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magic bookコミュの高橋潤のmagic bookテキスト

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今回magic bookのリニューアルにあたりまして、
高橋潤氏から嬉しい嬉しいmagic bookの約4000字に及ぶテキストを書いていただきました。
高橋潤氏のプロフィールと合わせて、こちらに掲載させていただきやす。高橋さんが長年に渡って、執筆しているブログもほんと楽しいですよ。奥深い音響系音楽から、アングラヒップホップ、日本謎音楽までいろいろ。

高橋潤
音楽雑誌MARQUEEやKITTEN、その他WEB等での執筆、イベントオーガナイズのサポート、DJとしても活動。彼が長年に渡って書き続けているブログ「Hurry, Hurry, Right This Way...」では、柔軟で幅広い彼の音楽セレクトが窺える。特に日本のインディーや電子音楽への多大なる愛情がひしひしと感じ取れ、多くの音楽家からも支持されている。

Hurry, Hurry, Right This Way...(ブログ):
http://d.hatena.ne.jp/zu-hause/

Magic Bookというレーベルを俯瞰して眺めてみると、そこは正にレーベル名に冠されている「魔法の絵本」とも言える、パルプンテよろしくな(?)ある種の危うさも内包されている様に映るんですよね。その「危うさ」っていうのは勿論ネガティブな意味合い等ではなく、多様な音楽性が滲むレーベルだと解釈頂ければ思う訳です。正に雑多な拡散が成されているワケだけれど、あら不思議。隅々まで読破したい感で満たされる様ではありませんか??その「拡散」を未然に防ぐ術は、発足当初から既に主宰の内田氏はしっかりと回避する形でレーベルはスタートしている。各部門分かり易いようにと、レーベル内に各項目を設ける事によって、リスナーにも取っ付き易い様にといった配慮も既に万全であった。故に、スルーされがちなページももしかしたらあるかもしれないなと、少々危惧もしてしまいます。が、ちょ、ちょっと待って下さい。それはタイソウ勿体ないお話しなのである。先述した様に、魔法の絵本達は、様々なジャンルを各部門ごとに設けられている(それは内田氏の深遠すぎる音嗜好がまんま、レーベルカラーとなっていると思うのだ!)。なので、未だ見ぬ、未知(なるジャンル群)の音楽/作品達に出会える可能性がそこかしこに溢れているのだから!この柔軟性は半端な事ではないと断言出来るし、ここまで多方面までフォローするレーベルを、ワタクシ他に思い浮かばない程である。それは何も節操がない、という解釈ではない。内田氏のフィルターを通された幸せなる音楽群が、純粋に面白い!と(それはジャンルなんて概念は既に取り払われている事でしょう)彼に思われた時点で、その音達はMagic Bookのカタログに近い将来名を連ねていくと思うんですよね。

●MOKUME

駆け足で各部門を紹介していこう。記念すべきレーベル初CDプレス作品として世に放たれたのが「MOKUME」からのピクニックコンピ、「ぴるる・ぴるくる・ぴくにっくる」。そう、これはMagic Bookのポップサイドを担うレーベルでもある。
ueharashutaによる、伸びやかでしなやかな、このギターの音色を聴けば旅路に歩を進めたくなる様な。そう、旅するギターミュージックの如し。「旅する電子音楽家」とも語られたArrow Tour的な響きも聴こえてくる様がなんとも心地良くって、心も身体も何もかもをゆっくりと浄化してくれる様な音楽。
The Goonyzは、CDプレス作としても作品を発表している人物。S・スピルバーグによる子供冒険映画の傑作、グーニーズからユニット名を拝借したというGoonyzは、一聴すると派手さや気を衒った感はあまり確認出来ない。が、彼がゆったりと紡ぐ美 麗なる音の波動を感じ取ったらば最後。この人の奥深さに遭遇出来る事でしょう。
藤田建次の作品はレーベル史上、最も大きな反響があったのではないでしょうか?彼の紡ぐ音楽は、エレクトロニカ等と単純に括ってはならない潔さや自由な瞬間が溢れている。掬い上げられる音像のアナログな質感が、なんと豊穣な事か!とても不思議な魅力が漂っており、慎ましやかさを存分に湛えた音楽。
Saito Kojiによる一連の作品群は、無駄な装飾を一切排した美しい極北ギタードローン的構築が成されている。素っ気なさとは対極な、美しくも儚い音響構築が辺り一面に広がりを見せる。静謐なる持続音の連なる先には、雄大で広大な、未だ見た事のない心象風景が現出するかの様な、正に瞠目なる瞬間を提示する。
Vapour Trailは、トクマルシューゴバンドや、FINDERPOPコンピにも参加していた松本頼人によるソロ。ギターと電子音による繊細なる音の交錯が、彼の真骨頂とも言える瞬間であろう、音の微粒子がキラキラと旋回するかのよう。否応にもchildisc周辺がよぎる美しい音楽。
Tamamitic は、「あの」MARK嬢とも交流があるという女性SSW。が、 MARKの様な逸脱や暴走的側面を押し出すのではなく、正しくSSW として、地に足のついた素敵な「うた」を聴かせてくれる逸材。ロウ ファイチックな質感が、個人的にはたまらない。
「木木の木と木〜もくもくの木とボク〜」という、個人的に思い出深い作品についても触れておこう。このコンピは楽器/非楽器/フィールドレコーディング等の 様々な音素材から、参加者各々が制作するというコンセプトが設けられている。公園や河川敷、普通にギターやクラリネット等もあれば、ゲームボーイもある。そう、素材の妙も本コンピの魅力であるのだけれど、それに軽々と、見事に呼応してみせる参加者各位の楽曲群には真に瞠目させられた。この作品を聴いて、私はこのレーベルの今後向かっていくであろう歩みを想像し、笑みも自然とこぼれてしまったという事実も付記しておきましょう。まさか数年後、こんなにも素敵な(=本テキスト)ご依頼を頂くなんて!

●PICO

清涼系電子音部門「PICO」は、美麗エレクトロニカやアンビエント的土壌を主眼においた部門。
HVは、PICOから3枚のCD-Rを発表。この人の世界観は、既に確立されている感が無きにしも在らずであるが、ハッとさせられる瞬間が随所に待ち構えている。目をぎゅっと瞑って浸りたい音楽。
先頃、Ahornfelderからの海外デビューを果たした淡路島在住のDaisuke Miyataniも、PICO から既に1枚発表済み。柔らかいフィールドレコーディングに電子音が 絡まる手法は、このPICO盤でも健在。藤本雄一郎〜Asuna ラインからも語られるであろう素晴らしい作家。彼は、とある人物との デュオユニットにて、Magic Bookからアルバムのアナウンス も!?
Exotic Modulation Sky。彼は涼音堂コンピにも参加していたが、兎角「和」な雰囲気を堪能出来るような、美しいサウンドスケープを描き出す。例えば「WAKI」等とも共振する様な微細なる 音像の心地良さたるや、尋常じゃなし。

●DESCO

ディスコの造語?「DESCO」は、そのディスコミュージックが破 綻したかの様な、圧倒的なとっちらかりがなんとも魅力的でもあり、 チップチューンやエレクトロ、ブレイクコアなんかを独自の解釈でもって経由した部門(?)。
TSANによるカット&ペースト的なエディット術に関しては、Riow AraiやPrefuse73辺りを熱心 に聴くリスナーの耳を、軽々とノックアウトすべき逸材だと思うのだ。そんな彼のセカンドアルバムは、今後CDプレスが成され、発表される模様。
Kenji Tsudaによる8mmは、YABE MILK氏も お気に入りというのも頷ける、愛らしくもくしゅくしゅっとした電子音 がキョロキョロしている様も異様に可愛い電子音楽。落ち着いている風に見えて、その実全くそうでは無さそうなサウンドが素敵!?ZERO GRAVITYのカタログ辺りに名を連ねてもなんら遜色も無い様な音楽。
Ingrid Kellyは、プレス資料によると一風変わった3人組だという(?)。彼等のこの極悪なまでの脱力感誘う素振りは、確かに一筋縄ではいかないが、Kuknackeが初期に発表していた楽曲にも通じる様な、戦慄と脱力は紙一重なんだを知らしめてくれたのに酷似していた。 一歩先が、霧のもやもやで巻かれてゆくような?ね。
そしてCD プレスもされたオバケコンピ、「電電オバケカーニバル」の支離滅裂 さったらば、他(何処!?)の追随を一切許さない内容。縦横無尽に音が飛び回り、旋回し、はしゃぎ倒すといったビート群には、なんら一貫性の欠片等も微塵も見当たらない、奔放な瞬間「ばかり」をずらりと並べられた脅威のコンピレーション。誇張した表現や逸脱感も大幅に加わり、所謂ブレイクコアやファミコン的なチープ電子音、へっぽこビート (極上の誉め言葉である)なんかをベースに繰り出される各種ブレイクスは、音は全く違えど、エレクトロリバイヴァルに大きく貢献した英 Clearが放ったレーベルコンピ、「It's All Becoming」の危うさやズッコケ感といった部分に、根底で激しく共振しているなあと思わされたのだ。忙しなさも此れ、尋常じゃなし。脱臼させられつつ、ぶっ飛ばされます。要覚悟。

●AROWANA

暗黒部門「AROWANA」は、「暗黒」という単語で皆尻尾巻いて逃げ出しそうですが、ち、違うんですよ。レーベル側がこう紹介しているので便乗上私も使ってみたが、単にこれは概念の話しであって、それはノイズ寄りな(このノイズという括りもまた、逃げ出されそうなワードでもあるのですが・・・困ったな・・・)、しかし純粋なるノイズ ミュージックを提示する人が蠢いているわけではなく、微細であったり 音響系であったり物音系であったりと、様々なスタイルでもって体現されるサウンドはしかし、Magic Bookの新たな魅力を垣間見せてくれる部門でもある。一概に「ノイズ」と括るのは些か抵抗や違和感もあるが、所謂ノイズミュージックも他のジャンル同様、音の細分化も成されている訳で、それは当然AROWANAにも当て嵌る。
Majikick/類からのリリースでも知られるNSDとDasmanによるデュオ、Secaiは、AROWANAコンピではぶっ飛んだスタイルを披露していたり、コントラバス奏者として知られる千葉広樹によるオウンユニット、Effective Doseは、コントラバスのコの字も一切見当たらない、全方位型ノイズサウンドを提示している。音響寄りなノイジシャンのベクトルとも少々異なった視点を持った、彼特有の 「異形なノイズ」作品かと思うのだ。
Johndayの25分にも及ぶ トラックは、トータルランニングタイム云々抜きにして、素晴らしい響きを有している。正にMego直系の痙攣系突発型電子音響。微細且つ繊細なる音空間が切り裂く瞬間は、スリリング極まりない。
Collapsoftの丁寧な音響工作には、目を見張る瞬間が確認出来る。広義 の意味で「音響ノイズ」という括りが一番しっくりくる部門。

●DRUMA

ドラムミュージックの宝庫、「DRUMA」。ドラムと括ってみても 多様なジャンルが存在しているが、ここで言うドラムは、主にロウビートを配したアブストラクト/アヴァン/エクスペリメンタルヒップホップ的な質感を感じ取れる部門。が、ヒップホップといってもマイカーは 今の所存在はしておらず(今後そういったユニットも現れるかもですが!?)、インストの可能性を主に追求していくのでしょう。
Prince Heightsはヒップホップ的、という紹介をしたばかりで矛盾めいた文章になりますが、例えばヒップホップから徐々にエレクトロニックなサウンドに移行/傾倒していったAnticonのAlias的なビート構築が、なんとも印象に残る。彼の出自がヒップホップかどうかはわからないが、様々なビートに接してきた人であろうなあという印象。
Doigakiのシャドウブレイカーたる面目躍如な会心作「Night Walker」は、ドラムミュージックの一つの指針として語られるべき内容だと思うのだ。一聴すると野暮なブレイクス(?)の連続であり、その居合い切り風な乱雑なビート群に統一感は見当たらない。そう、この多様なビート群の提示は、新たな指針となるべき凄みも兼ね備わっているのだ。目下レーベルの最新作は、DASMANの「Form」。元々MajikickのCD-R部門、「類」から本名名義で発表していた作品を、あらゆる意味で「全て」を一新しての再リリース。独特の浮
遊感といってもダブ的なベクトルではなく、正しく「アブストラクトヒップホップ」の潮流でもって紹介したい内容。が、ビート/ノンビートが丁寧に交錯する流れは、彼の深い嗜好が滲み出ていると思うし、「アブストラクトヒップホップ」というレッテルも実のところ、些か抵抗を感じる部分もある。が、そこがDasmanの魅力でもあると思うのです。
Drumaからの今後のアナウンスとしては、1stアルバムは CLAYからのリリースであったBIKE BOYのセカンドや、金太郎のマサカリがウネリを上げそうな(?)新ユニットの作品等が予定されている模様。

・・・駆け足ではありましたが、Magic Bookというレーベルの痛快さ、肩肘張らない奔放なる姿勢/柔軟性等、自由に振る舞う様こそ、このレーベルの大きな大きな魅力となっている事と思う。こう、改めて 各部門を順々に聴き込んでみると、ここまで多様な音楽ジャンルが犇めき合っているレーベルも稀ではなかろうか?部門ごとに分かれているとはいえ、この並列の成され方は、驚嘆に値する。魔法の絵本の住人達から、今後もより多くの人達の耳や諸々を楽しませてくれる音が届けられる事でしょう。「音」を「楽」しむ。音楽を聴く上で至極当然の感覚というものを改めて思い起こしてくれるレーベル=Magic Book Recordsだと思うんですよね。

( Text By Jun Takahashi )

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