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ルリプロ 〜Ru - Re Project〜コミュの【2話の1】夏の夜空とあの太陽(ヒカリ)

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二話…期末テストと消える森

〜午前七時十分頃〜

転校生が現れた翌日、蒼太は何故か早起きして登校してきたが、
それよりも一足早く当の転校生・長峯晴香が既に教室にいた。

晴香「おはよう鳥居くん、早いね」
蒼太(先客が居たか……しかも転校生とか)

晴香は未だ転校二日目にもかかわらず無愛想とされている蒼太に話しかけている。
順応性は悪くないようだ。
ただ、朝どころか終日テンションが高くない蒼太はただ頷いているだけでロクに相手の話も訊いていなかった。

晴香「鳥居くん、明日は期末テストって聞いたんだけど、試験範囲教えて欲しいの」
蒼太「範囲なら後ろの黒板に貼ってあるからどこかにメモしとくといい、つか昨日の時点で教えてもらわなかったのか」
晴香「うん、先生一言も言ってくれなくてね。帰りに七海に教えてもらったの。だけど肝心の範囲とヤマは鳥居に訊け〜って言ってたの」
蒼太(あのアマ……テストのたびに毎度コレだ)

蒼太はまだ登校してきていない七海を恨んだ。

蒼太「授業やる気がないオレに訊くなんて人選が良くないぞ」
晴香「そんなぁ……転校早々赤点は嫌だな」
蒼太「不幸にもテスト直前に転校とは運が悪い、だがオレのノートはこんな感じでスカスカだ」
晴香「でも大事なところは書かれているんじゃないかな」
蒼太「まぁな」
晴香「もし、授業中使わないなら今日の授業中、そのノート少し貸して欲しいな」
蒼太「止した方がいいと思うが、後悔しないならノートと教科書も貸すぞ」
晴香「本当に?嬉しいな。まだこの学校の教科書貰ってないから助かるよ、ありがとう鳥居くん!」

普段より誰かとコミュニケーションをとろうとしない蒼太だが、いつの間にか転校生と会話を成立させていた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

蒼太(朝が早すぎて誰も来やしねぇ)

蒼太からテスト範囲を教えられて晴香はやっと黙々と勉強始めるのかと思いきや、
いつの間にか蒼太がマンツーマンで勉強を教えている態勢になっていた。
晴香といえばテスト勉強を教わりつつ彼と雑談を交わしていた。


晴香「――でね、私の両親はこの春からアメリカに居るの。最近までは一人で生活してたんだけど、先月近所が火事だったり空き巣だったりで、うちの親も心配して今回この学校を手配してくれてこの街の親戚の家にお邪魔してるの」
蒼太「それもまた物騒だな……うちの母親も昔から出張ばっかで居ない時が多い、でも一人でおおかた身の回りぐらいはできる」
晴香「料理とかするの?」
蒼太「一応、腹に収まればどうってことはないし」
晴香「すごいな、私ってご飯がうまく炊けないときがあるの。おかゆみたいになったりとかね」
蒼太「水っぽくなるのはきっと研ぎすぎなんだろ」
晴香「そっかぁ、私研ぎ汁の白っぽいのがどうしても気になるの」
蒼太「別にきれいに研がないと食えないワケじゃないから心配するな。で、何回洗ってるんだ?」
晴香「多分三回か四回」
蒼太「その分米が水を吸っているわけだから、分量通り炊くなら一回か二回洗えばいい」
晴香「ぇ、それだけでいいの?」
蒼太「ああ、昔世話になった人にそう教わった」
晴香「昔?お父さんとかお母さんからじゃなくて?」
蒼太「じゃない。うちは母親しかいないし、その母親も義理で本当の両親は見たことも聞いたこともない」
晴香「え……」

蒼太の言葉に晴香はドキリとし、表情も急に青ざめていた。

晴香「な、なんか変なこと訊いてゴメンね」
蒼太「気にするな、慣れてるからこういうの」
晴香「……」

ここまであまり途切れなかった会話がここにきて急に途切れてしまう。
晴香は徐々に気まずさを感じている。

晴香はおずおずと再び口を開く。

晴香「鳥居くん」
蒼太「ん?」
晴香「何かね、鳥居くんって私が昔遊んでもらった男の子と似てるんだ。下の名前も同じでね。
だからなのかな、自分でも思わず話しやすく感じちゃって……
あと、鳥居くんのことを教えてもらったから私のコトも教えるね」
蒼太「そんな、別に気を遣わなくたって……」

蒼太が遠慮の姿勢を見せる。
普段人と関わろうとしない彼だが、それは他人と傷つけあうことを恐れている反動かもしれない。

晴香「ううん、私も鳥居くんと似たような境遇だったりするから」
蒼太「え……」

蒼太はキョトンとする。

蒼太(自分と似た境遇?まさか親がいないのか?
でもさっきアメリカの両親が心配してココに来ることになったって……)

