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みんなにやさしい自作小説コミュのREKIRIMA 二章1−2

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        第一話 (2)強敵はライバル




「それでどういうことなんだ? さっきあれを『フェンリルじゃない』って言っていたが・・・」

「うん、その事なんだけど・・・」

なんとか戦場から脱し現在は洞窟の中で身を潜めている。

疲弊したヴェインの回復を待ちながらレイはきりっと真剣な面持ちで仲間を見る。

「精霊達がおかしいんだ」

「精霊が?」

「フェンリルって魔獣だろ? なのに魔力や妖気の類は感じられなかったし、それに精霊たちが『同じ感じ』がするって・・・」

レイの言葉に一同首をひねる。

「たしかにレイが言うんだから間違いないんでしょうけど・・・そんなことってありえるの?」

「わかりません」

メイアの疑問にキースが静かに答える。

「つまり、精霊はあれが『フェンリルの姿を模した別の者』といっているんだな?」

「うん、精霊も戸惑っていてはっきりと断言はできないんだけど・・・多分間違いないと思う」

ゆるぎなく答える。



レイは、今では伝説とされる一族『聖光の一族』であった・・・

史よりその存在は聖なる光によって、あらゆる魔を払い邪を切り裂く、最強の代弁者とされていた

代弁者・・・世界意思を聞き取り、その力を持って行使する

故に、レイは世界を構成するもの『精霊』の声を聞き、交わすことができた。


「それにフェンリルが魔獣なら魔力なんて狙わないで、あのときそのまま命を奪っていたと思うし・・・」

あくまで推測の域を出ない話ではあったが、これには多少の自信はあった

魔獣と呼ばれるほどの存在ならば、決して隙を逃さないだろう・・・

あの時確かにヴェインは殺されかけていたのだ。

敵が命を狙っていたのであれば、確実に奪われていた

だが、あの敵は命を狙わずにその命を支えている『魔力』を狙ってきた・・・

まるで実体をもたない敵が、または実体を持ち続けるに足りていない敵が、その支える力を補うように・・・


幾多の謎が浮かび上がり、沈んでいく・・・

いずれも答えが出る前に新しい疑問が目の前に突きつけられ四人は言葉をなくし考え込んでいた



そこに・・・・予想だにしていなかった、最悪の乱入者が洞窟の入り口に現れる。


この世界すべてに死の灰を振りまく、漆黒のローブを纏った『死神』が・・・・


「わかってるじゃないか、聖光の。さすがだよ」


陽気な口調で、死神はそこに立っていた・・・





「貴様!!」

存在に気づいたキースがとっさに剣を構える。

マナは紅玉の杖を握り締めレイをかばうように立ち、メイアはキースと同じように隣で剣に手をかけている。

「クルト!? なんでここに・・・」

動揺を隠し切れないレイがおもわず呟く。

それもそのはず、クルトは先の大戦で確かに倒され今は厳重な警備の下ウッドコロニーの地下に幽閉されていたはずだったからだ

「あれ? あの程度で僕を捕まえたと思ってたわけ? ずいぶん見くびられたものだよ。」

そのままはははと笑う。

その飄々とした態度に背中を冷たいものが流れる。


「ここで決着をつけようってこと?」


一瞬ちらりと横たわっているヴェインに視線を落とす。

だいぶ持ち直しているようではあるが、戦闘には参加できそうにない

(巻き込まないように外で戦うしかないか・・・)

レイは小さく舌打ちをすると、外に飛び出す算段を立てていく。

外で戦えば先ほどの敵に場所を知られることとなるだろうが、しかたない

このまま狭い洞窟内で戦えば、ヴェインを巻き込んでしまうだろう・・・・

覚悟を決めて、剣に手をかけると静かに移動しようするレイ

しかし、それを止めたのは意外な人物であった

「それもいいけど・・・いまはいいや」

「?」

そういいクルトはあっさりと両手を目の前ではたはたと振って見せた。

おもわず目を丸くする一同にクルトは陽気に語りかける。

「ねぇ、聖光の。君を僕の研究対象にしてあげる。光栄に思うがいいさ」

「は?」

戸惑いが口からもれ出る


研究対象・・・? 何を言ってるんだ?


「実に君は興味深い、前回での戦闘では本当に頭にきたが、冷静に考えてみれば実に面白い素材だよ。圧倒的不利を乗り切るその精神力もありえないほどの強運も今では本当に興味深い・・・」

そのままクックックと邪悪に笑い続けるクルト

「・・・つまり今は戦わないってこと?」

「そうだよ。戦闘もいいデータ収集だけど、まずはそれ以上に観察からはじめなくちゃ。君のこと僕のライバルとして認めてあげるよ!」

・・・あいかわらずの説明癖にはとりあえず触れないでおいた。

おかげでキースは少なからず現状を把握しいるようだし、嘘か本当かは別としてクルトが復讐に来たわけではないということだけはわかった

その動機に多少反発しないでもなかったが、いまはとりあえず理性で聞き流しておく。

念のため最後にカマをかけてみる。

「そんなこと私達が認めるとでも?」

「別にお前らは関係ない、認めようと認めまいと僕がすることは変わらない。お前らじゃ僕のライバルにはなりさえしないしね」

無邪気に答えるクルトの眼にマッドな科学者の色を見たキースは舌打ちして答える。

(チッ・・・こいつ本気でレイを研究するつもりか・・・)



たしかに、クルトの言ってることは正しかった。

あの破滅の力はこの世界に生きる者達全てに抵抗を許さない

対抗できるのは、唯一その力を打倒出来る力・・・聖光の一族であるレイだけだった。



「・・・それで、何であんた私達の前に姿を見せたのよ。あんたなら遠くにいてもべつに変わりないんじゃないの?」

「たしかにそうだね、僕ならそんなこと問題なくできるけど・・・聖光の」

「?」

呼ばれてレイはクルトと見つめ合う

「ライバルがあの程度の雑魚に手こずるのがどうも我慢できなくてね。あいつの正体には薄々気づきはじめているようだけど。気づいたときに何もできなくなるようじゃ僕が困るから・・・」

「・・・」

クルトの言葉に思わず黙り込む

「レイ様?」

心配そうな表情でマナが覗き込んでくる。

それに力なく頷き答えると、レイは口を開いた


「それじゃ・・・やっぱりあれは・・・」

「そう、精霊だよ」

「「「!!?」」」

確認の言葉とそれを肯定する言葉

おもわずキース・マナ・メイアが息を呑む。

「おかしいとは思ってたんだ、はじめて見たときから精霊達がざわついてた」

「それじゃあ、あのフェンリルを模した存在っていうのは・・・」

「・・・変化に最も富んだ属性・・・水の精霊達か・・・」

驚くメイアにキースが続く。

それを暗い表情のままレイが頷く。

「なんであんなことになったのかはわかんないけど、あの精霊達は意識がない。まるで―――」

「『狂ってる』・・・でしょ? ご名答! さすが僕のライバルだよ。そこまでわかっていたんなら何であの時倒さなかったのさ?」

嬉しそうに笑うクルトをレイが睨む。

「まだそうと確信があったわけじゃなかったし、それに・・・認めたくなかった。その事だけは・・・」

まだほかの希望にすがりたくて、悩んでいた結果がヴェインの負傷だった

思わずうつむき肩が小刻みに震える。

感情を押し殺そうとするレイの背中をマナが優しく手をまわす。

「憶測でよければ精霊がああなった原因を教えてあげようか?」

「!? わかるの!?」

思わずレイが掴み掛かる勢いで前に出る。

その手を軽くかわすクルト

「あれは多分闇よりの反逆者の実験台だったんだよ」

「!?」

軽く告げられた事実が頭に響く。

(実験・・・台・・・だって!!?)

「・・・貴様どういうことだ」

熱くなるレイを制してキースが前に出る。

「そんなに睨まないでよ、僕がやったんじゃないんだし。それに闇よりの反逆者のこと僕に聞かれても困る。僕はもうあそこから抜けたんだから♪」

「なにっ?」

あっさりと言われたことに今度はキースが眼を見張る。

「そんな驚くことじゃないでしょ? もともとあそこは任務の失敗=死だったんだし、それに僕はより研究しやすい環境が整っていたからあそこにいただけで目の前にこれ以上ない素材が落ちてるんだ。もう戻る必要なんてないでしょ?」

「そんな簡単に組織を抜けられるものか!!」

「別にどうだっていいよ、僕の研究を邪魔するようなら消すだけだしね」

「貴様・・・」

「そんなことより精霊のことだよ!」

憤るキースを押しのけて再びレイが前にでる。

「・・僕も依然何度か研究したことがあるから見たことあるんだけど・・・たしか狂った精霊の能力を調査するだったかな? 正直興味は出なかったけどね」

「なぜその実験台があそこにいるんだ?」

「もう、質問多いなぁ・・・いいかい?」

口を尖らせ矢継ぎ早に聞いてくるレイ達を冷めた眼差しで眺めながら、若干頬を緩ませて説明しだす。

どうやらクルトも説明するのは癖であり性分らしく、好きなようだ・・・

「闇よりの反逆者の実験台の末路は死ぬまで研究し尽くされるか・・・または、ああして外に放りだされ『新しい実験の成果』を検証するために使われるって事・・・大まかはね」

腕を組んで論議しだすクルト

しかしその様子を無視してキースは鋭い眼光を向け続け、要点だけを呑み込んでいく。

「つまり、あの狂った精霊は『新兵器』かなにかの実験台であそこに放置されていると?」

「そうだね、おそらくはそう考えて間違いないはずだよ?」

「それじゃあ、急いであの精霊を救わないと!! 新兵器とかで消滅されちゃうより先に!!」

「君にそれができるの?」

「う・・・」

冷静なクルトの指摘にレイは思わず口ごもる。

「君の力は精霊を保護するようだけど・・・すでに侵食され狂ってしまった精霊を助けることができるの? また救えなかったとき君はそれを諦め切れるの?」

「・・・」

そんなこと答えるまでもない・・・

諦めることなどできようはずがない

この力で、全てを救おうと決めたのだから

たとえできなかったとしても、できるまでやり続けるだろう・・・

それを見越した上でクルトは冷めたまなざしでレイを見つめていた。

「持って回った言い方だな、貴様何が言いたい?」

キースがその様子を冷静に指摘する。

たしかにクルトは一見して無様なレイを嘲笑しているように見えなくもないが

「できるのか?」「あきらめられるのか?」と聞き返している

無論答えは決まっているし、それはクルトも知っているだろう・・・

その上で、ああ聞いているのだ

何らかの意図があってのこととしか思えない。

そして案の定クルトは剣呑な笑みを浮かべ、ローブの中から素顔をさらす。

「ふん、今回だけは手伝ってあげるよ、目の前で研究対象を失うことほど、愚かで手痛いことはないからね!」

そう宣言する少年の髪は、柔らかい緑色で、瞳も淡いグリーンイエロー・・・

その幼い容姿から見て取れるように全体的に華奢な少年だった

「? どうしたのさ」

「いや・・・」

レイは今まで何度も死線を彷徨わされてきた敵がこんな少年だったとは想像できなかった。

戸惑うレイを無視して、クルトはさっさと洞窟を後にする。

あわててその後を追う。



「本当に精霊を助けてくれるの?」

歩きながらレイはその一歩後ろをついていく。

「しつこいなぁ、そうだっていってるじゃないか」

めんどくさそうにクルトが言ってくる

幼い少年に先頭を歩かせるのは、個人的に嫌だったのだが、その肩に伸ばそうとした手をキースにつかまれた。

「・・・貴様の言うことは信用できないんだ。暗殺者からただのストーカーに成り下がったくせに」

「ストーカーって・・・失礼だな、僕はただたんに遠くから対象を観察しているだけじゃないか」

「それを世間じゃ『ストーカー=変態』というんだ」

「・・・ずいぶんつっかかってくるね? 知的な探求をしてなにが悪いんだい? お前のほうこそその短い人生でいったいどんな経験をつんできたんだか、よほど身の入ってないつまらない人生なんだろうね」

「ふん、『痴的な探求』などには生憎興味ないんでね」

「・・・」

「・・・」

無言で睨みあうクルトとキース・・・

その様子をレイと一緒に一歩引いた位置から眺めているメイア

普段なら止めに入るところだが、相手が相手なだけに口を開きたくもないようだ

元来メイアという少女は、嫌いな相手には関わらずに無視してすごすタイプの少女だった。



・・・現在、再び湖に向けて歩く三人・・・

ヴェインは戦闘には参加できそうもないのでそのまま洞窟で待機してもらっている

そして・・・さんざん反発されたがなんとかマナをその護衛として残してくることに成功した。


「つまり正気に戻して、自然界に帰せばいいんだろう? 使役・調伏は召還師のお家芸さ。君がそうであるようにね」

邪悪に微笑むクルトが、大量の光の精霊に囲まれているレイを見つめる。

レイにはなんとも答えることができなかったが、そうこうしているうちに目的の地点まで戻ってきていた

湖の中心では狼が再び戻ってきた愚者に対して音無き咆哮をしているところだった・・・

「さあ、セカンドラウンド。はじめるよ・・・」


湖のほとりに立った死神が邪悪に口を歪めていた・・・



       第一話(2)完
                                (3)に続く・・・


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