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みんなにやさしい自作小説コミュのREKIRIM13話 (1) 

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                 第十三話 (1) 集う光り・・・



・・・ほの暗い闇の中より現れた者は、目前で強大な魔獣が殺気をはなっているのに気がついていないかのように堂々と佇んでいる。

それはあまりにおかしい、魔獣の殺気は周囲のリザードを百体集めたものより遥かに巨大で圧倒的・・・

その圧力に気がつかないのはもはや生物として欠陥している・・・

つまり、このローブを纏った者は目前の殺気の塊を無視しているのだ。

不敵な存在がもう一度無邪気にその声を発する。

「さすがだよ聖光。まさかあの数を前に一歩も引かず結界を構築するなんて・・・並みの術者には不可能な芸当だね」

ローブを纏った者は場に不釣合いなほど陽気に謡うとさも楽しそうに両手を叩く。

そのいちいち芝居がかった動作にヴェインの牙がギリッと音をたてる。

レイは突然の乱入者にも驚くことなく正面から見据える。

その視線は正確にローブの・・・その奥の目をにらみつける。

「・・・外壁を壊したのは貴方たち?」

静かに問う・・・

そう、レイはずっと気になっていた疑問をあげる。

ウッドコロニーの外壁はこれまで幾度となくその波を耐え抜いてきた頑強不落の城壁である。

壊れるとしたら他の第三要素・・・つまりリザード共=野の魔物の他の存在だ。

その狂爪を何千何万と防ぎきった壁を用意に打ち砕く何か・・・

「そうだよ、この分厚い外壁を壊したのは僕達、『闇からの反逆者』!!」

ローブの少年『クルト』はばっと顔を隠していたローブを跳ね飛ばすようにして右手を上げる。

その手が、指がぱちんと小気味よく音を立てた瞬間、クルトを背後から襲おうとしたリザードが銀の槍に串刺しにされ

同時にそれを放ったローブを纏った者達が八人、クルトと同じように闇夜から現れる。

「聖光の、今度は前のようにはいかないからね・・・そこの低俗な獣も!!」

今の今まで無視を決めていたクルトの視線がヴェインを捉える。

その眼差しにはありとあらゆる憎悪がこめられていた。

よほど前回撤退したことが屈辱だったのか、噛み締めた唇からは血が流れている。


「・・・そのテイドデワレニカテルトオモッテイルノカ」


ヴェインがは低く脅すように呟き、姿勢をあらたに参戦してきたローブへ身構えさせる。

その隙のない様子にクルトが面白そうに笑う。


「まさか、獣相手にあいつらを使うつもりはないよ! もったいないからね。 それに・・・」


クルトの表情に暗い感情が浮かび上がる。

「僕は勝てる勝負しかしない主義でね」

呟きクルトが再び指をたて、音を鳴らす・・・

それを合図ととった八人のローブが一斉にその懐から折りたたみ式の銀の槍を組み立て

それらを一斉に放る!!

その標的は黒き魔獣の後方・・・

「!!」

ヴェインは咄嗟に身を躍らせ瞬時に飛んできた槍を二本打ち落とす。

しかし、残り六本は勢いをさらに乗せレイへと迫る。

「くっ」

迫り来る銀槍を何とかよけるレイ。

その速度たるや常に加速して迫り、容易に撃ち落せるような物ではなかった・・・


・・・? ・・・


紙一重でよけておきながら唐突に違和感を感じる。

(今の攻撃どこか狙いが甘かった気が・・・)

レイが思案してる最中にその答えが真後ろから出る。


バリーーーンッ! とガラスを割ったような破砕音と同時にほころびが生じていた結界がついに耐え切れなくなり音をたてて砕け散る。


「しまっ!!」

同時に外壁の奥で機会を伺っていたリザードたちが一斉に走ってくる。

その怒涛の流れは津波のようで巻き込まれた者に助かるすべはないだろう・・・

慌てて結界を再構築するのに意識を集中させる。

一度かき消された結界は再構築させるのにまた一から行程を繰り返さなくてはいけない。

その時間は・・・ない!!

