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みんなにやさしい自作小説コミュの(二次創作)子供刑事・中原君 〜ココアの巡る季節〜

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「う〜ん、やっぱり冬といえば、ココア! 永森のココアだよねぇ。冷たい体がポカポカになるよ。」

 そう言って、曇った窓に息を吐いた。外は昨日の大雪で覆われた、一面銀世界だった。今日は夜明け前から雪は降らずに曇ってばかりのぐずついた天気が続いていた。

「ね、そう思うよねぇ、安田君」

「・・・・・・」

「あ、そうそう。このへんにさ、美味しい団子が売ってる店があるらしいんだけど知らない? おしるこがとっても美味しいんだって。ね、見つけたら寄ってこぉよ〜。もちろん、経費で。ね、安田君」

「・・・・・・」

「安田君? どうしたの? なんかイライラしてるみたいだけど・・・・・・もしかして、お腹すいた?」

「・・・て・・・さい」

「え? なに? 聞こえないよぉ? 家出る前にちゃんと発声練習した? あーいーうー・・・・・・」

「いい加減にしてください! これから遊びに行くんじゃないんですよ! もっとおとなしくしててください! あと、おやつ代は経費じゃ落ちません!」

「えー、遊びに連れてってくれるんじゃないの? じゃあ、ぼくを誘拐してどこに行くのさぁ〜」

「誘拐なんかじゃありません! 事件ですよ、じ・け・ん! 今現場に向かってるところじゃないですか。そうじゃなかったらわざわざ中原さんの自宅まで赴いて車に乗せたりしませんよ」

「な〜んだぁ、つまんな〜い。ぼくはてっきり安田君がおいしいものをご馳走してくれるんだと思ってはりきって来たのにぃ・・・・・・ケチ」

(言わせておけばぁ・・・・・・この、クソガキッ・・・・・・!)

「・・・・・・と、とにかく到着までもう少しだけ時間がありますから、今回の事件概要を確認しましょう」

 被害者は自称作家、広本健彦さん(46)。

 自宅の書斎で変死体となっているのを、午前1時30分ごろ心配して部屋を訪ねた奥さんが発見し通報。死因は毒物による中毒死。致死量を超える量を摂取、ほぼ即死だった。

 書斎のドアと窓には内側からしっかりと鍵が掛かっていて、食事用に設けられた三十センチ四方の小さな隙間を除けばほぼ完全な密室。遺書も見つかっており、現在、自殺の線で捜査が進められている。

 広本については、彼の父親が残した莫大な財産で悠々自適に作家を目指すも全く売れず、結婚したはいいが夫として何一つまともなことをせずに、ただ有り余る財産を食いつぶしていたらしい。

 子宝には恵まれず、夫婦2人で生活していたが近所付き合いはなく、広本は「ダメなボンボン」として知れ渡っていた。

 死因の毒物は即効性が強く極微量で死に至るストリキニーネの可能性が高く、知人の薬剤師に金を握らせて手に入れた代物らしい。用途については詳しく言ってなかったそうだ。

「・・・・・・とまあ、今分かってるのはこんなところですかね」

「ふーん。で、まだ着かないの? 現場」

「もうすぐで・・・・・・あ、着きました」

 現場は、裕福さを象徴するような洒落た邸宅の前だった。それが今ではテープが張られ制服警察が出入りしている。

「へぇ〜、ずいぶんとまあ。これが格差社会の象徴ですかねぇ」

「各試写会? そんなことより、ちゃっちゃと終わらせようよ」

 私服のクセに警察手帳を見せずにテープをまたごうとしているのを警官に止められ、もがいている中原を見ていた安田は、懐に手をやりながら走った。

(ちゃっちゃと終わるなら、てめえはいらねえだろうが)



「ここが書斎? ずいぶんと狭いんだね」

「本や書類でスペースがとられてるんじゃないですか? ・・・・・・それにしても膨大な数ですね」

 部屋の全方向に天井いっぱい3メートルの本棚が並び、生活できる範囲の8畳程度に仕事用のテーブルと簡易ベッドが置いてあるくらいで、あとは紙くずか書類か判断できないものがおびただしい量散乱していた。

