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語部夜行 〜カタリベヤコウ〜コミュの「痣」

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男は以前より何者かに付きまとわれている気配がしていた。
男は漢であり、道を極める事を生業としていた。

そんな彼である。
恨みや憎しみなんて1つや2つではない。
幾らでも買っているが、それを補って余りある人望と力が彼にはあった。

そんな彼でも自分しかいない家に帰ると途端、臆病になる。
自分しかいない、静寂が包み込む我が家。

水道から水滴が垂れる音や風で雨戸が揺れる音。
そんな些細な音でさえ、彼にとっては恐怖の対象であった。


「早く寝なければ」
そう思って、彼は早く床に着く。

また、明日の朝、日が昇ればいつもどおりの毎日が始まる。

…そう思っていた。

明日の朝になれば、子分が迎えに来ていつものように肩で風を切って歩く自分がいる。

…そう、思っていた。

そう思いながら、眠りについた…。


三堂圭一は車である場所に向かって飛ばしていた。

ある男が捕まり、実刑判決を受けたというのだ。

刑務所にはいられては、もう彼に合えない。

圭一は言葉通り手に汗を握り、ハイウェイを飛ばしていた。



「男の異変が始まったのはあの、流れの挿師」に背中を彫ってもらってからだ。
ずっと背後から視線を感じる。

彫って貰ったのは羅刹
羅刹は修羅を喰い生きるであり、インドの神であり戦の象徴でもある。
男はこの彫りを背負ってからというもの幸運ばかり続いた。

喧嘩をすれば負けなしだし、「交渉事」にも必ずといっていいほど成功した。

…女性関係は…まぁ相変わらず疎遠だったが…

男がその日、言われた仕事は誘拐であった。
男にとっては慣れた仕事だったし、同業者も絡まない簡単な仕事だった。

案の定、仕事は簡単に行った。
問題はその後である。

誘拐した人物を依頼者に引き渡す時言われたのだ。

「一生呪ってやる…」と

「口から出任せを」
その時はそう思った。

だが、それ以来というモノ、男の周りでは不可思議な事ばかり起こる。
絡んでいないはずの男に、わけのわからない因縁を付けられる。
街中で見かけた可愛いと思ったコに逃げられる。

挙句の果てに今日、親父に離縁されてしまった。



そんな事が続き、男は体力・精神力共に尽き果てようとしていた。

「もう疲れた」

そう思い寝ようとした時、ふと風呂に入ってない事を思い出した。
男は気になるとそのことで頭が一杯になる性分である。

シャワーでいいから済ませようと思い、風呂場へ行く。

服を脱ぐと蛇口をひねった。
眠気が覚めるのを嫌がった男は温いシャワーで体を流す。

ふと、シャワーにノイズが混じる

「・・・やる」

へ?

蛇口を閉じたが何の声もしない

気のせいかと蛇口をひねろうとした時、

「…ってやる」

今度ははっきり声がした。

「誰だ!出てきやがれ」

男は風呂の戸を勢い良く開けたが…誰もいない…

疲れているのか?

