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バトル仮面舞踏会コミュの『くろっくくろっく』 小鳥遊

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あまりの騒音に目を覚ませば、そこは雑踏の中だった。
地に付いた手の冷たさに下を見るとアスファルト。
こんな所で眠るなんてちょっと飲みすぎなんじゃないの?昨夜の私。
信号機から鳴り響く通りゃんせが鼓膜を強く叩く。
とりあえず立っておこうとしたとき、

んぁっ!?
足を滑らせて大きく転倒。
いったたた
酔いが抜けてなかったのかな?
身体中…特に足に違和感がある。
私は正面に見える足に視線を移す。


な、なにこれ。足が緑色してるんだけど!?
これは…



全身タイツ??
どんだけはっちゃけてたのよ私。
じゃ何?
居酒屋で友達と宴会かなんかして、酔いに酔いまくった私は緑色鮮やかな『奇々怪々!ぴっちぴち全身タイツ』に身を包んで場を盛り上げようと獅子奮迅。
挙げ句の果てに夜の都会の寒空の下で大往生したとそういうわけ。

今から舌噛んで良いですか?
てゆか噛む!名実共に変死体になってやる!

はぷっ。
うぅ…舌を噛みきる力すら無いなんて…

っていつまでもうちひしがれている場合じゃない。通りすぎていく衆人達の目が痛い!
こんな所にいるから羞恥心やら申し訳なさやらで周りが大きく、いや、自分が小さく感じている程だ。
歩けないなら這ってでも跳んででもここから立ち去ってやる!私は膝を地面につけた体勢で撤退する。
大衆にはさぞ滑稽に見えるだろうさ!
緑タイツに身を包んだ美女がハイハイしてるんだからな!
…見上げてみれば歩道をゆく人達は何の気なしに私を通りすぎる。
皆さん見て見ぬふりがお上手ですのね…。

しばらくそうして移動していると、
人の流れが緩やかになってきた。
大した距離を移動できていないはずなのにこんなに辛いのは慣れない移動術を行使してるから?
側に見えた店のショーウィンドウに背中を預けながら、
荒くなった息を整える。
このまま職場に顔出すわけにいかないから自然と帰路に就いてるけど、
この調子でいつになったら家に着くんだろ?
家に着いたら服を着替えて…

あ。今日ヒロ君とデートの約束してるじゃん!
ちょっと待って今何時よ!
私は携帯電話を取りだそうとバッグを開き…
バッグが無い!
あれには鍵が入ってるのに…
鍵が無いんじゃ折角家についてもドア開かないじゃない…
置いてきたのは…
居酒屋あたり?
で、どこの?
あーっ!私の馬鹿!
なんでバッグ置いてくるのよ!
なんで記憶無くすまで飲んだりなんかしたのよ!
何よりなんでこんなの着てるのよーっ!!
死んでしまえばいい!私なんか自分に殴られて死んでしまえばいい!
両手で交互に頭を叩く。
痛い。痛いけどまだ、私を罰するにはまだ痛みが足りない!
と、背中を付けていたショーウィンドウの存在を改めて意識する。

これに思いっきり頭をぶつければ死ねるかしら…?
向き直り手のひらをつけて覚悟を決めるために目を瞑り…深呼吸。
最後に道化と化した自分の姿を見てやろう。
見て馬鹿みたいと笑ってやろう。
目を開き、私は私の醜い姿を見つめる。
長い緑色の足から…緑色の身体、緑色の肩。
頭には髪の毛が無く、水分を含んだように瑞々しくも見える緑と薄く白に近い色の肌。
本来耳があったはずの真横にまで伸びた口と、
その上には円らで大きな瞳。

…見たことある。
見間違いでなければこの生き物見たことある。
子供の頃川原で捕まえてケタケタ笑った事ある。



なんで…蛙が写ってるの?
も…もしかして、
さっきから周りが大きく見えるのは羞恥心でも申し訳なさでもなく私が小さくなったからで、
さっきから着てるこの全身タイツも、
実はそのまんま皮膚で…



はいいいいいぃぃぃっ!?
ちょ、ちょっと待って、意味分かんない。
人って二日酔いになると蛙になるの?
そんな訳ないよね!?
どどど、どうしよう。
これじゃ家に帰る事も何より愛するヒロ君に会えないじゃない!

と。
ガラスに写る蛙の背後を、すっと横切った男が目についた。
見覚えのあるこの背中は…
ヒロ君!
私は、身体に電撃が走ったように飛び出した。
だが巨大なヒロ君の歩幅はとても大きく、どれだけ這っても跳び跳ねてもヒロ君の背中には追い付けない。

待って!私はここにいるよ!
言葉を紡ごうにも、今の私にはそれすら叶わない。

お願いだから行かないで!!
突然。目の前が暗く、意識が遠くなってゆく…
いやだ…いやだよ…。

ヒロ君…!!

ん…。
瞼を開くとそこは見慣れた天井。
よかった。全部夢だったんだ…よかった。

あ、やば!ヒロ君待たしてるんだった!
私は急いでパジャマを脱ぎ捨てた。


「ごめんヒロ君!」
怒っては…いないみたい。安心。

「…それは?」
…どうしたの?
ヒロ君が呆然と指さす先を辿る。



耳?





に…

にゃにぃぃぃぃ!!?


【完】


コメント(13)

投稿者:Return

蛙と思いきや、最後に猫!?
読者の予想を最後の最後に裏切りました(笑)

2007年11月27日18時24分
ガミ (19) - 2007/11/28 00:42

這ってでも飛んででもとはまさに蛙的思考。道端で見つけた(?)蛙への鋭い観察眼が伺えますね。はぷって…かわいいです(笑)蛙って歯あるんでしたっけ…?
前半の描写が鮮明過ぎて夢オチがちょっと強引?終盤が駆け足すぎて折角のテンポが崩れてしまっているように感じました…で、これ猫なんでしょうか。
みやこ (4) - 2007/11/29 21:41

タイトルといい、中身といい、上手い。
ほんとに惜しいのが「にゃにぃぃぃぃ!!?」だけじゃちょっと足りない、ということです。
もっとこう、手を触れたときのすばらしい官能的な毛並みとかを描写して、それでだめ押ししてほしかったですにゃ。
てん (8) - 2007/12/01 08:29

主人公が元気でかわいいですね。楽しく読めました。
夢落ちで終わるのかと思いきや…終わりがちょっとわかりずらいけどおもしろい♪ 猫? いや猫耳ですか!?
猫耳だとなんかほんとにそゆ失敗ありそうな感じでウケますね(笑)
うなぎ (11) - 2007/12/03 19:29

いや笑った。このテンションは素晴らしい。w
でもどうだろう、ここまできたらもっと突き抜けちゃってもいいかも知れない。夢オチにせずに、不合理な話にしちゃったり。
語彙力もあるし主人公の語り口調も生々しいし、これだけの実力がおありなら、読者を突き放してもついて来るんじゃないだろうかと思いました。

うなぎ的評価
★★★★☆
惜しいって感じ。
みづの (48) - 2007/12/09 01:18

みづのの投票検討作品その3です。

テンションといい、言い回しといい、「笑わないで読め」というほうが無理な作品ですね。主人公の喜怒哀楽の様子を楽しく眺めるのが正しい鑑賞法のようで、作者さんの狙いは完全に成功していると見ました。15作品中、笑い部門では文句なくトップです(笑)

実はオチがいまひとつ理解できていないのですが、ぶっちゃけた話、このストーリーにオチなどなくても充分です。言葉の可能性を見させてくださった、器用でユーモアに溢れた作者さんに取り急ぎ感謝しておきます。
投稿者:メガネさん

表現の仕方や言葉の紡ぎ方など、上手いと思いました。
笑えるかどうか?はテンション次第なので…。
MAO (2) - 2007/12/15 12:04  

お題の処理のうまさは一番だったんじゃないかしら。雑踏の中で寝ている状況をどう説明するか。そりゃあカエルならむりなくいけるわよね、という。この発想はなかったわ。

 んにしても、テンションちょっと頑張りすぎたんじゃないかしら。それとも作者の素なのかしら。でなぁ、作者の素にしてはやっぱりなじんでない気もする。柳原可南子とか、ピンクの電話とか、ハリセンボンの芸に通じるものがあります。

 まぁ、悪くない。84点。
やえこ (168) - 2007/12/19 13:10

かえるかよ!
そのオチは無かった。
でも猫かよ!
とお笑い好きの私としてはとても好きな話です。
しかしなんだか今回のバトカメは
猫と天使ネタが多いね。
シキ (0) - 2007/12/20 02:08

主人公のテンションの高さがいいですね。勢いにつられて、最後にガツンとやられてしまいました。
アレグロ(地雷で性転換…覚えてられるかな) (24) - 2007/12/24 18:45

結果発表に伴い仮面がはぎ取られましたので返信します。


『くろっくくろっく』を執筆させていただきました、小鳥遊(たかなし)ことアレグロです。

バトル仮面舞踏会には初参加なのですが、本作は「ありえない事態に直面した主人公」の困惑からくる異色さを出すことで刺身のツマと言うか、お寿司のガリと言うか、「プチバトル仮面舞踏会」のちょっとした薬味になれれば。と思い書きました。

ただの薬味なので何も考えずに読んでもらおうと思い、短編の中に仕込んだトリックや伝えたいメッセージ等については全くありません。

主人公がどうしてカエルになったのか?
なぜカエルなのか?
最後に猫(もしくは猫耳)化した意味は?



全く考えてません!(笑)

強いて入れたトリックを挙げるなら、読み終わった後「くろっくくろっく」というタイトルを見て
「あー。これカエルの鳴き声だ〜」と思っていただける事を祈りつつ書いたことです。これくらいです。気付いてもらえましたか?(笑)


最後に、多くの感想・投票ありがとうございました。
m(_ _)m
みやこ (4) - 2007/12/24 18:54

「くろっくくろっく」のタイトルには気づきましたよ。
だから感想でもタイトルについて触れてます。
他の人もちゃんと気づいてるんじゃないでしょうか?
霞上 (1) - 2007/12/25 00:09

へぇ〜、鳴き声にかかってたのか〜。
僕はてっきり「フロッグクロック(蛙の時間)」って意味を捩ったのかと思ってましたよ。
ついでに最後、彼女の頭にあったミミは、僕の中では猫ミミ(カチューシャか何か)で、酔っ払って着けたはいいが取らずにそのまま爆睡、彼氏に見つかって赤っ恥♪ってなストーリーで納得してましたb(笑

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