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語部夜行 〜カタリベヤコウ〜コミュの「卒」

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バタン!
人気の少ない週末の昼下がり、一台の車から骨董物のカメラを大事そうに抱えた男が1人

「ここですか、怪談がうようよ聞けそうな学校は」

ニヤニヤ顔で校舎へと入っていく圭一。

…もちろん、子供達に不振がられたのは言うまでもない。


さすがに週末の午後という事もあり、校内には子供達の元気な姿を見受けることは出来ない。

「さて、まずこの学校の教師の人に取材許可取りませんとね〜」
なんて、ぶつくさ言っていると圭一の目の前に見慣れた姿。

「湊さん?」
「おぉ、圭一じゃない」

目の前でせっせとモップ掛けをしていたのは語部仲間の湊さん

「こんなところでなにやってるんすか?」
「仕事だよ、シ・ゴ・ト」

湊さんは、せっせと作業を進めながら返事を返してくる。

「トコロで圭一こそなにやってんの?」
「やだな〜、記者がカメラ持ってやってくるといったら1つしかないじゃあないですか」
「なんだフ○イデーか」
「いや!!危ないですってその発言!!ってか、人なんて追っかけてないっすから自分」
「…言ってて悲しくないか?」
「…えぇ、とっても…」
ふと、我に帰る圭一
「それで?」
湊さんが促す。

「実はですね、この学校の怪奇現象を調べてまして、なんでも、ここのは六つしかないらしいんですよ」
「六不思議?七じゃなくて?」
「そうなんですよ〜何かご存知ありません?」
「う〜ん…知らないなぁ」
がっくり頭を垂れる圭一
「そうですか〜じゃあ、職員室行って取材の許可もらってきますね」
「そう、がんばってね…あ」

果たして、オカルトまがいの取材で学校がOKを出すだろうか?
そんな物思いにふける頃、圭一の背に言葉が掛けられる。

「校務員さんや補習にきてる子から聞いた話があったようなないような」
「マジっすか!どこっすか?」

高速の勢いで戻ってくる圭一。

「あ〜なんだっけかな〜、最近肩こりの所為で頭痛がして思い出せないんだよな〜」
ぐるぐると肩を回す湊
「女性にこんな重たい缶持たせるなんてひどい同僚すね!」
「そうなのよ〜ひどいでしょ」
「もし良かったら時間ありますし、お手伝いしましょうか?」

ピョコン
湊の頭から狐耳が生えたのが見えた。
「あら本当?助かるわ〜・・えーと、六不思議だっけ?」

ビョーン
圭一の顔から狐のヒゲが飛び出す
このままアポ取りに行くより、このまま業者の中に混じってしまえば学校側も文句は言うまい。
まして、無給のボランティア!
どっからも、文句はあるまい!

「あら?圭一クン、顔が笑っているわよ?」
「湊さんこそ、何かいいことあったんですか?」
「えぇ、ちょっとね…オホホホホホホ」
「そうですか、アハハハハハハハハ」

三時のチャイムが時を告げる頃、二人の笑い声が校内に響き渡った。



もう日も暮れ、校庭が黄昏時に染まる頃。

湊と圭一は校内の後片付けを終え、校門へと向かっていた。

「保健室の人体模型、体育館の首なしドリブラー、音楽室の光る目の肖像、職員室のカミキリ先生、玄関の卒業制作、非情口」

二人で調べた怪奇現象と呼べるものを列挙してみても、その数むっつ。

「……七つには一つ足りない」

きっとなにか理由があるはずだ。

「別にいいじゃん、六不思議で」
「七つじゃないと、なんか収まりが悪いんですよ……あれ?ここさっきも通ったような?」
「やべ。通用口に素通りしちまったか?」
地図情報が頭に入ってないので、とりあえずそれらしい場所に向かって歩を進める。


「…………マジ?」

三回目の角を曲がって、ようやく通用口らしき場所に着いたと思ったら…

そこはさっきの場所

「別に私が今世紀最悪の方向音痴だとかそういうんじゃないから」
「わかってますよ〜錯視の起こりやすい構造の建築物ってわりとあるもんだし」
「信じてないだろ!?目が生温かいんだよ。もういい、正面玄関から直にでよう」

