ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

ルリプロ 〜Ru - Re Project〜コミュの【3話の1】夏の夜空とあの太陽(ヒカリ)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
第三話…回想と傷心

〜午前九時頃〜

期末テスト初日。
みんな真剣な面持ちで挑んでいた。

――余裕が無い順からそれぞれの様子を。

去年も一教科赤点で夏休み一週間補習を食らってしまった丈文。

丈文(やべ、全っ然わかんね!!……よーし、ここはお約束DA!!)

――チラッ、カキカキ。

どこからか視線を感じている愛未。

愛未(……うぅ、気のせいかな)

――びくびくびく。

周囲で不穏な動きを察知した七海。

七海(この教科落としたら夏の部活と大会に響いてしまうわ……それにしても青柳のヤツ、早速カンニングの態勢とってるし……)

あまり消しゴムを使っていない蒼太。

蒼太(この教科は余裕だ、先公手抜きしたのか)

ちなみに蒼太はこの日の他の教科でも開始30分で見直しまでして仕上げていた。

――ZZZZZZ。

転校したてでイキナリ定期考査に当たってしまった不運な晴香。

晴香(ココは昨日蒼太から借りたノートに書いてあったわ。あとは去年習った気がする……できたっ!)

そして先程の丈文。
監督の教員が丈文の様子に気付いて近付く。
一方の丈文はまだ教員の動きに気付いていない。

――チラっ。

教師(ニヤニヤ)

丈文(う゛……)

教師(青柳ぃ〜、テストなんだから授業中みたいによそ見すんなよ〜?)

丈文(……すんません)

その様子を見ていた七海。

七海(悪いことはす〜ぐバレちゃうんだよね。
ま……わたしも気付いてたけど後でコソコソ告げ口するのはわたしの性に合わないけどね)

結局丈文はこの教科を落としてしまう。
しかも答案を見られていた愛未も何故か落としてしまった。
二人とも解答欄が途中から一個ずつズレていたという。


************************************

〜正午頃〜

今日は親が出張で帰ってこないらしく自宅と反対方向へ買い物をしようと駅前に向かっている蒼太。
ところが天候は突然の雷雨。

蒼太(ち、これから手荷物増えるというのに……)

舌打ちしながらも蒼太は鞄の中から折りたたみ傘を取り出した。
彼は手荷物がかさばるのが嫌いで普段の雨でも折りたたみの傘を使用していた。
その割には鞄の中に常備していたのだった。

??「あーんっ、傘持ってきてないのに!天気予報では夕方頃だって言ってたじゃん!」

――たったったったっ!

蒼太(ん、今のは……)

蒼太は先程駆け足で追い越して行った女子生徒が見知った人物だった気がした。

――たったたっ。

――くるっ。

蒼太(……ん?)

――たったったったっ。

蒼太「晴香か」
晴香「って、私だって気付いてたの」
蒼太「人違いだったら嫌だから声掛けなかった」
晴香「しょんぼり……」
蒼太「それよりお前傘忘れたのか」

と、言ってさりげなく晴香の頭上に傘をさす。

晴香「ありがと、でも蒼太、家はこっちじゃないんでしょ?」
蒼太「昨日から明後日までうちの親が出張でいないから食う物買いに行くから」
晴香「そっかぁ、蒼太の家も大変だね」
蒼太「まぁ、親がずっと海外のお前んちよりはマシだ。それより駅まで傘入れてやる」
晴香「え、いいの?」
蒼太「雨に濡れて風邪でもひいたらテスト受けられないだろ」
晴香「蒼太、ゴメンね、用事あるのに」
蒼太「気にするな、で、駅から傘はお前に貸す」
晴香「それは悪いよ、蒼太が濡れちゃうよ」
蒼太「通り雨だろうししばらくしたら止むだろ」
晴香「うーん……ぁ、そうだ!」

晴香が何やら思いついたようだ。

蒼太「どうした?」
晴香「どうせ通り雨だし、雨宿りだと思ってうちでお昼と……
あと、都合がよかったらでいいんだけど、テスト勉強と晩御飯食べに来てよっ」
蒼太「昼と晩にテス勉か、オレは別段構わないが家の人に悪いだろ」
晴香「いいのいいの、今日は蒼太お陰でテスト出来たからっ!うちのおばさまも歓迎してくれるよ」

