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みんなにやさしい自作小説コミュの万代君と和尚

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万代君と和尚
2010年10月11日 15:33


大都市東京には空を走る自動車の道が出来て、時速200キロで走る新幹線が開業し、まもなくオリンピックが開催されるという話でみんなが浮かれた時代。
とある田舎の村のはずれの荒れ寺に年老いた坊さんがいました。
彼は自分のことを大僧正と名乗っていたが、その身なりはとても貧しく、こじき坊主といわれても致し方ないありさまでした
でも村人は、この和尚のことを大僧正の大をとって、「だいさん」と呼んで親しんでいました
ある日、大さんは境内で遊ぶ子供を「来たか、鶴たち」といって目をほそめてまるで我が子のように眺めていました。
だいさんのつぶやいた言葉に万代義人君が「だいさん、あのこ鶴じゃないよ。村上平一郎君だよ」と言って指を指した。
すると和尚は動じず、「いいや、あの子は鶴じゃ」といいました。
万代君は「なぜですか?」と聞き返しました。すると和尚は立ち上がり、納屋から大きな籠を持ってくると平一郎君にすっぽりとかぶせました。
平一郎君はいきなり薄暗くなったので何がなんだかわかりません。辺りをグルグルと見回すと、横には和子ちゃんもいっしょにかがんで、びっくりしていました。
和尚は笑顔でかごに近づくと、「か〜ごめかごめ か〜ごのな〜かのと〜り〜は い〜つ〜い〜つ〜で〜や〜る〜
よ〜あ〜け〜の〜ば〜んに〜 つ〜ると か〜めが す〜べった〜 うしろのしょうめんだ〜れ!」
と謳って、中の二人を茶化しています
でも、子供達はいっしょにケラケラ笑っておりました。
「だからいったじゃろう。鶴だと」
その話を聞いて万代君は納得しましたが
「それでは、だいさん、亀はどこに居られるのでしょう」
こう和尚に問いました。
すると和尚はいいました
「まだお前達に話すのは難しいが、まあいいじゃろう。亀とはな、お前達の体のことじゃ。
そしてつるとは、お前達の心そのものじゃ。鶴の自由な心を硬い甲羅を持つ亀の体で覆ったものが人なのじゃ。
知られてはいないが、この歌は戦国時代に京都の太秦に住んでいた宮司が三河の将軍に伝えたものじゃ。
歌のいわれはこうじゃ。この歌は空から聞こえてきたものでな、作者はおらん。いわば、『無』が作者じゃ。
かごめかごめ、これは、異国の神でもあり、またこの世界のことでもあるのじゃ。そしてかごの中の鳥、これすなわちお前達のことじゃ。その鳥はいつ出てくる?という、この世界を観察しているものの問いかけじゃよ。人はこの宇宙のゆりかごから成長し、いずれ出てくる定め。
だが人はそれに答えられなかった。なぜなら、夜明けの晩、これすなわち機が熟して旅立つその日に、鶴と亀が滑ったからじゃ。すなわち人間が、背信行為をしたため、彼らは機の熟すその日の晩に絶滅してしまう。何でそういうことになったのかといえば、人が後ろを正面に向いてしまったがために、自己を愛する心から利他愛に目覚めない嘆きに他ならない。信じるべき神ではなく、人の作り出した国家や想念の生み出した国家権益を妄信した為に人は今も利益ばかり追求しこの宇宙から永遠にでられないことを神様がなげいた詩なのじゃ」
和尚はそういうと、赤く燃えた夕焼けをながめておった。
「そうだったのですか」万代君は難しくて和尚の言葉の意味がわからなかったけど、その言葉が脳裏から離れませんでした
万代君はその日、うちに帰ると、和尚の言った話しを思い出していました。
そしてぼそっと食卓で「人は滅ぶのかな」といいました。
お父さんは心配して「どうした?義人、そんなことはないぞ」
といって、少しでも彼の不安を取り除いてあげようとしました。お母さんは気分を変えようと、いつもはつけないテレビをつけて娯楽番組にチャンネルを合わせました。義人くんは興味本位にテレビを見ながら食事をしていると、レポーターがポルトガルのファティマの予言の話の真相を確かめるために海外に取材に行くという話をしています。
その中で、リポーターが「第一の予言は第一次世界大戦の終結で、第二の予言は第二次世界大戦の勃発にかかわる内容でその細部まであまりにも当てはまることが多いものでした。第三の予言はいまだに発表されていないのです」
といい、「これからローマ法王庁に取材を申し込みにいきます」といっていました。
それを聞いた義人くんは「僕知ってるよ。だいさんの予言でしょ」といいました。
お父さんもお母さんも口をぽかんと開けて「お前何言ってるの。それじゃ、どうなるのか言ってごらん」と言ったので、義人君はだいさんから聞いた話をしました。するとお父さんは「あの和尚が言ったのか」と聞きました。
そもそもこの歌は予言ではない。ただの遊びの歌だ。それなのに子供達を不安がらせて。
翌日万代君の御両親は、村はずれの荒れ寺に行きましたが、そこにはもう、だいさんの姿はありませんでした。
あの坊さんはいったい誰だったのでしょう。
万代くんは、それからも、あのカゴメの歌を聞く度、坊さんの言葉を思い出すようになりました。

おしまい

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