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みんなにやさしい自作小説コミュのREKIRIMA(5)

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                  第五話 初任務




ここはウッドコロニー中心部。そして目の前に建っているのは、周りから一際異彩を放つ建物『アルカイック士官養成学校』である。

この『アル学』のちょうど校門の部分に当たる入り口に今、二人の若者が立っていた。

一人はかなりのくせっ毛なのであろう前髪が立ったままぼさぼさの黒髪と見つめるもの全てを純粋に受け止めてしまいそうな黒双の瞳で、

どちらかと言うとカッコイイの部類に入る顔立ちなのだがどうも青年の取り巻く雰囲気が『クール』な感じを盗ってしまっている。

どちらかというと親しみやすい『優しいお兄さん』という感じの青年でいて、顔に浮かんでいる笑顔には『ワイルド』というより『やんちゃ』という形容が当てはまりそうな何処か子供っぽさ残している青年である。

もう一人は、同じ黒髪なのだが前者と違ってちゃんと手入れのされた髪。前者と同じ黒い瞳なのだが、その眼光は鋭く前者とは反対に近寄りがたい雰囲気を出している。

かけている眼鏡があいまって見た人に知的で冷静な人物の印象を持たせる。

身長はレイより少し背が高いぐらいで容姿も整っている、『美形』という言葉がよく当てはまりそうな青年である。

二人とも一見すればまったく正反対で気が合いそうになく見えるのだが、二人は仲良く話をしていた。

「到着〜」

『やんちゃ』な雰囲気の青年【レイ・ジーニアス】が明るい声をあげた。

「・・・また、ぎりぎりか・・・」

鋭い眼光の青年【キース・ハング】は時計を見ながらぶつぶつ文句を言う。

「・・・どうして余裕を持って出たのにぎりぎりに着かなきゃ行けないんだ・・・」

「まあまあそう言わずに、着いたんだから。それでいいじゃない?」

レイはいつもどうりといった風に自然とキースをなだめる役にまわった。

「うるさい、諸悪の根源が何を言う!」

キースは即座に言い返してくる。

「君がいちいち会う人と話し込まなければ余裕を持って着けるはずだったんだ」

「諸悪の根源って・・・だってしょうがないじゃん。散歩の時よく話す人と偶然にも会いまくったんだから・・・」

レイは渋りながらも抵抗を諦めない。が、

「しょうがないだって? だったらたまには僕の計画どうりに事を進ませてみろ」

キースは一喝すると、アル学の中に向けて歩いていく。

「そんな怒らなくたって・・・」

そうこぼすと、レイもキースの後を急いで追いかける。



<アル学第1ホール内>



「なんとか時間までには着いたようだな・・・」

手紙で指定された第1ホールに着いたキースは、周りで自分達のように時間を潰している人達に目をやりながら言った。

「ここにいる人達って、全員オレ達と同じあの試験を合格してきた人達だよね・・・」

「恐らくそうだろうな。」

レイも室内をそれぞれ自由に散っている人達を見まわしながらキースに話し掛ける。

そんなレイにキースはそっけなく答える。



室内には30〜40名位の人達がいた。

そしてその中からレイは一人の人物を見止めた。



さっぱりとした紺色の髪の毛で、穏やかな蒼い瞳でたたずんでいる。青年の落着いた雰囲気が遠目からでもハッキリと感じ取れた。

身長はレイとさほど変わらず、まわりの人に圧迫感を与えないさわやかな印象を受けとることが出来る。

その人物【リオ・アース】はレイ達に気づくと軽く会釈をした。

レイはそれに手を振り応えるとリオの元に歩み寄って行く。

自然とその後ろをキースもついていく。


「久しぶり〜、リオも合格したんだね! おめでとう!」

「・・・おめでとう・・・」

レイの挨拶にリオも合わせてくる。

どうやらレイ達に対しておめでとうと返したようだ。

「ありがとう、これからも一緒に仲良くやろう」

「・・・(コクン)」

そんな少ない言葉を理解してレイは会話を成立させていく。



レイたちが軽い会話をしていると入って来た時のドアとはまた違う室内の奥のほうにあった別のドアが開いた。

そこからは前回の試験の時にいた人達(創立者を始め十数名の教官達)が入ってきた。

もちろんガイン教官の姿もある。



「今この場にいる者は、今回の入学試験を合格できた者達だ。つまり君達はこのアルカイック士官養成学校の生徒であるということだ。これから君達はここで訓練や勉学をしていきつつ、この都市を守るという重大な・・・」



