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都波 奏自作小説公開場コミュのDark Dolls Phase.4〜双子〜

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 午前九時。
 日の出が早いこの季節では、この時間からもう真昼間のような明るさをもち、また暑さも持ち合わせる。午前中というだけあり、日中に比べればまだ涼しいほうだが、それでも恐らく三十度くらいにはなっているだろう。それほどこの国の夏は暑いのだ。

 その暑さも、フィリーズの中心から外れるといくらかましになる。人々がごった返す中心部とは違い、郊外は閑静な住宅街が広がる。緑も中心部よりはるかに多く、陽光は遮られ少し涼しさを感じるほどだ。とは言えども、日中にもなると中心部と同じように、暑さが襲うのだが。
 そんな住宅街の一角から

「あ〜〜〜〜〜つぅ〜〜〜〜〜いぃ〜〜〜〜〜〜〜!!」

 今日もまた、そんな怒号が聞こえてくるのだった。



 住宅街の奥地にあるその家は、周りの家と比べると幾分か豪華な造りになっている。三階建ての住居に広い庭。緑の葉が広がる大きな広葉樹の周りには、色とりどりの花が咲いている。
「もう、お姉ちゃんてば…」
 右手にホースを持ちながら、その少女は呟く。小柄な体に、白いワンピース。麦藁帽子をかぶった姿は、さながら港町に住む美少女のようでもあった。しかしその顔は少し困惑、もしくは呆れ返っていた。
「ジェシカ〜〜!!なんか冷たいもの〜〜!!」
 家の中からそんな声が響く。ジェシカと呼ばれた少女は溜息一つついて家の中へと入っていく。

「お姉ちゃん、いくら暑くても叫ぶのはやめてっていってるでしょ!」

 怒鳴り声と同時にリビングの扉を勢いよく開けると、

「そんなこと言ったって暑いものは暑いんだもん!叫んで何が悪いのよ!」

 ジェシカと瓜二つの顔をした少女が、思いっきり机に突っ伏していた。その少女は白のタンクトップにホットパンツを履いていた。その傍らには冷水筒が置いてあり、中に入っていたであろう飲み物は全て彼女の胃の中なのだろう。

 彼女の名はエミリア・ヴァレンタイン。ジェシカの双子の姉であり、[フィリーズの英雄]ことアルフレッド・ヴァレンタインの娘である。
 エミリアは服装からもわかるように、非常に活発な性格、妹のジェシカはおしとやかで、暴走する姉のブレーキ役をしている。双子というだけあり、顔もそっくり。近所では[フィリーズ一美人な双子]として有名である。特にエミリアの人気は素晴らしく、噂ではファンクラブが出来ているほどらしい。それほど彼女は美人なのである。

「兎に角、何か冷たいもの頂戴〜。もう暑くて死んじゃいそう〜」

 黙っていれば。






 午前十時。

「ふぃ〜、生き返る〜。やっぱりクーラー最高ね」
「あんまり長い間使わないでね。電気代大変なんだから」
 心配する妹をよそに、エミリアは空返事を上げるだけ。洗濯物を干している妹は、また小さく溜息をつく。それとほぼ同時に

「うん?電話なってる」

 家の中を電話のベルが鳴り響く。このときばかりは、蕩けていたエミリアも重い腰を挙げる。持ち前の身軽さですばやく電話の前に立つと
「はい、こちらヴァレンタインですが」
[ああ、もしもし。私よ]
「あ、ナンシーさん。おはようございます」
 受話器から聞こえてきたのは女性の声。エミリアが敬語を使っているので、少なくとも彼女より年上なのだろう。
「珍しいですね、こんなに朝早く。何かあったんですか?」
[ええ、何かあったからこうして連絡してるの。兎に角、今すぐ事務所に来てくれないかしら?]
「事務所に?」
 いつの間にか近くに来ていたジェシカも、一緒に首をかしげる。いつもとは違う、緊張感を感じたのかもしれない。
「ジェシカ、とりあえず新聞もってきて」
「うん、わかった」
[あら、さすがエミリアね。私の言いたいことがわかったのかしら?]
「貴方が事務所に呼び出すときは、緊急事態が起きたときですから」
[なら話が早いわ]
「何……これ……」
 受話器越しのナンシーの声と、新聞を片手に持ったジェシカの困惑の声がエミリアに聞こえたのはほぼ同時だった。





[殺人事件が起きたわ。しかもかなり猟奇的で不可思議な事件がね]

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