「ヴェイン!!」

自分の相棒を呼ぶとレイはクルトたちを無視してリザードの前へと駆けて行く。

すでに外にいたリザードが何匹か侵入している。

剣に再び光を纏わせ残光が後を引く一閃を繰り出していく。

リザードを二匹倒した時点でヴェインが隣にきていないことに気がつく。

不思議に思ったレイはちらりと後方のヴェインを見た。

「・・・・・・・・・・・・・」

クルトを静眼しているヴェインが獰猛に口を開く。

「ワレハ、キサマヲミノガスツモリハナイ」

グルルッと唸り声を上げ姿勢をさらに低くする。

すでにいつ襲い掛かっても不思議ではないほどの緊張感が場に流れれいる。

魔獣の猛る様子を嬉しそうに笑うクルト

「はは! 契約した獣が主人の意を逆らうのかい? ははは! これは傑作だ!」

その嘲笑う仕草が完全にヴェインの癇に障り、ついにその身を対象に躍らせる。

「!? ヴェインだめだ!!」

無理だ、すでに頭に血が上ってあいつの声も届かない。

あるのは目の前の余裕を浮かべた表情を切り裂く憎悪と殺意しかない。

その身は瞬時に一陣の風のように吹き、周りのものには消えたように見えた。

そして誰もが魔風が吹き抜けた後、地面に崩れるクルトを幻視していた・・・

しかし・・・

そこに狂音が割ってはいる!!


グゥゥゥゥゥゥゥン


それはあまりに異音であった。

武器の振動が、そのまま空間全体を震わせるような無機質な音・・・

気がつけばクルトの前にあのローブの者達がその身を守るように立ちはだかっていた。

瞬時にその者たちごとクルトを葬ろうと不可視の衝撃波を放とうとするヴェイン

そこで本能が急激に騒ぎ出す。

全身を駆け抜けるけたたましい警告に従い、慌てて身を翻す。っと、

ザンッ! といつの間に動いたのかヴェインの背後から迫っていたローブの一人が紙一重のところで地面を削った。

その手にはあの銀槍が握られている。

間一髪回避できたヴェインは深追いすることはせず守りに入り後ろに飛びのく。

それを追撃することなく見送るローブの集団・・・

「本当に良く動くね、もう少し熱くなってたら確実に仕留められたのに・・・いやあ残念だな〜」


クルトがからからと笑いながら身を固めているヴェインを覗き見る。

「はは! 驚いたかい? こいつらをアイアングラックと同じように見てたら死ぬよ?」

「・・・・・・」

謡うクルトに答えないヴェインを余裕がないためと受け取ったクルトがさらに楽しそうに語りだす。

「こいつらはね、子供のころから暗殺者とするためだけに育てられてきた孤児さ。その身は極限まで鍛え抜かれているしなによりすごいところが・・・」

一息間をおいて語る。その悪魔の所業を実に愉しそうに・・・

「感情がないんだ! はは、暗殺者にとってもっとも不必要な感情。それを僕達はこいつらから消した!! つまりこいつらは人間でありがなら機械! どんな命令も忠実にこなす殺人兵器なんだ!! 魔物なんて自己の意識のないやつらよりよほど使えて、魔獣クラスの戦闘能力を備えた究極の兵器!!」

「なっ!?」

思わず息を呑むレイに満足したように視線を合わせるクルト。

「こんなに便利な兵器他にない! 孤児なんて村を襲えばいくらでも手に入るし感情を消せばその時点で完璧な暗殺者だ! 後は毎日死ぬほど調整すれば・・・なに一週間あればこいつらみたいになるよ」

実に愉快そうに語るクルトを睨む二つの存在・・・

「・・・何? 文句でもあるの?」

不快そうに顔をゆがめるクルト・・・

「・・・その人たちの感情って・・・つまり意識を奪ったってことじゃないか!!」

次第に感情が高ぶってきて激昂するレイ。

「? 意識はちゃんとあるよ? じゃないと命令聞かないじゃない・・・」「そういうことじゃない!!」

感情がうまく制御できない。

「つまり貴方達はその人達の『意思』を奪ったってことじゃないか!! その人たちがやりたいこと、したいと思う心をなくすだなんて!!!!」

体が怒りに震え、感情が移った精霊達まで周囲で騒ぎ出している。

「したいと思う心? 何でそんな無駄なもの残しておかなきゃいけないのさ? 僕達が求めているのは最強の駒。そうだね人としてはこいつらはすでに『死んでいる』けど、兵器としてならこいつらほど『生きている』やつらはいない!! 最高じゃないか!!!」

どんなに睨みつけても高らかに笑いつづけるそいつの存在がついに頭にくる!!!!

