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私小説 九州派家族コミュのシーン 3 宴会アトリエ

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オトナはみんな朝からビールを飲むものだと思っていた。

オフクロに急かされながら朝ごはんを食べているテーブルの向かいにはハムエッグを肴においしそうにビールを飲むオヤジの姿があった。

あんなに苦い飲み物その当時、当然、嫌いだったがオヤジの飲んでいるビールはうまそうだった。あまりおいしそうなので見ていると目が合った。
うれしそうな顔で「飲むか?」とオヤジが言った途端、オフクロに怒られていた


夜。
とにかく宴会だった。
大人たちは男女年齢問わずアトリエに集まった。
酒を酌み交わしながら議論したり喧嘩したり歌ったり踊ったりで僕たち兄弟はいつも隣の部屋の食卓で酒のつまみをおかずにご飯を食べた。

くじらのうねやベーコン、がめ煮、しゃこの煮たやつ、
おきゅうとにゴマさば、さばのぬたえに、むかごご飯etc etc。
今だったら喜んで食べるのだか小学生のご飯にしてはしぶすぎる。
ハンバーグがオムライスが赤いスパゲッティが食べたかった。


福森のオッちゃんがやってくる。

福森のオッちゃんは詩人で1968年にオヤジが挿絵を書いた「屋台のバラード」という詩集を出している。
自称オヤジの一番弟子で薬院時代、電柱に張ってあった
「画塾生募集」の張り紙を見てアトリエを訪ねデッサンを一枚描いたっきり後はずっと長い間オヤジとつるんでは激しく飲んでいた。

福森のオッちゃんは常に酔っ払っていた。
こどもの僕にもよく議論を持ちかけるのだか、なんせ、いつもろれつが回ってなく何を言っているのか皆目、見当が付かなかった。

「  〜やろーが、わかっとーとか、タロー ぶるるるー」

「うん、わかっとーよ」

「よーし、わかっとーなら、よか。 ぶるるるー」

とりあえず意味不明な言葉をしばらく聞き、そつなく適当に返事を返していた。
後にこの福森のオッちゃんが普段はまじめな貯金局の職員だったのを聞いた時は本当に驚いた。


アバケンがやってくる。

アバケンは当時どこかの新聞記者でオヤジの宴会仲間の中では若手だった。
議論にすぐに熱くなり酔っ払ってはその場で暴れる。

すぐに暴れる健二、ゆえにアバケン。

アバケンはいつも暴れるものだから宴会の後半には柱に括り付けられ、縛られてもなお自分の意見を吐き続け、そのうち縛られたまま眠っていた。

奥さんも手馴れたもので縛られた夫はお構い無しで宴会に戻る。お開きになると縛られ寝ているアバケンをたたき起こし、すっかりおとなしく生気の抜けた旦那を引っ張って帰っていった。
でもアバケンは酔っ払ってない時は僕らとよく遊んでくれた。


桜井孝身がやってくる。

コウシンさんは九州派の中心人物の絵描きさんで若いころは詩人だった。
オヤジと知り合った当初は西日本新聞の校閲部にいてオヤジたちはよく社員食堂でご飯をおごってもらったらしい。当時の西日本新聞の校閲部は輪転機の騒音が直接響くところにあり、よってコウシンさんの声はいつも兎に角でかい。

コウシンさんはヒッピーだ。

ひげと髪を伸ばし、声と同じくらい情熱的に原始のエナジーあふれる絵を今も描き続けている。

コウシンさんはだれかれかまわず熱く語る。
コウシンさんはだれかれかまわず「しぇんしぇー(先生)」と呼ぶ。僕も「タローしぇんしぇー」だった。
コウシンさんはとにかく何でも情熱的で豪快な人だった。

気の弱い人は多分逃げるだろう。


その日、僕は風邪を引いて学校を休んだ。
二階の部屋で寝ていた。家には誰も居ない。
目は覚めていた。下で何か物音がする。
足音はそのうち僕の寝ている二階へ昇ってきた。
恐くなって布団を被り身を潜めた。
足音はとうとうベッドのすぐ横に来た。

「おい、タロー。 なぁーんば つやーに、寝トットやー
 ぶるるるー」
福森のオッちゃんはやけにはっきりした口調で言い、僕の布団を剥いでにっこり笑った。

僕はあきらめてオッちゃんと下へ行き、話に適当に相槌をうちながら誰か帰ってくるのを待った。

「ぶるるるるー」

コメント(5)

強烈なキャラクター揃っとんしゃ〜ね〜。ぶるるるるー

思い出したんやけど俺は昔、太郎さんのお母さんに聞いた、フランス語嫌いで巴里で絵書きしよって嫁さんが税理士?やったっけ?の方の登場も楽しみになった。
自分なりに絵が浮かんでます。
すごい状態になってるんですけど・・・。

あと、単語の切れ目がわかりませんでした。
ご教授ください。
文中より
「おきゅうとにゴマさば、さばのぬたえにむかごご飯」
二品?三品?四品?
>こーへーさん

わからんかーすんません。

オキュウトは海草のところてんみたいなもので博多ではよく食べます。ごまや鰹節と酢醤油かけて食べます。

ゴマさば は鯖の刺身をごま醤油にづけにしたものでそのままでも食べるし最後にゴマさば茶漬けにして食べます。
食いたかー

さばのぬたえ さばの酢味噌和えです。

むかご ご飯 のむかごは山芋の実です。昔うちの家の隣に
山芋のつるがあってそれに五ミリくらいの実がたくさんついていました。それを採ってごはんと一緒に炊き上げます。
ちいさなサツマイモみたいな感じです。

これからもどんどん、わからない言葉や文を指摘してください。

よろしく。
>元祖taroさん
よくわかりました。解説ありがとう。
ゴマさば、ばり食いたかー
うまそうです。
ぜったいに近々そっちにいきます。

どしどしわからない言葉を教えてください。
コミュになってるの知らんかった。
皆に知らせないと知らないと思うよ。コミュを知らせるってとこがあるからそれを選択したらマイミクの人たちにお知らせが行くようになる。

昨日福森のおっちゃんの話してたとこよ。もう良い年だけど死んではないよ。
暴けんは本名知らないもんね。

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