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日本はアメリカの属国だ太田述正コミュの海自艦艇インド洋派遣問題

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 情報屋台に、表記に係るシリーズを以下のようにまとめてアップロードしました。(太田)

1 始めに

 海自艦艇インド洋派遣問題は迷走を続けています。
 いくつかの論点に検討を加えた上で、私の提言を掲げました。

2 給油活動は無意味

  政府によれば、海上自衛隊の補給艦が2001年12月から今年8月末までに実施した給油は11カ国に対し計777件(計約48万4,000キロリットル)で、米国向けが全量の約80%を占め、また、補給艦に対する給油が105回、計26万7,000キロリットルに上り、給油量全体の55%占めていることを占めています。
 補給艦への補給の相手国は米英だけで、米国が大部分を占めると考えられますが、同省は、海上自衛隊から給油された米英の補給艦が給油した艦船名や時期は相手国の同意が必要として、これまでのところ公開していません。
 
 このような形で給油された燃料が、目的外のイラク戦争に転用されていたとの疑惑が浮上している問題(注)で、米国防総省は、日本政府の照会に対し、10月6日までに「目的外に用いたことはない」と明確に否定する回答を寄せました。

 (注)米補給艦「ペコス」が2003年2月25日朝に補給艦「ときわ」から、約83万ガロンの給油を受けたが、ペコスはその後ペルシャ湾方面に移動、同日午後に米空母「キティホーク」に「ときわ」からの燃料を含むディーゼル燃料を給油していた。キティホークは補給後ペルシャ湾に入り、イラクに対する「サザン・ウォッチ作戦」(イラク戦争開戦前)に従事したとみられている。

 ただし米当局者は、米艦船の運用では、対テロ戦、イラク戦を問わず、気象データを含むさまざまな情報収集や偵察、調査活動、艦船同士の警護などの任務を複数の艦船が同時にこなすのが通例で、航海中の艦船の活動をテロ対策の海上阻止行動という単独任務に限定することはできないと言明しています。

 要するにこれは、インド洋の米艦船の任務を対テロ戦とイラク戦に截然と分けることなど不可能だと言っているのであって、日本国内での議論の非常識さを嗤っているのです。

 ここでまず問題になるのは、日本が米艦船(艦載ヘリを含む)に無償で燃料を提供してきたことです。
 これは、事実上日本の米国に対する思いやりの一環であるととらえる必要があります。
 米国がそう受け止めている可能性を示唆しているのが、現在本格化している日米両政府の思いやり予算に関する新特別協定締結協議において、米側が軍事負担増を理由に電気、ガス、水道代など光熱水料・・2007年度予算は253億円・・の大幅増額を求めていることです。
 これは、テロ特措法が失効してインド洋で米艦船が日本から給油を受けられなくなることを見越して、思いやり予算総額の減少を類似項目で補填しようとしている、と勘ぐられても仕方のない動きです。
 私はそもそも、思いやり予算全廃論者ですが、在日米軍基地の従業員の人件費であれ光熱水料であれ、日本が全額負担することがいかに米軍において無駄遣いを生むかを指摘してきました(拙著『防衛庁再生宣言』参照)。
 インド洋で燃料を全額日本側負担で海上自衛隊の補給艦が米艦船に提供することは、やはり米軍において無駄遣いを生むだけでなく、その間米軍の補給艦を一隻遊休化させるという無駄も生んでいます。
 このような無駄を回避するためには、日本が米国に対し、対アフガン戦の戦費の一部として、燃料代見合いのカネを提供した方が良いのです。
 
 次に問題になるのは、日本が米国以外の国の艦船(艦載ヘリを含む)に無償で燃料を提供してきたことです。
 日本が給油してきた米国以外の国である、パキスタン・フランス・カナダ・イタリア・英国・ニュージーランド・ドイツ・ギリシャ・スペインのうち、パキスタンは発展途上国であり、燃料を提供する代わりに燃料代見合いの無償資金協力をした方がよいのです。
 それ以外の諸国は先進国であり、給油するとしても、代金をもらってしかるべきです。
 これら諸国は、米国と違って、日本の安全保障に関し条約上の義務を負っているわけではないのですから、米国に対してすら行うべきでない「思いやり」のようなことを、日本がこれら諸国に対してやってやる必要は、全くありません。
 フランスはこれを快しとはしなかったのでしょう。
 日本からインド洋で給油を受けていることへのささやかな返礼として、2005年にフランスを訪れた日本の練習艦隊の3艦に寄港先のブレストで3,300万円相当の燃料を無償提供しています。
 