「クルトォォォオオオオーーッ!!!」

握り締めたコブシからは陽炎のように聖気が立ち上っていた。

ヴェインも同じ気持ちなのかすっくと立ち並ぶと同じようにクルトを視殺している。

突然激昂しだしたレイをどこかさめた眼差しで見つめるクルト

「・・・別に今殺してもかまわないけど、他にやることあるし・・・僕達はね、これからここの首脳を暗殺・指揮系統をずたずたにしなきゃいけないんだから」

くるりと踵を返して中心部への道を歩き出すクルトに慌てて動こうとするレイを襲い掛かるリザード・・・

「くそっ! 待てっ! クルトーーーー!!」

飛び掛るリザードを撃退しながら意識は去り行く敵を見据えている。

それに一度だけ答えるように振り替えると

「・・・うるさいな、おいお前らはここに残れ。そこのうるさい口を封じておけ」

一言言い残すとそれを最後に奥のほうへと消えていた・・・





戦場に残されたのは再び進攻を始めたリザードの大群と、いまだ未知の戦闘力を秘めた戦闘兵器が三人・・・

位置的にリザードと反逆者部隊に挟撃されるかたちとなっていた・・・・最悪の構図である。

「・・・くそ」

このままじゃいけない

クルトの思い通りにしてしまったら本当にこのコロニーは壊滅してしまう。

「・・・くそ!」

首脳団を殺されては指揮に乱れが起きる。

統率の取れない大軍ほどもろい部隊はないだろう、最悪互いに邪魔しあってしまうのだ

これでは完全に生き残るすべなどない!!

「くそ!!」

忌々しく目の前と後方を油断なく睨みつけると、即座に判断を下す。

「・・・ヴェイン」

「ナンダ」

「クルトを追って!」

「!?」

さすがのヴェインもうろたえた。当然だ、何しろ一人でこいつらの相手をすると自分の主人が言っているのだから。

それは自殺行為に等しい。

「ヴェインしかこの包囲を抜けて追いつくことはできないんだ! オレだとすぐ見失っちゃう。でもヴェインには鼻だってある」

「マテ・・・」

即座に反論しようとするヴェインを見つめる。

「ここがなくなったらオレ達の存在する意味がない! それに、リザードの大群を止めるにはあそこにまた結界を張らなきゃ・・・それはオレにしかできないことだろ?」

「・・・ホンキカ?」

「ああ、本気で正気だ!」

ヴェインの試すような質問にも笑いながら答えてやる。

自分は心配ない、絶対に譲らないと決めた!


「諦めるもんか、だ!!」


その爽やかな笑みについ魅入ってしまったのか・・・ヴェインは呆然と立っていたがしばらくして・・・

「・・・ワカッタ」

静かに受け入れる。

その様子に内心ほっとしたレイだが、唐突に意外な言葉がかけられる。

「タダシ、ジョウケンガアル」

「?」

「・・・ゼッタイシヌナ」

「・・・」

予想外な一言に目をぱちくりさせるレイ・・・

探るように当人に視線を送ると、意外なほど心配そうな表情のヴェインがいた。

その表情は魔獣のものとはかけ離れた、どちらかといえば親友がよく浮べるあの表情・・・

「・・・だったら、オレにも条件がある」

「?」

「ヴェインも、絶対に生き抜いて!!」

「・・・」

互いに押し黙る。

しかし、お互い返す言葉は決まっていた。

その関係は主従の関係というより・・・



「ああ、任せて!!」「フ、トウゼンダ!」



友人のそれに近いものだった・・・・



決まってからは速い、瞬時に連携を取るようにして攻撃をうち放つ。

光弾が一直線に三人組の方向へ飛ぶ。

すかさず反応した三人組は散開するように飛びのき道をあける。

開いた道を光弾を追い越さんばかりに追随していたヴェインが駆け抜けていき、包囲を突破する。

その動きはまごう事なき疾風のものであったが、それすら当然のように見抜きその背に銀槍を投擲しようとするローブ・・・

槍が振動し低い音を立て始める。

その音は聞くものを圧迫するようなプレッシャーを放っていた。

そして今まさにその手を槍が離れようとする直前、妨害するように光弾が飛んでくる。

余裕を持ってそれを飛びのきかわすが、致命的なことに最初で最後のチャンスを失う。

駆け抜けた黒い魔獣を捕捉することは不可能と判断した三人はゆっくりとその視線をレイに集め、逃げ道を塞ぐように展開する。

レイの後方ではすでに声を立ててリザードが迫っており、後は逃がさないようにするだけでも殺せると判断したのだろう・・・

(・・・よし)

レイは内心ガッツポーズをとると、瞬時に精霊達に呼びかけ自らの力を解放し始める。

その体を聖気が覆い、眩い輝きを放ち始めると同時にレイの身体は地を駆けていた。


「ぉぉぉぉおおおおおおおおおっーーーーーー!!!」


迫り来るリザードの前衛に衝突する勢いで飛び込んでいき正面から切り捨てていく。

無論、リザードも黙ってはいない

その身を聖気がなでただけで焼けるような痛みを感じながらもかまわずにその爪を、牙を敵にうちたてようと殺到する。

壮絶な死の波を、しかしレイはことごとくかわしはねのけていく!