そう言うなり晴香は蒼太の手を引っ張り駅反対側の自宅へと連れて行くのだった。

蒼太「おい、引っ張るなって、オレが濡れる!」
晴香「行くよ〜」

晴香は楽しげだ。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

〜午後十二時半頃〜

――井上邸前。

晴香「とうちゃーく、ささ、どーぞどーぞ☆」
蒼太「あ、お、おい」

晴香に背中を押されて富博の家の門をくぐる蒼太。
井上家はこの辺でも一際大きい邸宅だ。

晴香「ただいまー、ほら、蒼太もあがって」
蒼太「あ、ああ……おじゃまします……」

先日槙島院長から晴香が井上家で厄介になっていることを聞いているものの、
いざ当人に自宅に連れてこられると何故か緊張してしまう。
まるで親に彼氏を紹介しに連れてこられた感じに似ている。

すると家の人間が奥から出てくる。

富博「おかえりハル……お、鳥居、珍しいな、キミがうちに来るなんて」
晴香「二人とも知り合い?」

晴香は二人に面識があることを知らなかったようだ。

富博「鳥居とは一年の時に同じクラスだったからね。よく丈文と遊んだよ。
それに、彼はうちに何度か来たことあるぞ」
晴香「え、そうだったの!?でも蒼太と富博が友達だなんて意外」
富博「そうか?んま、丈文絡みってのもあるけどな、しかしこの組み合わせにはビックリした」

すると晴香が頬を赤らめながら話し出す。

晴香「あのね、蒼太が雨に濡れてる私を気に掛けてくれて一緒の傘でそのまま来てもらっちゃったの」
蒼太「つーわけで送り届けたオレは帰る」
富博「まぁマテよ鳥居」

――がしっ!

さりげなく帰宅しようとした蒼太だがあえなく富博に捕まる。
そのまま富博は続ける。

富博「ほー、てことは相合傘で帰ってきたワケか」
晴香「そうそう……って、え、えええええええええ!?」

晴香の顔がますます真っ赤になった。

蒼太「嫌なのかよ」
晴香「い、いやそうじゃなくて、違くて、じゃなかった、えーと、えーと……」

もはや恥ずかしさのあまり舌が廻っていなかった晴香。

富博「ま、こんなトコで立ち話もなんだからあがりなよ」
蒼太「ああ、お邪魔する」

そしてようやく家の上にあがり、富博に奥へ通される蒼太。

――とっとっとっ。

晴香が着替えてくるまで富博は昼食の準備、蒼太は客間に通され周りを見渡している。
奥から茹で上がったパスタとケチャップのような匂いがする。

蒼太(富博もだいぶ手馴れているモンだな)

母親の恵美子がしょっちゅう帰りが遅くなったり出張だったりする蒼太も家事全般一通りこなせるがあくまで必要最低限。
富博も一通りのことはこなせるが、彼の場合は嗜むといった方がいいだろうか。
それでも一人で暮らしたとしても生活能力は申し分ない。

様子が気になって蒼太は彼が作業している台所を覗き込む。
富博も台所に客人が訪れたことに気付く。

富博「なぁ、鳥居はナポリタン大丈夫か?」
蒼太「ああ、大丈夫だ。出されたものは残さない」
富博「お、好き嫌い無いのか」
蒼太「そういや晴香って食わず嫌い多いのか。タマネギとピーマンあいつ食えるようになったのか?」
富博「それが全然ダメでさ、ナポリタンにしたらキレイにそのタマネギとピーマン残してた。
タマネギは土人でピーマンはお化けだとさ。そういやキミはハルと一昨日会ったばっかりじゃないのか?」
蒼太「まぁ、物心つく頃から散々いじられてた頃があるんだ」
富博「物心つく頃て……僕も昔の晴香のことはあまり知らないけど……昔から面識あったのか」