蒼太「まさか、実は両親は里親とかか?」
晴香「そう、私も本当のお父さんのコトもお母さんのコトも知らないの。ある朝この街の孤児院の門の前に私とメモとネックレスが置き去りにされてたの」
蒼太「おい……本当なのかそれ」
晴香「うん、孤児院の院長先生からこの前教えてもらったの」
蒼太「院長先生って……しかもこの街に孤児院は一つしかないってことは」
晴香「うん、臨海学院の乳児院」
蒼太「オレも昔そこにいた」

蒼太・晴香『……』

蒼太「で、長峯は院長先生にこの前会ったのは最近なのか?」
晴香「うん、この前会ってきたよ。10年くらい振りかな」
蒼太「そうか、でも学院はだいぶ前に閉鎖されてるけど……」
晴香「うん、閉鎖されたのはお父さんから聞いたよ。それで直接先生の家に行ったの」
蒼太「自宅とか」
晴香「そしたら昔一緒にいたアサちゃんが先生と一緒に住んでて驚いちゃったよ。そのアサちゃんって私より一つ年上で――」

蒼太は晴香の口から出る固有名詞や通称などがどんなものなのか知っている。

蒼太「長峯、それって槙島麻子のことか?」
晴香「鳥居くん、アサちゃんのコト知ってるんだ」
蒼太「知ってるも何も物心ついた頃からの知り合いだ」
晴香「私もアサちゃんと物心ついた頃には一緒に居たよ」

蒼太・晴香『……』

デジャヴどころか共通の人物と共通の時期から面識がある。
作り話であるような偶然、しかもこれは出来過ぎだ。

晴香「鳥居くん」
蒼太「どうした?」
晴香「こういうことってあるんだね……」
蒼太「どういうことだ?」
晴香「だって、まさかココでまた会えるなんて思わなかったよ」

晴香が一瞬真剣な表情を見せたがすぐに笑顔へと顔を綻ばせる。

晴香「久しぶりっ」


************************************


〜午前七時四十分〜


早朝近所のクラスメイトが早々と学校に向かったのに触発されてさっさと準備して登校してきた愛未。
教室まで差し掛かったあたりで聞き慣れた声が自分の教室から聞こえてくる。
しかし彼は比較的寡黙で朝からこんなに話声を聞くことは無い筈なのに今朝はよく聞こえる。

愛未「蒼太くんおは……よ?」

開け放たれている教室の戸をくぐろうとした愛未はポーカーフェイス蒼太と転校生晴香という異色な組み合わせに遭遇した。
しかも晴香の発言に全て応答しているように窺える。

その上二人は相当話し込んでいるようだ。

晴香「昔みたいに蒼太ちゃんって呼んでいいかな?」
蒼太「いや、大衆の面前でその呼び方はオレが耐えられない」
晴香「アサちゃんはいいのに私はダメかぁ……」

愛未(ぽかーん……)

一部始終を見た愛未は現場の状況がうまく推測できないでいる。
晴香は彼から離れる気配も机に展開されたままの勉強道具に手をつける気配も一向に無い。

晴香「なら、蒼太って呼んでいいかな?」

愛未(え、えぇぇぇぇぇぇっ!?)

二人の『事情』を知らない愛未はギョッとした。

晴香「ねっ??」
蒼太「断る」
晴香「そしたらどう呼べばいいの?」
蒼太「無理して呼ぶな」
晴香「それじゃ答えになってないよ……」

愛未(ぇ?え?一体二人は一日で何かあったのかな?あったのかな?)

愛未の中でいろいろな想像や妄想が頭の中で展開されているが、
教室前の廊下で一人悶えている姿を数人の他クラスの生徒に見られているのに気付いていない。

晴香「ちなみに訊くけど、アサちゃんは蒼太のコト何て呼んでる?」
蒼太「お前と同じで名前にちゃん付けされてる」
晴香「なら私も名前を呼ぶ権利があるわ」
蒼太「そーゆー問題かよ」

二人の意見は堂々巡り、方や愛未の脳内も妄想の堂々巡りだった。
尚、愛未は七海が登校してきてようやく我に返るに至るのだった。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


〜四時限目終了後〜

丈文「異色の組み合わせ」だな」

と、丈文。
蒼太と晴香の関係は様々な憶測が飛んでいる。
特に人嫌いもしくは対人恐怖症と噂されている蒼太なので尚更だった。

蒼太「オレが知るか」
丈文「当事者のみぞ知るってワケなんだけどさ、いつ長峯さんとお近づきになったんだ?」
蒼太「だからそんなのじゃないっつーの」
愛未「青柳くんあんまりしつこく訊いちゃ……」
丈文「栗田は気にならないワケないと思うんだがな」
愛未「ええ!?何でそうなるワケー?」
丈文「で、実際どうな……鳥居め、いつの間に姿くらましたんだ」

丈文は教室も廊下も見渡すが既に蒼太の姿はそこには無かった。

当の蒼太はうんざり気味で昼休みには人気の無い場所で弁当を食べ、テストの範囲のノートを眺めていた。

蒼太(連中は面白そうに……只の幼馴染なだけだろうに)