 このように、海上自衛隊補給艦による多国籍軍への無償給油の意義は経済的に見て全くありませんし、あえて言えば軍事的に見てもほとんどないのです。
 ですから、こんなべらぼうな給油活動など、補給艦に同行している海上自衛隊の護衛艦の隠された任務・・インド洋上では米軍などを攻撃する恐れのある不審飛行物体の発見、アルカーイダやタリバン残党の洋上逃走の監視、そしてイラクへの禁制物資搬入が疑われる船舶の発見、の三つの業務(太田述正コラム#22参照)・・のカムフラージュのためにやっているのでなければ、決して行うべきではないのです。

3 給油はダメでもISAFへの自衛隊派遣はできる?

 (1)始めに

 小沢民主党代表は、国連決議に基づく国連の活動であれば、海外での武力行使でも憲法に違反しないという考えであるところ、10月に入ってから、インド洋での給油活動は国連活動でもない米軍等の活動に対する後方支援であって憲法が禁じる集団的自衛権の行使にあたるので許されないが、政権を担う立場になれば、アフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF=アイザフ)への参加を実現したいと言い出しました。

 この小沢氏の意向を受け、民主党執行部は、ISAFへの後方支援のための自衛隊派遣等の検討を始めました。
 これに対し、石破防衛相は、「国連が決めたら突如として日本の主権が消えて憲法9条に反しないという理論が本当に党内で賛同されているのか」と、また高村外相は「陸上でのアフガニスタンはすべて戦闘地域みたいなもの。憲法解釈上難しいのではないか」と批判しました。

 一体この問題はどう考えればよいのでしょうか。
 まずは事実関係を押さえておく必要があります。

 (2)給油活動の位置づけとISAF

  ア 給油活動

 9.11同時多発テロを受け、2001年10月、米国は、他の国々とともにアフガニスタンのタリバンとアルカーイダ勢力を殲滅するための戦争を開始します。
 これがアフガニスタン不朽の自由作戦(Operation Enduring Freedom - Afghanistan=OEF-A)です。
 この不朽の自由作戦は、米国に関しては個別的自衛権、他の国々に関しては集団的自衛権の発動として開始されたのです。
 翌2002年1月16日、国連安保理決議1390が採択され、全国連加盟国に対し、上記両勢力に係る資金凍結と要員の入国/通過の防止を求めるとともに、上記両勢力に対する軍事物資や軍事に係る技術的助言・支援・訓練の直接的間接的提供が国内から行われたり自国民や自国船舶・航空機によって行われることの防止を求めました。

 日本が2001年11月2日に施行されたテロ特措法に基づいてインド洋に派遣した海上自衛隊の補給艦と護衛艦は、この不朽の自由作戦の海上阻止行動(OEF‐MIO:Operation Enduring Freedom-Maritime Interdiction Operation)に従事する米国等の艦船に対する支援活動を行ってきたわけです。
 なお、私の指摘のように、海自艦艇が給油(給水を含む)以外の監視等の活動を行っているとしても、それらも支援活動の範囲であると言えるのではないでしょうか。
 とまれ、海自の給油活動は、2002年1月16日の上記安保理決議までの間こそ、各国の自衛権に基づく海上阻止行動への支援活動であったけれど、決議採択以降は、各国の海上阻止行動も、海自の海上阻止行動支援活動も、どちらも国連にオーソライズされた行動なのです。

 他方、不朽の自由作戦については、安保理決議において累次言及され(典拠省略)、オーソライズされてきていたところ、この作戦の一環であるインド洋での海上阻止行動については、その部分だけ取り出した形での言及がありませんでしたが、2007年9月19日の安保理決議1776中でわざわざこの行動に言及した上でこの行動に貢献した諸国に対する感謝の意が表されました。
 海上阻止行動が、念押し的に国連によってオーソライズされるに至ったと言っても良いでしょう。
 この安保理決議の文面は、日本政府が米国等を通じて入れさせたと指摘するむきもあることはご承知の通りです。

