今年(2008年度)、私は「ロビンス基礎病理学」を病理学総論、各論に指定しました。講義が終了して、「教科書」に内容が沿っていないという抗議を少なからず受け、大変驚き、また少々反省も致しました。というのは、私が学生のころの医学生の常識の一つとして、「「教科書」を、いわれるままに買ってはいけない。実際によくみて、情報を集めて、必要なら先輩からもらえ、ただし、先輩がくれる教科書はろくな教科書ではない」というものがあったからです。実際、医学生が、教科書として推薦されているものを全部そろえると年間で数十万円になってしまうこともあります。いわれるままに買っていては大変です。私は、学生時代貧乏で、勉強意欲もたいしたことなかったので、教科書はほとんど買いませんでした。
ロビンスには[Pathologic basis of the disease]というさらに厚い原著があり、そこから要点を抜粋したものがBasic Pathology、そして、その日本語訳が「ロビンス基礎病理学」です。ロビンスはいい教科書です。病気がどういう機序でおきるのかという点に力点をおいた病理学の教科書は、残念ながら、他にお薦めできるものがありません。多くの医学部で、ロビンスは教科書として取り上げられています。翻訳を嫌い、原書を教科書にしている大学もあるくらいです。病気の成り立ちという面、病理形態学的面と、分けて記載している点も良い点です。日本人が著者になっている病理学の本では、病気の機序についての説明が不明解であること、内容が組織形態、診断に偏っていることなど、いくつか問題点があります。ということで、教科書は何がよいかと聞かれたら、私は「可能であれば、原著でかつ[Pathologic basis of the disease]を読むのがよいです。」と答えます。
B. 通読できる「病理学」教科書を一通り読む。