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みんなにやさしい自作小説コミュのダイエットカウンセラーの悲劇

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ダイエットカウンセラーの悲劇







「横川さん、お願いだから返してください」

「知らない。あなたいい加減にしないと警察呼びますよ」

「知らないって、そんなに呼びたいのなら警察呼んでください。お願いします」



「あなたが不利になるだけでしょ。人の家の前でぎゃあぎゃあ騒いで。どうせ警察来ったて自分の正しさが証明できないくせに」

「証明することはできます」

「ねえ誰よ、あの女」

「知らないよ。ずっとああやって付きまとってるだから。こっちがいい迷惑だ」

「警察呼ぼう」

「いいよ、ほっときな」

「今呼ぶって言ったじゃない・・・」

「いい迷惑だって・・・。ひどい。とにかく返してください」

「だから何を返せって言うの」

「そんなこと言えるわけ無いでしょう。警察が来たら言う。でもあなたは知ってる」

「もううるさいからあたし警察呼んだからね」

「お、おいちょっとまてよジュン!」

「呼ぶの?呼ばないの?どっちなの。あなた男でしょ、はっきりしてよ。それともあなた、あの女と何かあるの」

「だから何もありゃしないよ」

「じゃあいいじゃない。もういい加減静かにして欲しいの。
引っ越す先々でずっと付きまとうなんてあなたが優しすぎるからよ。
なぜはっきり断らないの?それとも私に言えないわけでもあるの?」

「まいったな。何もないよ。僕を信じて」

「だったらあたしの前で堂々としていて。あの女は警察に任せるべきよ」

横川は家の外で泣きながら叫び続ける女を神妙な顔で見つめて一言いった。

(やっぱり醜いな)

やがて警察が来ると女性はパトカーに連行されていった。

女の名は佐々木直子といった。一時的に警察に身柄を拘束されたものの、

この日はこれといって悪事を行ったわけでもなくストーカー行為を注意され、迎えに来た年老いた母親とともに帰宅した。

母は自分の娘にその時違和感を感じていた。

それからしばらくして直子の母親が警察を訪れた。

「あの、この間はお世話になりました私は佐々木直子の母親の光枝と申します」

「はい、ご苦労様です。なにか?」

「実はご相談がありまして、先日お世話になりました刑事さんいらっしゃいますか?」

「はあ、あいにく担当の刑事はただいま外出しておりまして。どういったご用件でしょうか」

「実は我が娘の様子が変でして・・・」

「変といいますと?」

「あの子は一体誰なんでしょうか」

「はあ?」

「一度横川という男性とお話させていただけませんか」

「彼が何か?」

「ええ、会ってみないと何とも言えないのですが」

「彼は被害者なのでたとえ加害者の家族でもそれは無理です」

そこで光枝は警察で自分の思いを話した。しかし警官は一笑して相手にしなかった 。

「まあ、お母さん。あなたの言うことが事実だとしても、そんなことはまずありえないし、
もしそんなことがまかりとるのなら、我々警察は今後犯人を捕まえることができなくなりますよ。
だって誰も信じられなくなるじゃないですか」

「でも、あの子は私の子じゃありません」

「でも、特徴はあるんでしょ?整形したって、アザやほくろまで移植する人はいませんよ」

警察の言うことは最もだった。しかしあの子は間違いなく違う人格者だと光枝は思った。

光枝は家に帰るとソファーに横たわる直子を見つめて言った 。

「あなたは、本当は誰なの?」

直子はしばらく空を見ていたが、ゆっくり光枝の目を見ると、こう言った。

「どうせ誰も信じない」

「そんなことない。こうしてあなたの異常に私は気がついています」

「警察で何か聞いてきたんでしょ。きっと世間は警察と同じ目で私を見ます。相手にしないほうがいい」

光枝は優しく直子の肩に手をやると、

「私を信じて。自分の娘かどうかくらいわかります」

といった。

直子はしばらく考えたが、ダメ元で諦めがついたのか、この光枝を信じてみようと思い、自分の素性を話すことにした。

「私はあなたの思っ通り直子さんじゃありません。」

「やっぱり。でもその体は直子そのもの」

「このことは内密にお願いします。実は」

「それは数ヶ月前の話だった。私はあそこの家にいた横川武というもので、ある特殊能力が有り、
それを利用して個人に成り代わってダイエットを達成させるという高度な仕事をしておりました」

「そんなことができるのね」

「出来るんです。そんなある日、いきなり直子さんが押しかけてきて。通常危険が伴うのでマッチングテストを十分行ってからこの技を実行し、
数ヶ月間の入院をしていただき、直子さんの体に私が乗り移ってダイエット達成後に元に戻すというものです。
ところが施術中に直子さんが当医院を逃げ出しまして。私が気がついたときには戸籍も一切の身分証明も何もかも全部持ち出して逃げてしまったんです」