  イ ISAF

 次に、ISAF(International_Security_Assistance_Force)についてです
 ISAFは、集団的自衛権を発動してアフガニスタンに駐留していた多国籍軍のうち、カブール周辺の治安維持を担っていた部隊を切り離す形で、国連が安保理決議1386(2001年12月20日)でオーソライズしてスタートしたものです。
 このISAFの司令部機能は国別に6ヶ月交替で担われていましたが、2003年8月からはNATOが恒久的に司令部機能を担うことになりました。これは、NATOが史上初めて欧州・北米以外に配備されたことを意味します。
 そして、安保理決議1510(2003年10月13日)により、ISAFの管轄(Area of Responsibility)がカブール周辺からアフガニスタン全土に拡大されます。
 管轄がインド洋にまでは拡大されていないことに注意が必要です。
 
 2006年1月からは、ISAFが、米軍に代わってアフガニスタン南部で不朽の平和作戦に従事し始めます。
 更に2006年10月からは、ISAFが、アフガニスタン全土における不朽の平和作戦に従事し始め、これに伴い、この作戦に従事していたアフガニスタン残留米軍の指揮権も掌握します。
 ここでも、ISAFがインド洋における海上阻止行動には従事していないこと、従って海上阻止行動に従事しているいかなる国の艦船にも指揮権を持っていないことに注意が必要です。
 
  ウ 小沢氏が言っていること

 国連軍(国際連合軍=United Nations force)とは、本来、これまで組織されたことがない国際連合憲章に基づく正規の国連軍を指すのですが、現実には、在韓国連軍等の、国連のオーソライズの下で各国が自発的に組織する多国籍軍を指します。
 ISAFは、このような意味における国連軍です。
 
 同様、やはり国連憲章に基づく正規の国連軍ではありませんが、国連自身が組織し、国連事務総長が(原則として)指揮し、国連からも経費が支弁される(典拠省略)軍隊が、平和維持活動(PKO=Peace-Keeping Operations)に従事するところの平和維持軍(PKF=Peace Keeping Force)です。
 ちなみに、強制措置の実施は、平和維持軍ではなくて高度な軍事力を持つ国連軍の役割であると考えられています。
 
 他方、不朽の自由作戦の海上阻止行動(OEF‐MIO)は、このどちらでもなく、国連のオーソライズはあるけれど、組織されていない、各国がバラバラに参加している軍事的活動です。(組織されているか否かのメルクマールは、単一の指揮官・司令部の存否です。)
 日本の給油活動は、この海上阻止行動の後方支援なのです。

 さて、小沢氏は、国連によってオーソライズされているISAFへの参加は許されるけれど、オーソライズされていないOEF‐MIOへの参加は、その後方支援を含め、許されないという主張をしています。
 しかし、以上見てきたように、OEF‐MIOだって国連によってオーソライズされている点では何ら国連軍であるISAFと変わりはないのですから、オーソライズ云々の部分に関しては小沢氏の主張はナンセンスです。
 それでもなおかつ小沢氏は、ISAFに参加した場合の自衛隊部隊の行動は、日本による軍事指揮権の行使、すなわち日本の主権の行使ではないので集団的自衛権の行使にはあたらないのに対し、OEF‐MIOに従事している自衛隊部隊の行動は日本による軍事指揮権の行使、すなわち日本の主権の行使であって、集団的自衛権の行使にあたるので許されない、と抗弁することでしょう。
 
 私自身は、日本の憲法第9条は集団的自衛権の行使を禁じていないという見解なのですが、仮に集団的自衛権の行使が禁じられているとしても、海上自衛隊がインド洋でやっていることは、個別的自衛権の行使か集団的自衛権の行使かを論ずるまでもなく、そもそも自衛権の行使ではないと考えています。
 要は、軍隊・・自衛隊も軍隊です・・とは何ぞや、ということです。
 「軍隊(armed forces)」について、英語版のウィキペディアでは、「国家の軍隊は、・・その政府(governing body)の外交及び内政を推進する(further)ためのものである」としています。
そうである以上、(法的根拠がなければ動いてはいけない警察とは異なり、)本来軍隊は法的根拠なくして動けなければ存在意義はないのです。
ところが日本は、防衛省が沖縄の普天間基地移設計画に伴い、移転先とされている辺野古の海で実施される事前調査に海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を出動させたことに対し、防衛庁は明確な法的根拠を示すことができないことを問題視する声があるという不思議な国です。
 
 いずれにせよ、普通の国の海軍について申し上げれば、一般国際法により、いかなる国の海軍であれ、公海上で自国の艦船等はもちろんのこと、他国または国籍不明の艦船等であっても、その緊急事態に遭遇した時には、自らの艦艇や航空機を使って救援の手を差し伸べることができるのです。
 つまり、海軍は、自国の領域外で、海賊等の海上犯罪に対処する国際警察的役割を果たすことが認められているわけです。
 
 さて、2002年1月16日、国連安保理決議1390が採択され、全国連加盟国に対し、タリバンとアルカーイダ両勢力に係る資金凍結と要員の入国/通過の防止を求めるとともに、上記両勢力に対する軍事物資や軍事に係る技術的助言・支援・訓練の直接的間接的提供が国内から行われたり、自国民や自国船舶・航空機によって行われることの防止を求めました。
すなわち、2002年1月16日以降は、タリバンやアルカーイダに係る資金・要員・軍事物資等の移動が違法となったのです。
従って、各国海軍は、一般国際法に則り、違法行為であるところの、それらのインド洋の移動を、国際警察的に取り締まることができるようになったわけです。
 ですから、海上自衛隊は、この国際警察的取り締まりを給油等によって後方支援することはもとより、国際警察的取り締まりに直接従事することも国際法的には可能なのです。 これは個別的ないし集団的自衛権の行使とは全く関係ないので、日本国憲法に抵触することもありえません。
 (日本だけの問題として、国際法上も憲法上も可能な活動が、国内法上の根拠がないと自衛隊はできないという問題があるわけですが、既に前年の11月2日からテロ特措法によって活動根拠が与えられていたことはご承知の通りです。)

 そうだとしても、一、11月2日から1月16日までの2ヶ月半に行われた海自による給油等をどう考えるか、ということと、二、海自が給油等を行った艦艇が、アフガニスタン本土における不朽の平和作戦に関与した場合にこれをどう考えるか、という問題は残ります。
 
 この2ヶ月半は、厳密に言えば更に、2001年12月5日の(カルザイ(Hamid Karzai。1957年〜) を暫定大統領とする)アフガニスタン移行政府(Transitional Administration) 成立以前と以後に分かれるのであって、「以前」については、米国だけは個別的自衛権を発動し、その他の国々は米国のために集団的自衛権を発動してアフガニスタンのタリバン政権打倒のために戦い、「以後」については、(国連軍であるISAFは別として、)米国も含めてアフタニスタン政府のために集団的自衛権を発動してタリバンやアルカーイダ等と戦ったということになり、インド洋で各国海軍が行った海上阻止行動等もそれぞれの一環に位置づけられことになります。
 
 いずれにせよ、まず一についてですが、「以前」にせよ、「以後」にせよ、この間に行われた海上阻止行動従事艦艇への給油等(「等」は給水です。念のため)が仮に日本による集団的自衛権の行使であって許されなかったとしても、海上阻止行動が国連のオーソライズを得た1月16日をもって遡って許されるものとなった、と私は考えます。
 次に二についてですが、海自が給油等を行った艦艇による海上阻止行動と、アフガニスタン本土に係る個別的ないし集団的自衛権発動の軍事活動・・艦載機による作戦または巡航ミサイルによる攻撃・・とのためにそれぞれどれだけの燃料が使用されたかを見極めることが理論的にも実際的にも不可能である以上、仮に当該艦艇がかかる作戦または攻撃を行ったとしても、海自による給油等の(集団的自衛権行使なる)憲法違反性は阻却される、と私は考えます。
 なお、空母だけが問題になっていますが、空母以外の水上戦闘艦艇の多くもトマホーク巡航ミサイルを搭載しており、事情は基本的に同じであることに注意する必要があります。

