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語部夜行 〜カタリベヤコウ〜コミュのあぎょうさん

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語部館は今日も平穏だ、とあたりを見回し夜子はため息をついた。
来客こそ居ないがいつの間にか住み着いたモノで今日もにぎやかだ。

チェストの上をオコジョがうろつきまわり
頭上のシャンデリアには九官鳥が鳴き
相棒は四次元将棋をチェス盤に並べてはまったりと紅茶を飲み
ソファーでくつろぐ夜子の足元にはニヤニヤ笑いのトミノが座っている。

『・・・ん?』

違和感に思わず足元を見ると
やっぱりトミノが三角座りで夜子を見上げていた。

『・・・何をしているの?』

やや引きつつも夜子が声をかけるとトミノは愉快そうにウフフフと笑った。

「ウフ・・・出かけようと思って準備をしているのです。ウフ、ウフフフ」

『ええと・・・いや、いい。いいから椅子に座りなさい』

色々と突っ込みたい所があるのを夜子は早々にあきらめた。
彼のようなタイプは「理解出来ない空気」を身に纏う
妖怪が相手の時ように「そういうモノである」と思う方が早いのを
相棒との長い付き合いで学んでいた。

夜子は自分の隣を少しあけると促すように椅子を軽く叩く。
出かける準備とトミノは言った。
多分自分と出かけるつもりなのだろう。
夜子としては出かける予定は無いが、そういう予兆はあるのだ。

「いいえ、ここで良いです。お気遣いなく」

トミノは隣へは来ない様だ。

仕方ない、と呟くと夜子は胸元から蒼ざめた色をした球体を取り出して
トミノの目の前へと持っていった。

『見えるか?』

トミノはニタァと笑うと満足そうに球体へと顔を近づける。

「子供が居ます・・・二人・・・あぎょうさんの話をしてますね」

『やっぱり見えるか、あまり近づくなよ。
 それは今私に見えているものだけれど・・・・・・あっ!こら!!』

夜子の話を聞いていたか居ないのか、トミノは球体に張り付くように顔を近づけて行ったかと思うと突然そこに潜り込む様にして姿を消した。

「迂闊だねぇ、夜子」

しまった、という顔をしてたたずむ夜子を横目で見ながら黒崎は声をかけた。

「行ってらっしゃい?」

夜子は何か言おうと口をパクパクさせていたが
数秒後にため息をふかーく付いてから答えた。

『行ってきます』

********************


今、僕の学校ではひとつの怪奇話の噂で持ちきりだ

「ねぇ、早く帰ろう〜あぎょうさんが出るよ」
「あぎょうさん…変質者じゃなかったの?」
「ちがうよぉ〜…見た人がいるんだって!」

「こら!貴方達放課後は早く帰りなさい!!」

先生に叱られて女子たちはキャーとか叫びながら教室を出た。
僕は机に隠した手作りのお札を握り締める。
…あぎょうさんは僕がやっつけないと駄目なんだ。

「…君も早く帰りなさい?先生送ろうか?」

先生が席を立たない僕の所へきてやさしく声をかけてきた。
僕は先生から目を逸らす…可哀想だとか思われるのが嫌だった。



一ヶ月前、僕の友達があぎょうさんに殺された。
僕がおいて帰ったばっかりにあぎょうさんに殺されたんだ。


僕は「いいえ、だいじょうぶです」とだけ答えると教室を出た。
さて、先生たちが帰るまで、どこに隠れよう…?




夏休みが終わっても、まだ日は高い。
6時を過ぎても学校が真っ暗になら無くて僕はホッとした。
あまり人の来ない視聴覚室の近くに潜んでいた僕は
そろそろ大丈夫だろうと近くの窓から辺りを見回す。

…変な子供が眼に入った。
コスプレって言うのかな?
とにかく格好が変な子がいる。

よく見ようと思って窓を開けようとしたとき
突然後ろから声をかけられた

「こんにちは…イヒヒヒヒヒヒ」

「ぎゃぁぁああああああああああああ!!」

あんまりにも突然だったから僕は悲鳴をあげてしまった!
ああ、駄目だ!!警備員のおじさんに見つかっちゃうじゃないか!

目の前の男の子の口をふさいで僕は視聴覚室に転がり込んだ

「うるくしないでよ!僕隠れてるのに!!」

「フヘッ!わ、私は何も煩くしませんけどねぇ?」

男の子はきょとんとした顔で反論してきた。
…もっともだ。

よく見るとその子はさっき見かけた変な格好の子と同じ格好をしてた
…ううん、たぶん同じ子だ。

「…校庭にいたよね、君おばけ?」

僕はありえないことを口にする。
男の子は首をひねるとフーン?と声を漏らし
その後クスクス笑い始めた。

「…少なくともあぎょうさんでは無いです…ウフフ」

あぎょうさんの名前に僕は一瞬びくっとした。
気にしすぎなんだろうか。

「おばけなら…後ろの人のほうが似てますよ?ねぇ?」

後ろに人??男の子が僕の後ろの人に話しかけると
うしろから深いため息が聞こえた。


…振り向くと真っ白な女のお化けが立っていた。

「?!?!?!!!!!!」

『…だれがお化けだ』

「ひっ…!」

白いおばけは声も出なくなっている僕を睨み付けると
『君か』とつぶやいた。

男の子が「彼ですね」と答える、僕は訳がわからない。
ああ、でも彼らがおばけなら…!!

「ま、負けるもんか!!
 おまえら、あぎょうさんの手先だな!!
 あくりょーたいさぁん!!」

震える声を何とか絞り出して、僕は手にしたお札を投げつけた。


べち!


…はらり


お札は女にぶつかると地面に落ちた。
もう駄目だ。

泣きそうな僕の目の前で
男の子とおばけ女は目配せして肩をすくめている。

『…まぁ確かに、本来用があったのは君にではないな、だが…』

「あぎょうさんの…噂を流したのは君ですか?」

男の子は僕にニタァと気味が悪い笑顔を近づけながら訊ねてきた
僕は一度は首を縦に振ったけど、ぼそぼそとそれを否定した。

「最初は…僕じゃないよ、友達が…」

言いよどんだ僕を見てお化け女は優しい声でこう言った

『この学校のあぎょうさんの噂を教えておくれ?
 私は呪いをときに来たんだ』

…僕にはあぎょうさんを倒せないだろうと思う。
このお化けは怖くない、いいお化けなのかもしれない。

「新しいあぎょうさんの話は死んじゃった友達に聞いたんだよ…」

僕はうなずくとあの日の話をしてあげることにした。




「なーなー!あぎょうさんの倒し方知ってるか?」

「知ってるよ!僕きのう当てた所だし!」

放課後、僕達は流行ってるカードゲームの
「夜行大戦〜妖怪語〜」の話題に夢中になってた所だった。
あぎょうさんの話題はそこから始まった。

「裏のテキストに全部書いてるし…ほら!」

裏には「あぎょうさん、さぎょうごいかに?」という問いと
その答え方が親切に書いてある。

友達はフーンとつまらなさそうに答えると
「それじゃだめだ」と言いだした。

「だめだめ!そんなの古いし!
 本当のあぎょうさんは…この学校のあぎょうさんはそれじゃ駄目なの!」

「えー!うちの学校には出ないって!いないよ!」

そう言いつつも実は少し怖かった。
おばけとかゲームはいいけど実は苦手なんだ…ちょっと見える気もするし。

「居るんだよ…10年前に人が死んでるんだぜ?
 実はあぎょうさんが殺したんだって!」

「喰われちゃったの…?」

「ええっとー…突き落とすんだよ!高いとこから!首をねじって!」

「えええー!」

その後も友達は普通の答えじゃあぎょうさんは死なない事や
そもそも質問が違うかもしれない事などいろいろ聞かせてくれた。
そうして僕がカードに書いてない事を訊ねたり友達が答えたりしてるうちに
すっかり遅くなってしまったんだ。
もう帰らなきゃって僕が言うと友達は急に忘れ物があると言い出した。

「あ、やべ!俺音楽室に笛忘れて来たんだった!取りに行かなきゃ」

付いて来てと言われたけど断ってしまった。
暗くなってきて怖いのもあったし、
これ以上遅くなると親に叱られそうだったから…。
僕は怖いんだろうとからかう友達を振りほどいて逃げるように帰った。

「…次の日友達が学校の階段で死んでたんです。
 あぎょうさんの噂をしたから怒って襲われたんだ」

『…なぜそう思うの?』

「だって…友達の死に方があぎょうさんの噂と同じだったから」

僕は半べそをかきながら続けた。

「僕が…置いて帰ったから悪いんだ…
 あぎょうさんを見つけてやっつけないと」

「ウフフフフフ!!…おかしいですね…?とっても!!」

男の子が急におなかを抱えて笑い始めた。

「な、何がおかしいんだよ!!」

「さぁ?でも喜んでいいんだと思いますけどねぇ?
 噂どおりなら…ウフ、あぎょうさんにすぐ会えそうですよ?」

「ど、どうして…」

『…友達は噂をしたからあぎょうさんに殺されたんだっけ?』


ふっ…と。


日が落ちたからかもしれない、急にあたりが暗くなった。
ひゅーと風が吹くとカーテンで視界が遮られる。

カーテンが視界から消えると…目の前には黒い塊。




《あぎょうさん…さぎょうご… い か に ?》


低い声が廊下に響く
カードで見たあぎょうさんそのものが僕の目の前に居た。

「いやだああああああああああ!」

嫌だ嫌だ!!!こわいよ!助けて殺される!!

「嘘だ!嘘!嘘だ!うそだよぉおおおおお!!!」

僕は「答え」を必死に叫ぶ。
あぎょうさんは噂どおり、それでは消えてくれなかった。

《あぎょうさん さぎょうご …いかに?》

もう一度低い声が響く。

「助けて!!」

僕は目の前のお化け女の胸に飛び込んだ。

『そうだな…』

おばけは僕を少し抱きしめると悲しそうな顔であぎょうさんに答えた。

『作業後は無く…あぎょう氏は死んだ、作業にて』

その言葉が終わると同時に、あぎょうさんの体が崩れ始めた。
ボロ…ボロ…と体が崩れていく

『いけるか…』

…あぎょうさんの体はぼろぼろ崩れたかと思いきや
その下から新しい黒光りする皮膚が現れた。
おばけ女は『だめか』と呟くと
僕の体を抱え込むようにしてかばうように立った。

『死なない…ってのが生きてるな、
 トミノ、悪いけどこの子を連れて逃げれるか?』

「ふぅむ、お断りしますね…ヒヒ…夜子さんは甘い人です。」

『っ!!ちょっとお前!』

「(にたり)」

お化け女の言葉をかるーく否定してトミノと呼ばれた男の子が
僕らの前に出る。


《…最後に問う。あぎょうさん さぎょうご いかに!》


「…あぎょうさんは、さぎょうしです」

ニィ…と男の子が笑って告げるとあぎょうさんはスゥっと消えていった。
なぜかあぎょうさんもニィ・・・と笑っているように見えた。

何がどうなったんだろう。
ぜんぜん意味がわからない…。

ぼかんとする僕に向かって…トミノ君が言った。

「ケケ…応急…処置ですが…どうしましょうね?」

『…アリなのかあれは…まぁ、この子次第かな?』

お化け女…夜子さんが僕の頭をぽんと…たたいて撫でる。

「…どうしたらいいの?僕…?」

「ウフフ。
 奇しくもあぎょうさんの正しい答えを貴方が持ってる、隠してる。」

『君が作り出したんだ、今のあぎょうさんは…答えはなんだい?』

二つの目がじっと僕を見つめる。
僕はぽろぽろと涙を流した。

「…ほんとは僕が突き落としたんです…怖がらせるから。
 そんな気は無かったんです…嘘ついてごめんなさい…」


*************************

ぐったりとソファにもたれ掛かると夜子はやや不満そうに呟いた。

『…トミノに助けられた…』

トミノはその前でウフフフと気味悪く笑うと
黒崎が真似をしてケタケタ笑った。

『煩いな!!…なんで駄目だったんだろ…ブツブツ』

夜子とトミノ、とった方法としては同じだったはずなのに。

「日本語の勉強をやり直したまえ、夜子。
 壊死は駄目になった細胞が破壊されるだけで再生するよ?」

黒崎はどこからか短いタクトを取り出すと
いかにもといった感じで中空に書いて説明し、夜子をからかった。
トミノはすでに興味が無いといった感じで部屋を出て行こうとしている。