富博は二人の関係が気になっていた。
昔から人と係わり合いをしようとしない蒼太が突然現れた転校生と親しげ(?)なのは不思議だ。

蒼太「まぁ、な。色々と」

そう言って蒼太はやり過ごそうとする。

富博「そうか、でもキミがあまり話したくないなら僕は聞かなかったことにする」

富博も彼の人間性は一応理解しているのでそれ以上のことを訊こうとはしなかった。

蒼太「言っておくがただの幼馴染でそれ以上の関係はない」
富博「そうなんだ、その割にハルはキミのこと随分慕ってるな」

蒼太は飲み物を噴きそうになって堪えてむせた。

蒼太「だ、だから何でそうなるっ!?」

蒼太の顔が赤くなっている。
彼が慌てるのは滅多にない。

富博「でも遠く離れてしまった昔の幼馴染ってのはそうそう後年になって出逢えないからね、邪険にしちゃいけないと思うな」
蒼太「ふーん、晴香が……ね」

そうこうしているうちに三人分のナポリタンを仕上げた富博はダイニングにそれらを運び、
内線で着替えから一向に降りてこない晴香に食事だと言って呼び出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

〜午後一時頃〜

食事も済み富博はごゆっくり〜と変な気を遣って早々と自室に入ってしまう。
晴香と一階に残された蒼太は晴香に自室にいざなう。
初めは戸惑う彼だが晴香の背中を押されて足を踏み入れることになった。

蒼太「まだ荷解き終わってないのか」

晴香の部屋にはまだ引越し用の段ボール箱がいくつも積まれていた。
既に箱から取り出されているものもあるが必要最低限の物にとどまっている。

晴香「うん、二日じゃなかなか出来なくてね……週末使ってやろうかなって。
それじゃ、ココ座って」
蒼太「ん、ああ」

彼を座らせ彼女も座る。
すると蒼太は何かおかしいことに気付く。

蒼太「晴香」
晴香「どうしたの?」
蒼太「テスト勉強とか言うけどオレは明日の科目の勉強道具は持ってきてないぞ」
晴香「それが私も明日の科目の教材なくってさ」
蒼太「そうか、まだ貰ってないとか言ってたな」
晴香「そうなの、先生もそのこと忘れてるのかな」

二人『……』

二人とも沈黙してしまう。

蒼太「ダメじゃんか」
晴香「うぅ」
蒼太「でも昨日はどうやって勉強したんだ?」
晴香「富博から借りたよ」
蒼太「なら今日も借りてこい、多分同じ科目だろうけどアイツなら勉強しなくても充分だろ」

――数分後。

晴香「全部は無理だけど借りられたよ」
蒼太「じゃあはじめるか」

――三十分経過。

晴香「ちょっと飲み物持って来るね」
蒼太「ああ、悪いな」

――さらに五分経過。

晴香「おまたせ〜。はいどうぞ」
蒼太「どうも」

飲み物を飲む姿をじっと眺めている晴香。

蒼太「こっちばっかみてどっかおかしいところでもあるか?」
晴香「ううん、どこも普通だよ。ねぇ、蒼太」
蒼太「ん?」
晴香「昨日の朝ことなんだけどさ……」
蒼太「ああ」
晴香「あの話するまで私のコト覚えててくれたの?」
蒼太「ああ、一応。お前は?」
晴香「私はね、ずっと忘れたことはないよ。だってコレを貰ったから」

そう言って胸元からペンダントを取り出す。
それは緑色の綺麗な石に針金のようなものが絡めてあるようなデザインだ。

晴香「キミからはこの中の石を貰って、外側はずっと前自分で作ったの。昔から持ってるネックレスにさげてみたんだ」
蒼太「石……オレがいつあげたんだ」
晴香「覚えてないの?そこの海岸で施設のみんなと花火を見に行った次の日だよ」
蒼太「そんなことあったk……あったな、凄い爆発だった。去年のが酷かったから今年は中止だとか」
晴香「えー、花火今年はやらないんだ……あのね、私も去年は両親と見に来てたんだ」
蒼太「お前もあの光を見たワケか」
晴香「うん、十一年前の時みたいだった。それで次の朝に変わったことがないか砂浜歩いてみたらこの石を見つけたの」

