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みんなにやさしい自作小説コミュの徒然物語�� 〜第九章〜

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「…それでどうして七光りがここにいるんだ?」

「誰が七光りだ!僕はソルト・S・ラハイアだ」



依頼を受注した翌日、マグヌス正門付近に集まった傭兵達の中に見知った人物を発見した

商家の跡取りで金回りはいいのだから、こんな怪しげな依頼をわざわざ受ける必要性を感じないのだが…

ぐるりと見回すと、その他総勢30人くらいの傭兵が依頼主の到着を待っていた

この短時間でよくこれだけ集められたものだ…

つくづく受け付け嬢の優秀さに舌を巻く

いつの間にか近くまで移動してきたソルトが、さも当然のように俺達と並び立っていることに気づき自然と顔をしかめる

お前はいつから俺達のパーティーに加わったことになってるんだ?

こちらの視線に気づいたソルトが「ふふん♪」と得意気に胸を張る

「特別に今回はこの僕が貴様のパーティーに加わってやることにしたぞ!感謝するんだな!」

「いらん。不要だあっち行け」

「即答だと!?」

「当たり前だ。お前に力を借りる理由がどこにある、さっさと自分のパーティーに戻れ」

畳み掛けるように言い、手で追い払うジェスチャー

かなり冷たくあしらったつもりであったが、それでもソルトが移動する様子はなかった

「くぅっ、仕方ないじゃないか!?僕のパーティーは遠方まで連れ出したあと、個人的な理由で僕だけ先に帰ってきたらそれ以降連絡がとれなくなったのだから!ギルドに確認させたらパーティー解約の届けまで出されているし!!」

逆ギレ気味に地団駄踏んでいる奴は一旦置いといて、状況を整理しておこう

個人的な理由…

ソルトはあえて明言しなかったが

昨日受け付け嬢に言われたことを思い返すとどう考えても自分に原因がある

「この僕がメンバーに加わるということは、この伝説の武具が戦力となると言うことだぞ!損はないだろう!!」

涙目になりつつ、それでも下手にでないあたりはさすがと誉めてやるべきか

…頼んでないとはいえ、俺のために動いてくれたこいつに多少の恩を感じないわけではない

ここは誠実に答えてやることにした

「悪い、本当にいらないからあっちに行ってくれ」

「ガラにもなく丁寧に断られると余計傷つくぞ!?そこまでしてパーティーを組まない理由があるというのか!?」

「そうだな。たしかにお前の装備は一級品だ、強敵が相手の場合正直かなり心強いだろう」

「だったら!!」

「だがな、それを差し引いてもお前の相手をするのは『面倒くさい』んだよ」

「・・・は?」

思わず目が点になったまま聞き返してくる

あれ?ちゃんと伝わらなかったか?

「だから、お前がいたらシリアスな空気もギャグになっちまうんだ。だからお前とは組めない」

「伝説の武具だぞ!?」

「喜べ、お前の面倒くささはそれ以上だ」

「この僕が伝説級の厄介者だと言いたいのか!!」

激昂したソルトが宝剣を振り回し始める

あぶねぇな

周囲の迷惑も省みず怒りを発散させるソルトに冷水のような一言が浴びせられる

「…別に貴方の助けはいらない。自分の都合ばかり主張し押し付けないで」

一瞬シンとした空気に包まれ、ソルトがその時初めて声の主アストレアの存在に気づく

「…君は?」

突然少女に睨まれ、振り上げた宝剣そのまま硬直したソルト

妙なポーズで固まったまま聞き返してくるのを冷たい眼差しが容赦なく射抜く

「…アストレア、レイのパートナー」

「パートナーだって!?」

驚愕のあまり後退りパクパクと口を無意味に開閉

こいつがここまで驚くには理由がある

これまで俺は他のパーティーに何度か誘われたことはあっても、一度も首を縦に振ったことがなかったからだ

信用できない人間とパーティーを組むなんて論外、背中を任せられない奴等と徒党を組んでも瓦解するのは目に見えている

考え方を合わせる必要がでてくるぐらいなら俺はむしろ仲間なんていらない

一人で好きに戦ってる方がずっと生存率も高いし何より気楽だった

震える指先がやっとの思いで当事者たるアストレイを捉える

「貴様に相棒だと!?」

わなわな震えるソルトも、そう言えば俺に声をかけてきた奴等の一人だったな

他の奴等に比べて人一倍熱心に勧誘されたのを覚えている

「…この僕が誘った時は断った癖に…僕は認めないぞ!!貴様の相棒を名乗るのなら、当然この僕より強いのだろうな!?」

厳しい視線をアストレアに向けるソルト

おいおい

なんでお前に許可をとらないといけないんだ

こいつそんなに俺とパーティー組みたかったのか?