「広本は人を書斎に入れたがらなかったそうですよ。奥さんも例外ではなかったそうで、掃除も年4回の決められた日だけだそうです」

 安田はメモ帳をパラパラやりながら、現場をうろちょろする中原の後ろを付いて回った。

「でも、書斎には事件当時鍵が掛かってたんだよね? じゃどうやって開けたのさ、このドア」

「一応、マスターキーはあったそうで、普段は滅多に使わないんですが、夕食から食事も取ってない様子だったらしく、心配になって開けたそうです」

「それにしては、時間がやけに遅いよねぇ。もっと早く気付かないかなあ」

「日ごろから仕事の最中に入ろうとすると、すごい剣幕で怒鳴られたそうです。お前のせいで浮かびかけてたアイデアが消えた、なんてしょっちゅうだったみたいで。それで夕飯終わりじゃなく、夜食を持っていくついでにドアを開けると・・・・・・」

「なるほど。仕事中の食事はこの隙間から取っていたわけだな」

(人の話を聞けよ、ガキが!)

 すると中原は、突然首と肩を隙間に突っ込んだ。

「う〜、ちょっときついかな・・・・・・んがっ! ん〜ごふっ! ・・・・・・ちょ、ちょっと安田君、た、助けて。抜けない」

「はぁ? ・・・・・・ったく。いきますよ、せーのっ!」

「いだーーーい、いだだだだだ、いだいって、も、もっとやさしぶっ!」

「ふぅ〜、なんとか抜けましたね」

「あぁ・・・・・・死ぬかと思ったよぉ。この分じゃここは通れそうも無いねぇ」

「見ただけでムリだって分かりますよ」

「う〜ん、昨日見たテレビじゃこのくらい朝飯前だったのになぁ。『大泥棒のトレビローン』ならさぁ〜」

「・・・・・・」

 呆ける安田を尻目に、中原はドアの反対側にある窓を開け放った。

「窓の外はって、あ〜、寒い寒い。そういえばここ、2階だったねぇ・・・・・・ここから見える景色、キレイな雪平原ってまさにこのことだね、安田君」

 そう言って窓を閉めてからデスク前で足を止め、中やら上やらを物色し始めた。

「ま、それはともかくとして。毒物の進入先はどこ? それと反応あった場所全部教えて」

「ええっと、正確な侵入先は不明ですが、デスク上、および近くに落ちていた紙数枚と万年筆、飲みかけのコーヒーカップそれから遺体の人差し指の爪からも微量検出されました」

「ずいぶんと色んなところにちらばっちゃってくれちゃってるね?」

 適当に物を手に取りながら相槌を打つ。まるで安田の話を真面目に聞いていないかのようだ。

「ええ、まあ。ちなみに、人差し指は左手だそうです」

「ふぅ〜ん、で、コーヒーカップは? 飲み口? それとも持つとこ?」

「飲み口の方です。持ち手からは検出されませんでした」

 そこで、何かひらめいたように中原は顔つきを変えた。

「じゃあ、机の上と紙と万年筆には、こまかぁ〜くしか付いて無いね?」

「え、ええ。・・・・・・でもなぜ?」

「まぁ、まだ推測だけど・・・・・・先に関係者たちの話を聞こうか」

「はぁ・・・・・・」



 妻、広本奈美恵(43)
 小柄でおとなしめな印象を持つ。広本とは学生時代のコンパで知り合った。

 ええ、夕食の時間に現れないのはいつものことでしたから、あまり気にかけていませんでした。夕食を終えた後は主人の残した分と一緒に後片付けをして、少し風邪気味だったので主人に一声かけてから寝室に横になりました。それから12時のタイマーで目覚めて夜食を作り、心配だったのでマスターキーをもって2階の書斎にあがりました。そしたら・・・・・・。

 そういえば、主人は投稿した作品の批評が帰ってくる度に死にたい、死にたいと申しておりました。主人のクセであまりにひどく爪を噛むので、お昼前にマニキュアを塗ってあげたんですが・・・・・・まさか、ここまで思いつめていたとは知りませんでしたけど・・・・・・。これが主人の残した遺書です。

『私はもう、書いても書いても報われないこの人生に嫌気がさしたよ。私はより自由な世界へと旅立つことにした。さようなら。   広本健彦』

 お昼過ぎから主人は旧友と会う約束があると申しておりました。私はちょうど買い物に出ていた時間でしたが、もしかしたら彼が何かそそのかしたのかもしれません。私にはもう、これ以上話す言葉がありません。どうぞお察しください。



 家政婦、芳谷多賀子(53)
 ぽっちゃりとした世話好きそうな人相で、広本家で週3回ほど掃除を担当している。

 私はいつもどおり、昨日の正午に裏口から入って掃除を始めて、午後4時にはすべてを終えて帰りました。広いお家ですから、隅々まで掃除すれば3、4時間くらいかかりますよ。もちろん、書斎には入れもしませんけど。

 いつもと違うことといえば、旦那様の書斎が少し開いていたことくらいですかね? 仕事はしていたみたいですが、いつもは閉まっているので覚えてたんですけど。多分、3時頃だったと思いますよ。

 さあ、自殺願望があったかどうかなんて、私の知るところじゃありませんし・・・・・・。旦那様にはとてもよくして頂いたんですよ。娘の大学資金をまるまる援助していただいたときには涙が止まりませんでしたよ、本当に。惜しい方を失ったものです。



 友人、大牟田彰浩(45)
 やや背の高い、しっかりとした体格を持つ、広本の大学時代の後輩である。

 広本さんとは午後1時半から、ちょっとした用事があって会うことになっていました。なんで、ってそりゃあ、刑事さんたちが調べてくれれば分かることでしょう。言いたくありませんね。・・・・・・まあ、とにかくだいたいはそんな感じで話が進んで・・・・・・ちゃんと時間は計ってませんでしたけど、多分5時過ぎには広本さん家を出ましたよ。その間は外出してません。トイレに1回ずつ立ったくらいです。お土産にドーナツを買ってったんですけど、食べたくないって言うんでもったいないから持って帰りました。・・・・・・とまあ、こんな感じです。

 死にたいって話はしてましたけど苦笑いでしたよ。まさか本気だなんて全然思ってませんでした。・・・・・・にしても、広本さんも人が悪いですよ。わざわざ俺と会った日に自殺するなんて。俺に疑いがかかるかもしれないってのにさ。いい気なもんです。



「3人の証言にあやしいところは無いですよね・・・・・・。やっぱり自殺でしょうか」

「嘘は言ってないかもねぇ」

「ですよね・・・・・・じゃあ、今日はもう帰りますか。帰って報告書だぁ〜」

「ねえ、安田君。まさか、自殺として報告するつもりじゃないよねぇ?」

「え? 何を言ってるんですか? 自殺でしょう、どう考えても」

「相変わらず固いねぇ。帰るのはさんせー。でもね、自殺として報告するのには反対なんだよ」

「?」

「ま〜だ分からないのぉ? この事件はね、自殺じゃなくて他殺なんだよ。つまり、殺人事件ね」

「ええっ!?」

「ほらぁ〜、あそこに犯人がいるじゃない。ちゃんと説明してきてあげてよ。ぼく、車で待ってるから。早くしないと『一撃必殺! スカシマン・リバイバル』始まっちゃうから急いでねぇ〜」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、中原さんっ!」





 二次創作やってしまった・・・あせあせ
 簡単にしたつもりなので、難しくはないと思います。
 犯人と殺害方法、あと2、3ある謎について考えてみてくださいマル秘
 中原君と勝負したい方は自殺路線で展開してみてください(笑)
 解明編はでき次第載せますね。
 ほけさん、出来栄えはいかがでしょうかあせあせ(飛び散る汗)

コメント(8)

致命的なミスがひとつあったので報告します

誤 死因は毒物による中毒死
正 死因は窒息死

ストリキニーネは神経毒で、呼吸困難によって死ぬそうです。
これで悩ませてしまった人には申し訳ありませんでした泣き顔
解明編を載せます。以下、ネタバレですので適当に読み流してください。
※大牟田の隠し事付きストーリーを載せますね。想像の部分が大きくなってしまいますが(^_^;)※


「待ってくださいってばっ!」

 安田は、車に戻ろうとする中原の首根っこを後ろから捕まえ引き戻した。

「コラァー! 何度も言うが、ぼくは猫じゃないぞぉ! 少しは学習しろぉ〜!」

「だったら、ちゃんと説明してくださいよ」

「やだよぅ〜! 帰ってテレビ見るんだよぅ〜」

「帰りに、さっき言ってた団子屋さん、よろうと思ったんですけどねぇ〜」

「え、ホント!?」

「あ〜、でも僕にはまだ犯人が分からないし、このままじゃ夜中まで捜査が続いちゃうでしょうねぇ。そうなったら食べれませんね、美味しいお団子」

「うっ・・・・・・ご、ごほん。安田君、犯人検挙はぼくにまかせたまえ。さっさと説明を終わらせて、お団子を・・・・・・もといっ、事件を解決させてしまおうじゃあないか」

(日ごろの苦労分、扱いやすいな。こういう時は)



「あの、刑事さん。私たちを集めて一体何をしようっていうんです?」

「そうですよ。事件はもう、解決したんでしょう?」

「う〜ん、もちろん解決したよぉ。だから、いちおー関係者の人には説明しとこうと思ってね」

「何を説明するって言うんですか? 広本さんは自殺でしょ? 第一遺書だって見つかってるのに」

「まあ、そうなんだけどねぇ〜。なんていうか、自殺じゃ『ハチミツ抜きの大正ココア』って感じかなぁ」

「はぁ・・・・・・?」

「何かが足りないんだよぉ。自殺じゃ、ね」

「どういう意味なの?」

「つまり広本さんはねぇ、殺されたんだよ。この中の誰かに」

「なっ!?」

「・・・・・・何を言い出すかと思えば、刑事さん。推理小説の読みすぎじゃないんですか? 探偵ごっこなら他所でやってもらいたい」

「うん。他所でもやるよぉ。事件が起こればね。でも、今はここでやるぅ〜」

「くっ、何だこのガキみたいな刑事は・・・・・・!」

「芳谷さん」

「えっ! あ、はい、なんでしょう・・・・・・?」

「あなた、娘の大学の入学資金を広本から借りていたそうだけど、どのくらい?」

「え、えっと・・・・・・確か500万円ほど」

「ふ〜ん。それって返せるアテ、あるの?」

「な、何を言ってるんですか! 私はその程度のことで人殺しなんかしませんよ。それに、少しずつでも返してくれればいい、と旦那様はおっしゃっていました。事実、わたしもほんのわずかですが毎月返済しています。嘘だと思うなら、調べてください!」

「まあまあ。返すアテを聞いただけで別に犯人だとは言ってないでしょ、ね? で、次に大牟田さん」

「ちっ・・・・・・なんですか、刑事さん」

「証言のとき、嘘は言ってないみたいだったけど・・・・・・隠し事はよくないよねぇ?」

「か、隠し事? やだなぁ、あるわけ無いですよ、そんなもの」

「へぇ〜。じゃあ、安田君、さっき押収したもの出して」

「え? ・・・・・・あの、万年筆ですか?」

「違うよぉ、机の裏で見つけた白いやつ」

「白いやつ・・・・・・って、まさか!」

「あ、これですね。はい、中原さん。でも、風邪薬を机の裏に置くなんて変わった趣味ですよね」

「安田君・・・・・・君、ホントに刑事? 麻薬講習、受けなかったの?」

「え? 麻薬講習なら受けましたけど・・・・・・って、え!? ま、まさか、そ、それって・・・・・・!?」

「そ。これ、覚せい剤だよね? 最近は見ない錠剤型になってるけど。大牟田さん、なんで黙ってたのさぁ? こんな大事なこと。ちょくちょくもらってたんでしょ? 広本さんから」

「しょ、証拠が無いでしょう・・・・・・?」

「家、いまから警察が入ってもおっけぃ? 素直じゃない子には、今日ソーセージとるけど、いい?」

「きょうそーせーじ?」

「・・・・・・中原さん、今日ソーセージじゃなくて、強制措置。きょうせいそちです」

「・・・・・・きょーせーそち、いい?」

「くっ・・・・・・わかりましたよ、認めます。広本さんからいくらかお裾分けで貰ってました」

「ま、実際はお裾分けっていう穏やかさは無かったみたいだけどね」

「なっ、そこまで知って・・・・・・」

「観念したぁ? 面倒は嫌いだよぉ〜」

「・・・・・・ふっ、何もかもバレては仕方が無いですね。刑事さんの言うとおり、俺が広本さんをやりました」
「大牟田さん・・・・・・まさか、あなただったんなんて・・・・・・」

「すみませんね、奥さん。半ば事故だったんですよ。薬に慣れてた俺は多めにいけたんですが・・・・・・広本さんはあまり経験がなかったみたいだったのに、俺と同じ量を勧めたんです。先に逝っちまってた俺はコーヒーでムリヤリ流し込ませて・・・・・・そしたら急に苦しみ出して、激しく痙攣し、そのまま動かなくなりました。まさか、死ぬなんて思ってなかったんですよ。本当です」

「で、それからどうしたんですか?」

「急に怖くなって、書斎から逃げ出し、帰ろうとしました。でも・・・・・・」

「でも?」

「忘れ物に気付いたんです。お土産のドーナツともらった薬の入った箱を。それで人目を忍んで忘れ物を取りに戻りました。万一のときのために、とっさに靴を持って。あれが見つかっては俺が疑われる、と思ったんです。けど、忘れ物を持って書斎を出ようとしたら、廊下の奥に家政婦さんを見つけました。それで、出るに出られなくなって」

「結局、どうやって帰ったんですか」

「家政婦さんがいつ帰るか、それから奥さんが買い物からいつ戻るか、なんて知りませんでしたからパニクっちゃって。とりあえず鍵をかけ、仕方が無くあの大雪の中箱を持ったまま窓から飛び降りました。靴を持って上がったのが功をそうしたのか否か・・・・・・」

「その時間帯とか、覚えてますか?」

「いえ、それが全く。薬が効いてるときは数字とか見ても認識できないんですよ。5時ごろ帰ったっていうのもテキトーで、家で落ち着いたのが7時くらいだったからそんなもんかなあって」

「覚せい剤は怖いねぇ、安田君」

「ええ・・・・・・では、大牟田さん。署までご同行願います」

「はい・・・・・・本当にスミマセンでした」

 そう言って安田は大牟田の手を引き、中原を振り返って言った。

「やっぱり、今回も楽勝でしたね、中原さん」

「? 何をいってるのぉ? 安田君」

「何って・・・・・・事件解決ですよ。お団子屋さん、早く行かないと閉まっちゃいますよ」

「事件解決ってねぇ・・・・・・いつから君は麻薬取締官になったのさぁ? 君の任務は殺人事件の調査でしょお」

「ですから、覚せい剤所持と殺人罪で逮捕したんじゃないですか」

「はぁ・・・・・・。そんなことだから君はいつまで経ってもダメなんだよぉ」

「どういうことですか?」

「今、ぼくが彼から聞きだしたのは事件の秘密の一部だよ。殺人の証言を取ったんじゃなくてさぁ、広本氏との隠し事と、事件の全体像を把握するため、なんだよぉ」

「一体何を・・・・・・?」

「大牟田さん、遺書っていつ用意したのぉ?」

「・・・・・・え? 何の話ですか? 私、遺書なんて書いてませんよ。死ぬつもりなんてありませんでしたし」

「え・・・・・・!?」

「それからさ、思い出してよ。窓は閉まってて密室だったんでしょ? 飛び降りた後薬が回ってる彼がどうやって閉めたのさ?」

「あっ!」

「そう、この事件には続きがあるんだよぉ。そうだよねぇ? 真犯人の奈美恵さん」
「え、な、何を!?」

「奈美恵さんが・・・・・・!?」

「奈美恵さん、昨日広本さんが大牟田さんと約束があることを知ってたんだよね?」

「え、ええ。主人が前日そう語っておりましたので」

「それで気を利かせて買い物に出たのかぁ〜」

「主人は人と会う際に私が出るのを嫌ってましたから」

「いるよね、そういう人」

「でも、それがどうかしたんですか、中原さん?」

「ところで、安田君。死因のストリキニーネはさぁ、どこから進入したと思うかなぁ?」

(・・・・・・っ!)

「え、えっと、爪・・・・・・でしょうか? 奥さんが塗ったマニキュアに毒が混ざっていたとか」

「う〜ん、いい線いってるけど、はずれぇ〜! 1回休みね。じゃ次、奈美恵さん、どーぞっ!」

「さ、さあ・・・・・・私には分かりかねます」

「ブッブー! んもぅ〜、みんなそんなことじゃアフリカ縦断できないぞぉ〜」

「一文字違いでえらいところ縦断する羽目になってますけど・・・・・・」

「せーかいは、コーヒーカップ! ここしかないよねぇ」

「確かに反応はありましたけど・・・・・・でも爪や机に付着したのはどう説明するんですか?」

 中原は一瞬だけ残念そうな顔をしてすぐに元に戻し、安田に言った。

「ぎそーこーさく、って知ってるぅ?」

「ええ、まあ」

「死体を見つけた奈美恵さんは、すぐに状況を理解したんだ。友人が訪れれば飲み物を出すのは普通で、その間にひと口くらいは口をつけるだろうからねぇ。まあ、どのタイミングで死亡したにせよ、大牟田さんが家から消えていたことを考えると、計画通り大牟田さんに自分が殺したと思い込ませることができたとも思っただろうね。これで、大牟田さんが自分から事件の真相を話すことはなくなり、もし刑事が他殺として自分のところに来れば、何回目かで麻薬の件を臭わせて、大牟田が自滅するように仕向けた。そうじゃないかなぁ。あとは、捜査の混乱と時間稼ぎを兼ねて自殺に見せかけるトリックを仕掛けた。机と紙、万年筆にはマニキュアがワザと飛び散るようにして指にぬったんだろうねぇ。だから細かく飛び散ったように付着してたんだよ。中途半端にしか現場をいじらなかったのは、殺人事件にしても大牟田が犯人、あわよくば自殺処理ってことを期待してたからじゃないかなぁ。マニキュアを塗ったことを証言したのは、捜査しても爪から毒が入ったとは考えにくいからねぇ。いくら癖があったとしても確実性には欠けるんだよ」

「な、なるほどっ!」

「で、でも、どうして私が麻薬のことを知っていたと・・・・・・?」

「遺書だよぉ」

「・・・・・・遺書?」

「麻薬って言うのは想像だったけど、後ろめたいことが2人の間にあったってことくらいはすぐにわかったよぉ。遺書は、そもそも作家にしては『自由を求めて』っていうのがちょっと引っかかってさぁ。売れないって言ったって、もっと効果的な言葉の使い方くらいできるよねぇ。作風に依るだろうけどさ。これじゃあまるで『私は誰かに脅されてました。それが原因です』っていってるようなもんじゃない? ちょっとおかしいなぁって思って。知ってた可能性があるのは容疑者の3人だけど、書斎に入り込めたのは奈美恵さんか大牟田さんで、大牟田さんがまさか自分に疑いがかかるような言葉を選んだりはしないよね? だから、書いたのは奈美恵さんしかいないって事。ま、この遺書自体署名も含めて全部ワープロで打たれてるから無効なんだけどねぇ。そんなことも知らない作家志望さんはいないよ? たとえ推理小説家でなくともね。つまり、この遺書は広本さんが書いたものでもないってことだよ」

「そんな・・・・・・話は分かりましたが、それらは全部、刑事さんの想像に過ぎないですよね? 私が主人を手にかけたという証拠はあるんですか?」
「う〜ん、日常生活のリズムと癖を利用して十分な時間を使った奈美恵さんなら、ほとんど証拠といえる証拠は処分しちゃったんじゃないかなぁ」

「そ、それじゃあ奈美恵さんが犯人だとしても逮捕することができませんよ!」

「ほら、ごらんなさい。ですから、私ではなく、大牟田さんが犯人な・・・・・・」

「遺書ってさぁ・・・・・・どこにあったの?」

「え? そ、それはもちろん主人の机の上に・・・・・・そ、それがどうかしましたか?」

「大牟田さん、窓から飛び降りるとき、遺書を机の上に置いたぁ?」

「い、いいえ・・・・・・遺書なんて作る必要がありませんし、時間もありませんでした」

「あれぇ? おかしいなぁ・・・・・・大牟田さんが書斎から消えてから奥さんが発見するまで、窓が開いて遺書が無かったと証言しているのに、いつのまにか窓が閉まって遺書が出てきたなんて! 広本さんが生き返ってからわざわざ自殺したか、そうでなかったら、まるで魔法だねぇ」