勢い良く飛び出す湊の後を、見失わないように着いて行く圭一…
だが、正面玄関もどこにもなかった。
「そんな馬鹿な」
正面玄関は圭一自身が入ってきた場所である。

間違えようはずがない。

だがしかし、眼前に広がるのはさっきと同じ光景。

さっきと同じ教室の番号札、さっきと同じロッカーの傷、さっきと同じ校庭の風景

さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…さっきと同じ…


そんな困惑の最中、自我に帰ると日が暮れているのに気がつく。

「おかしいなんてもんじゃない……ヤバいぞこれ」

日暮れを確認し、なんとなく目にした腕時計は…通常と異なる速さで回転し続けていた。

「実は同じ場所をくるくる回ってるだけだったりして」
「洒落にならないですよソレ」

無限にも思える回廊を幾度闊歩した事だろうか、

ふと、女子トイレの前に人の気配を感じる。

「誰か……いる」


「どうしたの?」
恐怖で硬直した圭一を余所に湊は女の子に駆け寄ると話しかけた。

「一人?」
女の子は無言で頷いた。
「お腹痛い?……もしかしてアノ日?」

ちょ…なんて事を言いますか!一応性別上は♂な私もいるんですよ。

というツッコミは私の胸の中にしまっておく。

「とにかくここはヤバいから、トンズラするよ」
湊は女の子を軽々と抱きかかえるとスタスタと歩き始める。

ダンッ

どこに向かって歩き続けようか、考えている間に廊下に響き渡る反響音。

思考中だった私は、ほとんど条件反射で音のほうを見やると壁に当たって跳ね返ってくるボール。

廊下の薄がりを転がっ来るボールを凝視すると。


グシャグシャに潰れた生首が笑顔を湛えて転がってきた。

「うわああああああああああああああっ!!」

その声が少女のものか、湊のものか、あるいは私のものか判別できない。

その声を皮切りに三人は駆け出した。
廊下を疾走する三人、走っている間にも明らかにその気配は増している。




不意に、目の前に壁が現れた。
行き止まりと思って一瞬焦ったけど、廊下は丁字路になっていただけだった。

「左右に別れよう」
「わかった」

一二の三で別れる二人。


「でぇぇぇぇ」
後を追ってきた怪物のうち…五匹共、後をついてきやがった!!
「あっれ〜?せめて半々位になるんじゃあないのか〜?」
そんなにモテるんだろうか?
どうせもてるんだったら綺麗なお姉さんの霊がいいなぁ〜

現実逃避に余念が無い圭一。

「さて、どうしたものか」
どう考えても、目の前は行き止まり…
何とかする方法考えませんとね〜

圭一は階段を駆け下りながら思考を巡らす。

普通、学校というのは七不思議が常。
なのにこの学校は六不思議となっている。
きっと数字が関係してくるのだろう

七というのは素数であって六という数は非常に安定的である。また、七は定規とコンパスによって作図出来ない事から推し量るものの出来ないものとしても受け止めることが出来る。

つまり、存在が安定しているものから不安定なるものへの昇華を望んでいるということか?

宗教においては人間は七つの大罪を背負っているといわれているし、日本にも七人ミサキという集団がいる。七福神や白雪姫の七人の小人もそうだ。

つまり、彼らは個で存在するのではだめなのだろう。

七つが1つのモノとして、もしくは一つのものに内包される七つとして存在を認められないといけないのか?

…彼らは現在六不思議…

ということは…。

「あれ、もしかして…」

いかんいかん、彼らはいたいけな六不思議。
彼らのヒトを怖がらせようという気持ちに失礼ではないか。

カコン

圭一の頭に何かが飛んできた。

「胃ぃぃぃぃぃ!!?」

拾って確認する暇もなく、目配せだけで飛んできたものを視認するとそこにはプラスチック製の胃が転がっていた。

「やっべ、あいつら本気じゃあないですか」

次々に飛んでくる脳や大腸や眼球(のプラスチック製品)

