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風唄コミュのJR劇場 おまけ3

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の続きです♪
ほとんど戦闘シーンです(>w<)チェックよろしくおねがいします


 九人対二人。いくら武術、魔術に長けているとはいえ、相手は女だ。普通に考えれば勝敗は明らかであるはずなのに、どうしたことか目の前の若い女二人は息も切らさず立ち回り続けている。

 槍が振るわれる際に響く特有の高音に乱れはない。それは斬られたことによる大気の悲鳴のようで、また旋律のようにも聞こえる。それに伴い刃同士がぶつかり合う金属音。それは擦り合わされるような嫌な音ではなく、金属全体の細かな振動による小気味良い音である。銃撃、斬撃共に見事に攻撃の全てを相殺し、その動きには無駄がない。

その様子を見極めた、グローブを嵌めた一人の男が素早くジノの懐に飛び込んだ。一見すると振り回しているだけのように見える槍も、威力とともに恐ろしく高い精密さによって制御されていることはわかった。だが世にある様々な戦術には、間合いというものが存在する。
 槍であるならば、近距離から中距離攻撃に適しており、極接近戦には向かない。
 槍は剣やナイフなど、飛び道具を除いた諸々の武器に比べるとリーチが長いという利点があるが、体術などの直接打系が対峙する敵となると、些か相性が悪い。また一度薙いだ切っ先は、元の位置に戻るまで、多少の時間がかかる。さらに、彼女程の速さで槍を振るうのであれば、手元の動きが刃に反映されるまで、柄がしなる分多少の時差が起きているのである。

 男は彼女よりは戦闘能力は高くないものの、そこを見極めたところをみると、やはりプロだった。
 一気に間合いを詰めると、男の渾身の一撃が放たれた。それはあまり振りかぶられることなく、しかし素早く急所を狙うものだった。

 ジノは、その男の攻撃のタイミングが予め分かっていたかのように一度自分を取り囲んでいた他の敵を一斉に弾き飛ばし、
柄の部分でその重い一打を寸分の狂いなく受け止めた。

 ジノはその姿勢のまま、静かに男と目を合わせ、言った。

「待ってた」

 男にはその言葉が理解できない。ただ渾身の一撃を受け止められた驚きに戦慄が走り、そして踊る女の楽しそうに刻まれたその唇の形と赤い瞳の色に一瞬目を奪われた。

 次の瞬間、ジノの姿は目の前にはなく、視界には受け止められたそのままの形で拳に添えられた槍の柄だけだった。
 男が目の前で起きたことを脳内で処理できないでいると、唐突に背後から声がした。

「実はあんたが一番手応えありそうだと思ってたんだ。武器の相性から言っても」

 瞬時に先程の出来事について、理解した。
 戦闘が開始される直前の広間にて、魔銃による一発。女は無傷で、撃った男が倒れていた。煙に巻かれた理由が切っ先で弾を割り壊したのであれば、その時その煙の中で女は音もなく瞬時に狙撃手の背後に回り、自分を狙うその人物を仕留めたのだ。
 おそらく一撃で。
 そして煙が引くにはまだ余裕がある刹那に、元の位置へ元の状態で収まったと言うわけだ。
 なんという速さだろうか。弾より速く動ける人間は、確かにいない。だがこの人物はそれすら凌駕し、女でありながら強靭な肉体をもってして、最強の情報屋としてこの世界に名を轟かせているのだ。

 カシャン

 槍の倒れる音がした。
 それに触発されたようにグローブが背後の髪を揺らす女に掌打を繰り出す。だがやはり、彼女は冷静に見極めては首を捻り、数歩下がり、時には手のひらを添えるように受け流しては、その攻撃すら殺す。男は体を捻り、遠心力にスピードを乗せてジノの首を狙うが、それも相手の軽やかなバックステップによって空を切るに終わった。
 渾身の一撃は威力も大であるかわりに、消耗も激しい上、体勢を立て直すまで僅かな時間がかかる。ジノは後退することによって生み出された間合いで右足を軸に体を反転させ、男の左側頭部に強烈な回し蹴りを放った。止められることなく振り抜かれた左足から、容赦ない一発だったようだ。
 そして男は天を仰いで地に伏した。

 強い。
 武に長ける情報屋は、槍術もさることながら、体術にも長けていた。

 このあたりで男達の苛立ちはピークに達した。武の女に対する攻撃はすべて殺され、魔に対する女の攻撃は全て無限の闇に吸い込まれてしまう。疲労しているのは我らのみ。それも女達は、自分たちに攻めの姿勢を見せていないのだ。彼女達はこちら側の攻撃を見極め、流すのみ。少数、劣勢だったはずの彼女達は、まるで男達の戦闘能力の品定めをして楽しんでいるかのようだった。

 グローブの男が地に倒れたのを見て、ターゲットだった男が歯を軋り、また銃口をジノに向けた。この場においてのリーダーは、どうやら彼らしい。それを見て、残った男達もそれぞれ武器を構え直し、彼女達を取り囲んだ一斉攻撃がまた始まろうとしていた。
 その様子にジノは面倒臭そうに小さなため息を吐き、目だけで彼らを見回した。その目は見下している、という形容が適しているかもしれない。
 侮辱の念を感じた男達はさらに頭に血が上り、引き金の指に力が籠められた。ジノはそれを見定めると、視線はそのままに左足を少々ずらすことで足元に転がる愛槍に爪先を引っ掛けた。
 傍らには円から登場したライチの気配がある。円は音もなく描かれ、彼女の小さな体躯をしまい込み、そして排出するのだ。

 広間に女性にしては低く、しかし耳にはよく届く声が響いた。

「あたしを出し抜くくらいだ、どれだけの者達かと思って様子を見ていたが」

 次いで、間髪入れずにその声とは対象的な、やや高めの少女らしい声で補足が入る。

「キミたち、攻撃方法がワンパターンなんだよね」

 二人の女は変わらず微笑みながらも、目の奥に今まで隠されていた怜悧な光りが現れた。

「つまりはあたし達を倒すには、役不足」

 それは、明らかなる怒りの光り。

「と!言うことで…」


 ジノが槍を蹴り上げた。
 ライチが巨大な弧を描いた。
 同時に男達がまたトリガーを引き絞り、床を蹴る。発砲は何発も折り重なるように撃たれた為か、爆発が爆発を呼び、その轟音から通常の威力を遥かに越えたものだと言うことが見て取れる。その衝撃波は、撃った自分達が立っている地点にも響き、仲間達にも少なからずダメージを与えたが、普通にやっても歯が立たなかったのだ。ある程度の犠牲は付き物、そう考えるしかなかった。いくら並外れた速さの人間だろうがこの爆風に晒されて無事であるはずがない。そこに武器を持った仲間が飛び込んで行くのだ。あとは彼らが始末する。
 射手達は勝利を確信し、銃口を地面に向けた。
 それでも彼らは緊張の面持ちで煙が引くのを待った。それぞれ肩で息をしつつ。

「キミ達、ワンパターンの意味知ってる?」

 振り返れば、巨大な漆黒の円を背にして微笑む少女が一人。
 仕留めてなかった、少女が穴に逃げ込む方が速かった―――。驚きのあまり口が聞けないでいると、後ろの巨大な円は貪欲な口を閉じ、そして少女、ライチが徐に指先だけで小さな小さな円をまた描いた。
 そのサイズの円では彼女の体をしまい込む事は出来ない筈。銃を持った男達が、リロードの為に慌てて薬莢を捨てた。
 それを見たライチは口を尖らせ、あーぁ、と疲れたような声と共にため息をついた。

「だから、それ意味ないから止めた方がいいんじゃないかな」

 男達の弾を込め直す手際は良かった。それは一瞬の芸当ではあったが、ライチの円が増えることの方が速かった。

「キミ達は知らないんだろうけど、ボクの力はボクをしまい込むだけじゃないんだよ」

 顔をあげると、深淵を思わせる美しい円は、今度は吐き出すためにこちらを向いて口をぽっかり開けていた。意思を持っているかのようだった。

「じごーじとく!ばいばーい♪」

 小さな黒い穴から吐き出されたもの。それは銃撃戦でライチが収納した、男達が撃った弾そのものだった。弾は闇の中を迷い、方向を奪われ、ライチの手によりまた進む方向を与えられるのだ。突き進むだけの意志を持たぬそれらは、ライチの手に掛かれば撃った主に牙を剥く。
 本日何度目かわからない爆発音が響き、狙われた男達はダメージを与えられ、しかし急所は外されその場に倒れた。

「歯には歯を…ってね。ノンちゃ〜〜〜ん?」

 もうもうと立ち上る煙が引くのを待たず、粉塵をかき分けながらライチは友人の名を呼んだ。霞んだ視界の先に、長い髪が揺れるのが見えた。

「はっけーー…ん?お、おぉ…」

 自分があの爆発を穴に逃げ込むことで逃れようとした時、視界の端に友人が高く早く跳躍するのが見えた。その後飛び込んできた敵を問題なく倒したとして、同時に自分も敵を倒して…今。彼女は一人の人間を締め上げていた。ちょっぴりいつもより怖い顔で脅されてるのはターゲットだ。

「言え」

 ジノは見かけ目立って筋骨隆々と言うわけではなく、少し筋肉質と言う程度だ。だがその体からは驚くほどの馬力を作りだし、並みの男では歯が立たない。その女に胸ぐらを掴まれ、締め上げられているいうのに口を割らないとは大した根性だな、とライチは思った。

「なーにしてるのん?」

 自分に被害が及ばなければ、楽しい事には変わりない。ライチは至極単純に思考を連結し、ジノの『あそび』の仲間に入れて貰うことにした。
 ジノは手を緩ますことをしないままライチの姿を認めると、にやりと笑みを浮かばせた。

「ああライチ、今この方の雇い主をお尋ねしてるんだけど、なかなかお話ししてくださらないんだ。彼がお話しし易いよう、手を貸して
くれないか?」

 演技がかった話しぶりから、ジノも『あそび』始めた事がライチには楽しかった。

「まぁ、それはそれは大変な事でございますことよ!ボクで良ければお手伝いいたしますですわ」

 ジノが口調とは裏腹に、ターゲットの胸倉を掴んだまま荒々しく壁際に押し当てた。ライチは新品の指サックをはめ直し、落ち着いた様子で彼女の背に回るとまた大きな円を描いた。ジノは首を少しだけ傾げると、彼女の耳元をヒュッっと何かが横切った。男は目を丸くしジノに抵抗するのも忘れ、固まった。
男の首筋に一筋の赤い血が流れる。鏃は男の首の皮一枚を斬り、後ろの壁に深々と突き刺さっている。

「矢を使うとは…なかなか好感が持てるやり方だな、ライチ。これならばこの方もきっとお話しくださるよ」
「ははーっ!お褒めたまわり嬉しいかぎり!」

 再び無限の闇とは対照的な黄金の縁が回転を始める。ジノは相変わらず左手で男の胸ぐらを掴んでおり、右手には愛槍が引っかけられている。突然男から左手を離したかと思うと、両手で柄を握り直し、刃に体重を預け男の頬の脇すれすれにそれを突き刺した。その動作もまた寸分の狂い無く、そして速かった。
 壁の一部分が崩れる音は男の耳元で唸り、赤い筋は二本になった。

「貴方の雇い主は、どちら様で?」

 ジノが右手を己の腰にあてがうと、唐突に肘の内側が風を切った。
 ジノの長い髪が風に揺れて、一本だけ床に落ちた。これがまたライチの仕業であるとジノは予め分かっていたように、後ろを振り向き声を掛ける。

「……おい」
「しっぱいしちゃった…ドンマイ!」

 実際失敗ではなかった。やや上方から放たれた矢はジノの髪一本と風を切り、彼女の肘と腰の隙間を通って、男の膝の内側の洋服部分のみを貫いたのだ。

 そして

 その業に、仕方なさそうに目を細めることで諦め、ジノはまたターゲットだった男に向き直った。

「話す気に、なったか?」

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