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シベリウスコミュのシベリウスと言葉

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このたび(10年7月)、シベリウスの男声合唱曲(作品18、全6曲)を演奏します。初めて演奏したのは今から31年も前、何の資料もなくてフィンランド大使館に通って書記官に詩の朗読録音までしていただきました。自分自身は何度目かになる演奏ですが、今回、これまで疑問に思っていたことを指揮者の松原千振さんや東京大学の松村一登先生にお伺いして、かなり考えがまとまったので書いてみます。

作品18は、シベリウスの若い日の小品を集めて一つにまとめて出版したもので組曲としての意味はありません。第3曲「舟の旅 Venematka」(1893年4月初演)が、前年の「クレルヴォ」とあわせて『フィンランド音楽の方向性を決定づけた』ものとされてまして、合唱曲なぞ聞かないという方でも、シベリウスファンならぜひ聞いていただきたい曲です。

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600年を超えるスウェーデンによる支配のため、19世紀初頭までフィンランドはスウェーデン語の国でした。フィンランド語を記録し普及する作業を模索した人もいますが、生涯一度もフィンランド語を話さずに過ごす人が多かった時代が続いています。

19世紀の頭にロシアが支配者となって、スウェーデン色一掃のためにフィンランド語が奨励されました。当時の人々はうれしいやら困るやら、そりゃあフィンランド人なんだからフィンランド語だ、というのは分かるけど、あの言葉まったく分からないぞ! という人が多かったといいます。

「カレヴァラ」初版(1835年)も、民族にとっての一大事業であることは分かるけれど、なにしろ読めない、さて困った、という状況でかなり売れ残った、と聞いています。

シベリウスもスウェーデン系の生まれで学校に通うまではフィンランド語をほとんど話さずに過ごしていますね。19世紀後半になるとようやく「フィンランド語で教えることが出来る教師」が増えて、フィンランド語を使う学校が広がって行きます。

「舟の旅」の初演と熱狂的な反響は、1809年のロシア支配開始からおよそ80年、3世代近くをかけてようやくフィンランド語による音楽が多くの人に実感できるようになった、ということでしょう。

(以下、言語については『フィン語』と略して書きます。)

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さて、シベリウスの声楽作品ですが、歌曲は圧倒的にスウェーデン語で書かれています。合唱曲は機会作品も多く、6割以上(?)がフィン語です。(混声曲をきちんと見ていないので正確な割合は?です。)英語と日本語ほどにも異なる言語ですから、スウェーデン語で書かれた作品とフィン語で書かれた作品の性格が大きく異なるのは自然の成り行きです。

で、ふたつの言語をある程度勉強して、歌曲や合唱曲を実際に演奏してみてからシベリウスの他の作品、交響作品や器楽作品を聞いたり演奏したりしてみると、このフレーズは明らかにフィンランド語の抑揚だ、ここはスウェーデン語だ、という箇所が無数に散らばっていることに気付きます。

スウェーデン系フィンランド人が話すスウェーデン語は明らかにそれと分かる特徴を持った「方言」でして、さらにはそのスウェーデン系フィンランド人が話すフィン語はスウェーデン語風の抑揚をもつことがあります。(あー、ややこしいふらふら

シベリウスの声楽曲の中に、フィン語の詩に書いた曲なのに妙な抑揚が付けられたフレーズがありますが、これはスウェーデン系フィンランド人によるフィン語の語感で付けられたものと考えられます。(特にスウェーデン語からの借用語についてはこの傾向が顕著です。)


30年以上前でしょうか、オッコ・カムの指揮に対する批評に、「世界の潮流から見るといかにもフィンランドらしい、というかある種『田舎びた』表現も見られ・・・」というのがあって、なんか違和感があったのですが、要するに、フィン語の語感で演奏していた、ということだと思います。

同じフレーズでもフィン語の語感だとフレーズの最後があっけないくらいにブチッと切れます。それをドイツ音楽の感覚を身に付けた人が演奏するとフェルマータになったりします。

