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 ″書こうよエッセイ″コミュの(映画)街の灯

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 チャーリー(チャールズ・チャップリン)は、記念像の除幕式で騒ぎを起こすが、午後には、街頭に立つ盲目の花売り娘(ヴァージニア・チェリル)に、一目惚れする。
 妻に家出されたため、入水自殺をしようとした風変わりな大金持(ハリー・マイヤース)を救うと、彼から非常な歓待をうける。
 大金持の余禄で、チャーリーは娘から花を全部買ったり、高級車で送ったり、金持の振りをする。娘はチャーリーが希望の灯火(ともしび)ででもあるかのように、夢見る表情で祖母にかたる。
 大金持が外国旅行にいくので、執事から邸宅を放り出されたチャーリーだが、娘たちが近日中に家賃を払わないと、部屋を追い出されることを知る。彼はボクシングの賭け試合で稼ごうとするが、負けてしまう。ボクサーのチャーリーは、めったに思いつかない独創的な戦法で闘うが、皆が真剣なだけに笑ってしまう。
 そのうちに大金持が帰国する。彼は酔ってチャーリーを思い出し、邸宅にまねく。無造作に、チャーリーに千ドル与える。だが、ここに仕掛けが伏せてあった。

 チャップリン映画が苦手な人の理由は、こういうところだろうか。
 無声映画。八十年前の画面は古びて暗い。うっとうしそうなちょび髭。ちょこまかした歩行。落ち着きがなく、ケチなドタバタ騒ぎの張本人。埃まみれの小男。そのくせ一丁前に恋をする。ここでの恋の相手は、とても魅力的だが目を患っている、貧乏な花売り娘である。
 大金持の個性がおもしろい。大金持は酒に酔ったときだけ、自殺を止めてくれた男を、愛情を込めて思い出す。愛妻に対するように気前がよくなり、高級酒を浴びるように飲ませる。パーティーを開いてくれ、車までやるという。
 チャーリーのチャーリーらしさは、金持ち連とつき合っても、そのツテで有利な仕事にありつこうなどと、考えないところである。

 都会には宝石箱をぶちまけたように光があふれているが、慈愛の灯影(ほかげ)はうすく少ない。
 チャーリーは娘に千ドル渡した後、また戻ってくると約束する。
 彼がくれたお金で目をなおし、花屋を開いた娘は、店の前で車のドアが閉まる音を聞くたびに、あの裕福な紳士が帰ってきたのではないかと、胸をときめかす。

 刑期を終え、浮浪者に戻ったチャーリーが、あてもなく花屋の前を通りかかり、娘を見つける。親しげに笑顔をおくるみすぼらしい男に同情した娘は、胸ポケットに挿すバラと小銭を恵もうとする。
 娘がおずおずする男に近づき、硬貨を握らせようとして手を握ったとき、なつかしい人の手を思い出す。
 娘はしっかりと男の顔を見つめる。そして、手を離さないように、胸元にもっていく。ここで初めて、チャーリーの顔が大写しになる。彼はばつの悪さにバラの茎をかむ。
You?
「あなたでしたの?」
Can you see now?
「見えるようになった?」
Yes,I can see you.
「ええ、見えますわ」
 このすばやく流れ去っていく数秒に、チャップリンの精神が凝縮されている。

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