水など当の昔に氷尽きた

「どこっすっか!まだっすか!」


圭一が声を張り上げて叫ぶ

が、湊マーメイドには風を切る音で聞こえてないのかまったくリアクションを示さない

「もうだめなんすね、オレこのまま湊さんの夢の中で死んでいくんすね、目覚めたら忘れ去られる存在なんすね」

ふふふーーーーーと、泣く圭一にようやく湊マーメイドがリアクションした

「圭一、ついたよ」

「まじっすか!!」

ぱぁ、とにこやかな表情を浮かべ、雲の切れ間より眼前に現れたのは豪華客船

「が、眼前!!!!?」

圭一が叫ぶが、湊マーメイドは速度を緩めようとしない

ちらりと湊マーメイドの顔を見るとその表情が恐怖に覆われるが、そのまま船の甲板をぶち破り船内へ突入

そこにいたのは、幼い頃の湊とそれにまたがり首を絞めている黒いもやだった

「展開はやってえ?何?」

黒いもやは首を絞める手に思い切り力をこめる

「その子を解き放て!!その子は人間だぞ!!」

黒いもやはようやくこちらを認識したのか、こちらをちらりと見る

しかしその手を離そうとせず、尚一層手に力を込める

「くそう、言っても通じないっすか」

圭一は実力行使に出ようとする

しかし、コートを誰かが掴んでいる

後ろを見ると、湊マーメイドが脅え、離そうとしない

「そうか、あれは湊さんのトラウマ、ならばこの世界のもの総てが恐怖する存在」

幼い湊が悲痛なうめき声を上げる

「どうすれば」

その時、眼前にスクリーンが開く

「やっと追いついた、大丈夫ですか?」

スクリーンの向こうには幽寺君と

姉である咲の姿

咲は幽寺を強引に押しのけて怒鳴る

「ちょっと、話を聞いてきてみたら!どういう状況なの?」

「ねえさん、実はかくかくしかじかで」

「パクパクのポテチウマーなのね?最初っからクライマックスじゃない、でも大丈夫私の言うとおりにしなさい」

「何を言っているかわからないがすごい自信だ、もといすごい姉弟だ」

咲はお構いなしに言葉を続ける

「いい?やつは湊さんのトラウマよ、克服することは本人にしか不可能よ、しかし和らげることは出来る」

「どうすれば?」

「都市伝説に対抗都市伝説があるでしょう?それを精神と肉体同時に語るわ」

「わかったっす!!」

スクリーンの向こうで咲が湊に膝枕をする





口裂け女って知ってる?

これは友達の友達から聞いた話なんだけど

とある日の夕暮れ

通学路を帰宅途中、

「私綺麗?」

っていきなり聞かれることがあるんだって

でもね、それに答えちゃあいけないし逃げてもいけない

黙って視線を合わせずにずっと下を向いていること

そうしないと追いかけてきて、口裂け女と同じように追いかけてくるのよ




咲が語り終わると同時に船室の風景が暗転しとある通学路に変わる

黒いもやがちょっとした同様を見せると声が掛けられる

「わたし、きれい?」

黒いもやの背後に現れたのはマスクをした赤いトレンチコートの女

「さっすが、ねえさん」

「ねぇ?私綺麗?」

黒いもやがとうとう意識の矛先を口裂け女に向ける

口裂け女はマスクを剥ぎ取り、獰猛な雄たけびを上げ飛び掛った

「今のうちだ」

圭一は飛び出すと幼い湊を抱え上げる

ぐあ

黒いもやはその行動に気がつくとこちらに向かって反転する

しかし、その行動は口裂け女によって阻まれる

その状況を見て圭一は語りを始めた



口裂け女の起源を知っているか?

どこかのお母さんが、子供が早く帰ってくるように使ったうそなんだぜ?




その優しい気持ちが暗転し日本中を巻き込む都市伝説となった

お前と言う存在は、湊さんの中では最強のトラウマ

湊という存在の中で生まれ出でた湊の中でしか存在できない存在

湊のトラウマという湊の影そのものを攻撃するために湊は怖い話を聞き続けているのかもしれない



口裂け女の最後をしっているか?