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 (3)アフガニスタンかイラクか

 この際、海自が給油した米艦艇が対イラク戦に従事したのではないか、という問題にも触れておきましょう。

 米国防省は10月10日、海自補給艦「ときわ」から2003年2月25日、米補給艦ペコスが80万ガロンの燃料を補給され、ペコスはその直後、米空母キティホーク(母港は横須賀)に67万5,000ガロンを給油したところ、ペコスからキティホークへの67万5,000ガロンがすべて、「ときわ」から補給された分だったと仮定しても、キティホークの当時の航行速度や作戦行動と照らし合わせると、3日間で消費し尽くす量だとした上で、同艦はこの間、海上阻止活動のための監視などのOEFに従事しており、その後の同28日夜になって、ペルシャ湾北部で、イラク南部の飛行禁止区域を監視する「南方監視作戦(OSW)」の支援活動に入ったという声明を出しました。
 2003年5月にテロ特措法の最初の延長が論議された頃、当時官房長官だった福田首相は、「ときわ」が米補給艦に給油したのは20万ガロンであり、これは空母が1日に消費する量に過ぎず、ペルシャ湾に入る前に使い果たしたはずなので、イラク作戦への転用はありえない、と説明したのですが、上記米国防省声明は、この福田答弁を訂正したものです。
 これについて朝日新聞は、10月11日付の社説で、
 「確かに空母はペルシャ湾に入ったが、日本の燃料を使っていたと思われる3日間はあくまでアフガン作戦だけに従事していたというのだ。空母の艦載機がペルシャ湾内からアフガンまで飛ぶには、国交のないイラン上空を経なければならない。それは無理だろうから、大きく迂回して飛んだことになる。事実なら、なんとも不自然だ。そもそも、空母がイラクに向かってペルシャ湾を航行すること自体が、イラク作戦のための行動であり、テロ特措法の目的から外れているように見える。」
と疑問を投げかけています。

 また、これに関連し、「ときわ」が、ペコスに補給したのと同じ日に米イージス艦ポール・ハミルトンにも燃料を直接提供しており、そのペコスがイラク戦争に参加した可能性があるという指摘もなされており、防衛相は、そのポイントは、ポール・ハミルトンが巡航ミサイルのトマホークを搭載していた艦艇なのかどうかだとして、その点を米側に照会したいと国会で答弁しました。

 このアフガニスタンかイラクかの問題については、私は次のように考えています。

 こんなことが政治問題化するなんて噴飯ものであると言うべきでしょう。
インド洋でパキスタン沖に展開している米艦等の行っている業務は、アフガニスタンにもイラクにも共通する、いわば汎用性のある業務ばかりであり、特定の艦艇がアフガニスタン用に業務をしているのかイラク用に業務をしているのか、本来その艦艇に聞いたって分からないはずだからです。それに、この海域に所在する米艦は、すべて米第5艦隊、及びその上級司令部である米中央軍の指揮を受けており、中央軍司令官または第5艦隊司令官の命があれば、ただちに業務を変更したり、パキスタン沖海域を離れて別の海域に赴かなければならないのであり、そんなことを日本が詮索できる立場ではないことを考えればなおさらです。

 ところで、パキスタン沖海域を離れてベルシャ湾内に入った場合のことが議論されているので補足しておきます。
 パキスタン沖にいようとペルシャ湾内にいようと、米艦はアフガニスタンにもイラクにも共通する業務を行っているはずであり、このことは、タリバンやアルカーイダがスンニ派の過激派であって、スンニ派の住民が多数を占めるところのペルシャ湾西岸諸国(湾岸諸国)とヒトやカネ等の面で密接なつながりがあり、アフガニスタンやパキスタン北西部と湾岸諸国とを海上ルートで行き来する可能性があることを考えれば当然のことでしょう。
 米国防省が、キティーホークが、ペルシャ湾南部及び中部を北上中は対アフガニスタン業務を、ペルシャ湾北部に到着してからは対イラク業務を行った、と説明したのは日本政府と口裏合わせをしたものであって、この空母は、実際には常に両方の業務を行っていて、ペルシャ湾の北部に行けば行くほど対イラク業務の比重が大きくなった、というのが本当のところでしょう。
 なお、これまで対アフガニスタン業務、対イラク業務といった言い方をしてきましたが、テロ特措法の正式タイトルが、「・・アメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置・・に関する特別措置法」であることからお分かりのように、特段この法律が、海自の行える業務を「アフガニスタン」に係るものだけに限定しているわけではない、ということも付言しておきましょう。

 以上の議論は、米艦が(攻撃機を艦載しているところの)空母であろうと、空母以外の艦艇であろうと、またその艦艇がトマホークを搭載していようといまいと何ら変わるものではありません。

