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バトル仮面舞踏会コミュの37.「モンスター・ハンター」 4ひえた

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「だから、うちの子を殺した責任を取れって言ってるんだよ」
 ファミリーレストランの真新しいレジの前で、男が領収書の束を突き付ける。
「テーブルにあった醤油を飲ませたら、その日のうちに死んだんだ! お前のところは、毒をテーブルに置いてるのか! ああ? 人殺しが!」
「いや、その、お気の毒な事で、申し訳ございません……お金は、その……お支払い致しますので」
「ええと……すみません、でした」
 店長と女性店員は頭を下げる。
「ふん、くれるってんなら貰っておいてやる。でもな、死んだ子供は戻って来ねえんだよ! そこの女よこせ、一人二人作る」
「……仕方ありません。お客様は神様ですし」
「て、店長!」
「お店の為です!」
「よし、押さえてろ」
「嫌ああああっ!」
 店長は女の店員の両腕を押さえ、男が彼女の制服を引きちぎる。
 次の瞬間。
 レストランのガラスが割れ、ツーリングタイプの大型ハーレーが突っ込んで来た。
 女の店員の下着に手をかけていた男の後頭部を、ライダーは工事用金槌で殴り抜いた。
 突進力が乗ったヘッド重量一.五キロの金槌は、男の左後頭部から頭蓋骨を砕きつつ脳の大半を抉る。トコロテン式に左眼球が飛び出して、レジ脇の喫煙席で食事をしていたカップルのパフェの上に落ちた。
 ライダーは、ヘルメットのバイザーを上げる。
「君、怪我はないかい?」
 自分の革ジャンを脱ぎ、女の店員に羽織らせる。
 革ジャンの下は、携帯番号の書かれたTシャツ一枚で、ほっそりした左の腕にはピエロと「JOKER」の文字のタトゥーがされていた。

 埼玉県警北大宮警察署に、刑事の袖野和夫巡査部長が戻って来る。中年間近で、背が低く腰の据わった体型をしている。
「お帰り、袖野巡査部長」
 書類に決済印を捺していた、中原彰一刑事課長が声をかける。
「馬場を……取り逃がしました」
 袖野は俯いたまま報告する。
「そうか」
 中原は立ち上がり、窓の外を見る。少し離れた場所に、神社の森の緑が見える。
「元交機隊員、馬場衛。自称ジョーカー。サービスや品物に常識外れのクレームを付けてごね続けるいわゆるモンスターを殺傷する、通称『モンスターハンター』」
「はい」
「彼を英雄視する声もあるが、裁くのは法であって、一個人ではない。何としても、逮捕するんだ」
「はいっ」
 袖野は敬礼をして、自分の席に戻る。
 その様子を横目で見ながら、中原は口の中で呟いた。
『馬場……いつまで戦い続ける気だ?』

「全員が浦島太郎だったら、うちの子は主役でも何でもないじゃないか!」
 校長室の応接スペースで、校長と担任の女性教師を、父親は怒鳴る。
「うちの子は、個性を尊重して育てているんだ。十把一絡げの役なんかにして、心の傷になったらどうするんだ、これが原因でいじめにでもなったら! 才能が埋もれてしまったら、あんたどう責任を取ってくれるんだ!」
「そうは仰られましても、他のご家族からの要望もございまして」
「これが最善なんです」
 校長と教師は頭を下げる。
「分かった、もう頼まねえ!」
 父親はガラスのテーブルを持ち上げるなり、校長と教師に振り下ろした。脚の鉄骨が二人の肩の骨を砕き、割れたガラスが頭から降り注ぐ。
「後は他のガキ共がいなけりゃいいんだ! うちの子一番! うちの子天才! ヒャッハーー!」
 父親は校長室の外へ飛び出して行った。
「……警報、を」
 ガラス片を頬に突き刺したまま、血まみれの教師は床を這いずる。
「や、いや、でも、親御さんは神様だし、事が公になると……」
「うる、さい」
 すがりつく校長を蹴倒し、教師は校長の机の下にある防犯ボタンを押し、それから携帯電話を開いた。

