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[dir] 動物・獣医療コミュの9/2 糖尿病の薬でがんが減る? 新薬続々登場の糖尿病の薬物治療

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糖尿病の薬でがんが減る? 新薬続々登場の糖尿病の薬物治療

nikkei TRENDYnet 9月2日(金)10時59分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110902-00000000-trendy-soci



ビジネスパーソンがかかりやすい病気の一つ、糖尿病の解説第4弾! 実際に糖尿病と診断されたらどんな治療を行うのか、最新の薬物治療に関するお話です。

 30代、40代のビジネスパーソンを中心に、糖尿病や高血圧、メタボ、皮膚トラブルなどについて専門家に解説をしてもらう連載の最初のテーマは、ビジネスパーソンがかかりやすい病気の一つ、糖尿病。国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部長 野田光彦先生に、糖尿病および予防について、解説してもらう。その第4回。今回は、糖尿病にかかってしまったら、どのような治療を行うのか、糖尿病の薬物治療に関する最近の考え方について。

【詳細画像または表】

 糖尿病について初めて記載された書物は、紀元前1550年頃に書かれたという『パピルス・エベルス』にさかのぼるとされます。また、紀元2世紀のローマ帝国時代には、カッパドキア(現在トルコ領)生まれの医師アレタイオスや、マルクス・アウレリウス帝の侍医であったガレノスが、それぞれ糖尿病と考えられる病気の症状と予後について詳細に記載しています。ガレノスは、糖尿病は腎臓の病気であるとしていますが、両者ともその背景には胃の異常(食欲)があると推察しています。

 その後長らく糖尿病は「腎臓の病気」であると考えられた時代が続き、糖尿病の発症メカニズムの主座といえる膵臓の、血糖値の制御への役割の解明は、19世紀の末まで待たねばなりませんでした。すなわち、1889年にミンコフスキーとメーリングが、膵臓の全摘出によって犬が糖尿病になることを報告し、そして1921年に、カナダ・トロント大学のバンティングとベストによって犬の膵臓の抽出液からが血糖値を下げる物質、つまり後にインスリンと命名される物質が発見されたのです。これは、膵臓摘出犬での最初の成功ののち、6カ月も経たない翌1922年に早くもトンプソン少年に臨床応用され、劇的な効果を収め、彼は回復に至りました。ときにトンプソン少年、14歳のみぎりでした。ここに初めて重症糖尿病の生命を救いうる治療が確立されたのです。と同時に、現在の糖尿病医療を支えるさまざまな発見、経口血糖降下薬(内服で血糖値に効果のある薬剤)の誕生、そして、より使いやすいインスリン注射薬への研究のスタートが切って落とされたのです。

 2型糖尿病の治療で主に使用される経口血糖降下薬に関しては、1950年代から開発が進み、わが国では特に1990年代以降、新しい効果をもつ薬剤が次々と発売されています。現時点で大きく6種類に分類される20を超す薬剤が使用されています。

 第1回〜3回までは、主に糖尿病と診断されていない方への予防と早期発見について述べてきました。今回はそこから一歩踏み込んで、糖尿病の薬物治療に関する最近の考え方や新しいトピックを紹介していきたいと思います。

Q1「糖尿病が強く疑われる人」の約半数は治療をしていない

Q2Legacy Effect─遺産効果:良い血糖の記憶は大いなる遺産

Q3糖尿病の内服薬にはどんなものがある?

Q4血糖値だけじゃない? メトホルミンでがんリスクが低下

Q5インクレチン関連薬:食欲の抑制・体重減少にも期待

Q1 「糖尿病が強く疑われる人」の約半数は治療をしていない

 薬物治療についてご説明する前に、「糖尿病が強く疑われる人」の治療の状況に触れておきたいと思います。

 厚生労働省が2007(平成19)年に実施した国民健康・栄養調査によると、解析対象者となった男女4003人(男性1619人、女性2384人)のうち、「糖尿病が強く疑われる人(HbA1c(JDS値)※が6.1%以上、または、質問票で「現在糖尿病の治療を受けている」と答えた人)」は420人と全体の10.5%を占め(男性の15.3%、女性の7.3%)、このうち、「現在治療を受けている」と答えた人は、男性で56.9%、女性で54.1%、合計で55.7%にとどまることが報告されました(図1)。この報告では、医師から糖尿病と言われたことがある865人(「境界型」、「糖尿病の気がある」、「糖尿病になりかけている」、「血糖値が高い」等のように言われた人も含む)のなかで、49.2%と約半数の人が「現在治療を受けていない」ことが示されています。

