メンタルな阪神タイガースファンコミュの下柳、プロ初の延長投げきり１５勝目

＜阪神３−２横浜＞◇５日◇甲子園

　うまくいったシーズンを象徴する最終戦だった。勝てば最多勝間違いなしの下柳が、プロ１５年目で初の延長１０回を投げ、うれしい１５勝目。「規定投球回未満の最多勝」となる男が最後の最後で“２試合分”を投げ切った。そんなベテランを救ったのが２年目鳥谷だ。自身２発目のサヨナラアーチで試合を決めた。おまけに打点王ぶっちぎりの今岡は１４７打点目を挙げ、球団新記録をマーク。いいことづくめの勢いで日本シリーズに突入だ！

　２−２の９回裏。打順が回ってきた下柳が打席に向かうと、この日一番の大歓声が鳴った。「もう１回いかせてください」。子供のような笑顔でヘルメットをかぶった続投志願だ。延長１０回裏、力投は報われた。燃え尽きた。サインボールの投げ入れも、半分は右腕で行った。

　「ホント、ありがたい。みなさんのおかげですよ。いけるところまでいこうと思っていた。あの回で終わりだったけどな」

　鳥谷のサヨナラ弾の瞬間。着替え中だったのか。ベルトを外したまま、ユニホームを地肌にはおって出てきた。セ単独トップに立つ１５勝目に自身初の「１０イニング」の疲れも吹っ飛ぶ。同級生の矢野と抱き合った。岡田監督は「シリーズもあるし故障が怖かった。１０回で交代させるつもりだった」と胸をなでおろした。

　歴史的な白星だ。最年長での最多勝獲得が見えた。また規定投球回数に満たない最多勝は、８８年の伊東昭光（ヤクルト）以来だ。

　雨の甲子園は下柳のために一つになった。終盤は全プレーに歓声、悲鳴が上がった。被安打１０と決して調子は良くなかったが、いつも通り低め重視でピンチをしのいだ。今季の１試合平均は５・３イニング。ＪＦＫの「協力」で白星を積んできたが、その下柳が投げ続けた。９回を投げたのも０３年８月２９日以来だ。

　試合前には、００年８月以来、阪神では初となる月間ＭＶＰを受賞した。９月は５試合で４勝無敗。防御率０・６５。中日と０・５ゲーム差で迎えた９月１日には、５回１失点で首位に踏みとどまらせた。甲子園での胴上げも、先発した最年長が導いた。

　失敗が今に生きる。開幕６連勝が途切れた６月１２日の日本ハム戦（甲子園）。２回９安打７失点で古巣に負けた。「ボコボコにされて頭から離れない。やられっ放しで仕返しもできていない」。細心の投球術は経験から学んだ。

　指揮官はシリーズのために１１回以降を「温存」するつもりだった。その期待に応える義務がある。「（古巣）ホークスを倒して、日本一を取りたい」。燃え尽きるには、まだ早い。


今岡、単独３位藤村超えた１４７打点

　頬を伝う小雨が心地良かった。今岡がナインの整列する前で、マイクに向かった。４万７２８４人の前での最終戦セレモニー。選手会長がＶ報告、そして高らかに日本一宣言を発した。

　「ファンの皆さん！　Ｖ奪還、セ・リーグ制覇を果たすことができました。しかし、今年は日本一を獲ります！」

　試合では球団記録だった５０年藤村富の年間１４６打点を抜いた。４回１死三塁。門倉のフォークに詰まらされたが、振り抜いた分だけ打球が伸びた。右前に落とし、代走関本が先制のホームイン。下柳へのアシストで、ついに金字塔を打ち立てた。

　「汚いヒットだったね。優勝が決まってからは記録を意識してやっていたので嬉しい」。今季１４７打点目は、プロ野球史上でも単独３位にランクされる。

　５番打者に決まった昨オフ。「１００打点以上を狙う」と話してきた。だが、結果は自らの予想を上回る量産でフィニッシュした。「最近スゴイ数字だなって思います。４０、５０本もホームランを打ってるわけじゃないのに」。しばしの休息、そして日本シリーズへ。いよいよリベンジの舞台に歩を進める。

　雨のライトスタンドでペナント最後を見届けました。消化試合なのに、下柳のためのベストメンバーもしびれた！まさに一丸野球で有終の美を飾った！いざ日本一！