 興味深いのは、朝日が上述の11日付社説で、アフガニスタンに係るものであれば、米艦の活動が狭義の不朽の自由作戦(狭義のOEF)に係るものであるか海上阻止行動(OEF-MIO)に係るものであるかの違いは問題視していないことです。海上阻止行動にあたらないところの、「空母の艦載機がペルシャ湾内からアフガンまで飛ぶ」ことを特段問題視していないのことから、このことは明らかです。
 これは私の認識と同じく、朝日の認識も、狭義のOEFだって米国による単なる自衛権の行使ではなくて国連によってオーソライズされた作戦であることから、狭義のOEFに従事している米艦に対する海自の給油に関して日本による集団的自衛権の行使云々の問題は生じない、というものであるということを推測させます。(ただし、2003年2月時点で既にオーソライズされていたという認識か、その後でオーソライズされたので遡って2003年2月時点でもオーソライズされていたとみなされるという認識かは定かではありません。)


4 終わりに代えて

 (1)神学論争

 政府と民主党の間の神学論争が延々と続いています。
冒頭に触れたように、米国からは既に海自補給艦から給油を受けた艦艇が対イラク作戦に従事したことはないという回答が得られていますが、防衛省は改めて、海自補給艦から給油を受けた国のうち、対イラク作戦に参加した米英両国分を中心に、テロ特措法に反した目的外使用がなかったか各国に問い合わせ、その根拠となる航海日誌などの米国等から提供を受けた資料を精査してきました。
その結果「概括的に転用はない」(政府高官)という結論が出て、今週後半にも資料を添えて公表するようです。

 日本政府が苦労するのは身から出た錆ですが、こんな馬鹿馬鹿しい作業に付き合わされ、口裏合わせまでさせられた米国政府等には衷心より同情を禁じ得ません。
 米国防総省の諮問機関・国防科学委員会のウィリアム・シュナイダー委員長は10日、燃料の使用目的については、「米国はイラクでの攻撃作戦とその支援には使っていないと保証できるだろう」としながらも、「空母への給油の場合、艦上から飛び立ったE2(早期警戒機)がインド洋上でイラク関連情報を探知すれば、イラクの戦場へ伝えないとは言えない」として、厳密な区分は作戦上の各国の関係を困難にするとの見解を示しました。
 言うまでもなく、この発言の前段は口裏合わせの結果に従ったものであり、後段がホンネです。

 この問題の核心は、政府・自民党の安全保障政策のホンネとタテマエが乖離している上に、何がホンネであるかについても、実のところはっきりしていないことです。
 これは、政府・自民党の安全保障政策が一貫して、米国の要請(指示)と世論との板挟みの中で落としどころを探す、というものであったところから来ています。
 
 平行して、民主党内でも神学論争が続いています。
 そこへ小沢代表が、日本がアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)の活動に参加することの是非を巡り「どうしても嫌だと言うなら離党するしかない」と論争打ち切りを宣言を行い、波紋を呼んでいます。
 しかし、論争打ち切りとはいきそうもありません。
 「左」からは「(憲法で禁じられた)国権の発動にあたらないというのは無理がある」(枝野幸男・元政調会長)等の声が、「右」からは「<国連中心主義についても>安保理常任理事国の中国やロシアが『うん』と言ったり棄権したものしか安全保障的な動きができない」(前原誠司副代表)との声が出、ますます論争はヒートアップしてきました。
 こちらの問題の核心も、民主党が昨年12月に決めた「政権政策の基本方針」にしても、国連活動へ積極参加する主体が自衛隊なのか、小沢氏の持論である自衛隊とは別の「国連待機部隊」なのか、具体的言及がないことが象徴しているように、民主党にいまだに党としての明確な安全保障政策がないことです。
 
 私に理解できないのは、国会で誰も燃料を無償で提供していることを問題にしていないことです。
 そもそも世界の議会の原点とも言うべきイギリス議会は、国王(行政府)を戦費の承認の是非を通じてコントロールするものであった、ということを肝に命じて欲しいものです。

 (2)神学論争をやっているヒマはない

 それにしても、政府は、豪州・インド・インドネシアに対しては、自由民主主義同盟の結成を呼びかけ、自衛隊には、現在伊豆大島東方海上で実施中の大量破壊兵器拡散阻止構想(PSI)に基づく7か国合同の海上阻止演習「パシフィックシールド07」へ参加させたというのに、政府や民主党はこれらの落とし前をどうつけるつもりなのでしょう。
 海自補給艦から外国の艦艇への給油すらできなくないということになれば、自由民主主義同盟なんて絵に描いた餅以下の話になってしまいますし、自衛隊だって宝の持ち腐れになってしまいます。
 シュナイダー氏は、日本に以下のような苦言を呈しています。
 「給油活動<は>1999年の日米防衛指針(ガイドライン)関連法成立後の・・日本の大きな政治的変化の産物・・だと評価<しているところ、>・・問われているのはその変化が長期的なものなのか、それとも一部の政治指導者の時代に限ったものだったのかということだ・・。控えめな給油活動も続けられない<というの>なら、・・米国と日本、豪州<等の国々>で21世紀の新たな同盟構造を模索しているが、日本にいかなる関与を期待できるのか疑問をもたらす・・さらに、・・日本が安全保障上の役割を受け入れることが困難なら、なぜ・・国連安保理常任理事国・・になる必要があるのか」と。
 神学論争をやっているヒマはないのです。

 (3)私の提言

 私は、インド洋でこれまで実施してきた無償の給油活動は止めさせ、その代わり、海自艦艇をOEF-MIOの一環としての海上阻止行動の本体に参加させることを提言します。
 ただし、インド洋派遣自衛艦には補給艦を随伴させることとし、他国が給油を求める時はこれに応じてもよいが、あくまでも有償(原価)で提供することとするのです。
 もっともそうなれば、ほとんど給油を求める国はなくなると思いますが・・。
 これは、民主党が小沢下ろしを行った上で、この案で党内コンセンサスを形成することが前提になります。
 こうでもしない限り、民主党は再び世論から見放されることでしょう。
 (私は、ISAFへの参加は、自衛隊関係の法整備が十分でない現状においては、隊員にとってリスクが大きすぎるので差し控えるべきだと思っていることを申し添えます。)
うーん、熟読させていただきました。
まったく同感です。
自民党も民主党もいち早く神学論争から下りてまともな議論を国民の為にしてほしいものです。

私は以前からの小沢支持ですが今回のISAFだけはあまりに唐突で自民党よりも一気に右に舵を切ってしまった気がします。
そこまでやるなら核武装論議をしたほうがって(無理でしょうが)思います。


私はどちらかというの2大政党支持派なので現在は民主党を立場上応援していますが、どうもこの国には民主党に対する言われない偏見があり、今後もし民主党が政権をたとえ奪取しても運営には自民党に倍する厳しさを痛感します。
いっそのこと、禁じての大連合が結局国民には一番良いのではさえ思えます。

自民党の独裁は腐敗を生むし、民主党の独裁では国際的な信用が無くなる可能性があります。

経済の自民党、理念の民主党の両方の長所をもった政党が出てくることが理想なのですが。

足して2で割ると大連合後の小泉新党が一番よさそうに思いますが、太田さんの
ご意見は如何でしょうか?
田村重信自民党政務調査会首席専門員(安保・テロ対策、憲法、情報問題など担当)
イージス艦を派遣した理由について
http://tamtam.livedoor.biz/archives/50829938.html
先週土曜日(註:1月19日、太田先生が太田総理で護衛艦にまつわる発言したのはその前日ですよね)と今週月曜日に知人から、「新テロ特措法を通したのは、アメリカが日本のイージス艦の情報が欲しかったからだとテレビで言っていた」という話を聞きました。
 「それはウソで、新テロ特措法は給油するためのもので、それを守る役目がイージス艦」「かつては、給油の9割がアメリカだったが、今は、フランス、ドイツ、イギリス、パキスタンなどの量のほうが多くなっている」といった話をしました。
 テレビは勝手な報道をするものだと思い、今回「イージス艦を派遣した理由について」述べてみたいと思います。


―――
これ太田先生のことじゃないですかね。「うそ」とか言われてますけど。太田先生はイージス艦派遣だけにこだわっているわけではないですけど、自民党の公式見解ではイージス艦派遣は

? 艦艇の派遣ローテーション
? 補給活動の安全性の確保
? 隊員の居住環境の快適性

となっています。純粋に給油だけが目的だとしても?のためには護衛艦を付けないわけにはいかないような気がしますが。アフガン・イラク戦争が一段落した現在でも給油艦と護衛艦はセットで派遣されてますよね。

補給艦おうみが佐世保出港 インド洋で給油再開へ (共同通信)
http://news.www.infoseek.co.jp/search/story/25kyodo2008012501000376/%25A5%25A4%25A5%25F3%25A5%25C9%25CD%25CE/
横須賀基地を出た護衛艦「むらさめ」とともに、昨年11月以来となる給油活動を再開する。

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