そう思ってふと振り向いた瞬間。

「呪ってやる!!」

…男は見てしまった。

男の背中の羅刹が羅刹女へと変わっていた事を。

男は洗面所に駆け込むと護身用にと隠しておいた短刀を抜くと、背中の羅刹女に切りつけた。

「ぎゃ〜〜〜〜」

男は自分の体の痛みなど忘れ、「これでもか!これでもか!」となんども切り付けた。

「呪ってやる呪ってやる呪ってやる!!」

始めは荒々しかった声も、いつの間にか弱弱しくなり、次第に消えていった。

「どうだ、ざまぁみろや」

男は勝ち誇るとどんなになったか、背中を鏡に写してみる。

男の背中には満身相違となった羅刹女の姿があった。



男は久々に快眠を味わった。



「アニキ!アニキ〜!」
誰かが呼ぶ声がする。

「起きてくださいよ!アニキ!!」

きっと子分の誰かだろう。


「早く起きてください!親父が昨日の件はなかった事にしてくれといってるんです!」

男は飛び起きた…が、内心はどうでも良かった。
バケモノを倒した高揚感。

それだけで男は満たされていた。

「わかった、今開ける」

玄関の戸を開けた男の目の前に…三人の羅刹女がいた。

「うわぁ」
「どうしたんすか?アニキ」

男は仰け反った。

「くるな、くるんじゃあねぇ」

男は三人の羅刹女を交わすと車に飛び乗り、エンジンをかけた。

「ちょっと持ってくださいよ!アニキ!!」

追いすがる羅刹女
その姿を見る前に男はアクセルを吹かすとその場を後にした。


暫らく車を飛ばす。

「ここまでくれば」
内心、ほっと仕掛けたその時、サイレンが響いた

「前の車、止まりなさい」
「くっそ、ネズミとりかよ」
男は車を止める。

おとなしく窓を開けると…そこには羅刹女の姿が

「ざっけんじゃねーぞ!!」
言うが早いが男はアクセルを吹かした。

「まて!!」
「誰が待つかよ!!!」

男は早朝の国道を飛ばす

後ろには三台のパトカー…と、それに二人ずつ乗った羅刹女


「ちっくしょ!どうなってやがる!!!」

徐々に増えていくパトカーと羅刹女とのカーチェイスを繰り広げる男。

前方に突然道をふさぐようにパトカーが立ちふさがる。

「コナクソッ」

男は寸でのところでバリケードをかわす

「ヘヘンだぁ」

振り返り、パトカーを眺める。
どうやらもう追っては来れないようだ

「どんなもんだってんだ」
と、前を振り向いた時
眼前にトラックが迫っていた


男が次に眼を覚ましたのは警察病院の中だった。

「ってて、どうなってやがんだ」

「あぁ、起きられたんですか?先生!先生!!」
目の前が暗い。体が動かない…。喉が焼けるように熱い
「大丈夫ですか?全身火傷でとても危ないところだったんですよ?」
「はぁ、そうなんですか…」

男はちょっと間を空けた後
「ところで、何で暗いんですかね?」
「全身火傷の性でまぶたがやられてね、現在ガーゼで押さえています。」

「そうですか」

また、間を空けた後、こういった
「私の体…どうなったんですか?全身火傷っていいましたが…」
「現在、皮膚呼吸出来ない状態です。なので、酸素マスクを付けさせてもらってます。苦しいですけど我慢してくださいね:
「私の背中、見ました?」
「えぇ、火傷がひどい状態ですね」
「…実は、私背中に…なんちゅうか、タトゥーしてるんやけど…」
「タトゥーですか?それもわからないぐらいの火傷ですよ」

「…そうなんすか」
「では、今先生を呼んできますから待っててくださいね」
「わかりました」



暫らく男は深い呼吸をついた後
「助かったんだ…」
一言、息を漏らすように行った。

足音が近づいてくる。

「子安さん」
「はい」
「どうですか子安さん、お加減は?」
「まぁ、生きているだけありがたいです」
本音だった

「では、眼の方もよさそうなのでガーゼ外しますね。」
「はい」

目の前に日の光が立ち込める。

暫らく、滲んでいた視界が徐々にハッキリしてきた。

しかし、男は後悔した。

なぜなら、男の視界には…ニヤニヤ笑った羅刹女の姿があった…


男の意識はまた…闇の中に消えていった。

その男の背中には地獄絵図が出来上がっていた…


火傷で正に地獄を思わせる赤い皮膚と…

切り傷により口元を吊り上げて笑う羅刹女の顔があった事を…


報道陣が詰め寄る中、『子安洋輔』が警察病院から出てくる。
これから刑務所へと護送されるところだ。

前代未聞のカーチェイスを繰り広げた『子安洋輔』は、「公務執行妨害」や「殺傷罪」などまだまだ余罪があると思われる。


「写真一枚いいですか?」
圭一が聞くと
「好きにしてくれ」
げっそりとした声が返ってくる。
…では、と圭一がシャッターを切った。



忽然と男の姿が消えた。
騒然とする警察・報道陣各位


混乱と雑踏の最中、圭一はその場を立ち去った。
その時、『子安洋輔』にばかり注意がいって気が付くものはいなかっただろう。

インタビュアーのその手に、年代モノのポラロイドカメラが握られていた事を。


圭一が手にした写真には1人の男性の姿が。

「とうとう見つけたよ」
車に戻ると勢い良くドアをしめた。
圭一はしばらくうっとりと写真を見つめたが、
気を取り戻すとまた車で移動を始めた…



全ての怪異と事件が語られる…あの館に向けて…



「待っててね、ネェさん…」

車を飛ばす中、興奮を押えられず…スピード違反でネズミ捕りに捕まったのは言うまでも無い…


…あと、11枚…

コメント(7)

ちょっと忙しくて今日やっと読めました。
黒圭一(?)さんは普段の圭一さんと比べてカッコヨサがUPしてますねw

部屋案内に追加遅れてすいませんでした。
追加しておきます〜。

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