「まさか直子があなたの体を盗んだと」

「そうなります。当然私は追いかけ、探しました。彼女は完全に私に成り代わってあの純子という女と生活しています。

彼女は最初から私の体が目的だったようです。これは計画的に行われた犯行です。

私に見つかると彼女は逃げ、その都度追いかけては何度も体を返すよう促しましたが応じてもらえません」

「私は・・・いくら言われてもまだ信じることができない。そんな簡単に人が移り変われるんでしょうか?
もしかしたらあなたは直子で、ただ他人のふりをしているだけじゃないの?あなたが直子ではない証明ができますか?」

「私はこの家のこともわからないし、この体を知ってる人にあっても誰もわかりません。ただし、
自分の家に行けばすべての記憶のあることを証明してみせましょう」

光枝はうなづいた。

直子に宿った横川は光枝を自宅に連れて行くことにした。
いつの間にか表に車が止めてあった。高級外車だ。光枝は驚いた。直子は免許を持っていないからだ。

「あなた、運転できるの?」

「当然です。さあ、乗ってください」

「でも免許が。あの子は持ってないのよ」

「今はそんなことを言ってられない。これは私の車です。責任は私が持ちます」

そういうと、直子に宿った横川は光枝をのせて高級マンションの一角に入っていった。

「銀行のキャッシュは暗証番号知らないし合鍵あるから全部鍵を取り替えました」

横川は運転しながら彼女の部屋にあった服に男性物の服がいくつかあったことが気になっていた。

「お母さんにちょっとお聞きしたいことがあるんですが、
直子さんの引き出し勝手に見せてもらったんですが、いくつか男性物のスーツがしまわれていました。
あの人は男装することがあったんですか?」

「ええ、あの子はもともと全然女らしいところがなくて。
子供の頃から女の子なんだから少しは女性らしくなさいと言い聞かしていました」

「そうですか。もしかしたら直子さんは性同一性障害にかかっていらしたんじゃないのですか?」

「まさか。私には一切言わなかったから。よく存じません」

「そうですか」

横川は自分の素性や今までの仕事内容の一切を核心部分を除いてすべて話した。


「あの日直子さんから電話がありまして」

横川は着信録音を聞かせた 。


「はい、こちら健康身代わり社東京本部です。どうなされました?」

「え、あのチラシ見たんですが、本当なの?」

「はい、本当ですよ。ただし、出来る人とできない人がいますので。

また、先生は私一人しかいないのでご理解の上ご検討いただければ」

「今すぐお話したいのですが」

「ちょっとお待ちください、一応予約てっていただかないと」

「私の名前は佐々木直子といいます。今から予約取りたいの」

「とにかくものすごく急いでいるようでした。電話切って30分も経たないうちに彼女はやってきて、
彼女はその日に施術してと催促されました。
もちろん私は拒んだんですが、入れ替わるには準備があります。
当然マッチングテストが成功しなければこれはできません。もし失敗でもして魂が元の体に帰らなかったら私は
殺人を犯すことになりますからね。彼女とのマッチングは3回で証明できたので翌日早朝、いれ替わりました。しかしその時、この体がさほど太っていないことに気がつき、
彼女に目標値を聞くと10キロというじゃないですか。
それは落としすぎるし、命に関わるので当初からお話していた3キロということでご理解いただいたのですが、とにかく胸をえらく気にしていました」

「ええ、それは存じています。よく晒し巻いて胸を隠して出かけてゆくので不審には思っていたのですが。
でも本当にそんなことができるのですか?私にはまだ信じられません」

そこで横川は簡単なマッチングを行った上で実験を行なうことにした。

実際光枝と体を取り替えて見せて自分の生業を証明したのだ。

「本当だったんですね。それがあなたの能力なのね。本当に横川さんという方なんですね」

「やっとご理解いただけたでしょうか」

「人の心がこんなにいとも簡単に移せるなんて思いもよらなかった」

「おそらく直子さんの心は男性であり、
私が身代わりダイエットという特殊能力を使ったことに関心を持ち、
じぶんの長年誰にも理解されなかった欲望を達成するために手段を選ばず利用したんでしょう」

「うちの娘が。本当に申し訳ありません。実はあの子の前に子供がいまして、その子が男の子だったんです。
でも、生後まもなく病死してしまって、主人も大変悲しみまして。でも次生まれてきたのが直子で、主人の落胆は大きいものでした。
あの子を産んですぐ私も大病患いまして、あの子が最後の子となり、主人はあの子に男の子の格好をさせて連れ歩いていました」