存外高く買われていたようで驚く

アストレアも実力のことを指摘され弱冠暗い表情になっている

あまり接点のない人間と話すのは、慣れないレアにとってそれだけでストレスだろうに

そのうえ気にしていたらしい実力差を言われ気落ちした様子だ

…まだ一度も依頼をこなしたことがない新米でそんなことを考えるのは早すぎると思うが…

最初から強い奴なんかいないし、これから伸びていく奴が気にする話でもない

しかたなく睨み合う両者の間に割って入り助け船を出してやることにした

「こいつは今回が初めての依頼だ。新人相手に息巻くのはボンボンのすることじゃないだろうが」

「誰がボンボンだ!僕はソルト・S・ラハイアだ!!」

「それにな、こいつを相棒に選んだのは俺の意思だ。他の誰にも文句を言われる筋合いはないし、言わせるつもりもない」

ギン、と視線の圧力を強めソルトを黙らせると顔を伏せてしまったアストレアの頭にぽんと手を置く

「足りない部分はお互いフォローしあえばいいだけだ」

頭に置かれた手の感触に見上げてくるアストレアと視線を合わせる

「後、どうも勘違いしてるみたいだが魔力だけならすでに俺より圧倒的に上だぞ?」

「え?」

「なっ!?」

次いで補足しておいた事実を聞いて二人が目を見開いて驚く

いや、レアまでそんなに驚くなよ?

アストレイは主に身体能力を強化するのに魔力を使用している

あと使うとしたら魔剣のアビリティーぐらいなものでさほど高くない魔力でもやりくりできているのだ

もともと潜在魔力もさほど高くはなかったが、魔力コントロールに才があったため負担や無駄を極限まで減らし少ないキャパシティーの中で今の常人離れした領域に到達したのだ

それに対してアストレアは自分の魔力を編みあげ現世にカードとして顕現させ使用している

幾つものプロセスを経て行使される魔力は自然と総量が掛かるものとなっており

その効果は増幅され絶大となる反面、消耗もまた膨大なものとなっているのだ

だというのにこの少女はそれを一切感じさせない

いや実際に感じていないのだ

魔力コントロールはある程度よくなってきたが、まだまだ未熟で1の魔力で足りるものを3や5引き出し使っている

普通の人間であれば即魔力枯渇を引き起こしかねない量を展開しながら

当人は平然と「出来た!出来た!」と無邪気に喜んだりしているのだ

魔力操作に自信があるアストレイとしてはその光景は軽くホラーである

どれだけ莫大な魔力を秘めているのか考えるだけで恐ろしいからだ

例えるならダムの壁に小さな穴をあけ、流れ出てくる水量を見て総量を予想するような酷く不毛で曖昧な推測

「そうなの?」

「嘘は言わん」

心底意外そうに見上げるレアに頷いて答える

アストレイがこっち方面に対して徹底した現実主義であることを知っているアストレアはその言葉に少しだけ明るく微笑む

うまくフォロー出来たようでなにより

「そんな…馬鹿な…」

一方こちらは酷く打ちのめされた顔をしていた

まさかアストレイの方から擁護するような言葉が出るとは思わなかったのだろう
先程とは打って変わってかなり消沈した様子

周囲の空気をどんよりさせながらブツブツ呟く後ろ姿は正直かなり鬱陶しい

はぁ、と溜め息をつき

「…今回だけだぞ」

と仕方なくパーティー参加を認めると、劇的に機嫌を直すあたり本当に扱いやすくもありやはり面倒くさい

また一悶着あっては叶わないので、憂いを絶つ意味でも人馴れしていないアストレアの為にも両者の間を取り持つことにする

「それじゃあ改めて挨拶だ」

「……………………アストレア」

「…終わりか?」

「終わり」

「…そうか…」

長い沈黙の後、一言で完結してしまったシンプルかつ足りてない自己紹介を流すともう一方にもするよう視線を送る

こちらはこちらで不敵に笑い

「僕はソルト・S・ラハイア!この都市でも有数の名実共に最強の騎士だ!この僕と同じパーティーにいられることを感謝したまえ!」

と無駄に偉そうにしている

俺には最早絡む気力はない

ポシェットから無言で小さく折り畳んであった依頼書を取り出し内容を確認する

深森の樹海において護衛依頼

最初に俺がこの依頼を聞いたとき断った理由が二つある

一つは場所だ

マグヌスから馬で半日程と近い距離に広大な面積を誇る森がある

城塞都市と名高いマグヌスの近辺に広がっていながら今だ全容を掴めていない魔の森だ

多くの狂暴な魔獣が棲息し、森から縄張りを追われた奴等がマグヌス界隈に降りてきては起こす被害も少なくなく

そのためギルドは定期的に森に入っては魔獣を一定数駆逐するなどといった対策をとったりもしている

それでも魔獣の増える速度の方が圧倒的に早く、焼け石に水状態ではあるが

そんな危険な場所にわざわざ踏み込む物好きが普通いるわけがない

もしいるとしたら、よほど金に困った奴か

もしくはギルドの看板娘に下心を抱いて近付こうと企む浅はかな大馬鹿野郎共だ
…念のために確認しておくが俺は前者である

話はそれたが、そんな狂暴な魔獣に加えこの森には絶対に遭いたくない存在がいる

『神狼=森狼』(しんろう)だ

樹海に生息する数多の魔獣の頂点に君臨する主のような存在

この深森の樹海という名前もこいつから取って付けられたとも言われているほどだ

…事実かどうかは知らんがな

とにかくそんな名前に「神」を持つような存在とは是非もなく遭遇したくない

この通称『ディープウルフ』は幸い樹海の奥地を縄張りとしているのでよほどのことがない限り遭遇することがないのがせめてもの救いか

結局そういうことも踏まえ今回は依頼を渋々受諾した訳だが…

と、気づけば周囲の傭兵が一点に注目を向けている

やっとご到着か…

そして

俺が断ったもう一つにして、最大の理由が全員を見据えて出発を宣言するのだった…

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