眼球をかわした所で、曲がり角を曲がる。
「これでまた、時間が稼げる」
と思ったのもつかの間、廊下の先が行き止まりだと気がつく

「今日は貧乏くじばっか引いてるなぁ」
とりあえず今は時間が欲しい、行き止まりまでまだ300mはある。
圭一は足を止めずに思考する。

まさかとは思うが、彼ら六不思議は最後の一人を欲しているのではないだろうか。
七という数字に神聖性を見出す聖書にヨハネ黙示録があるが七つの門が登場し、また七つの大罪を封じるというありがたい本がある。
聖書といっても、性質は預言書である。
黙示とはアポカリュプスの訳であり、隠していたものが明らかになるという意味である。
彼らが七つに成った時、何が起こるのだろう。

「ってだめ自分!興味本位で七不思議になっちゃだめ!」

自分の頬におもいっきりビンタを喰らわすと「ヨシ」と掛け声と共に気合を入れなおす。

だが、行き止まりまでとうとう10m。

確か、コンパスと定規を使って書けないのが七角形
…九角形も書けない筈だよな〜

7…9…ナ…ク…

7月生まれがルビー9月生まれがサファイア、いずれもコランダムという鉱物の内包率によって色が変わる・・・かんけぇねぇ!!

7…9…ナ…ク…

「マジ泣きたいよ」

後ろからゴゴゴッという金属の摩擦音のような、洪水後の濁流のような音が響く

「7・9だめだ!いい案浮かばね〜」

廊下の隅まで駆け抜けるとそこには校務員室

「鳴くよウグイス平安京!!助けてください陰陽師レッツゴ〜!!」

掛け声と共に校務員室に飛び込むと、今まで圭一がいた場所に黒い水の奔流が押し寄せた。
急いでドアを閉めると鍵をかけ、ついでに仕事柄いつも携帯している護符を一枚、扉に貼り付けるとロッカーに駆け込んだ。

「七はヘブライ語でザディン、ラテン語のZの語源ですか〜私もとうとう後ナシですな」

七を考えている内に、圭一はふと昔された話を思い出した。

私は迷い人、時の狭間の迷い人。

何をしてもリセットされる七日間。

始めの内は戸惑うばかりだった。

同じように繰り返される七日間。

何度同じ時間、同じ事を繰り返したことか。

だが、私にも見栄がある。

自分がやった失態を覚えていれば、ソレは回避できる。

何度も同じ一週間も繰り返し、何度も再挑戦を行った。

テストは全て百点、告白も全て成功させた。

順風満帆だ。

だが、それでも一週間後には全てがリセットされる。

虚しい、空しい、ムナシイ

ソレまで積み上げたものが最終日の正子(午前零時)には崩れ去ってしまう。

私はもう、全てがバカらしくなった。

そうして、好き勝手やる事に決めた。

思いつく犯罪は片っ端からやってみた。


銀行強盗なんかは特に面白かった。

見取り図を調べ、綿密に計画をして、強盗に挑む。

失敗したって大丈夫、拘置所に拘束されていても一週間すればリセットされる。

そうして、失敗点を改善してまた強盗に挑む。

正にゲームだ。

ソレにも飽きると、その金を使って豪遊、豪遊また豪遊。

だけど、ソレも飽きてくる。

いつものように暮らし、たまには学校生活に戻ろうかなと思ったある日。

ボーっとしていた私は、眼前に車が迫っている事に気が付かなかった。

まあいいや、どうせ一週間が始まるだけだ。


だが、それは一切起こらなかった。

私は現在、今まで起こった一週間の贖罪を行っている。

犯罪を起こした相手からの報復。

私は刺された。

銀行から脱走での一幕。

私は銃殺された。

遊んだ女の逆上。

私は轢かれた。

喧嘩を売った街のチンピラの暴行。

私はなぶり殺された。

私は死んだ。

私は死んだ。

私は死んだ。


一体、いくら死ねば終わるんだろう。







どんな犯罪をやっても一週間経てばリセットされる。



最後、リセット後の人生を歩む贖罪の人生。

もう誰か、ゲームオーバーにしてくれ。



コメント(8)

…ところどころ吹いたw
いや、陰陽師とか(ゴニョゴニョ)

圭一さん、戦える人だったんですね!
知は力なり…仕掛けが「らしい」話で楽しかったです。

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