a 血友病と関節障害
血友病は内因性血液凝固障害のため深部出血が多く、関節内出血、筋肉内出血、頭蓋内出血や腎出血などが特徴的である。頻度としては関節内出血が最も多く、次に筋肉内出血がよく現れる。頭蓋内出血や腹腔内・内臓(消化管)への大量出血は、対応を誤ると致命的であるが、日常的に頻度の高い関節内や筋肉内出血は、血液製剤(凝固因子製剤)が普及した今日では、処置も簡単であり大事に至ることはない。ここでは比較的頻繁に起こり得る関節内出血・筋肉内出血について述べることにする。
仮に今、血友病患者が関節内出血を起こした場合、このまま放置するとどうなるか。健常人であれば、血管外へ出た血液は血小板や血液凝固因子の作用によって迅速に止血・凝固がなされ傷口は治癒されるが、血友病患者の場合、傷口をふさぐための血液凝固が遅々として進まず、傷口の治癒が十分に行われない。したがって、血管からあふれ出た血液は、やがて関節腔内を充満し、行き場のなくなった血液が組織や神経を圧迫して激痛を与えることになる。いわゆる血友病患者のいう形容しがたい"激しい痛み"との闘いの始まりとなる。