 警備会社から通報を受け出動した袖野は絶句する。
「痛え! 暴力的に取り押さえられた! 怪我した! 訴えてやる、マスコミに言ってやる!」
 教師達に刺又で取り抑えられながら、父親は喚いている。
 廊下には。
 頭蓋骨、首、肩、背骨、腕、脚、指、あちこちが破壊され、内臓が引きずり出された子供達の死体が三〇体、血溜まりの中に転がっていた。全てが恐怖と絶望の表情を――否、顔面を引き剥かれ表情の分からないものもあった。
「こいつには……何の救いも」
 袖野は銃を抜き、取り押さえられた父親とゆっくりと向け、そして、引き金に指をかける。
 その時、激しいバイクのエンジン音と共に、馬場が飛び込んで来るなり、袖野の銃の前に割り込んだ。
「どけ……この、犯罪者、風情、が……子供達、がっ……」
 袖野の目から涙がこぼれる。次々に涙がこぼれる。
 父親は喚き続ける。
「僕の恋人も、モンスターに追い詰められ、自殺した。警官のままでは、裁けなかった」
「……なら」
「一人でいい」
 ジョーカーは金槌を振り上げる。
「それ以外は任せるから、罪を背負うのは」
 細身に見える腕に、塊のような筋肉が浮かび上がり、ピエロのタトゥーが歪んで怒り顔に見えた。
「僕、一人だあああああっ!」

コメント(22)

投稿者: はる☆ - 11/18 21:54

なんだかなーと言う感じです。モンスターペアレント!社会問題ですねー。うーん。考えさせられました。
投稿者: ひねもすのたり(寝袋青組?22) - 11/19 12:36

ブラックなのかー?
ハードボイルドなのかー?
線引きが微妙です。
馬場の心情もわからなくはないですが、暴力に暴力で対抗する事に正義は無いと感じます。
投稿者:一兎-11/19 15:46

テンションの割りに丸みを帯びた印象。このテンションで引っ張るなら、馬場衛(ジョーカー)をもっとかっこよくする方がいい。もしくはテンションを下げ、もっと哀愁を出したほうが話として締まる思う。

>革ジャンの下は、携帯番号の書かれたTシャツ一枚
>彼を英雄視する声もある
>携帯電話を開いた

→携帯番号の書かれたTシャツを想像するとすごくかっこ悪いし、そんなことするんだったら、革ジャンなんか着なければいいと思う。はじめは非モテな青年が人助けをして彼女をゲットしようとしている話かと思った。
辻褄あわせにしても露骨に「携帯番号の書かれた」と書くのではなくもう少し工夫があればいいと思う。

>次の瞬間。
>レストランのガラスが割れ、ツーリングタイプの大型ハーレーが突っ込んで来た。

>突進力が乗ったヘッド重量一.五キロの金槌は、男の左後頭部から頭蓋骨を砕きつつ脳の大半を抉る。
>トコロテン式に左眼球が飛び出して、レジ脇の喫煙席で食事をしていたカップルのパフェの上に落ちた。

→スタイリッシュでもないし、コミカルでもないし、わかりやすくもない。
 
>元交機隊員
>自称ジョーカー
>「僕の恋人も…」
>細身に見える腕
>ツーリングタイプの大型ハーレー
>工事用金槌
>革ジャンを脱ぎ、女の店員に羽織らせる
>ピエロと「JOKER」の文字のタトゥー

→若いのか、おじさんなのか分からない。馬場衛が像を結ばない。
テーマは悪くない。
目の付け所はよいね。

しかし、残念なことにそれを料理する筆力が圧倒的に足りてない。

全体的に文体が淡々としてるため作品にのめりこめない。
もっと無駄な描写や場面を削って工夫を凝らせるべき
 時事ネタのわりには自己完結してるんだなぁ。
 それ以上の感想が思い浮かばない。
投稿者:鳥新-11/21 21:51

