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 これから紹介するのは、あるテクノロジー犯罪被害者の手記です。(このような犯罪があることをご存じでしょうか。)(参照:「早すぎる?おはなし」内山治樹、「マインドコントロールの拡張」浜田至宇、NPOテクノロジー犯罪被害ネットワークHP等多数)

私の場合は、テクノロジー犯罪が始まったきっかけが明確である。その日、私は男が向かいの住人の家にやってきているのが分かった。と言っても確証はない。しかし、私はある事件に四年来悩まされ続けており、それがその事件に直結するものであることを、男と住人の会話から容易に推測できた。他人より周囲の話し声に敏感な状態が続いていたから気付いたのかもしれない。簡単に説明すると、こういうことだ。ある集団、組織の人間が、別の組織の人間に依頼をした。私の家の中を、私を盗撮するということを。そのためには、私を含めた家族の人間の現在位置、帰宅までの時間などを連携して連絡を取り合い、家に侵入する機会をねらい、見張りをつけ、鍵を開け、無線式小型カメラを設置するということが必要である。そして、次のことが重要なことなのであるが、長時間画像を受信し録画するには、どうしても近隣住人の協力が必要なのだ。だが、誰が近所に住む人間の家の中の盗撮を承諾し引き受けるだろうか?話を持ちかけられたら、そのまま警察に通報する人だっているだろう。それを有無を言わせず、協力させるには、何らかの組織的な圧力が、さらには金銭的やりとりがなければ誰も引き受けないはずだ。私はこのような犯罪の被害に一人暮らしをしていた大学生の頃に遭った。盗撮された画像は多くの人間の知るところのものとなり、安穏な生活を失った。ここでは、これ以上はこのことについては触れないつもりである。とにかく、その日私は、近所の家に、ある組織の人間が上り込んでいるのが分かったのだ。その半年前から、尾行や不審な車、近隣住人へのコンタクトなどがあったことを薄々感じてはいたが、その日ほど確定的なことはなかった。私は家の外に出て、向かいの家の前をうろうろした。どうすべきかしばらく考えた。インターホンを押してみたが誰も出てこなかった。それ以上のことはできなかったし、しなかった。これがきっかけなのである。
私はその次の日の夜に、電磁波攻撃を受けたのだった。寝ている時に体中がしびれたような状態になり身動き一つとれなくなった。頭に電流が流されたような感覚になり意識が朦朧とした。赤や白や紫の光線が頭や体に注ぎ込まれ、呼吸も困難になった。心臓への圧迫も激しかった。そのような状態が何時間も、そして数日間続いた。このまま死んでしまうのではないかと思った。経験したことのない凄まじいものだった。記憶が前後するかもしれないが、記憶を辿れる範囲のことを以下に書こうと思う。パソコンから声がした。ステレオからも声がした。人の声を加工したような声だった。それは夜の間じゅう、意識を失うまでずっと続いた。どのような内容のものであったか記録をとっているわけではないので正確には記せないが、例えば、パソコンの中の文書、文章を消去するように要求するもの(パソコンの中の文章が盗まれ広まるというような被害にもあっており、それが証拠となるのかもしれなかった。)、メールのアカウントを削除するように要求するもの(メールで相談などをしていたから、それをさせないようにするためかもしれない。)といったものがあった。それから色々な妄想を植え付けるために、かなり長大な、手紙を読んでいるような、もしくはドキュメンタリーのナレーションのようなものが数時間に渡って何日も聞こえてきた、語りかけられてきた。実際に心あたりのある内容のものが多かったが、よく考えれば作り話と分かるものばかりだった。(しかし、混乱していると冷静な判断力は失われてしまっている。また頭の中に直に聞こえると他のことが考えられなくなる。)