瞬時に一対多の乱戦となり外壁近くが戦場と化す。


・・・・・・・・・あぶない!! ・・・・・・


「!!」

精霊の警告に即座に反応してその場を飛びのく。

さがるレイと紙一重の感覚で銀槍がズンッとその地に深くつき立つ。

(くそ、リザードに囲まれてもあの槍は貫通してくる!! これじゃ防ぎようがない・・・)

リザードの群れに飛び込むようにして紛れ込み死闘を繰り広げる理由はここにあった。

三人組は、一定の距離を保ち隙あらばと武器を投擲してくる。

そのつど空気を振動させるあの独特のいやな音が耳を掠めて離れない。

今のところはなんとか体力が持っているため、かわすことも出来ているがあの攻撃はそう易々とかわせるものではない。

さてどうするか・・・

リザードの猛攻だって、そう長くは凌げるものじゃない。

・・・全ては疲弊する前の一時が見せている奇跡に過ぎないのだ・・・


(・・・・だったら!!)


自由に動ける今のうちに打開しなくてはならない。

剣を高く掲げ、その剣により一層の加護を与える。


「キースやガイン教官みたいにできないけど・・・」

その神々しいまでの輝きにリザードの動きが一瞬止まる。

「それでも、一撃の重みならオレだってっーーーーーーー!!!」

叫ぶと同時にその剣を振り下ろす。

その一撃はただ一振りの剣から生み出されたはずなのだが


キシャァァァァァッァァァァァッァァァ!!!!


その射線上にいたリザードをまとめて消滅させる威力を持っていた。

「はあ、はあ、はあ、次は・・・」

荒い息を落ち着かせながら、再び剣に力を込めていく・・・が

「!!」

あわてて剣を前に持っていく、と同時に銀槍=ブーストランスが一直線にその剣に突き刺さる。

「ぐううぅぅぅぅっっっ!!!」

拮抗する聖気と邪気、互いに宿った力が打ち消し合い・弾き合い、反発しあう

力は互角であったが、そこには大きな開きがあった。

ブーストランスは投擲されたもので

光の剣はレイが支えているものだった・・・

次第に足に力が入らなくなっていき、最後に大きく後ろに弾き飛ばされる。

ガッと鈍い音がした。

どうやら後頭部を地面に叩きつけたようだ・・・

ぬるりと血が流れる感覚がある・・・

朦朧とする意識の中、何とか剣を支えに立ち上がろうとするがそこにリザードの波が殺到してくる。


「やば」


短く一言呟く・・・

今の一撃でかなりヤバイ状態におちいったようだ。もっとも剣が間に合わなければすでにこの世に存在すらしていなかったが・・・

それでも事態は好転を見せない・・・

リザードの数はいまだに減った様子を見せないし、こちらを取り巻いている三人組は冷静に事態を見守っている・・・

と、一人がゆっくりとそのエモノをこちらに投擲した。

ブーストランスは即座に起動し空中においてその身をさらに前えと加速していく。

迫る銀槍を見つめる。

まるでスローモーションのようにゆっくりとこちらに飛んでくる。

まるでそれが運命だというように酷く、しかし確実にこちらの命を刈り取るため飛来する。


「・・・かよ」


その光景を睨みつけ呟く。

いや、呟きは声を荒げて叫ぶようにして再び振り絞られた。


「死ねるかよっ!!!」


こんなところで、何一つ成すこと出来ずに・・・約束すら果たせずに・・・



「死んでたまるかっ!!!!!!!!!!!!」




せまりくる運命を完全否定するように叫ぶと剣を握る手に力を込める。


ブーストランスを叩き落すためにその剣を持ち上げた。


瞬間


槍は突如として落下した雷によって打ち落とされる。

「!!?」

地面に横たわり、その身を燻らせている槍を見つめながら呆然と立ち尽くす。

いったい何がおきたのか、レイと三人組は慌てて周囲の気配を探る。

しかし、レイにはその余裕がなかったのを忘れていた。

背後にせまったリザードがその狂爪をつきたてんとばかりに飛び掛る。

気づいたが遅い、振り向くだけで精一杯でそれを防ぐことはかなわ―――


ギィィンッ!!


紅い玉の装飾が施された盾を掲げてそれを防いだ人物は流れるように呟くと、盾を剣に変化させ即座にリザードを切り捨てる。

「レイ様!!」

振り返った女性はすでに涙をためていた。

もちろん、彼女はオレのよく知る人物だ。

そのレモンイエローのきれいな髪が風になびいてこの場においてもなお美しくある。

「・・・マナ」

ほっとしたのか、気が抜けたのか、意識が急に飛びそうになる。

それを唇を強く噛む事で何とかつなぎとめる。

「レイ様お気を確かに!」

崩れ落ちそうになる身体をあわてて駆け寄ったマナが支えてくれる。

その柔らかい感触がたまらなく今は嬉しい。

「ああ、大丈夫、だいじょう・・・」

再び遠のきかける意識にふらつく思考で押さえつけていると、遠くで再び銀槍を構える姿が見えた。

急激に広がる不安を払いのけすっくと立ち上がるとマナを庇うように立つ。

「マナ! 気をつけてあいつら普通じゃない」

震える足を叱りつけ、血が伝う両手を奮い立たせて剣を握る。

「!! レイ様、やめてください。今は私達に任せて休んで・・・」

話す最中も投擲されたブーストランスに意識を集中させるがどうしても槍がニ・三本増えて見える。

(く、ちょっと無理か)

背中に冷たいものが流れる。

迫り来る死をなんとか受け止めようとあがくが、

突如としてその必要が再びなくなる。

雷が再び槍を打ち落としたのだ。

(あ、れ・・・? そういえば、マナ『私達って』・・・)

後ろに倒れかける身体を再びマナに支えられながらも

さらに背後から近寄ってくる気配に気づき、無性に嬉しくなった。

顔なんて見なくたって、存在を確認しなくたって、すでにその正体は明らかだった。

「・・・メイア・・・」

「また、ずいぶんぼろぼろね。あんた」

振り返る力すらなく、顔を見ないでの会話であったが互いに苦笑しているのがわかる。

「ほら、ここは私達に任せてあんたは少し休んでなさいよ」

ついに横に並んだ彼女を目を動かすことで確認する。

そこには薄い紫色の髪をした、紫電の女神が立っていた。

その微笑は見たもの全てを魅了する力が宿っている気がした。

「・・・うん、任せた」

その信頼ゆえに・・・

レイは短くそう答えると目を瞑り小さく寝息を立て始めた。

「任された・・・ったく、無理しちゃって。さってと」

軽く指を鳴らすようにして双方の敵を睨みつける。

「やるわよ、マナ!」

「・・・はい」

「?」

やけに返事が暗い・・・

不思議に思ってみてみると、案の定マナはレイから離れようとしていなかった。

「マ〜ナ〜? 心配なのはわかるけど・・・」

「・・・はい」

それでも暗い表情、やはり後悔している様子が見て取れる

「・・・あの教官に、『ガイン小隊は先行したレイの援護に向かえ! 判断はおのおのに任せる!! さっさと行ってやってあのガキの面倒見て来い!!』って言われて慌てて駆け出してきたけど、途中であなたと合流できたのは幸いだったわ。あんなの相手に一人だなんて絶対嫌よ」

腕を組んで神妙な面持ちで『ある人物』を真似る。

声音はどうあれ、メイアはその偉そうな態度を正確に真似ていた。その態度はまるで普段のメイアのそれと酷似してはいたが

あの教官のものとも酷似していた・・・詰まるところ、二人は似たもの同士なのかもしれない。

それでもリアクションの薄い友達を仰ぎ見て、腕を組みながらため息をつく。

マナが見上げてきてその瞳と合う。

正確にその思いを汲み取るとメイアは優しく説く。

「レイの守りはマナに任せるわ。余裕があったら援護よろしく♪」

「・・・はい」

それでも回答は晴れない・・・

どうしたものかと思案した上で、突然メイアがぽんと手を叩くと悪戯を考え付いたガキ大将のような笑みで

「レイをこんな目に合わせたやつらにしっかり報復しないとね?」

「!! はい!!」

今度は即答であった。

その瞳にはすでに闘志が燃え立ち、誰にも負けない純粋な気持ちが宿っていた

「(わかりやすいわね・・・ふっ)それじゃ、いくわよ!! マナ!!」

「ええ、わかりました! メイア!!」

互いに信頼し前より打ち解け合った様子で名前を呼び合う二人

その絆はどんな結界よりも固く二人を結んでいる。

そして・・・

二人に正対していた三人とリザードが再び動き出すのだった・・・・・・


        第13話(1)完

                                  (2)へ続く・・・

コメント(1)

がふ・・・自分の筆記スピードについていけない・・・

どんどんアップすると自分の頭の中での整理する時間が削られて・・・(苦笑)

それでももうひとふんばり! あとちょっとだから

みなさんにも辛抱願おう!(笑)

あと少しで終わるから

それまでどうかお付き合いを・・・

ここまで読んでいただきましてありがとうございます。

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