 同様の結果は、2011年7月に公表された「健康日本21推進フォーラム」による「健診後の受診率・受療率調査」にも示されています(図2)。この調査は過去1年間に健康診断を受け、「血糖値が基準より高かった」と判定され、さらに「要治療」と判定された20代〜60代の男女の中から、無作為に抽出された500名を対象に行われたものです。これによれば、血糖値が「要治療」と判定された後に医療機関を受診した人は77%と、約4人に1人が受診しておらず、調査時点で治療をせずに糖尿病を放置している人が39%に上ることが報告されました。特に20代、30代では「糖尿病放置群」が55〜60%と著明に高率であることが指摘されています。

 糖尿病の治療を受けない、もしくは中断してしまう理由について公的な調査が行われているわけではありません。糖尿病はいったん発症すると一生付き合うことになる病気ですが、とくに、若い年代では「仕事の都合上休みが取りにくい」などといった要因も関連しているようです。

糖尿病の治療は「鉄は熱いうちに打て」!! 

 糖尿病の治療では、目立った自覚症状がなく「病気が良くなっている」という自己認識を得にくいという状況もありえます。そのまま長距離走を走り続けるような場合もあるかもしれません。

 血糖値を良い状態に維持するための治療へのモチベーションを持ち続けられるようにすることは、患者と医療サイド、双方の重要な課題です。糖尿病の治療では、できる限り早期からこれを開始し、血糖値を引き続き良好に維持することが、重篤な合併症の進行を避けるために最も重要なことで、この点さえクリアすれば、糖尿病のない方と同じような生活を送ることができます。先に述べたように、医療機関への受診率が低い状況は、将来の糖尿病合併症の増加の可能性を示唆しており、憂慮される事態です。

 私たち医師や医療従事者は、持っている知識や技術を総動員して、患者さんのより良い伴走者となれるよう努力してまいりますので、「血糖値が高い」と言われた方は是非病院を受診され、治療を受け、これを続けて頂けるように心からお願いいたします。

※HbA1c:第2回 Q2 「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」ってなんですか?参照Q2 Legacy Effect─遺産効果:良い血糖の記憶は大いなる遺産

 糖尿病や耐糖能異常の早い時期から血糖値を良好に保つことによって、具体的にどのようなメリットが得られるでしょうか。まず、糖尿病の合併症のなかでも古典的な合併症とされる、細い血管が障害されて起きる網膜症や腎症への進展抑制効果について見てみましょう。

 糖尿病性網膜症は中途失明(成長後に起きる失明)の原因として2番目に多い疾患であり、糖尿病性腎症は、1998年以降、人工透析導入の原因疾患の第1位となっています。

 はじめに、英国で約4200名の2型糖尿病患者を対象に実施されたUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)という臨床研究の結果をご紹介します。この研究では1977年から1991年の間に2型糖尿病と診断された25歳〜65歳の患者を強化療法群と従来療法群(表1)の2群にランダムに分け、10年間(中央値)にわたって治療経過を観察し、厳格な血糖管理によって合併症の発症・進展を抑制できるかどうかを検討したものです。ここで強化療法群とは、治療目標値を達成するために必要に応じて薬物による治療を加え、積極的に血糖値を下げようとした群であり、従来療法群は、強化療法群と比較して緩やかな血糖管理を目標とした群です。

※HbA1c(国際標準値):米国を中心に使用されている標準的なHbA1c値(NGSP値と呼ばれるもの)と同等の値 HbA1c(JDS値):日本で使用されているHbA1c値 HbA1c(国際標準値)=HbA1c(JDS値)+0.4% その結果、積極的に血糖値を下げようとする治療を行った強化療法群では、従来療法群と比較して細小血管合併症(光凝固が必要な網膜症、硝子体出血、腎不全)への進展が25%抑制されたことが報告されています(次ページ図3参照)。

 同様の研究はわが国でも行われており、「Kumamoto Study」として知られています。これはインスリン治療についての臨床研究です。すなわち、Kumamoto Studyはインスリン治療中の2型糖尿病患者110人を、「強化インスリン療法」群と「従来インスリン療法」群の2群にランダムに分けて6年間追跡し、UKPDSの場合とほぼ同様に合併症の発症・進展について比較しています(表2)。

血糖管理は長い目で見て重要

 Kumamoto Studyでも、強化インスリン療法による厳格な血糖管理を行った場合、従来療法群と比較して、網膜症の悪化が69%、腎症の悪化が70%、それぞれ抑制されたことが報告されています。

 これらの研究結果から、糖尿病合併症が発症していない早期の段階から血糖値を良好にコントロールすることによって合併症の発症が抑制されること、さらに軽度の合併症が既におきている段階であっても、適切に血糖値を下げることによってその進行を防ぎうることが示されたのです。

 さらに、糖尿病治療の初期に血糖値を良好にコントロールすることによって、その後長期間にわたって糖尿病合併症の進展抑制効果が維持されることも最近明らかになってきました。

 先ほど紹介したUKPDSでは、最初の報告が行われた1998年以降も10年間、強化療法群、従来療法群間で治療内容を同等(両群とも強化療法)にした状態で継続して経過観察したグループについての結果が報告されています。これによれば、HbA1c値や体重は速やかに両群間で差がない状態に移行したのですが、当初の調査終了時点(1997年)に認められた強化療法群での細小血管合併症の進展抑制は、HbA1c値がほぼ同様のレベルになって以降も持続したのみならず、最初は両群間で差が認められなかった心筋梗塞などの大血管合併症の発症抑制や死亡率の減少も、2007年には認められるようになっていたのです(図3)。

 このように、現在では、糖尿病の早い段階から血糖値を良好に管理することによる福音は、Legacy Effect(遺産効果(Legacyとは英語で遺産を意味する);Legacy Effect はMetabolic Memory(代謝の記憶)とも呼ばれる)として維持され、その後長年月を経ても細小血管合併症の発症・進展に影響を及ぼすこと、また大血管合併症(動脈硬化性疾患)についてはその効果が現れるのに数年以上を要すると考えられるようになってきています。

 糖尿病の初期は、自覚症状もなく、治療効果を実感しにくいかもしれませんが、血糖値の記憶はしっかりと身体に刻みこまれています。私たちの体を長期間にわたって合併症から守ってくれる健康の貯蓄、早い段階からこつこつと積み立てて頂きたいと思います。

Q3 糖尿病の内服薬にはどんなものがある?

 ここで改めて、糖尿病の治療に使用される内服薬(経口血糖降下薬)についてご説明したいと思います。

 今回、最初のページで述べたように、現在使用されている経口血糖降下薬には、主な薬効別に6種類に分類される20を超す薬剤が存在し(表3)、病態(病気の状態)や食前・食後のどの時点の血糖値をターゲットとするかなどによって、処方が選択されています。

 経口血糖降下薬を用いた治療の対象は主に2型糖尿病で、通常、適切な食事と運動をしばらく行っても目標の血糖値にいたらない場合に検討されます。ただし2型糖尿病であっても緊急にインスリン治療が必要な高血糖や重篤な合併症を認める場合、また、手術前や妊娠中の女性などでは最初からインスリンによる治療が選択されることもあります。

参考サイト

・国立国際医療研究センター病院 糖尿病標準診療マニュアル(一般診療所・クリニック向け)・日本糖尿病対策推進会議(編) 糖尿病治療のエッセンス(2010-2011)やせ型遺伝素因の人と食べ過ぎ肥満型の人では薬も違う

 2型糖尿病は、インスリン作用不足のために血糖値を正常範囲内に維持することができなくなって発症する病気です(第1回 Q1参照)。主に遺伝素因が関与するインスリン分泌の減少と、運動不足、過食、その結果としての肥満や、ストレスなどの環境因子と一部には遺伝素因も影響すると考えられているインスリン抵抗性(インスリンの分泌量に見合った効果が得られていない状態、インスリンの感受性の低下)が、個々の患者ごとにさまざまな程度で存在し、それらの総体として引き起こされます。

 そのため、同じ2型糖尿病の診断を受けた患者であっても、やせ型で血縁者にも糖尿病の人が多く、インスリン分泌の減少が主要因である方と、運動不足で肥満があり、検査データ上はインスリン分泌量が保たれているにもかかわらず血糖値が高い、インスリン抵抗性が主たる病態である方とでは、おのずと選択される薬剤も変わってきます。表4に経口血糖降下薬の種類と作用を示します。

 また、同一の患者であっても、糖尿病治療の経過の中で、血糖管理の良し悪しや併存する病気、糖尿病合併症の発症や進展などに伴って、適切な経口血糖降下薬は変化します。使用する薬剤を変更したり、増量・減量したりする場合には、その理由や目的、注意すべき副作用について十分な説明を受け、納得したうえで変更していくことが大切です。それは糖尿病治療に対するアドヒアランス(医療を受ける側が主体的に自分の医療に責任を持ち、治療法を遵守し実行すること)の向上にもつながると考えられます。

Q4 血糖値だけじゃない? メトホルミンでがんリスクが低下

 糖尿病では様々ながんリスクの上昇が見られるという報告をご存知でしょうか?

 私たちの研究グループも参加している「多目的コホート研究」(JPHC Study;研究班主任 津金昌一郎 国立がん研究センター部長)では、1990(平成2)年と1993(平成5)年に、日本国内各地の10保健所管内にお住まいだった40歳〜69歳の男女約10万人を対象に、糖尿病の有無と、その後のがん罹患との関連を調査しました。

 研究開始時点のアンケート調査では、男性4万6548人の対象者のうち7%、女性5万1223人の対象者のうち3%が「糖尿病の既往あり」(糖尿病があるといわれたことがある)と回答され、「糖尿病の既往あり」の人では「糖尿病の既往なし」と答えた方と比較して、何らかのがんにかかる危険性が男性で27%、女性で21%ほど高くなる傾向があることが報告されました。中でも男性では肝臓がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸がん(直腸と盲腸を除いた大腸のがん)、胃がん、女性では胃がん、肝臓がん、卵巣がんにかかりやすいことを報告しています(図4)。

 同様の結果は、私たち自身も日本人を対象にしたメタ解析によって見いだしています。合計25万479名のうち2万2485名ががんを発症した4報の疫学研究のデータを収集・統合すると、2型糖尿病患者では何らかのがんにかかるリスクが男性で25%、女性で23%高く、特に肝臓がんや子宮体がんの発症リスクが高まることを報告しています(Noto H、他:J Diabetes Complications 24: 345, 2010)。

血糖値を下げるだけではない効果に期待

 これに対し、ビグアナイド薬であるメトホルミン(わが国での商品名はメトグルコ、メデット、グリコランなど)を内服している2型糖尿病患者では、がんの発症リスクが低下する可能性についての報告が、多数なされています。

 例えば、スコットランド在住の、がんの既往がない2型糖尿病患者を対象に、調査時点からメトホルミンの内服を開始した4085人(「メトホルミン新規内服群」)と、このグループの各対象者と診断年齢、性別、HbA1c値、BMI、喫煙歴の有無などをマッチさせた「メトホルミン非内服群」の4085人について、最長10年間にわたる経過を過去にさかのぼって追跡した、患者レジストリーに基づく後ろ向き観察研究によれば、期間中に、「メトホルミン新規内服群」では7.3%、「メトホルミン非内服群」では11.6%にがんが発症し、がん発症までの中央値は「メトホルミン新規内服群」で3.5年、「メトホルミン非内服群」では2.6年と、「メトホルミン新規内服群」で有意にがんの発症が低下していたことが報告されています(Libby G、他:Diabetes Care 32: 1620, 2009)。

 メトホルミンにがんの発症を抑制する可能性があるとした場合、それはどのようなメカニズムに基づくものなのでしょうか。これについてはインスリン抵抗性の改善作用によるとする考え方に加え、むしろメトホルミンの持つ直接的な薬理作用ががんの発生の抑制に働きうるのではないかという仮説が有力です。

 メトホルミンには糖尿病による大血管合併症(心筋梗塞、脳卒中など)の抑制作用も報告されています(表3)。このお薬は非常に古くからある薬剤で、一時期、この薬剤の同効薬(フェンホルミン)で多く見られた副作用(乳酸アシドーシス)への懸念のために処方が控えられた時期もありましたが、メトホルミンは効果や副作用、安全性が確立しており、高齢者や腎機能が低下した方などを除けば、広く第一選択薬として用いうる薬剤です。血糖値を下げるだけではない効果を持つ可能性のある薬剤としても関心が持たれます。

Q5 インクレチン関連薬:食欲の抑制・体重減少にも期待

 最後に、糖尿病治療薬の中でもっとも最近になって登場した薬剤、すなわち“インクレチン”をターゲットにした「DPP-4阻害薬」と「GLP-1受容体作動薬」についてお話ししたいと思います。

 インクレチンとは、栄養素の吸収に伴って小腸から分泌されるホルモンで、下部小腸のL細胞から分泌されるGLP-1と上部小腸のK細胞から分泌されるGIPの2種類があります。インクレチンは、血糖値が正常よりも高くなると膵臓ランゲルハンス島のインスリン分泌細胞であるβ細胞に働いてインスリン分泌を促す作用があります。しかし、生体内ではDPP-4という分解酵素によって速やかに分解され、数分間という非常に短い半減期で消失していきます。さらに、2型糖尿病患者ではインクレチン、とくにGIPの効果が減弱していることが報告されています。そこでインクレチン、その中でもGLP-1の血中濃度を高めてインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる効果を期待して開発されたのがDPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬です。

DPP-4阻害薬:内服薬(1日1〜2回内服)GLP-1の分解酵素であるDPP-4の働きを阻害してGLP-1の血中濃度を上げる。商品名:ジャヌビア、グラクティブ、ネシーナ、エクア、トラゼンタGLP-1受容体作動薬:注射薬(1日1〜2回注射)アミノ酸配列が本来のGLP-1と若干異なるため、DPP-4で分解されにくい、GLP-1と同様の作用をもつ蛋白商品名:ビクトーザ、バイエッタ これらインクレチン関連薬は、

・血糖値が正常より低い時には単独ではインスリン分泌促進作用を発揮しないため、インスリン分泌促進薬の最大の副作用である低血糖を単剤では起こしにくい・体重が増加しにくい・膵臓ランゲルハンス島のインスリンβ細胞(インスリン分泌細胞)に対して保護的に作用することが期待されている・肝臓での糖新生を促進するグルカゴンというホルモンの分泌を抑制することによって血糖値の上昇を抑えるなど、過去の経口血糖降下薬が持っていなかった新しい特徴を有していることから、治療上の効果が期待されています。

 GLP-1には上記以外に、脳に作用して食欲を抑制したり、胃から腸への食べ物の排出を抑制したりすることで満腹感が続き、食後の急激な血糖上昇を抑制するといった膵臓以外の臓器に対する効果もあることが知られており、特にGLP-1受容体作動薬ではその作用が強いと考えられています。

「薬さえ飲んでいれば何をしてもいい」わけではない

 ただし、良い薬剤であってもその使い方を誤ると問題を生じることがあります。たとえば、DPP-4阻害薬をスルホニル尿素薬と併用する際には、十二分な低血糖への留意が必要で、特に高齢者や腎機能が低下している方ではより慎重な対応が求められます。GLP-1受容体作動薬については注射薬ではありますがインスリンの代替となるものではなく、インスリンの分泌量が非常に低下している方では適応になりません。いずれも日本ではまだ発売されて2年以内の薬剤ですので、どのような患者にどのようなタイミングで、どのような併用薬と共に使用するのが最も効果的で安全か、今後、使用経験が集積されてくることと思います。

 ところで、pharmacyの語源となったギリシア語のpharmakon(パルマコン)は「薬」と「毒」という互いに相反する両義をもつ両面価値の言葉です。ここで「糖尿病薬は副作用があるから体に毒、なるべく使わずに自力でよくしましょう」ということを申し上げたいのではありません。現在使用されている経口血糖降下薬は、多くの患者にとってやはり「薬」、しかも良薬であり、糖尿病治療の目標である「健康な人と変わらない日常生活の質の維持、寿命の確保」に必要です。だからと言って、「薬さえ飲んでいれば何を食べても大丈夫、生活習慣は今までどおり」と考えるのでは、せっかくの良薬も『本来あるべき治療の軌道を逸脱させる「毒」』になりかねません。「薬」は単に楽をするためのものではないのです。効果的な薬剤も、健康的な生活習慣という基盤があってこそ効果を発揮できるということを、肝に銘じて頂きたいと思います。

 今回ご紹介した以外にも、今後もさらに新しい薬剤の登場が予想されます。糖尿病は今の医療技術では完治できる病気ではありませんが、治療の選択肢がさらに広がることにより、個々人の病態やライフスタイルにさらに適した治療が可能になるものと期待しています。

(文/野田光彦=国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部長)

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