長大な語りかけの中には、こんなものが含まれていた。女の声で、(あなたは三百人くらいの人間をひとりで相手にしてきました、そのことだけは認めてあげます。画像を流すのは今晩の十二時までにします。止めてあげます。)十二時頃まで朦朧とする意識の中で待っていると、(止まるわけないじゃーん、バーカ。)と聞き覚えのある生の声に近い女の声がした。他にも聞き覚えのある人の声がいくつかした。(死んじゃえ。)というおばさんの声。それらはどれも事件に遭っていた大学生の頃耳にした声だった。音声には加工された声と、電話や無線で話す人の声そのものの場合の二通りがあった。他には、外の世界において自分が新聞沙汰になっているというもの。一番激しかったものでは、スピーカーの音を最大にしたくらいの音量で男の怒鳴り声が意識を失うまで続いた。(なっ、よく考えろ、いいな、なっ、そうだろ、いいな、そういうことだろ、なっ、いいな……)普通の音なら鼓膜が裂けそうになるくらいのものだった。次の朝、目が覚めて鏡の前に立つと、頭部が膨張していて、頭が逆三角形になっていた。目の瞬きが行われておらず、瞳孔が開きかかった状態になっていた。私はその時はじめて病院へ行くことを決心した。起こった現象をそのまま話せばどのような診断が下されるかは分かっていたが、症状だけを捉えた時、それから脳の中における作用を考えた時、それは仕方のないことだと思った。
音声送信だけではなかった。映像を見せられるのも最初の一、二週間は特に凄まじかった。自分の生まれてから今までの全ての行動が、映像としてありとあらゆる方法によって撮られ続け、それが他人に見られるものであって、検索すればどれだけでも閲覧できるマーケットがって、自分がそのリストに載っているというもの。それを実際の自分の子供の頃から今に至るまでの様々な場面の映像と合わせて見せられるのだ。寝ている時であるのでその映像が浮かぶのを避けられない。心理的なダメージが増大させられていく。少額ではあるがネットで株の取引を行っていたのであるが、それを不正に侵入、操作されて数百億円の負債を抱えることになってしまっているというもの。これについては体が動くようになってから必死の思いで解約をした。現実にはそのような状況にはなっていなかったのだが、不安感は極限にまで達した。他にはワンクリック詐欺で多額の請求がくるもの。女が何度も犯されて、頭を割られて脳みそをえぐり取られる映像。家の中に複数の人間が堂々と侵入、襲撃をしてくるというもの。自分の中にあるマイナスの潜在意識を拡大させるもの。大体は寝ている間に見せられたが、起きている間のものもあった。それは宇宙人の姿(映画とか特集でやっているような)が真横に現れて、(アナタハコンナコトヲシテイルニンゲンデハナイ、コンナトコロデトドマッテイテハナラナイ、ジカンガセマッテキテイル、モットオオキナコトヲシテモラワナケレバナラナイ……)といった具合に音声と合わせて浮かんできて、まるで地球が滅びるのを宇宙人が潜在意識に介入してきて自分がそれを救うのに選ばれた人間だと思わせるのだった。しかし、家の外に出てしばらく歩くと、そういう送信が止んで、するとたちまち我に返って、こういう状態の危険性について思い知るのだった。
中学高校時代の三人の友人の声で話しかけてくる状態が続いた時があった。それは誰の声でもよいのだった。はじめてその状態に長く陥った時、私は友人たちが実際に何らかの通信手段によって交信しているのだと錯覚した。(現実的には、その可能性は極めて低いことは分かっていた。)それは目覚めてから、家を出て、バイクや車で移動したり、店に入ったり人と会ったりしている間など寝るまで絶え間なく続いた。音量は通常の会話程度の大きさだった。その中で繰り返される語りかけの中で二つの中心的な内容のものがあった。一つは、自分の姿が三次元の立体画像で家の中にいても外にいてもどこにいても彼らに見えていて、自分の目に見えるすべての映像が彼らに見えているというもの。