「山本家」コミュのすがこちゃん

すがこちゃんが九州からやってきた。

すがこちゃん、７９歳。
母方のばーちゃん。

７９歳になっても
飛行機に乗って、東京までやってくるような
パワフルばーちゃん。

すがこちゃんは、孫の学祭を見に来た。
うちにとっては従弟、しゅーちゃんが
東大でビッグバンドサークルに入っているので、その演奏を聴きに。

そして、みんな集まった。
母、姉、兄、叔父ちゃん、叔母ちゃん、しゅーちゃん。

久しぶりに集まる親戚一同。
でもばーちゃんは飄々としている。

大学職員をやっている兄ちゃんが
「生徒にパニック症候群の子がいて
　教室に入ると、汗が止まらなくなっちゃうみたいでね」
と話すと、ばーちゃんは言う。
「それ…教室が暑いんと違う？」

好きな芸能人は、小栗旬。
「小栗旬、すごい人気出たよねー」
と、ばーちゃんに言うと
「おばあちゃんが最初に目をつけたけね」
と言う。

「若い頃、ばーちゃんは綺麗だった？」
と聞くと
「うん、綺麗だったよ」
と言う。
「夜、汽車に乗っててね、窓に映った自分を見て
　なんて綺麗なんやろって思ったのよ」

すがこちゃんを見ていると思う。
母強し、と言うけれど
婆はもっと強い。

でも、婆は言う。
「もう先は長くないけ」

うちはそんな台詞に、妙な辛さを覚える。
わたあめに水滴が垂れたような
じわっと溶けて広がる感じ。

さらに、婆は悲しそうに言う。
「花より男子が終わったと思ったら
　イケメンパライダイスがあったでしょ
　でも、それも終わっちゃったから、今は楽しみがないけね」

すがこちゃんが九州へ帰って行った。
また、数々の伝説と、笑顔を振りまいて
九州へ帰って行った。