そのどちらの表現も受け入れるのがグローバルな名曲なのでしょうが、本来のフィンランドらしさを目指すのならばフィン語の語感に従うべきでしょう。

ただし、最初に書いた「舟の旅」も、フィンランド国内のスウェーデン系合唱団は相当長期間スウェーデン語で歌い続けてまして、両言語が並ぶ楽譜を見るとその表現はかなり違っています。

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このあたりの事情が実感できるとシベリウスの聞き方も変わるだろうな、としみじみ思うこのごろです。で、2011年4月になりますが、自分の合唱団で、日本では演奏機会のない「シベリウスがスウェーデン語歌詞に作曲した男声合唱曲」を演奏してみることにしました。

長くなりました。シベリウス鑑賞の参考になれば幸いです。

コメント(11)

今回の演奏会情報を忘れてましたあせあせ(飛び散る汗)

 第6回東京六大学OB合唱連盟演奏会
 2010年7月3日(土) 14:30〜 東京文化会館大ホール

 1.明治大学グリークラブOB合唱団駿河台倶楽部
   男声合唱のための組曲「ゆうべ、海を見た」
   作詩 落合恵子 作曲 荻久保和明

 2.慶應義塾ワグネルソサィエティーOB合唱団
   シベリウス男声合唱曲集

 3.立教大学グリークラブOB合唱団
   マドリガル − 男声合唱、打楽器、ピアノのために −
   作曲 新実徳英

 4.東京大学音楽部OB合唱団アカデミカコール
   四つの祈りの歌
   作曲 藤原義久

 5.法政大学アリオンコールOB会・男声合唱団アリオンコール
   合唱のためのコンポジション?
   作曲 間宮芳生

 6.早稲田大学グリークラブOB会・稲門グリークラブ
   男声合唱組曲「海の構図」
   作曲 中田喜直 編曲 福永陽一郎

 アンコール 全員による六校エール


 S席3000円 A席2500円 B席1500円


 重たくて長い演奏会です。お聞きになるには相当の覚悟が必要・・・あせあせ
 シベリウスは演奏時間10分ちょっと、今回唯一の外国語曲となります。
 
 指揮は二期会所属の大久保光哉さん。
 ワグネルのOBでして、数年の銀行員勤めの後、芸大声楽科に入学。
 中退して大学院に進み、さらにスウェーデンに留学しています。
 現在は国立オペラ合唱団、二期会研修所講師、合唱指揮者として活動しています。

 OB6団体の演奏会なのでさしもの文化会館も、早々に満員です。
 S席でよろしければたった2枚だけ手元に残っていますので
 お聞きいただける方はお早目にメッセください。
 (早い者勝ちなので無くなっていたら悪しからず。)
 
う〜ん、トピックも長けりゃ、演奏会情報も長い、、、

失礼しました m(_ _)m
興味深い内容をご紹介くださり、ありがとうございます。

指揮者の松原千振さんや東京大学の松村一登先生の助言を得て、
さらに本番の指揮者が大久保光哉さんとは、
今の日本国内で考え得る最高のアプローチ方法かもしれませんね。

> いちろう さん

 コメントありがとうございます。

 先生方との数度のやり取りで、
 松村先生から「語源辞典を調べたらかくかくしかじか、、、」
 という返信をいただいて数十年の様々な疑問が一気にほぐれました。

 さらなる現地からの回答待ちですが、おそらくこんな事だろうと、、、

 ・生活に必要な多くの単語がスウェーデン語からの借用語であった。
 ・スウェーデン系フィンランド人はスウェーデン語に近いスペルと発音を好んだ。
 ・そのために多くのフィンランド語の単語で2種類のスペルが通用していた。
 ・シベリウス自身もスウェーデン系だったので、スウェーデン語風の
  スペルの単語に、スウェーデン語風の抑揚で作曲していることがある。
 ・独立後の正書法改正で「なるべくフィンランド語らしい」スペルが採用された。
 ・そのため、シベリウスの声楽曲も「正しいフィンランド語」に改訂され印刷された。
 ・一方、スウェーデン系合唱団ではシベリウスのオリジナルに固執し続けた。
 ・1970年以降、なるべくオリジナルに近い形で出版・演奏されるようになった。