 う〜ん、すごく設定は面白いと思うの。だけどこの設定でハードボイルドにするとちょっとドンくさい気がする。
 むしろマジな善悪は置いといて世間を騒がすモンスター・ペアレンツやモンスター新入社員などをばったばったと痛快にやっつけて欲しかった。
 ……スラップスティックのほうが設定が生きると思うけどなあ。
タイトルありきの作品かと思いましたが、モンスターの意味を理解して、成る程と。
社会問題への風刺が効いていて、アイディア的には面白かったと思います。
それだけに、もう少し、構成や描写が練られていればと残念に思います。
小説というよりは、少年漫画のテンションであるかなあと感じました。
投稿者:猫かん - 11/21 20:01

ハンマーの方ですね
集中とオートマーキングをつけてババコンガをタメ3で一撃粉砕ですか、やりますね。わかります
携帯番号のかかれたフラッシュゴードンのオマージュですね、わかります。
でもちょっと動機が薄い気がします。それにお客様はかみさまとか保護者は神様とか皮肉が露骨すぎな気もします

最後の叫びもちょっと微妙な感じでした。熱い人なのか冷たい人なのかちぐはぐなのでどちらかにしてほしかったです。
うちに秘めた熱さだったとしても微妙ですし
村上位のクシャルダオラが倒せなくて悩んでます。

じゃなくて・・・作品は楽しめましたよ。ここまでくるとグロテスクでもコメディですね。口元がニヤニヤしてしまいました。
が、小説として面白いかと疑問に思ってしまいます。良くも悪くも勢いで書いてる感があるので、新しい素材を手に入れて武器や防具をしっかり整えればいい書き手になると思いました。
時事ネタを取り込んだ話という時点で個人的に多少評価したいんですが、ラスト近くの台詞「僕の恋人も、モンスターに追い詰められ、自殺した。警官のままでは、裁けなかった」がめたくそ説明的すぎて、そのうえよく分からなかった上で、重いことをいっているはずなのに重さがまるで伝わってこなかった。
また、ラスト近くで唐突に「ジョーカー」と出てくるけど、それまで馬場だし説明台詞で一度「自称ジョーカー」とあるだけで、ここだけジョーカーである意味が見出せなかった。混乱するだけ。
さらにラストも、なにについて、何で叫んでいるのかよく分からないというよりも前述までの話との脈絡が薄い。
投稿者:サンソン - 11/24 23:27

 処刑ライダー見参!

 皮肉が効いたお話しですね。台詞に関してもさほど気なりませんでした。個人的には、もっと10000字くらいで読みたいですよ。
投稿者:萩鵜-11/25 17:45

これはなんという世紀末話しですか?
悪役は全員モヒカンですよね?(ぇ


 さて、本作ですが各シーンが中途半端に終わりすぎていて、どこで場面転換したのか、どこで何の話しが始まったのかわかりません。
 1行開けて書いている=シーンの移り変わりと表現しているのかもしれませんが、それだけでは足りない。
 ちょうど4段落で4コマ漫画のように起承転結になっているのかもしれませんが、各シーンで起承転結をつけなければ、読者はついていけません。

 個人的に気に入ったシーンが目玉がパフェの上に堕ちる所です。このブラックユーモアが作品の方向性をがっちりと固定していますね。

 ただし。基本的な流れを考えて構成しないと、読み手が非常に苦労する文章でしかない事を念頭に置いてください。
投稿者: D・J・koby(man nan life) - 11/26 21:45

とりあえず、突っ込んだりとかはなしで気になったところをいくつか引用。

「テーブルにあった醤油を飲ませたら、その日のうちに死んだんだ!」

「そこの女よこせ、一人二人作る」

「ツーリングタイプの大型ハーレーが突っ込んで来た」

「全員が浦島太郎だったら、うちの子は主役でも何でもないじゃないか!」


なんなんだこのとてつもない馬鹿話は! 
いやいい意味で!

こんなわけのわからんハードボイルドものは初めて読みました。いい意味で。

文章も展開もちょっとひどいんだけど、このわざとらしさが突き抜けてて、個人的にはよかった。

「僕、一人だあああああっ!」
なにげに一人称「僕」だし。

しかし。
描写は拙いものの、最後はちょっとやりすぎで好きでない。「子供の惨殺」を描きながら活かしきれないというのは、それではただ残酷なだけだ。
少し描写が少なく、後半が状況を把握するのに手間が掛かりましたが、これはこのお話だけで完結してますし、叫びにキャラの気持ちがこもってる作品だと思いました。

に、しても工事用金槌の扱いうまいなJOKER(笑)
腰の据わった体型?
床を這いずる?
ちょっと想像できません。

イメージはバイオレンス・ハードボイルド・コメディーですか?
それにモンスターペアレントとおバカキャラの今時ネタをミックスさせたと。

全ておいしいとこ取りですね。

しかし、それを紡ぐ文章が拙く、粗ばかりが目立って逆に鼻につく。
この設定を上手く書きあげるのは、2000文字という制限が無かったとしても非常に難しいと思うけれど、それができればとてつもない傑作になったかもしれないと感じます。
投稿者: シャケ弁 - 12/01 17:28


残酷で悲しいお話ですね。

登場人物(全員)の救われなさは全作品中ピカ1だと思います。

爽快感はないですが、自分の中での印象はかなり上位でした。
パワーを感じます。
が、それだけ。
題材としてはキライなものではなかっただけに残念。
投稿者: ゆきのしん - 12/06 06:28

「世紀末救世主伝説」的な話ですね……。後半のグロさと湿っぽさで気分が冷めました……。ユーモアを出したかったのか、社会的警告を打ち出したかったのか、狙いが絞れていない印象を受けました。
投稿者:ガミ - 12/12 09:07

欲張りすぎたかなぁ…。悲しいお話なのか、愉快なお話なのか。両極の方向性が読者心情に混乱をきたしそうだなと感じました。

理不尽過ぎる言いがかりが光っていると思います。酷く腹が立つ(笑)そこへ飛び込んできて、不快の根源たるモンスターを撲殺する馬場さん。二輪を駆る悪の英雄。良いですね。仮面ライダーを彷彿とさせます。

目には目を。毒には毒を。理不尽な言いがかりには理不尽な死を。愛する者を奪ったモンスターの同類は俺が裁く。道化の微笑みが復讐に歪む時、恐怖の自己中心主義者共に怒りの鉄槌が下される。面白い(笑)ただ。たぁーだ、方向性を見失った。笑いを取るならなんでもありな展開も許せたが。無理やりな人死にも看過出来たが。汚れた正義を掲げるには説得力不足過ぎる。

醤油のクレームつけた男は撲殺されるべきか。婦女暴行って事になりますが、命を取ろうって話では無い。なら、許されるべきかというとそうではないですが。罪と罰が釣り合わない。そもそも店長も同罪…つかむしろ店長こそ悪じゃん(笑)

30人斬りのお父様に至っては、もう病気でしょう。精神の。私は悪くない。悪いのはお前らだ。お前らのせいだ。ってのが言いがかりだと思うんですが。責任押しつける相手殺しちゃって、どう言い逃れするつもりだったんだ…。生きてること自体が息子にとっての害悪だとでも…?だとしたらやっぱり病気。一線を越えてます(笑)

感想読むまでシャツの携帯電話の番号の意味に気づかなかった。通報先って意味なんですな。

謎の英雄登場→警察側の評価→過去→英雄再登場で真意が明らかにという構成は悪く無いと思います。よくあるっちゃよくあるけど。語彙力もそこそこ揃ってる。ところどころひっかかるのは、表現力の高さが揃って無いからでしょう。読者心情を考慮した方向性の整理と、言い回しに気をつけてみると良いかと。
作者です。
感想ありがとうございました。
こいつは少々長さ(短さ)に足をすくわれてしまった感じだなぁ……。
練り込み不足、精進します。
投稿者: 竜胆 - 12/13 11:54

フィクションの世界でぐらい、モンスターをボコさせてくれよと自分は思ってるので、なかなか好感色な作品でした。
モンスターの馬鹿っぷりが際立って、ジョーカーとか刑事のキャラが薄い。
表現だとか、他の皆さんの書評を参考にして、頑張ってもらいたいと思います(手抜きではなく、言われてしまった)

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