??「そうよね〜、別に話のネタにするようなことでもないのにね〜」
蒼太「アサ姉もそう思うだr……って、いつからここにいたんだ、アサ姉?」

素で驚いた蒼太だが、そこにいたのは彼にとって見慣れた人物だった。

――槙島麻子。
蒼太の一つ上の学年の女子生徒で蒼太の幼少時代を知る数少ない人物。
早朝に晴香との会話の中でも出てきた人物の名前。

麻子はその辺の木陰の芝生で本を読みながら寝転んでいたのかメガネがズレていた。
彼女はメガネを胸ポケットへ収めて向き直す。

麻子「キミが寄りかかっている岩陰でキミが来る前から休んでたけど?」
蒼太「寝てたんだろ?」
麻子「ふわゎ、そうとも言うねぇ」

間の伸びた話し方で欠伸をするぐらい。
果たしてこの昼休みだけの休憩なのだろうか?

麻子「ところで蒼太ちゃんは何でまたこんなところへ?」
蒼太「偶然通りがかっただけだ」
麻子「また人と群れているのが嫌気さした〜とかじゃないの?」
蒼太「な……ンなワケ――」
麻子「あるんじゃないのかな?そういうシャイなところは相変わらずだねキミは、ね、ハルちゃん?」
蒼太「は?晴香だと?」

麻子が後ろ向いて誰に話を振ったのかと思えば晴香の名を呼ぶなり本当に晴香が岩陰から現れた。

晴香「アサちゃんはすごいねぇ。見かけによらずにいい勘してるわ」
麻子「うう、見かけによらずってひどい……」
蒼太「晴香、お前いつの間に……」
晴香「朝の話の続きがしたくて一緒にご飯食べようとついてきちゃいました」

彼女はそういうなりビニール袋からアンパンとコロッケパンと野菜ジュースを取り出した。

晴香「アサちゃん、隣りいいかな?」
麻子「うん、いいよー……って、わざわざそんな所に座らなくても」

麻子は苦笑いしつつも晴香は麻子と蒼太の間にちゃっかり座り込む。
彼はボーゼンとコロッケパンの包みを開く晴香を見つめていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


晴香「うーん、ココのコロッケパンは揚げ油がイマイチね、アジフライ臭いわ」
麻子「ハルちゃんもやっぱりそう思うんだ?」
蒼太「……」
晴香「あれ、蒼太食べないの?そのチョココロネ」
蒼太「お前食べるの早す……って頭食べるなっ」
晴香「チョコクリームおいしいね」

気が散漫していた蒼太は自分の分を食べ終えた晴香に手持ちのパンを食べられてしまう。
それを脇で見ていた麻子は苦笑いしていた。

麻子「もう、ハルちゃんてば。次は自分で買おうね」
晴香「はーい」
麻子「ふふ。そういえばこうして三人で食べるのは何年ぶりかしら」
蒼太「そうだな、もう十年以上経ってるんだな」

蒼太も普段は思い出さない昔を懐かしんでいる。

晴香「そうそう、あ、ご飯食べた時と言ったら森林公園の外れにある神社にタイムカプセル埋めた時とか――」
麻子「ああ、まだ蒼太ちゃんが居た頃ね。その時公園の広場で食べてたねぇ」
蒼太「オレが引き取られる前ってまた微妙な時期さしてるな……そういえばそのとき晴香がヘビ捕まえて院長に怒られたのなら覚えてる」
晴香「ひっどーい!!」

晴香は蒼太をポコスカ叩きだす。

麻子「あ」

麻子が突然何かを思い出した思い出した。

麻子「そのタイムカプセルなんだけど、今度森林公園のすぐそばで住宅地作る工事やるの知ってる?」

蒼太と晴香は横に首を振った。
すると麻子は不思議そうな表情になった。

麻子「あら、市役所発注で蒼太ちゃんのお母さんの部署が担当なのに。
あと、ハルちゃんのお父さんの会社が工事受け持ってるみたい」
晴香「それってドコ情報なの?」
麻子「この前工事現場の入り口に看板にそれっぽいこと書いてあったからね」

蒼太も都市計画課の母親が朝早く夜遅いことが最近多いのでなるほど、と思った。

麻子「それで、タイムカプセル埋めたところも工事で削られちゃうみたいなの。だからあの中に他の人に見せられないあんなモノやそんなモノが……!」
蒼太「アサ姉……5才児が一体何入れてるんだよ、つかアレの中身は未来の自分に宛てた手紙が入ってるくらいだろ?」
麻子「蒼太ちゃん中身覚えてたんだね。で、そのことで二人に相談があるの」

麻子自身後でこのタイムカプセルの件を蒼太に告げようとしていたが、
何故かたまたま当の彼が現れた上に当時一緒にいた晴香も偶然遭遇できたので話を早速持ち出すのであった。

麻子「そのタイムカプセルなんだけど夏休み入ったら掘り起こそうと思うの」
蒼太「誰がやるんだ?」
麻子「その……蒼太ちゃんとハルちゃんにも協力して欲しいの」


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↓続き:2話の2↓
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