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演奏家のための著作権法入門コミュのゴーストライターは違法なのか

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2014年の2月に佐村河内守氏の諸作品とされていた物が、実際は新垣隆氏の作品であったことが暴露される騒動が起こったことは皆さんご存知のとおりです。この法律(主として著作権法)的な背景をディスカッションするトピックが、「著作権」のコミュニティには立っていないことに気が付きました。そこで、他人のゴーストライターを務める行為はそもそも違法なのか、合法なのかを掘り下げるトピックを立てることとしました。

まず、手始めに「ゴーストライターは違法なのか」という問いかけ文を検索ワードにしてグーグルで検索してみると、以下のようなサイトがヒットしました。

1.Soodaのサイト「ゴーストライターは違法なんですか?」

http://sooda.jp/qa/147859

2.Yahoo知恵袋「ゴーストライターって犯罪なの?」

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12120643312

「著作者名詐称罪」として著作権法121条が紹介されています。

3.ゴーストライター論 〜我々は作品の何を「買って」いるのか〜

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20140331_641813.html

骨董通り法律事務所代表パートナーの福井健策氏(弁護士)の解説が載っています。

4.佐村河内氏の別人作曲と「ゴーストライター」契約

https://lmedia.jp/2014/02/14/733/

銀座ウィザード法律事務所代表の小野智彦氏(弁護士)の解説が載っています。


関連する著作権法は、上の4つのサイトにも登場しているとおり、著作権法121条でです。この中身を加戸守行氏の『著作権法逐条講義』(著作権情報センター)を基にして分析してみましょう。まず著作権法121条は次のように規定しています。


『著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物(原著作物の著作者でない者の実名又は周知の変名を原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を含む)を頒布した者は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する』


この法律が制定されている趣旨は、まず「世人を欺く詐欺的行為の防止」と、これに付随する「著作名義者の人格的利益の保護」です。一つの注意点は、処罰の対象となっている者が「このような複製物を頒布した者」であって、「表示した者」ではない点です。

佐村河内守氏と新垣隆氏の「ゴーストライティング」の件に照らし合わせると、「頒布した者」とは、佐村河内守ではなく、その作品の録音CD等をリリースしている会社が該当することになりましょう。また「表示した者」は佐村河内氏が自分の意図に基づいて自分の名前を表示したわけだから、佐村河内氏ということになりましょう。

加戸守行氏の『著作権法逐条講義』(著作権情報センター)の著作権法121条の解説によると、この法律の罪の構成要件の基本をなすケースとしては、次の3通りのケースが考えられるようです。

第1のケースは、自分が創作した著作物に有名な他人の氏名を著作者名として表示する場合です。佐村河内守氏と新垣隆氏の「ゴーストライティング」の件に照らし合わせると、新垣隆氏が実質上の創作者で、新垣氏が自分の作品を売り出す目的で、佐村河内氏の名前を借り受けたのであれば、このケースが該当することになります。しかし、新垣隆氏は、ゴーストライターとして作品を創作することを佐村河内氏から委嘱されてこれを行ったわけだから、佐村河内守氏と新垣隆氏の「ゴーストライティング」の件は、この第1のケースには該当しないといえましょう。

第2のケースは、他人の創作した著作物に自分の氏名を著作者名として表示する場合で、佐村河内守氏と新垣隆氏の「ゴーストライティング」の件は、まさにこれになります。しかしながら、新垣隆氏は、ゴーストライターとして作品を創作することを佐村河内氏から委嘱されてこれを行っているわけですから、新垣氏は当初から自己の作品についての氏名表示権を放棄していると考えられます。従って、この第2のケースでは氏名表示権の問題は、発生しないとみていいでしょう。

第3のケースは、発行者が他人の捜索した著作物に勝手に第3者の氏名を著作者名として表示する場合です。佐村河内守氏と新垣隆氏の「ゴーストライティング」の件に照らし合わせると、発行者とは、作品の録音CD等をリリースしている会社が対応します。しかしこの佐村河内守氏と新垣隆氏の「ゴーストライティング」の件では、発行者は、作品は真正に佐村河内氏の作品だと信じてCDジャケット等にはその旨表示したわけですから、発行者には少なくとも当初は詐称の意図は全くなく、この第3のケースは該当しないとみていいでしょう。

結局、著作権法第121条は、誰のどんな利益を守ろうとして制定されているのか、という疑問が残ります。この点を掘り下げて解説しているのが、最初に紹介した骨董通り法律事務所代表パートナーの福井健策氏の解説です。同氏によると、例えば佐村河内守氏と新垣隆氏の「ゴーストライティング」の件は、CDなど音楽商品の買い手の重要な期待を裏切っていると分析しています。

今回のゴーストライティング事件では、人々はおそらく曲自体の芸術的価値だけを評価してCD等を買ったのではなく、「全聾の作曲家が障害を克服して(ほとんど)独力で作曲した名曲」という“物語込み”で、CD等を買ったわけです。その物語を聞いたから感動は高まり、作品はより名曲に聞こえた、という側面があることは否定できません。ところがその「物語」はフィクションだった。ここにCD等の購入者に対する「裏切り」があるというわけです。

また、著作権法第121条の罪の構成要件の基本をなすケースの第2のケースの分析で、新垣氏は、ゴーストライティングの業務を請け負った時点の契約で、自己の作品についての氏名表示権を放棄していると考えられます。だが、この契約の効力は、法律によって守ってもらえるものなのかという問題が残っています。つまり、仮に新垣氏が契約の当初の合意に反して、氏名表示権の侵害があったことを主張しだしたとき、佐村河内氏側は、契約違反で新垣氏を訴えることができるのでしょうか。

この点を掘り下げているのが、銀座ウィザード法律事務所代表の小野智彦氏の「佐村河内氏の別人作曲と「ゴーストライター」契約」という解説です。結論としては、ゴーストライティングは必ずしも違法とは言えないが、逆にその合法性に法律の裏付けがあるわけではない、そういう法律上はあぶなっかしい行為であるということになりましょう。

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