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みんなにやさしい自作小説コミュの雨は神様の涙なんかじゃない、小便だ。

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 ゆで卵ができるまで暇だったのでコンビニに行った。立ち読みをしようと思ったけど白い服を着たサラリーマンたちが雑誌コーナーの前でスクラムを組んで踊っていたから無理だった。彼らの顔がシイタケみたいでむかついたので殴ってやったけど気にもとめない。しかもよく見たらシイタケじゃなくてどんぐりだ。
 しかたないので寝転がって靴下を食べていたらバイトの女学生が文句を言ってきた。「お客様汚いです」だと。バイトの顔もどんぐりだった。汚いのはどっちだ。
 腹が立ったから別の店へ行くことにした。コンビニなんていっぱいあるんだ。帰りがけにドアに立てかかっていたモップを盗んでやった。ざまあみろ。
 モップを振り回しながら歩いてたら小学生が話しかけてきた。「おじさん何をしているの?」小学生の甲高い声が頭に響いて吐き気がした。にらみつけても退こうとしないから鼻くそを投げつけたら爆発した。いい気味だ。
 空が象牙色になっていた。英語で言うとアイボリーだ。ふと生まれたときのことを思い出した。母さんがのどに詰まらせた鰯の骨が大きくなったのが私だと聞いた。母さんは私を生むとき苦労したそうだ。だから我が家にはいまだに重力がない。
 駅に着いた。飛行機はまだだった。時刻表を見たが浮浪者の血で読めなくなっている。街のほうを見ると街はなかった。それはアーモンドだった。巨大なアーモンドが並んでいる。はじめからそうだったんだろう。
 名前を呼ばれた気がして振り返る。二足歩行のモンシロチョウが手を振っている。急に涙が出てきた。最近涙腺がゆるいわ、と母さんが言っていた。涙は空気感染するのか。だとしても、この地点に意味はない。忘れ物は何一つない。私は靴を脱いでモンシロチョウに渡した。
 行こう。旅立とう。希望なんてものは理解しえない。走り出したモンシロチョウの鱗粉が顔にかかってくしゃみが出る。あ、最後のくしゃみ。歯に何か挟まっている。取り出すと魚の骨だった。希望ってこういうことかなと思った。
 氷河期が始まった。

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