(例えば、店に入った時、ほら、そこのメニューの左から三番目の、枝豆あるだろ、それ食えよ。見ると本当に枝豆があって、・・・・・とにかく家の外に出ろって、映像がマジでやばいから……、といった具合に。)もう一つは、(早く探偵に頼め、探偵しかないって、なんで早く連絡しないんだ、探偵に行け。)という内容のもの。私はあまりに執拗に繰り返されるので、業者に依頼を申し込んだ。すると、音声の送信はたちまち全くなくなった。業者との電話のやり取りの中で、極稀に体内から盗聴器が発見されるというケースがあるということを聞いた。しかし、私はもう一度考え直してみて、業者の調査は費用がかかり過ぎ、無駄骨に終わりかねないと思って、キャンセルした。すると、音声送信は再び始まった。ある時、友人の声から別人の声に一瞬切り替わって、あ、やべえ、ボイスチェンジャーばれた、という声がした。その後は、その友人の声が利用される回数が減った。声だけでなく、話し方のテンポ、口調、口癖まで真似ているので、区別がつきにくかった。実際に彼らと話したことのある人間でないと分からないはずのことなので、何か聞き込み調査や、あるいは彼らの家に盗聴器でも仕掛けてデータを集めたのだろうか。
人と出かけた時のことだった。車で移動した。映画を観た。少し遠くの観光名所に行った。その間もずっと音声送信が続いた。(映画なんか観てんじゃねぇよ。無線の知識もないくせになぁ、……。)映画の大音量に負けじと、観ている間は音声送信の音量も大きくなった。その日気付いたことがあった。車で移動している時、音声送信の大きさも大きかったのだが、その同伴者が両耳を両手でふさいだのだった。何か高い山へ行った時、耳がツーンとした時のような様子だった。周りにいる人にも感じることがあるということを考えるようになった。車で尾行されているということに気付くことは何度もあった。(例えば、サングラスをかけた男が携帯を片手にこちらをずっと見ながら通り過ぎて行った。)そのような状況はなくならなかった。次のような音声送信もあった。(××組△代目組長○○○○。明朝六時までに現金五〇万を用意して、××町△丁目の○○の前に、……。)私はかなりの混乱状態にあった。本当に行こうかとも思ったが、それがどこかであるのか分からなかったし、体が思うように動かなかった。私の場合は、私が何らかの事件に遭っているといことを近隣の住人や第三者にも知られていた。(保護してもらえ。あの人はほんとの×××に狙われているから近づいたらだめ。襲撃中だって。頭に機械埋め込まれたらしいよ。)といった具合に何人にも言われた。断わっておくが、これは音声送信技術を用いた類のものではなく、このような噂を直接に、口で囁かれる状況がしばらく続いた。
私は病院に通院していた。医者と話は噛み合わなかったが、薬を飲めば眠ることはできた。音声送信は徐々にではあるが減っていった。頭に何か埋め込まれていると思うこともあったが、何もないと言われればそれまでであったし、耳鼻科にも行ったが異常はないと言われた。一度投薬が始まると、医者は中々断薬を許可しないことは知っていた。この病気と診断されることが社会的に持つ意味も分かっていた。はじめて病院へ行った時、(ただのバカか)という中年の男の声がどこからとなく聞こえた。病院の帰り道、車とすれ違った時、窓が少し開いて、ゲンチョー、と機械の人工音声のような音がした。きっかけは向かいの家に何者かが上り込んでいることに気付いたことであると私は述べた。私が警察の協力を得て、その家に事実関係を確認することができたら、刑事問題に発展しただろう。それを強制的に、一時的に食い止める目的があったのではなかろうか。
 その頃私は無職で失業保険を貰っていた。電磁波攻撃を受け、以上に述べたようなことがあって(他にも色々あったわけであるが)、家族や周りの人に迷惑がかかると思い、私は早い段階での転地を決めた。電車で遠方へ採用面接を受けに行き、帰宅するまでの間も音声送信はずっと続いた。面接の間、音声送信により面接官との質疑応答に集中できなくなる場面もあったが、何とか採用に至った。家を離れる時、向かいのおばさんが、(刑事コロンボみたい、もう終わったのに)、と言った。何が終わったのかと少し考えたが、それ以上は何もなかった。近くに住む主婦が、コンピュータみたいと言ったり、頭の中で友達と会話していると言ったりする人もいた。(これらも現実の話し声である。)その後、私は新しい土地で仕事を始めた。およそ一か月の間、幻聴のような感じで音声送信が続いた後、全く何も聞こえなくなった。飲んでいた薬もちょうどなくなって、通院もしなくなった。私はそこで二か月ほど働いたが、ある事情で辞めざるを得なくなった。短い間ではあったが、新しい土地での生活をある程度は楽しむことができた。家賃の支払いがあるから、すぐに次の転職先を見つけなければならなかった。辞めてから一か月ほど過ぎた頃のことだった。私はマンションに住んでいたのだが、またしても真上の住人が盗撮に関与し始めているのに気づいてしまった。電話の話し声が聞こえてきて、その中に自分しか知らないことがいくつもあった。隣の部屋の住人の所へ、前述した向かいの家に上り込んできた男と同一人物が、盗撮録画を頼みに来ているのは分かっていた。それは仕方のないことだと思った。(けじめだからな。……二年は続ける。……俺らが捕まるからな……可哀そうだけどな……。)という話声が聞こえてきた。一度は命の危険を、死ぬ覚悟をしたし、確かなことではないので、しばらくは様子を見ようと思った。二か月ほど暮らしてみて、ある日隣の住人と顔を合わせた。その三日後に、隣の部屋がもぬけの殻になっていた。私はそこで大学時代に遭った事件のことを思い出した。それからしばらくしてから上の住人の会話を聞いたのだった。私は上の住人の部屋を訪ね、何か聞いてみようかと思った。上の部屋の前へ行きインターホンを押してみたけれど、反応がなかった。自分の部屋に戻った。その日の晩に、私はまた激しい電磁波攻撃を受けたのだった。(この日から現在まで途切れなく被害は続いている。)
何があったのか、今はよく思い出すことができない。(未来警察です。)頭に何かを思い浮かべようとすると、つまり、頭の中の声、言葉を出そうとすると、それを激しく遮られる。(あなたは考えてはならない。)アニメか何かの神様の声のような感じの声色である。息ができなくなる。口がテープで閉じられたように開かないのである。身体はと言えば、漫画に出てくるような電気のリングの縄で、足や胴体を順番に、拘束していったような状態で、現実にそうされたのとほとんど変わらない感触がした。(爆発物を撤去します。……)私が何かを思い出そうとすると、犯人が自供して罰を与えられるように身体への圧迫が激しくなり、ただ耐えるしかない。耳から電気でできた虫が入り込む感触と映像が見える。これから処刑が始まるような雰囲気が全身に、意識の中へと伝わってきた。長いセリフとともに、それは意識を失うまで続いた。よく覚えていないが、確か朝になると何もなくなったようになった。だが、夜になると、再び、同じようなことが起きた。(防犯カメラを買え。防犯カメラを買え。……)という男の低い声の連呼。何度も同一の男の映像とともに意識へ圧迫がかかった。身体は目を開けて起きているのに身動き一つ取れなかった。また次の日の夜は、(親分衆が集まりました。いいな、いいな。)(今何やってるんだ。)(病院のベッドで寝てます。)笑い声とともに(そうか。そうか。)(おい、お前、動くな、絶対に立ち上がるな。絶対だぞ。)と、まるで病院の中の患者の演技を強要される。身体にも拘束がかかっている。病院のベッドの様子があたりを包む。(ハハハハハハ。)数時間もそういう状態と、語りかけが繰り返される。朝まで続いた。次の日の夜も同じようなことが起きた。今度は途中で体を起こして外に出てみた。すると全身に不安感が襲って、(遠くへ行くな。戻れ。戻れ。絶対だぞ。死にたいのか。確実に死ぬからな。)というような言葉が連呼される。部屋に戻ると、同様な圧迫と拘束と語りかけが朝まで続いた。クイズを出されてそれを十秒以内に答えなければならない。間違えたり、答えないでいると、痛みが走る。他に四人ほど参加者がいる。一人だけが生存できる。後は全員死ぬ。汗でびしょびしょになりながら、その問題に答えていく。夢に近い映像の見方なのだが、明らかに自分の見る夢とは違う。やがて意識を失う。目が覚めると静かになっている。虚脱状態が続く。夜になると同じことが続く。一週間ほどしてようやく私は医者へ行くことに決めた。病院へ行くまでの間、自分の現在の行動が、映像として中継されているということが意識の中に、何度も送られてきた。今まで見たこともないような黒塗りの高級車が何台も何台も自分の真横を通り過ぎたり、一旦停止したりした。通り過ぎ様に全身に激しい波の水圧がかかったような状態が生じ、(おとなしくしてろ)と魔神のような音声送信があった。現在地が分からないように必死に地名を見ないようにしたり、携帯の電源を切ったりした。内臓や消化排泄器官が他人のものになったようにコントロールがきかなくなり、何度もトイレへ行く羽目になった。目的の病院へ着くと、高級車が止まっていて、私が到着すると、去って行った。私は医者に何を話そうか迷ったが、夜眠れない状態が続いていることと、ほんの少しだけ音声送信のことについて話した。勿論、幻聴と判断されるわけだが、一体この国の医者のどれだけがテクノロジー犯罪について知っているのだろうか。家に戻り、薬を飲み始めても、音声送信や身体攻撃が治まることはなかった。大体夜になるとひどくなることが多かった。エアコンや冷蔵庫や壁から、赤いレーザー光が入って、それを見ると目に激痛が走る。寝ている時に身体全体がフラッシュに包まれ、激しい痛みが走る。いくつもの光線が部屋じゅうを駆け巡る。体温が急激に上昇して汗びっしょりになる。エアコンから白い煙が出る。電球が破裂する。声の送信も続く。上や横や下の階の人間の動きの気配が拡張されて伝わってくる。繰り返し繰り返しそうしたことが続いた。その頃気付いたことの一つは夜になるとマンションの前に同じ黒塗りの車が毎晩停車するようになり、同じ男一人女三人組が隣のマンションに入っていき、朝方や昼頃に帰っていくことだった。他にも大きな声で何かを言ってくる人がいた。このような状況でも、私は仕事を辞めていたので次の仕事を探さねばならなかった。家賃の支払いがあり、とりあえずアルバイトをすることにした。体を動かすアルバイトで三日ほどで辞めてしまったのだが、働いている間じゅうノンストップで三人くらいの女の声で、息もつかせず矢継ぎ早に音声送信が続いて、かなりしんどい思いをした。真面目に働いている時にからかわれると余計に応えるのだった。身体がふらふらになって肉体労働は困難だと思った。私は体を休めに実家へ一度戻ることにした。その頃起きた印象深いことにこんなことがある。音声送信と言えば音声送信なのだが、その音が、爆音、暴走族の集団の走行音、爆風の音のようなものなのである。はじめ高速道路が近くに走っているのでその音が拡大されて聞こえているのだと思った。だが違った。自分一人にだけ戦闘機が間近ですれ違う時のようなまわりの音がすべて掻き消されるほどの音量の爆音が聞こえ続けているのだった。田園風景の広がる中を走る電車の中でそれを聞いていると、自分だけ別の世界にいるような気がした。実家へ帰ろうと試みた時一度目は途中で断念した。頭が朦朧とした。音声、映像の送信、体感、意識への重圧も続いた。自分のあらゆる画像が全国民の携帯に送りつけられるという内容のもの、マフィア組織の様々なストーリー、……。爆音と脅迫が繰り返され、途中で引き返した。それでも眠れない夜が続いて、二度目は実家までまっすぐに向かった。電車で長距離移動していると、(シマゴエダ)という声がして音声送信が途切れるということが何度かあった。実家で一週間ほど体を休め、その後ひとり暮らしのマンションに戻って、仕事探しを続けた。音声や痛みは続いた。インターネットで仕事を探していると何度もウィンドウが勝手に縮小し始め画面が見られなくなった。私はそれでは仕事を探すことができないし、面接の確認が取れないので滑稽ではあるがパソコンの前で拝んだりした。すると笑い声が聞こえはしたがまた画面を見ることができた。必死だった。そんなことを繰り返しながら私は何とか仕事を決めることができた。気になったので頭のレントゲンを撮ってもらった。何も異常はないようだったけれど、よく分からなかった。その前後して私は図書館で「マインドコントロールの拡張」という本を見つけた。読んでこれだと思った。歴史的背景を含め、かなり詳しく書かれているものだと思われる。それからNPOテクノロジー犯罪被害ネットワークというのがあるのを知った。
 新しい土地へ着いて、確か二、三日の間は静かだったように思う。けれど、すぐに音声送信、語りかけは始まった。どのような内容だったかはよく思い出せないが、これまでは無職の時のことであって、仕事をしながらこの状態が続くのはかなり厳しいだろうと思って覚悟していた。時より何も聞こえなくなる時間があったので、ほんの束の間自分の考えを巡らすことはできたが、落ち着いて生活をするということはできないで、毎日職場と寮との往復を繰り返すのがやっとだった。会社の人と話をしている間だけ音声送信をあまり意識しないでいられた。
 夜寝ていると体じゅうがしびれて目が覚めるということが何度も何度もあった。以前にエアコンからカメラが見つかったことがあったので、不安になってエアコンに顔を近づけてみると激しいレーザーの光のようなものが眼に注がれて、あまりの痛さにしばらくの間目を開けることができなくなるということがあった。壁に耳をあててみると五、六人の声が機械音声のような感じで響いて長時間聞こえていた。顔を洗っていると、洗面台に小さな雷のような電気の柱が生じたことがあった。通勤途中で、色々な臭いを嗅がされた。かなりきついものもあった。(あまり思い出したくない。)匂いは初めてだったが、前述の本を読んでいたのである程度技術的なことは理解していた。仕事中や寝ている時などに、腕や脚や身体が反射的に動かされる(脚気の診断のような感じで)が、何度もあった。
 音声送信の内容で困るのは、現在の行動、頭のイメージに関するものだ。とにかく集中して何かをやるということがずっとできないままだった。起きている間はほとんどいつも自分の言動に誰か他人の介入があり、複数の人間と際限なく会話をしているという状態だった。かなりくだらない話から、時々真実めいたことが語りかけられた。私は自分のイメージの世界を大切にして生きてきたので、かなりの苦痛に違いなかった。生きているのか死んでいるのか分からなくなった。一度死のうと思って川の中へ身を投げようと決めた日があった。それは朝の通勤の時だった。会社の最寄駅へ近付くと、私は不意に意識を失って(と言ってもほんの数分の間であるが)、次に気が付くとすべての憂鬱感がすっかりなくなっているということがあった。窒息して何も考えられなくなって飛び込むことしか頭になかったのが嘘のようだった。(医学的に用いれば画期的なものだろう。)
 私は以前から、個人的に精神病や脳科学に関する本はかなり読んできたつもりであるが、たまにそのことを連想すると、空間が歪んで見えたり、赤く変色して見えたり、物が遠ざかって見えたりした。これは統合失調症の顕著な症状ではあるが、恐らくこうした電子データが数限りなくあるのだろう。

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