光枝は涙を抑えながら陳謝した。

「私がいけなかったのです。あんな育て方をしてしまって」

「お母さんが悪いわけじゃありません。どうか顔を上げください」

横川もやっと信じてもらえる人間に出会えて安堵していた。

「ところで、お母さんにお願いがあります。私も打ち明けた以上、協力してほしい。直子さんを説得して頂けませんか?」

「ええ、私に出来ることなら何なりと」


その頃横川に成り代わった佐々木直子は純子とともにタクシーに乗ると街を出た。

「バレた以上、次にどんな手段であの女がやってくるかわからないからここを出よう」

「もうこれ以上逃げ回るのはやめて。あなたがなぜ逃げなきゃならない訳」

「だってお前が静かに暮らしたいというからだろ。私がどれだけ純子のこと思ってるか」

「もしあなたが私のこと愛してくれているのならもう逃亡するのはやめて!」

「なぜ!」

「当たり前でしょ。こうして職もなく、逃げ回ってどうする気なの?」

「それは。あれが追ってこなければ僕だって」

「あなた、前から思ってたけど、本当はあの女と何かあるんじゃないの」

「なんにもないよ」

「だったら。逃げる理由を、あなたが私に隠してる訳を話して」

「隠してるって。警察が連行していっただろ。僕は何も隠しちゃいないよ」

「だったらここで車停めて」

「なんだって?」

「早く止めて!」

タクシーの運転手は慌ててブレーキを踏んだ。

「どこに行く気」

「私があの女と話をしてくる」

「おい、それだけはやめてくれ」

「とにかく話さして!じゃないと大声出すわよ」

「わかったから。ちょっと落ち着けよ」

横川に成り代わった佐々木直子は慌ててた。純子は車を降りると矢継ぎ早に

「さあ、連絡先教えて」

と怒鳴った。

横川に成り代わった佐々木直子は万事休すとばかりに手帳にアドレスを走り書きするとちぎって渡した。

純子が車から降りて出るのと同時に、横川の体を奪った佐々木直子の住む家に向かう途中の光枝と鉢合わせした。

横川に成り代わった佐々木直子は硬直した。

光枝は横川という男をみるなり次の瞬間全てを悟った 。

(あの人の目つき。やはり本当だった・・・)

その横川の変化を純子も見逃さなかった。

そこで順子は光枝に声をかけた。
「あの、もしかしてあなたは?」

三人はタクシーに乗ると、その場を離れた。

車の中で光枝は語った。

「あの、横川さんでしたわね」

男は目を逸らしたまま返事できなかった。

しかしその後も光枝は黙って横川を見つめていた 。
その目は自分の身内を見る目だった 。

そして長い沈黙のあと


横川に成り代わった佐々木直子は顔を背けた。

光枝は横にいた純子に声をかけた

「あなたは?」

「同棲中の吉川純子といいます」

それを聞いて光枝は驚き、横川を睨んでこういった。

「あの人の言うとおりだった」

横川に成り代わった佐々木直子は驚いて母、光枝を見た 。



「あなた、直子よね。ええ、そう呼んだほうがいいと思って。直子」

「直子って?あの女の名前じゃない!」

「嘘偽りで幸せ掴めると思ってるの?」

それを聞いていたタクシーの運転手はルームミラーを見ながら驚きを隠せなかった。
どう見ても青年実業家といった感じにしか見えなかったからだ。

「純子、ごめん」

「私は女にすかれたわけ?」

「そんなつもりじゃ。僕は男だ」

その時、光枝は運転手に

「運転手さん、車の行き先をダイエットカウンセラーの横川の家に向けてください」

といった。

「は、はい」

運転手は我に返り頷くと、交差点でハンドルを切り直した。

「ここじゃなんだから、あの家でじっくりと話をしましょう。あなたも来てください」
光枝は純子にも来るように促した。


車は程なくダイエットカウンセラーの横川の家にたどり着くと、チャイムを押した。しばらくして中から佐々木直子が出てくると、純子は生唾を飲み込んだ。

「さあどうぞ、中に入ってください」
玄関を開けた横川直子は睨みつけて
「よくも母を使ったわね」 と吐き捨てた。

「あなたはお母様の言うことは聞くのね。とにかく入りなさい」

三人は建物の中に入っていった。



三人は居間に通されると、ソファに座った。が、横川に成り代わった佐々木直子は落ち着かなかった。

「どうしたの。さ、理由を言って。純子さんと一緒になりたかったの?」

直子に宿った横川うつむいたまま何も語ろうとしなかった。

「言えないなら私が言おうか」

「わかった、いいます。あなた方の言ってることを認めます。
でも、このふたりには関係ないので私と貴方だけにして欲しい」

直子に宿った横川は光枝に目で合図を送ると、ふたりに下がるようにいい、部屋に鍵を掛けて

「さあ、これであなたの秘密は守られる。本当のことを言って頂戴」 と言った。

ようやく横川に成り代わった佐々木直子は重い口を開いた。

「あなたの知ってるとおりよ」

「だったら何故。今はカウンセリングさえ受ければ性別はチョイスできるはずでしょう。他人に成り代わるなんてとんでもない」

「そのとんでもない行為で荒稼ぎしてるあなたは悪くないの?」

「それは論点のすり替え。私のことは私が全責任をもってやってる。でもあなたは私の体を盗んでいった」

「だって私はもうカウンセリングうけられないもの。あなた気づいてないの?」

「?」

「あなたのお腹の中には」

「まさか」

「そうよ。だから私はあなたの体を奪った。あなた男だから気がつかないけど4ヶ月過ぎてるの」

「だからあの時醜いって言ったのか」

「なんだ、聞こえてたの。ついでに産みの苦しみも味わいなさいよ」

「誰の子供なんだ」

「知らないわよ」

「知らないって、自分の体だろ」

「女って生き物は本当に不幸ね」

「まさか」

「まさかまさか。あなたたち男はそんなことしか言えない無責任な連中ばかり。やってしまえばおしまいだもんね」

「だからといってこんなことは許されないぞ。ちゃんと自分で産んで、その後カウンセリング受けなさい」

「冗談じゃない。あなたにはわからないでしょ。産みの苦しみなんて。ちょうどいいじゃない。他人の苦痛を身側る商売しているんだから。滅多に体験できなくてよ」

それを聞いて直子に宿った横川は、横川に成り代わった佐々木直子の方を鷲掴みに殴りかかろうとしたが払いのけられた。

「ほら、そうやって暴力振るう。でも今は逆ね。自分の非力を味わいなさい。私はこの体気に入ったの。もうしばらく借りてるわ」

「おい、冗談じゃない。早く返しなさい」

「私は誰も知らない新天地で自由に生きたいの。この体はもらっていくわ。」


そう言うと横川に成り代わった佐々木直子は建物の窓を蹴り破って外に飛び出していった。

直子に宿った横川は慌てて部屋の鍵を開け、外に飛び出した。

その時すでにソファーに座っていた二人も壊された窓ガラスの飛び散る音で既に外に飛び出し、横川に成り代わった佐々木直子の後を追っていた。

横川に成り代わった佐々木直子は建物の裏手に止めてあった横川の車に目をつけるとドアを開けなかに潜んだ。目の前を純子と光枝が走り抜けてゆく。

程よくやり過ごして車から降り用としたとき直子に宿った横川に見つかり、慌てた横川に成り代わった佐々木直子は車のキーを回すと、
アクセルを全開にしてギアをDに無理やりぶち込み、不用意にアクセルを全開で踏みこんだ。
横川に成り代わった佐々木直子は運転の経験がない。
その瞬間、車は大音響とともに地面から黒煙を上げると、そのままコントロールを失い電柱に激突した。

直子に宿った横川は慌てて車の中を覗くと、横川に成り代わった佐々木直子は既に虫の息だった。

「嗚呼、なんて事を」


光枝と純子は警察に連絡したが、寄り付こうとしなかった。

数時間後、三人は死体安置所にいた。

魂を自由に扱える直子に宿った横川は交信を図った。
横川の手を取りそのまま瞑想に耽った。

直子は菜の花畑で横たわっていた。横川が彼女のそばに行くと目から大粒の涙を流して許しを乞うた。

横川は彼女を咎めなかったが、彼女は事故は偶然でこんな大変なことになって申し訳ないと、ひたすら謝り続けた



翌朝、横川の自宅はもぬけの殻になっていた。光枝はそのもぬけの殻の家の机の上に置かれた手紙を読んだ

「拝啓、光枝様。私こと横川武はしばらく姿を消します。が、直子さんの体はいつか必ずお返しします。それまでしばしお待ちください。
僕は自分の体を探す旅に出ます」



それから数年後、光枝の家に一枚の絵葉書が届いた。そこには真っ黒に日焼けした元気な男の子の写真と、すっかり逞しく生きてる他人の目つきの自分の娘の姿があった。 以前よりも明るく。

光枝は本当は我が子にこう、育って欲しいと思っていた。
父の未練を早々に断ち切ることが出来たなら。とも思った。
だが、
光枝はこうも感じた。人は外観では無く、その人間の内面で性格も環境も変わってしまうということを。
結局は、あの子自身の人間性に起因したものだったと。

おしまい



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