「お、大牟田さんが嘘を言っているかもしれないじゃないですか」

「嘘を言っている? じゃあ、密室の件はどう説明するのかなぁ? 鍵と窓を同時に閉めるなんて無理じゃない? マスターキーは奈美恵さんしか場所を知らないんだし、窓には触って無いんでしょ? 窓が閉まればドアの、鍵が掛かれば窓の謎が残っちゃうけど・・・・・・?」

「じゃ、じゃあ大牟田さんと芳谷さんが共謀して・・・・・・」

「それは無理だよぉ。大牟田さんと芳谷さんにはなんの接点も無いんだからさぁ〜。もしもそうだとしたら、芳谷さんは書斎の戸が開いていたことを言わないだろうし、大牟田さんも窓から飛び降りずに堂々と玄関から出られるでしょ? それに、窓が閉められたのにはちゃんとした理由があるんだよね?」

「理由・・・・・・ですか?」

「うん、昨日は大雪だったんだってねぇ。寒くて寒くて、窓が開いちゃってたら狂っちゃうよね? 調べられるだろう死亡推定時刻が、さ」

「そうか! 死亡推定時刻が狂うとアリバイが成立しなくなるんですね!」

「で、ですからそれらはすべて想像に過ぎないと・・・・・・」

「広本さんは、書斎には誰も入れなかったみたいだけど、奈美恵さんは入ったことあるの?」

「い、いえ。主人がいるときは絶対に入れてもらえませんでしたし、留守のときも勝手には入りませんでした。年に数回の掃除は業者がやってましたし・・・・・・」

「ということは、もちろん奥さんの指紋なんてあるはず無いよねぇ?」

「・・・・・・ええ、もちろん。それが、私が犯人だという証拠になるのですか?」

「大牟田さん、窓を開けたとき、手袋か何かしてましたか?」

「いえ、もちろん何もつけてませんが・・・・・・?」

「ということは、この窓に残っている指紋は、大牟田さんと広本さんしかないってことだよね?」

「そうなりますけど・・・・・・あっ! まさか!」

「うん、気付いたようだね、安田君。奈美恵さんがこの部屋で細工を行ったという証拠。それは『あるはずのものがない』ということだよ。もう、わかるよね?」
「大牟田さんの指紋ですね! この窓枠には大牟田さんの指紋が無ければならない。でも、奥さんは証拠を残さないように気を使いすぎて、窓を閉める際、彼の指紋までも拭き取ってしまった! そうですよね、中原さん!」

「そうそう、よくできましたぁ〜。鑑識に見てもらえば、すぐに分かるよ。彼の指紋が無いか、拭き取った跡があるって事にね」

「そ、そんな・・・・・・!」

「さ、まだこれでも言い逃れする気? 自殺にしては遺書や死に方に疑問が残る。芳谷さんには時間と動機が無い。大牟田さんには密室は作れない。ここから導き出される答えは1つ。犯人が、奈美恵さんということだねぇ」

「奈美恵さん、どうなんですか?」

「・・・・・・ふふっ」

「?」

「その通り。刑事さんの仰るとおりです。私が主人を殺しました。彼が、私を殺そうとした通りに」

「! どういうことですか!?」

「広本は、私を自殺に見せかけて殺すつもりだったんですよ。大牟田さんに渡す薬を買うお金を得るためだけに」

「なんだって!? 俺が広本さんから薬を貰ってたときには金のことならまだまだあるって・・・・・・」

「そう、あの人は父親の財産がまだまだ残ってると思ってたのよ。本当はもう底をつき始めていたというのに。お気楽なものよね、お金持ちの息子なんて。使った分だけ入ってくると思ってるんですよ。それで、私がお金のことを言うと、決まって『そんなはずはない、お前が勝手に俺の金を使ったんだろ。死んでも金は返せ』って罵られました。それで、私はいたたまれなくなって、家を出ようとしたんです。でも、できませんでした。私一人では生活ができないんです。私ももう、こんな年ですから満足な仕事をさせてもらえるわけでもありませんし、頼れる家族もおりません。歯を食いしばってでも広本にすがるしかなかったんです。でも、一週間前の夜、偶然聞いてしまったんです。広本が遊び相手の女と、私の生命保険額について話しているのを。『用意はもうできている。実行は来週、うまくいけばそのうちまとまった金が手に入る』と。もう、私には広本を殺す以外に解放される術は無いと思いました。それで、広本が以前毒物を裏ルートで購入したことを知っていましたから、大牟田さんと会う約束をしたと嬉しそうに語ったときは、これが最後のチャンスだと思い、一晩かけて計画を練り、実行に移しました。大牟田さんに罪を着せることができれば、ちょうどいいと思ったんです。・・・・・・刑事さん、ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした」



 手錠をかけられ、パトカーに乗せられる広本奈美恵を遠くに見ながら、安田は今回の事件について、疑問に思っていたことを口にした。

「しかし、どうしてすぐに殺人だと分かったんですか? 自殺でも十分筋が通っていたじゃないですか」

「人っていうのはね、一度金や権力を持つと、なんでもできるんじゃないかって思うバカな生き物なんだよねぇ〜。財産を食いつぶすだけの人間が、多少のことで自殺なんかしたりしないよぉ。やだやだ、人間の醜さってのはさぁ」

「・・・・・・そういうもんなんですかね? まあ、今回も中原さんのおてが」

「ぬああああああああああっ!」

「うわっ、ちょ、いきなりなんどうしたんですか! そんな奇声上げて」

「い、い、いま、いまなんじさ!?」

「今ですか? ・・・・・・えーっと、午後8時17分ですね。それが何か?」

「団子屋は人気あって売れちゃうから午後6時で閉店だよ・・・・・・? それに『一撃必殺 スカシマン・リバイバル』は7時からスペシャルで1時間だったのにぃ・・・・・・おおおおお、お、終わりだぁ・・・・・・ガクッ」

「え? なにもそんなに未練がましく・・・・・・ちょ、中原さん!? 中原さん、ってば! こんなところで倒れ・・・・・・はっ! い、息がない!? た、大変だぁ〜! は、早く救急車! 救急車ぁ〜!!」

 こうして今日も一日中振り回される安田刑事であった。

(あのクソガキ、お見舞いに団子とアニメDVD全巻セットもってこいなんて・・・・・・コレ、なんとか経費で落とせない、かな・・・・・・?)



続く・・・・・・?
あとがき

やっぱりほけさんの作品は書いてて面白かったです!
スラスラと頭が冴え、手が動きましたよ。
前半部はかなりお気に入りな感じに仕上がりました。

ところで、フェルマーの最終定理というのをご存知でしょうか。
詳しくは調べてもらうとして、大まかにお話します。
当初ある変わった難題を見つけた人物が、その答えがわかった! といいながらその答えを言わずして亡くなりました。彼は、その答えは芸術のように美しく、かつ簡単だと述べていましたが、その後数百年誰も証明することができませんでした。そのうちに世の中ではいろいろな定理や証明が成され、遂に全く別の人がその難題を完全に証明しました。それは、芸術的でもなければ民衆が分かるような美しさのない、非常に難解で高度な定理や証明を用いて証明されたのです。

なぜ、このようなことを話したかというと、今回初の二次創作となった本作のトリック。まずは、とても簡単なトリックを作りました。それに、装飾を加え、余裕を見せるためにオマケ程度の謎をスパイスとしてちりばめ、一見犯人を分からなくするような面白さをかもし出したつもりでした。

しかし。

UPしてから感想を貰い、上目線でそれらにコメントしてから、それらとよくよく読み返してみると、なんと自分が当初考えたトリックでは矛盾や、ちりばめた関係ないはずの謎が本編に思い切り食い込んでめちゃくちゃになっているではありませんか! これはもう、後の祭り、いろんな意味で笑いあり涙ありです。

そこで、トピごと全部消してしまい、何食わぬ顔で「あれ? いつのまに修正かかってたんだろうね?」なんていうことも考えたのですが、いかんせんプライドの高い私はそれを良しとはせず、修正をかけることなくありの情報で想像を限界まで膨らませ、無い壁は作り、ある壁はねずみ穴を通り、今回の解明編を導き出しました。よって、「こんなこと本編で言ってた?」「ここまでは想像できないよ。これじゃあ推理物じゃなくて昼メロだよ」という意見がでるのは覚悟の上です。何回も読み直し、熟考してくれたほけさん、並びにメンバの皆様、本当に申し訳ありませんでした泣き顔

これからは、どのような作品を扱うか分かりませんが、どうか温かく見守っていてください・・・あせあせ(飛び散る汗)

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