ここで聴かれるブリティッシュな音へのこだわりは、正統な継承者としての高すぎるプライドが、白蛇アルバムを遙かに超えてゆこうとする強烈な意志だろうし、メンバー選びにもそれは見て取れるだろう。そして自分を見いだしてくれたフィル・ライノットの世界への愛情と、それを知るものとしての誇り、サイクスのメロディーメイカーとしての天賦の才能をもってしても、そのシン・リジィの世界には頭を垂れ、愛情と憧憬を持って、あのDancing in the darkの世界をどうにか自分の中に、という亡き親に対する想いのような節回し。2ndの後に出されたフィル・ライノットに捧げたLiveアルバムも泣きまくっていて最高だが、そこでのハイライトの一つがこの1stの冒頭をかざる「Riot」であることを考えても、自分が何者であり、どこへ行きたいのか、目指す高みとおのれをはっきりと自覚した男の決意のアルバム、それがこの1stの緊張感を生み出しているのだと思う。名手2人と白蛇脱退直後、という要素があってこそ生まれた名盤だった、ということは否定はできないだろうし、こういうアルバムが出たのも、「サーペンスアルバス」の直後、がギリギリ最後の時代だった、と言えなくはないかもしれない。