盲目の少年に同じ問いを発した

「私綺麗?」

その少年から帰ってきた返答

「ごめんねおねえさん、僕、目が見えないんだ」

「あ…」

口裂け女は同情した

そして、次の言葉が女の心を打ち砕いた

「でも、お姉さんの声は綺麗だし、きっと綺麗だと思うよ」

次の瞬間、口裂け女は少年を抱きしめ号泣したという



世界に音が轟く

と、同時に口裂け女が渾身の力で黒いもやを口元より引きちぎる

そこにいたのは

「やっぱ、アンタを縛っていたのはあんたっすか湊さん」

一切の色のない、真っ白な湊がそこにいた

景色は元の船室に戻る

虚ろな表情をした湊はその場にへたり込む

「さて、帰るっすか」

寝ている幼い湊に優しく呟いた

その途端、「現実に戻りたくない」という声がどこからともなく響き渡ると白い湊が黒いもやを纏い飛び掛ってきた

と、同時に船が揺れブザーがなる

「転覆する!早く脱出を」

スクリーンの向こうから幽寺の声がする

「うっそ、まジっすか!!!」

スクリーンのあちら側へ行こうとするが、その間には黒いもや

「ちっきしょう、さすがにこれはまずいっすね」

圭一が思案するが、解決策も見当たらず突破する力もない

そうこうするうちに、黒いもやが眼前に迫る

「蛍市!!早くしなさい!!!」

咲の叱咤

しかし、これにより圭一は眼前をにらむ

「ウチの姉さんはちょいとこわいんっすよ」

圭一がニヘラと笑うと指で「」の形を作る

「心象風景撮影、被写体湊乃恐怖」

圭一が叫ぶとバシャッという音がして船室どころか世界全体に軋轢が走る

今度こそ、黒いもやはいなくなり白い湊は停止する

「崩れるから早くなさい」

咲に促され、圭一はスクリーンに走る

片腕を咲に掴まれ、もう大丈夫と思ったとき足に違和感を覚える

後ろを振り向くとそこには白い湊

風景は亜空間にゆがみ船室の向こうは深海に至る

圭一がもうだめだと思ったとき湊の向こう側に何者かが湊の指しを引っ張る

湊マーメイドが飛び出し、振動により出来た亀裂から黒いもやごと海の底へ沈んでいった

「早く!!」

幽寺がスクリーンの向こうから手を伸ばし、圭一の体を引き上げた



振り向く圭一

「記憶は、熟成されることで思い出に昇華される」

圭一の射影機にフラッシュが灯る

刹那、スクリーンの世界が光に包まれた








ックシュ

湊が目覚めるとそこは25日の朝

「ここは」

虚ろな目を開け、辺りを見回すと

クリスマスパーティというより宴会明けといった惨憺たる光景が広がっている

湊はカーテンを開ける、窓の外は白一色に覆われている

「ホワイトクリスマス…か」

湊は掃除でもしようかと腕まくりをする










「うーーーん」

圭一が目を覚ましたのは、正午の鐘が鳴る頃

辺りを見回すと、昨日のことなどまったく感じさせないいつもの館の景色が広がっている


「ほい、お昼ご飯の昨日の残り!!」

圭一の前にずいと出されたのはクリスマスケーキ

「ありがとう」

そう、一言言うと湊はそそくさと他の人を起こしに回る

湊から売れ残りのクリスマスケーキを渡されて驚愕する圭一

「今日はホワイトクリスマスっすね」

「どういう意味だオイ」

「いいえ、なんでもないっす!!」

クリスマス寒波が迫る今日

来年もいい年であってほしいと思う圭一なのでした



コメント(3)

マーメイド湊フイタ。
背中に100円投入口とか、かっ飛び具合がまさしく湊でした。

口裂け女の波状攻撃で、トラウマも当分大人しくなると思われます。




ふと思いついたおまけ


+++++


「三堂さん、三堂さん」

 柔らかな声に圭一が目を覚ますと、枕元に見覚えのある知らない人が正座していた。
 海老茶のジャージが似合わない、薄幸そうな女性だった。

「目が覚めたんですね、よかった」

 女性はほっと安心したように微笑んで、水の入ったコップを圭一に渡した。

「いつも助けてもらって、すみません。また私のせいで酷い目に」

 悲しげにうつむく彼女に、圭一は何か名状しがたい物が胸底からこみあげた。

「えっと…………湊、さん?」
「はい、どうかしましたか?」

 薄幸そうな女性はよく見ると湊だった。
 多分、湊なんだと思う。
 確認するように凝視すると、湊らしき女性は恥ずかしそうに目を伏せた。
 そしてジャージの袖口を引っ張って、洗剤と薬品で荒れた指先を隠した。
 圭一の中で何かが切れて、そのまま衝動に任せて叫んだ。

「おしとやかな湊さんとかッ!!違和感はんぱねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 叫んだところで目が覚めた。
 夢だった。


+++++

もしも、再教育(笑)が成功して湊がおしとやかになっていたら。でした。
服のセンス以外、身も心も大和撫子(笑)なので圭一△とか思っても口には出しません。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

語部夜行 〜カタリベヤコウ〜 更新情報

語部夜行 〜カタリベヤコウ〜のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング