経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation(TMS))法によって人の脳を刺激すると、宗教的な幻覚を見たり、宗教体験と類似した現象を体験をすることがあるため、憑依現象を引き起こす伝統的な神事の儀式の中に認められる、脳を磁気刺激する所作に着目する研究者もいる。一例を挙げると、出雲系の神道では、甘南備山に落雷があると、天から神が降りてきて依り代に宿ったと解釈される。山頂付近には落雷の大電流によって磁気を帯びた花崗岩(鉄分が多く含まれる)が点在する。それらに落雷の痕跡を見つけては、神が宿った聖なるものとみなして、麓の神社に持ち帰って祀る風習がある。磁化した岩を手に持つなどして巫女が神楽を舞う動作を繰り返し行うことで周期的に脳と聖石の位置関係が変化して、経頭蓋磁気刺激法の場合と同じように、周期的に変動するアルゴリズムを持った磁気による脳刺激が行われて、巫女がトランス状態へと移行して神懸りの状態が引き起こされるとする説である。日本の神道は太陽信仰がその中心に置かれているにもかかわらず、この種の神事が夜間行われることが多いのは、夜間のほうが脳が磁気刺激を受けやすい状態になっているからだとする説もある。