 こう考えるとすっきりします。
 
 19世紀のフィンランドは、自分たちの民族としてのアイデンティティーそのものを
 探し出し、作り上げるという作業をし続けたわけで、
 シベリウスの音楽はその成果の上に花開いているわけですね。
 
 本文最後で予告しておりました演奏会のお知らせです。

  2011年4月17日(日) 午後2時開演 紀尾井ホール大ホール
  ソフィア・ヴォイス・アンサンブル第22回定期演奏会
  シベリウスの男声合唱作品より ほか
  指揮: 太田務 

  全席自由¥2,000


 今回は 「スウェーデン系フィンランド」 をテーマにして
 シベリウス作品における スウェーデン語、フィンランド語の関係、
 そして19世紀フィンランドにおけるスウェーデン系、フィンランド系、
 ロシアとの関係などに焦点を当ててプログラムを組みました。

 日本では滅多に、というかまず演奏されるチャンスのない
 スウェーデン語の詩による男声合唱作品を2曲。

 さらに、現在ではフィンランドでもめったに演奏されないという
 フィンランド語使用を禁じられた時代の対ロシア抵抗曲。

 そして、名作として知られているけれど、言葉の壁と
 なによりもベースの音域が広すぎて
 これまた国外ではほとんど演奏されない2作品を選びました。
 
  1. Likhet 「類似」 1922  詩:ルネベリ
  2. Brusande rusar en vag 「寄せる波濤」 1918 詩:シーベリソン  
  3. Veljeni vierailla mailla 「兄弟は異国の地に」 1904 詩:アホ
  4. Terve, kuu 「月よ ごきげんよう」 作品18-2 1901 詩:カレワラ第49章より
  5. Humoreski 「ユモレスク」 作品108-1 1925 詩:ラリン=キエスティ

    2番目の曲の vag の a はオングストローム( a の上に ゜ )です。

 指揮の太田務さんは関西学院グリークラブの学生指揮者出身。
 プロ指揮者としての修業時代からずっと当団の指揮をお願いしています。
 アメリカへ2度留学して合唱指揮と合唱文学という分野で博士号を取得して帰国。
 現在は関西を中心に合唱指揮者として活躍されています。

 他のステージなど詳細は団のHPへお越しください。 → http://svejpn.com
 
 
 素晴らしい音響に毎度魅せられて
 紀尾井ホールでの定期演奏会、13回目となります。
 ホールのお話では、アマチュアでここまで連続して使っているところは
 ないのだそうで、勝手にホームグラウンドと称しています (笑) 
 
 チケットご希望の方は個メッセをいただければ、と、、、。
 

あれ? 007 のコメント、とみさんでしたっけ
消されてしまいましたね 泣き顔

返信ゆっくりしようと文章考えていたのに
残念な げっそり

バイオリン協奏曲の初版と決定稿で
言葉にからめてけっこう思うところがあるんで
返信したいなぁと思ってたんですよ あせあせ(飛び散る汗)あせあせ(飛び散る汗)あせあせ(飛び散る汗)
> moon river さん

ってかシャンゼさんお久しぶりでした手(パー)

ウチのコンサートに来たことが落ちる理由になる
ってえならどうせたいしたことないです ウッシッシ

さっさと聞きに来ましょう あっかんべー
 
 コミュのみなさま、
 
 演奏会、予定通り催行いたします。
 
  2011年4月17日(日) 午後2時開演 紀尾井ホール大ホール
  ソフィア・ヴォイス・アンサンブル第22回定期演奏会
  シベリウスの男声合唱作品より ほか
  指揮: 太田務 


 当日の天気予報が雨模様なのと相変わらずの余震が気がかりですが
 四谷のお堀の桜もまだ残っているようですので
 花見も兼ねてあせあせ お時間取れましたら
 滅多に聞けないシベリウス体験をどうぞ。
 
 

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