それは、親指小でオパールかエメラルドグリーンの様なとても綺麗な小さな石だった。

晴香「最初はその辺に落ちてる貝とか石を海めがけて投げてたりしたの、
そのときに偶然拾ったの」

晴香はその石を蒼太に手渡した。

蒼太「まるで硝子みたいだ」
晴香「でしょ?それでね、この石は蒼太にあげる」
蒼太「は?珍しいならお前が持ってりゃいいのに」
晴香「いいの、持ってて」
蒼太「なら貰っとく」

そういって鞄の内ポケットにしまい込む。
そして晴香は再び蒼太に話しかける。

晴香「あのさ、話が変わるんだけど」
蒼太「ん?」

晴香が遠慮がちに蒼太の表情を覗いポツリ喋る。

晴香「私がいなくなった後に彼女とか出来た?」

蒼太はよろけた。

蒼太「イキナリ何を訊くかと思いきや……オレはずっといないしあまり人と関わり合いになるのは苦手だし」
晴香「……そっかぁ、わ、私もずっといないよ!そういう機会が無かったから……へ、変なこと訊いてゴメンね」
蒼太「ん……ま、いいけど、それより晴香」
晴香「は、はい!」
蒼太「何で急に固くなる、それよりお前の両親はお前のコト良くしてくれてたのか?」
晴香「え……あ、うん!お父さんもお母さんも私を実の娘のように接してくれてるし、優しくて頼りになるな」
蒼太「そうか、それはよかった。でも今はアメリカにいるってことは仕事忙しいんだろ」
晴香「うん、そうなのよね。うちのお父さんってちょっと大きめの建設会社の社長さんなの。
それでアメリカにも支店があって今はそこでがんばってるの」
蒼太「そうか」
晴香「それで今度の週末から今月まで早い夏休みで一旦帰ってくるの」
蒼太「それは楽しみだな」

晴香は自分の養父母のことを思い出して少しはにかむ。

晴香「そういえばアサちゃんがそこの森林公園の脇に団地がどうこう言ってたけど、蒼太のお母さんも関係してるのよね?」
蒼太「ああ、都市計画の課長だから忙しそうだ。
ここ何年か他の街のニュータウンだのあちこち見てきてるらしい。
その他にも自分の街のコトも見なくちゃならないから出張も残業も多い」
晴香「そういえば、蒼太は前にお母さんしかいないって言ってたけど……ううん、今のは聞かなかった事にして」

晴香は言葉を飲み込みきれず蒼太にしっかり聞こえてしまった。

蒼太「お前が引き取られた直後に事故で……純は……」

蒼太は額にうっすら脂汗を浮かべ手や声は震えだしていた。

晴香「え……純ちゃんが……ウソ……でしょ……?」

蒼太の言葉と表情を前にしてみるみるうちに晴香の顔色は青ざめてゆく。

蒼太「あれは事故だったけど……むしろオレが純の今を奪ってしまったようなものなんだ!」
晴香「ちょっと、それどういうこと、純ちゃんに何があったのっ!?」

――ガタン!

晴香がこれまでになく蒼太に詰め寄る、気付くと彼の襟元を掴んでいた。

蒼太「う……苦し……」
晴香「あっ……ご、ゴメンね」
蒼太「大丈夫だ、二人の苦しみに比べたらこんなの……」

そういって襟を整える。

蒼太「それより……オレ、起き上がってもいいか?」
晴香「ん……え、あわわわわっ!?今退きますっ」

詰め寄った上に彼を床へ押し倒していた。
晴香は彼の上から立ち退いた。
そして彼女はおずおずと口を開く。

晴香「ねぇ、教えて、もし、蒼太が辛かったら話さなくてもいいよ、
でも、純ちゃんはキミだけじゃなく私にとっても大事な友達だったから……純ちゃんはどうなったの?」
蒼太「……わかった」

外からはまだ雨音が聴こえる。


◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

↓続き:3話の2↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=22726779&comm_id=2550869

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

ルリプロ 〜Ru - Re Project〜 更新情報

ルリプロ 〜Ru - Re Project〜のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング