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みんなにやさしい自作小説コミュの徒然物語�◆疎萋鷭従蓮�

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「うああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?またきたぁっ!!」

「うるさい黙って走れ!!」

ゴォッと頭上を飛び越えていく不可視の『塊』が前方の地面を抉り(=えぐり)爆発

それが純粋に吸い込んだ空気に魔力を凝縮させただけの空気砲なのだと分かりさらに血の気が引く

―――聞きしに勝る化け物だな―――


後方にピタリと張り付くよう位置取りし『咆哮』を飛ばしてくるディープウルフに舌打ちをする

奴の身体能力なら容易に追い付きその爪牙(=そうが)を振るうことは難しくないだろうに、現在咆哮以上の苛烈な攻撃は控えている

まるで獲物をいたぶることを楽しんでいるような余裕さえ感じていた

「なんでアイツは僕達を追ってくるんだ!?おかしいだろ!!」

泣きそうな声のまま文句を言うソルトの言い分もわからなくはない

あの化け物とエンカウントする直前には戦場から離脱していたし、自分の縄張りを荒らされ怒っているのであれば悪徳商人達も条件は同じだ

何より連中の方が近くにいたはずなのだ

しかしディープウルフは真っ直ぐにこちらを追ってきている

考えられる理由はいくつかあるが、恐らく霊石の存在が一番有力だろう

現に奴の咆哮の照準はアストレイが二割にソルトが八割

魔具に収納されているはずの霊石から魔力の残滓(=ざんし)が漏れ出ている可能性は否定できない

さすがに人間には気づかないほど極微量なものだと思うが、相手はそれを嗅ぎ分ける鋭敏な『鼻』を持っている

それを察知出来ている限り奴はどこまでも追いかけてくるだろう

まさに悪夢だな

最悪の想定ではあるがそれを否定する材料がげんにないこともまた頭が痛くなる話だった

「どどどどうする?」

「『ど』が多いぞ落ち着け…こうなったらプランBだ」

足を止め振り返ったアストレイがアロンダイトの柄に手を伸ばす

予想外のリアクションにソルトが息を呑む

「プランBなんて聞いてない…まさか戦う気か!?」

「…まあ戦えば結果は見えてる相手だが、今は俺とお前がいる。だろ?」

不敵に笑うアストレイに思わずソルトが自分の耳を疑った

…え、今なんて…

「つ、つまり…僕を頼っているのか!?君が?この僕を!?」

「あんまり恥ずかしいこと聞き返すんじゃねぇ。期待してるぜ」

全く心のこもっていない言葉

本来であればその含みまで正しく理解し罵倒し合う展開に発展するのだが

皮肉にも今の切迫した状況が鵜呑みにさせる事となった

「ふ、ふふふ、ふはははははは!そうだ!!この僕と君が組めば化け物だろうが神だろうが勝ってみせるさ!」

同じく覚悟を決めたソルトが宝剣を片手に霊亀を構える

対峙したディープウルフが不遜にも抵抗する様子を見せる獲物に低く唸り声をあげる

分を弁えない獲物に荒げる事も久しく見ていなかった『自分に剣を向ける気概を持つ戦士』に特別昂る事もなく

存在感をさらに濃密にし視線が重力に影響を及ぼしていると錯覚するほど重苦しい空気の中

ディープウルフが大きく口を開いた

「ゴァアアアアアアアッ!!!」

同時に放たれる衝撃波

それまでのモノとは比較にならないほど凶悪で濃密、空間が歪むほど凝縮された魔力弾にソルトが反応する

「ぁぁぁああああああああっ!!」

霊亀が発光しバシバシと防護フィールドが展開する

さすがにこの規模の威力になるとオートシェルスキルでは一瞬で消し飛びそうなので正面から軌道を反らすように霊亀本体で受け流す

予想以上の衝撃が盾を支える腕にはしるが間一髪取り落とす前に凌ぎきることに成功した

たった一撃の攻防であったがそれまでにない破壊力にソルトの背を冷たい汗が流れる

外した魔力弾が遥か後方に着弾し巻き上がった土砂が視界を覆う

咳き込みながらもこの機会に攻勢にでるべく振り返ったその先を見て高揚していた空気が一気に冷めた

「だ、騙したなぁあああーーーっ!!?」

さっきまでいたはずのアストレイ不在となった空間にソルトの悲鳴とも怒号ともとれる『咆哮』が虚しく響いた…





「…ふむ。こんなところか」

ソルトを一人あの場に残し単身進んだ先にあった開けた場所で一区切りつける

良くも悪くも人を信じやすいあいつを足止め役に誘導するのは非常に容易いことだった

「あいつにはいい経験になったな。人を簡単に信じるべからず」

「騙しといて偉そうにぃっ!!!」

返事を期待しない呟きに音速のツッコミが入る

「おお、意外に早かったな」

「早かったな、じゃない!!よくも騙したな!?」

「人聞きが悪いな。勝手に戦うと勘違いしたのは貴様だろう?」

息も切れ切れに怒鳴り地団駄を踏みながらもそれ以上糾弾してこないところを見ると思ったより消耗したようだ

「そんなことよりよくここがわかったな」

「…ふん、あの化物に空高くぶっ飛ばされたときに見えたんだ。こんな広場の中央に立ってりゃ見逃すわけないだろ」

置いといて、とジェスチャーを示すと鼻息を荒くしながらもさらっと答えたソルトを内心よくその状況から五体満足にここまで辿り着けたものだと感心する

さすが伝説の盾と言ったところか

「それよりこれからどうするんだ?追ってきてないようだしこのまま真っ直ぐマグヌスに…」

「いや」

警戒を緩めようとするソルトを片手で静かに制す

たしかに姿が見えず気配もない

だが静寂に包まれた樹海の中アストレイの第六感は警鐘を鳴らし続けていた

この妖獣魔獣が跳梁跋扈(=ちょうりょうばっこ)する樹海で『静寂』だって?

そんな不自然すぎる状況こそが異常の証明ではないか

この一帯にさえ無数の魔獣が棲息していながら、知能が獣以下の魔物まで等しく見えざる『上位者』の存在に怯え息を殺して過ぎ去るのを待っている



―――ヤツは、いる―――



果たして

風下から樹々を押し退けゆっくりと出現した一体の巨狼

見上げるほどに大きく、レアの使役するルドラよりさらに巨大。20メートルはくだらないだろう

全身を覆う深緑。樹海の暗闇に溶け込むダークグリーンの毛並み

凶悪な顎から覗ける大剣のような一対の犬歯

大木のように太い尾をゆったりと振りながら

朱光を放つ魔眼の輝きに人間の本能が即時退避を勧告している

こうして正面から見つめ合うとソルトがいかに奮戦していたのかがわかる

普通の神経でこいつに抗おうという選択肢はまずでてこない

時間を稼げただけでもよくやった方だ

人が天災に打ち勝つことができないのと同じようにこいつと戦うとはつまりそういう次元の話なのだ

息のつまるような長い時間をにらみ合い

双剣アロンダイトがゆっくりと鞘から引き抜かれる

「こ、今度は本当に戦うつもりなのか!?」

「仕方ないだろ。お前も覚悟を決めろ」

「僕はとっくの前に出来ている!…そう言いながらまた僕を残して逃げるんじゃないだろうな!?」

まだ根に持ってるのか、しつこいな

半信半疑のまま盾を構えながら横に立つソルトを一瞥し半歩退いての半身の構えで合わせる

相対面積を減らすことで攻められる箇所を減らす防戦に秀でた基本の構えであり、どんな局面にも対応しやすい万能型

俺たちの戦術は単純で明白

俺が剣で、ソルトが盾だ

「疑り深いな、何の為にお前を囮にしたと思ってるんだ?」

「囮って言ったな!?今囮って言ったよな!?騙したってことじゃないか!?よくもよくもよくも」

「え〜い!いいかげん細かいことは後にしろ。あの化け物相手に正面からぶつかっていくなんて馬鹿なのか?傭兵だったら―――」

ディープウルフから視線をはずさずに不敵に微笑む

これから始まる死闘に身体中の血が騒ぎ早鐘のように脈打つ心臓を意思の力で強制的に鎮める

イメージするのは業火じゃない

常に思考をクリアに、鏡のように自分を映す波紋一つ浮かぶことのない水面

「―――自分の土俵で戦うもんだろ!!」

戦う準備はすでに整った

即席ではあるが稼いだ時間の分だけの戦略を携えアストレイはこの化け物と対峙している

現状使える策の全てを持って戦う

それでも実際のところ届くかどうかは微妙なラインだが、勝てなくとも負けるつもりもさらさらない

…あとから行くって言っちまったしな

自分が帰るべき場所が脳裏を過り(=よぎり)アロンダイトを握る手に力が再び蘇る

「ガァアアアアアアアアアアッ!!!!」

動きに合わせて視界を埋め尽くすほど極大の咆哮波が飛んでくる

すでに視覚で捉えられるほどになっている咆哮に今まで防ぎ続けていたソルトが一瞬たじろぐ

この段階に来てさらに威力が増しただって!?

すでに人を殺すのに十二分な威力を秘めていた攻撃がさらに強烈になり動揺してしまったのを誰が責められよう

だが、それを誰よりも真っ先に恥じ責めたのは他でもない

ソルト・S・ラハイア自身であった

反応が遅れ、前に立っていたアストレイを守るには一歩間に合わない

「アストレイっ!?」

自身の悲痛な叫びと衝撃が盾を打ち付けるのは同時であった

地面が激しく揺れ土砂が舞い全身を襲う衝撃に驚愕する

(…見た目より衝撃が軽い…?)

予想していたより遥かに小さな破壊力に呆然とアストレイが消し飛んだ空間を覗く

砂塵が濃く着弾点がどうなったか確認できない

もうもうと立ち込める粉塵の中を一縷(=いちる)の望みをかけ必死で目を凝らす

「アスト…」

次第に浮かび上がる二振りの白光

砂塵にまみれてなお二本の足で何事もなく立つ続ける傭兵の姿がそこにあった

まさか

あの極大の衝撃波を物理的に切り裂いたと言うのか!?

あまりの非常識さに言葉が続かない

ソルトは知らないことだがアストレイは過去に似た事をやってのけたことがある

ワイバーンのブレス攻撃を双剣に魔力を込め極限まで絞り込んだ剣気を放ち形無き攻撃を断ったのだ

仮に理屈がわかっても実際にできる傭兵がいったい何人いるだろうか

並外れた戦闘センスとズバ抜けた技術が揃って初めて出来る神業

キィィィィンと甲高く鳴り続ける二振りの魔剣の輝きから目が離せない

網膜に焼き付くような鮮烈な輝きに、初めてディープウルフに動揺するような低い唸り声がもれた

「さあ開幕だ!犬っころ!!」

イイ笑顔を崩すことなく全身へ魔力をみなぎらせる

二振りの魔剣が軌跡を残し、ディープウルフに躍りかかっていった…


コメント(1)

あとがき

なんとか月末に間に合いましたw
今月は私事がかさみ執筆に間を空ける形となりましたが
無事あげられよかったよかった
さて
案の定ディープウルフに襲われてるアストレイ達ですが
果たして伝承の化け物に届くのでしょうか!?
相変わらず残念な扱われ方のソルトも頑張って欲しいものです♪

それでは!ここまでお付き合いありがとうございました

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