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バトル仮面舞踏会コミュの23.「真っ赤なアジサイ」 夢想花

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 ――まただ。気が付くと視線を感じる。通学のバスの中や学校。あるときは遠くから、そしてあるときは近くで。
「ねえ、聞いてる?」
 ユミコに肘を突付かれて、飲みかけのシェイクが少しこぼれた。
「ごめん、ごめん。ねえ、ちょっと席替えてもいい?」
 紙ナプキンでテーブルを拭きながら、ユミコに言う。
「もしかして、またぁ? アイツも懲りないねぇ」
 窓際の席から奥の席に移動する。席を立ったとき、窓の外をチラっと見てみる。――いる! 小降りとはいえ傘も差さずに、私が気付いているのも承知でこの二階の窓を見上げている。
 アイツ――達彦は、家が隣り同士の幼馴染なのだ。
 奥の席に移り、達彦の視線から逃れられたことにホッとしてると、ユミコがポテトを頬張りながら言う。
「アタシのダチに頼んでシメてもらおうか?」
「いいよ、そこまでしなくても」
「だって、ウザくない?」
 お互いの親同士の仲が良いので揉め事は起こしたくないし、アイツはただ見ているだけなのだから。それに、もっと重大な事件が控えているし。
 両親が旅行で不在のため、彼氏=健が泊まりにくるのだ。もちろん、初めての……である。

「アジサイっていいよね」
 傘をクルクル回しながらユミコが言う。
「どうして?」
「だってさあ、雨に濡れてハカナゲだし、それに、この花が萎んだら夏ってことだしぃ」
 私は紫陽花が嫌いだ。なぜかこの花を見るたびに嫌な気分になる。それはいつも決まって脳裏に浮かぶあのイメージのせいだ。
「ねえユミコ 、真っ赤な紫陽花って見たことある?」
「アジサイって、青とか紫とかピンクでしょ? 咲き始めと終わりで色が変わるんだよね?」
 私の脳裏に浮かぶのは、いつも真っ赤な紫陽花だ。薔薇の花を思わせるような色。誰に聞いても、インターネットで調べてもそんな種類は見当たらない。あれは夢だったのだろうか。
 バス停が近づき、彼=健の姿が見えると、ユミコは手をヒラヒラさせながら去っていった。代わりに健の優しい微笑みに迎えられた。
 家に着く。玄関先の紫陽花が青く咲いている。あまり好きではないこの花も今日に限っては好きに感じられる。
 
 二人とも初めてだったので、ぎこちないものだった。彼を受け入れた瞬間、脳裏にあの映像が浮かんだ。真っ赤な紫陽花。その不吉なイメージを振り払うように私は行為に集中した。それでも健と結ばれた幸せで一杯だった。
 予想していたよりも、というよりは殆ど痛みも感じずに終わった。破瓜の出血も無かった。人によっては、出血の少ない人もいるそうだし、運動選手などはいつの間にか破れてしまう人もいる、と聞いたことがあるので、そんなもんかな、と思ったら、健の反応は違った。
「初めてって言ってたよね」
「うん。健が私の初めての人」
「どうして出血が無いの? 全然痛がらなかったし」
「それは……」
 さっき思ったことを健に説明する。疑いながら問い詰める健の表情に、幸せ一杯だったさっきまでの気分が一気に冷めてゆく。
「オレ、帰るわ」
 健は不満の表情で身支度をし、無言のまま玄関へ向かった。引き止めようと腕を取るが、その手も振り払われてしまった。が、玄関の扉を開けたとき彼の足が止まった。
 達彦が立っていた。小雨の中で傘も差さずに頭から足の先までびしょ濡れで。
「何だ、お前が例のストーカー君か? どけよ!」
 そう言いながら達彦の肩を突き飛ばし、道を空ける。尻餅を付いた達彦がヨロヨロと立ち上がったとき、その手にはバットが握られていた。悠々と立ち去ろうとする健の後頭部に向かって振りかぶり、そして振り下ろした。健の頭から飛び散る血が赤い虹になって紫陽花に降りかかる……。
 達彦の動作がスローモーションに見える……健を助けようとしたが身体が動かない……頭が割れるように痛い……眩暈がする……。
 薄れ行く意識の中で私ははっきり思い出した。小学校五年のとき、私は近所の変質者に強姦された。痛みと破瓜の出血の大量なことにショックを受けた私は半狂乱だった。そこへ、達彦がやってきた。手に持っていたバットを振りかざし、男の後頭部へ……。
 傍らに咲いていた紫陽花の花に血飛沫がかかり、咲き始めのまだ青い花弁を真紅に染めた――あれは真っ赤な紫陽花。
 気が付いたとき、私は家の中にいて、傍らには心配そうな達彦がいた。
「大丈夫?」
私の顔を覗き込む達彦の鼻の頭に赤い血が付いている。そして下腹部の痛みを残してこの出来事は、私の記憶から封印されてしまったのだった。
 
 達彦の攻撃は幸いにも浅かったらしく、健は出血させながらも頭を押さえて逃げて行った。にっこり笑いながら達彦が近づいて来る。
「大丈夫?」
 あの日と同じ無邪気な顔で。鼻の頭に赤い血を付けて……。
「いやあぁぁぁぁっ!」

コメント(29)

伏線の張りかたは◎

しかしこの最後、叫ばずにはいまいちかなぁ?
そういうながれでは無いように感じました
投稿者:はる☆ - 11/18 06:09

赤い紫陽花ー成る程と納得した瞬間に背筋がゾッとしました。
投稿者:ひねもすのたり - 11/18 18:12

うん。なんか嫌だ。
達彦、怖いですよ。
投稿者:銀 - 11/20 01:11


うわっ!

達彦怖っ。

最後の叫びだけ、なんか浮いた感じがしました。
投稿者:鳥新-11/20 19:09

 面白かった〜。思わず、次は!次は!って感じで読まされてしまった。
 でも、健が逃げおおせたのは、良く言えば作者の優しさだし、出来れば(私としては)紫陽花の中で凄惨な美しさで死んで欲しかった〜。私ちょっと病んでるかなあ。
投稿者:巳年のサンソン - 11/20 22:29

 伏線、お見事です!
 しかし、なんだか怖いですね。ダークですね。タイトルにも納得いたしました。
 これは、よくできている。
 封印された記憶の使いかたもいい、凄惨さもうまく文筆に昇華されているし、タイトルもいい。
 最後も、記憶が蘇ったんだから、あの叫びでいいんじゃないかと思います。

 特に云うことはないんだけど、でも、盛り上げ方も含めて完璧に仕上げるには10倍くらい要るかなぁ。構成そのままで。
健の反応や、フラッシュバックする恐怖は上手いと思います。
ただ、演出優先で、ややリアリティに欠ける印象が。
鈍器で血が出るほどの打撃であれば、少なくとも骨はいきますしねえ……。
はじめまして。
ひとこと感想かきたくてお邪魔します。

赤い紫陽花にどういう意味があったのか、ということが
自然な流れで突然、もやをはらうように明かされたのが印象的で上手だなと思いました。
投稿者:陸 - 11/22 02:22

初めてで出血があって、その後何年も経ってるんだったら、また血が出ると思いますが。処女膜ってゆっても、ヒダなんで。勝手に治癒が始まって、数ヶ月後には元通りです。……なんて、どうでもいい事考えてたのは陸そだけかな\(^0^)/でも、ネタ的には面白かったです。
他の方々と意見がダブりますが、起承転結がしっかりしていて物語として良く出来ていると思います。

しかし達彦、強姦犯殺した罪が露見しなかったのなら、小学生であったことも考えるとかなりの手練です(笑)
おもしろかった!

だけどまだまだいくつものなぜ? がでてくる。
なぜ達彦は今も主人公につきまとうのか。とか。

あと
>>「何だ、お前が例のストーカー君か? どけよ!」
以降が視点がぼやけててちょっと混乱しました。
素晴らしい!

随所に散らされた伏線と、クライマックスの繋がりが見事です。
オチの叫びも、達彦のあの日と同じ無邪気な顔が契機となって、記憶だけじゃ無く心(精神)が子供返りしたと捉えると、叫ぶしか無ぇーだろ。と思っちゃいます。

特筆すべきなのはそればかりでなく、登場人物のキャラ設定がしっかりとされていて、それがちゃんと書き分けられている点。

両親の近所づきあいまで気にかける思慮深い「私」
頭のネジが一本足りなそうな「達彦」
身勝手で短慮な「健」
紫陽花をアジサイと言う頭の悪そうな「ユミコ」

そういった細かい設定までしっかりしていると、物語にも深みが出てしっかりと読ませてくれます。

ストーリーも良い意味で気持ちが悪く、文句のつけようがありません。

まあ強いて苦言を呈するとすれば、健が達彦に殴られて記憶がフラッシュバックする一連の流れを、時系列で纏めたほうがより臨場感が出るのになあ。
というところでしょうか?
一人称進行の割りにところどころあまりにクールで三人称然としているところが気になった。内容からすると、もう少し「私」のなかの感情なり何なりの起伏を出して行っていいとも思えたし、出さないと一人称の意味が無い。
幸せだと思っているところも、そこから急に冷めたところも、記憶が蘇ったところも、抑揚が無くてつまらない文章。
話はなかなかのものだっただけに、ちょっと残念。
投稿者:蔵螢 - 11/23 04:57

構成が素晴らしい!
伏線も良い◎

んで、それ意外を考えると、う〜んという感じなんですよね。まあ、そのふたつがあれば普通は良いのですが、できれば作者の色を加えてほしかった。非常におしい。昼ドラではなく、月9でやった感じ。どっちかっていえば互いの感情や意思が絡みあうものがよかった。サッパリし過ぎて、読者を気にしすぎた感じがいなめない。
投稿者: 久遠 - 11/23 07:38

ストーリーはすごく良く出来てます。

惜しいかな、はじめて彼氏を迎え入れる思春期の少女の心が、まったく考察されていません。
文章からは男性の感性が漂う。
あるはずのないものとして作中で出てくる赤いアジサイなのですが、実在します。

ソースはこちら。
http://www.thekyoto.net/kyoukyou/0107/010702_03/
投稿者:萩鵜-11/23 14:27

全体的に軽い。それが狙いならば申し訳ありません。

 男性って初めてじゃなかったら冷めて帰る人がいるんですか? そこがどうしても見えませんでした。丁寧に帰ろうと思った描写を入れてあげると説得力が出ると思います。

 描写に「幸せ」「心配」など直接的な感情がありすぎます。これにより本文中のキャラクターの心を押しつけられている気分にさせられました。
 どうして「幸せ」に思ったのか、どうして「心配」に思っているのかを、もっと細部まで描いて欲しかった。これがたぶん物語が軽くなった原因かと思います。

 さて、強姦についてですが少々納得いきません。強姦された人は、この程度の描写しか心に描かないんですか?
 ちょっと強姦された人を小馬鹿にしているように思え、不快に感じました。
 言葉では言い表せないほど、襲われる、奪われるって事は酷い精神的苦痛を伴います。軽んじて使っていい事ではありません。
 主人公がはっきり思い出したならば、ここでまず『身が凍りついた』や『血を失ったように』など、脳裏によみがえった光景が信じられない、苦痛に耐えきれないという描写がほしかった。

 少々きつくなりますが、本当に『強姦』とはその人の人生全てを壊してしまう程の出来事で、事件が解決しても数十年、あるいは死ぬまで心から離れない悪夢なのです。そこを何も考えず使う事だけは止めたほうがいいです。
投稿者: D・J・koby(man nan life) - 11/24 21:14

伏線はいいのかも知れない。しかしそれだけで力尽きちゃった、という感じ。

中心にいる人物が薄く、ユミコとの会話にそこまで字数を割かんでもよかったのではないかと思いました。ここまで割いただけの効果はのちにあらわれたろうか? とくにそうは思えない。そのうえ、最後のほうで焦っちゃってる。文章自体にもう落着きがない。

小雨に虹がでるほどの出血量で「健は出血させながらも頭を押さえて逃げて行った。」ってのはどうだろう。そのときも虹がでていたらなかなか滑稽だ。「出血させながら」というのもおかしい。自分で出血をコントロールできるんだろうか。

ここら辺うまくできれば面白くなったか? というと、それはわからない。そこまで行けない。困った。とにかく冷静に読み返すことは大切だよなあ、ということです。
変なつっこみだけ入れてそのまま放置というのもなんなので、感想を。
もともとお上手な方なんだと思います。ありがちなネタをこれだけ書けるんですから。
でもそれだけでした。
こういう話を書こうというのに終始してしまっている感じで、作者が何を言いたいのか、何を一番書きたかったのかが伝わってきませんでした。
「こういう話を書きたい」というのが作者がこの作品を書いた最大の意図だったのかもしれませんけど、ありがちな話を書くときは作者なりのプラスアルファを出してもらわないと「ありがちだよね」だけで終わってしまう。そういう作品でした。残念です。
それから、個人差はあるといいますが、初回から4〜5年も経てば膜が再生してる可能性はあるし、出血はまあともかくとして痛みはあると思いますけどねえ。健がよっぽど上手か、主人公がいわゆる色情狂であるという設定なら話は別ですが。それじゃあ18禁になっちゃいますよね(笑)
投稿者:ゆきのしん - 11/30 23:25

 達彦くん、かなりイッてますね……。衝撃的、という意味ではかなり優れた作品だと思います。文章も読みやすくてうまい。松竹梅で言ったら文句なく松レベルです。個人的な好みの問題で、すごく細かいことですが、彼=健、という表記の方法が連続で使われているのがちょっと惜しいかな……。
投稿者: シャケ弁 - 12/01 23:16


こんだけ書けたらもっと楽しいんだろうなぁ。と思いました。文章の丁寧さに惚れ惚れします。

ただ取り扱っているネタは辛かったです。
投稿者: ガミ - 12/04 08:02

いやぁ…あられもない…良いのこれ(笑)?怖いっていうか、おぞましい感じですね。鼻の頭に血の付いた笑顔。「大丈夫?」って言葉とあいまって、なんか究極的に気持ち悪いです。特に鼻の頭に付いた血が。個人的にかなり人の嫌悪感を掻き立てるのがうまい描写だと思いますこれ。達彦君はお願いだから鼻の頭を拭ってください。10円あげるから拭ってください。

達彦君としては必死で守ろうとしてるんでしょうな…そういう事にしてあげたい。不気味ではあるけれど、大事に思う気持ちはわかる気が…そりゃ、ちょっと見守り方を考える必要はありそうですが(笑)

達彦君が彼=健を襲った理由がわからない。強姦と間違えたんでしょうか。それとも「私」に近づく口実?彼は日々、何を思いながら「私」を見つめ続けていたのでしょうね。僕のものだ。誰にも渡さない。って?だとしたらなんか残念。

構成は整っています。達彦を濡らす雨から、ユミコを使って紫陽花を引っ張り出す序盤の話し運びや、赤い紫陽花で封印された記憶の仕掛けはなかなか。ただ、赤い紫陽花なんていうとなんか血なまぐさい感じは出ちゃうので、オチはある程度読めてしまいました。強姦てとこまでは思い至らなかったですが。

表現力がところどころ足りていないのが難点。心情描写も今一歩踏み込みが欲しい。強姦されて気づいた時に、心配そうな顔でそばに居た幼なじみを思い出して「私」が感じたのは恐怖だったのでしょうか。

蛇足三点。
一つ。記憶が蘇る場面。過去なのか今なのかがわかりにくく感じます。「気が付いとき」以降が特に。いつ気を失ったかがわからなかったため、健が殴られたせいで「私」が気を失ったのかと勘違いしてしまいました。

二つ。強姦された「私」の記憶の中で、達彦君は心配そうな顔をしていたはずです。「無邪気な」と表現されているのは、現在の達彦の笑顔では無いかと思うのですが、昔と同じ?

三つ。紫陽花が真っ赤になるほど頭から血が吹き出すなんてこと、あるんでしょうか。紫陽花の背はそんなに高くありません。かがみ込んでいた強姦犯ならともかく、立っている健とは高低差もある。首筋の頸動脈を切れば、あるいはぶしゅーってなるかもしれませんが、頭には頭蓋骨が詰まってるわけで、太い血管はあまり無かった覚えがあります。ぴゅーとかぶしゅーってのは無いように思えます。飛び散った血のりがべったりって表現ならなんとなくわかるんですが。
投稿者: ちまみぃ - 12/04 15:44

ぎゃ━(゚Д゚;)━っ!!

拍手!拍手!

えーん。怖いよう。
投稿者: 竜胆 - 12/05 10:07

愛する者が強姦されるとこを見てしまった達彦。
守る為に殺す。殺したかは分からないけど。
もう二度と、彼女が苦しむ姿は見たくない!
奮起してストーカー。
そこに、初めてかどうかで気分を害したクソ彼氏、健が登場。
背後には暗い顔の愛する者の姿。
とりあえず殴る。

達彦もまた、苦い記憶に苛まれていたのでしょう。イカれてはいるけど、こういうズレてる人間の方が個人的には魅力的です。
他の方が仰せの通り、心情とかを深く抉れば、この話はもっと活かされるでしょう。
投稿者:やえこ - 12/11 00:50

ああ、このタイトル好きですね。不吉だしネタがわかるんですがありえない組み合わせが素敵。
にしてもバトカメ暗い話いまんとこ多いな。
丁寧な描写で、雨を感じます。
ああ、いいね

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