『ああー!そうですか!!馬鹿にして!!くっそお!』

バタンと閉まった扉に向かって夜子はクッションを投げつけようとした。

「お〜やおやはしたない?」

「ううう…煩い煩い!んもうっ!」

夜子はすねた様にソファに倒れこみクッションを頭に載せて
もう何も聞きたくないのポーズをとった。

(…やれやれ。
 「壊死」のおかげであぎょうさんから
 やっかいな噂部分ははがれたのだろうに…)

それでも子供が嘘を認めない限り
彼が作った噂というなの嘘はあぎょうさんの形を変えづつけたのだろう。
…トミノがついていったのは
実はあぎょうさんの方を助けるためだったのだろうか…
考えたところでわかりはしないが。

「まぁ、今日も語部館は至って平和だ♪」
黒崎はおいしそうにお茶を口に運んだ。

コメント(7)

すごく久々の夜行への投稿です、お久しぶりです。

かねてよりお借りしたいと思っていたトミノをお借りいたしました。
結構自分が受けた印象を基に書いているので
イメージと違う部分がありましたらすみません。
トミノさんありがとうございました。

あぎょうさんネタはずっと抱えていたのですが
形にするのが非常に難しく
あたためすぎて楽しんでもらえるか本人にはもうよくわかりません(汗)
それでも楽しんでいただけたら幸いです。

では。
子供の頃、あぎょうさんの謎が解けず本気で怯えまくったはぴが通りますよ。
うわー超懐かしいー。
真相を知ったときの脱力感も今では良い思い出……って、本気で怖い話になって帰ってきたあああああっ!?

トミノ君と夜子さんはこのままコンビを組んで、怪事件に立ち向かえばいいと思います。
あぎょうさんを知らないらはぶが通りますよ。その為こんなすっとんきょうな勘違いをしました。
 
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
 
聖「『たぎょう』だな。」
 
 
夜子「はい?」
 
 
突然の聖の言葉に、夜子は思わず聞き返した。
 
 
聖「『あぎょうさん さぎょうご いかに』だから、『あ行』さんは『さ行』の後どうなったかってわけでしょ?『さ行』の次って『た行』じゃん。」
 
 
夜子「・・・・・・・・」
 
 
聖「いや、一つ飛ばしって考えると『な行』か?」
 
 
真剣に考える聖。夜子はそれを見ると、クッションに顔を埋めた。その身体は小刻みに震えている。
 
 
聖「あれ?どったの、夜子さん?」
 
 
夜子「ぷっ・・・・くっ・・・・・・くく・・・・」
 
 
どうやら夜子は聖の素晴らしくスタイリッシュな勘違いがツボにはまってしまったため、必死に笑いを堪えているようだった。


読んでいただけて光栄です♪
コメントくださった方もありがとーございますっ

>キートさん

妖怪って人と添わないと生きていけない存在なんだと思います。
良くも悪くも人の影響を受けて育っていくモノ達…
だから怖くもありながらとても愛おしいのだと。

>はぴさん

私もあぎょうさんがわからなかったクチですw
得体が知れないと怖いですよね…
火竜そばとかも全然わからなくてネタばれを見ましたとも!><

あぎょうさんは書く際にもう一度調べたのですが
未だに仕掛けしか良くわからない存在だったり。
妖怪らしくて大好きな七不思議です。

トミノ君はきっともうお借りしないんじゃないかなとか…
いいキャラ過ぎて夜子が負けっぱなしで主人公にならないw
あと自分の作風がどちらかといえば高橋洋介目指してるので
水木御大の空気が似合いそうな彼は難しかったです。
めっちゃ好きなのでご本人の次回作に期待中です。

>らはぶさん
聖君は私を夜子を殺す気に違いない…!

た行って!!!wwwwwwwwwwww
たぎょうwwwwwwwwwwwwwwwwwww

もうね、持病の喘息がでそうになるくらい笑いましたよ!!w
その発想はなかった!!w
あぎょうさん懐かしい…ほっとした顔
学生の頃怪談の上手な先輩が話してくれて、答が解けるまでめちゃ怖がってた覚えがありますウッシッシ
>あーちさん

お久しぶりです!
あぎょうさんのような意味不明なものはやはり怖いですよね。
もう少し怖く書けたらよかったのですが
キャラモノ寄りになってしまいました。

あぎょうさんの他にも言葉遊び系の妖怪は沢山いて
とりあえず知ってるもの全部に引っかかりました・・・w

また頑張りますので読んでいただけると幸いです。

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