入学式では恒例の校長先生(もとい創立者)の長〜いお話がまた始まった。



そしてレイはぼ〜っとしながらまたも、窓から見える空に視線をさまよわせる。

「(暖かいなあ・・・校長先生は何を言ってんのか難しくてわかんないし、それにしても今日は本当にいい天気だな〜、お日様が気持ちい〜、散歩したらさぞかし気持ちいいんだろうな〜)」

暖かな日差しに体から力を抜きリラックスしながら虚空に思いを馳せていた頃、ちょうど校長先生の話しも終盤に向かっていた。




「・・・と思う。ではこれより君達には先程述べた通り班ごとにわかれてもらう。教官の方達が今から呼ぶのでその指示に従うよ
うに。以上!」



「(思う・・・って何を?)」



意識がふっと戻って来たレイは最後のほうしか聞こえず校長が何を言いたかったのかさっぱりだ。

周囲では入学者達がザワザワと話している。



(?)



まったく人の話しを聞いていなかったレイにはなんとなく周囲を観察していることしかできなかった。

すると、不意に名前を呼ばれた。



「レイ・ジーニアス! ・・・レイ・ジーニアスいないのか!」

名前を呼んでいたのはガイン教官だった。

「は、はい! います。ここにいます!」

レイは慌てて手を挙げ名乗り出ると急いでガイン教官のもとに駆け寄った。




「レイ・ジーニアス、お前が俺の班に来るとはな・・・その性根きっちり叩き直してやる、覚悟しろ!!」

ガイン教官は妙に嬉しそうに拳を『ぽきぽき』鳴らしている。

「お、おね、お願い、します・・・」

レイは急に寒気を感じた気がした。なぜか本能が生命の危険を知らせてきている気がしたのだ。

否、気のせいではないであろう・・・

実際レイは普通に言おうとしたのに口が『ガタガタ』震えてうまく回らない。



一種の恐慌状態に陥っているレイを面白げに見ていたガイン教官は思い出したように片手で持っていたファイルに目を通して名前
をまた呼び始める。



「・・・!」



遠くでガイン教官が誰かを呼んでいる。



しかし、今のレイにはそれを落着いて聞いているほどの余裕はなかった。

「(こ、こ、殺され、る?)」

可愛そうなほど顔を青くして変な汗を流しているレイに聞きなれた声が飛んできた。



「なんだ、レイもいるのか・・・これは腐れ縁だな・・・」



そこには眼鏡を片手で押し上げながら、実に不満そうに言ってきたキースが立っていた。



「な、なに! 腐れ縁だなんて人聞きの悪い・・・」

「これを腐れ縁と言わずして何を言うんだ?」

レイは何とかのその皮肉を言い返すが、キースは即座に言い返してくる。



形はどうあれキースに恐慌状態をといてもらったおかげで体の震えがおさまっていく。



レイとキースが軽口を叩き合っていた(一方的に?)時、二人の方に近づいてくる人影があった。

それにレイとキースが気づいた時には彼女はもうすぐそばまで来ていた。





回りの人から視線を集めそうな鮮やかで、だが、濃すぎないさっぱりとしたきれいな長い紫の髪。目と鼻が主張しすぎず、異性・同性とわず惹きつける魅力を持つ不思議な雰囲気を持つ女の子であった。




「・・・何?」

女の子はレイとキースの視線に気がつき興味なさげに聞いてくる。

「あ、いや、別に・・・」

レイは何を言っていいのか分からず言葉を濁す。

ん? このフレーズ前にもあったような・・・



「これで全員だな。ここにいるメンバーが今後訓練・任務のときの班行動時のメンバーだ・・・いつまでもここにいてもしょうがない。移動するから俺の後をついてこい。」



「(班行動? 何のこと?)」

いきなり歩き出したガイン教官の後を慌ててついていきながらレイは頭の上に疑問符を付けていた。

そのあからさまにとまどっている態度にキースは気づくとため息を深くつき補足してくれた。



「レイ・・・また人の話を聞いていなかっただろ? ・・・班行動は訓練で互いに切磋琢磨するため、任務では助け合い作業効
率を上げるため行う集団行動だ。君みたいに周りからいろんな意味ではみ出している者にとっては苦手なことだと覚えておけ。」

「あいあいさー♪」

キースの大まかな説明をレイは「自分にとって苦手なこと」とだけ認識したようだ。

「・・・しかし、教官はいったいどこに向かっているんだ? このまま行くとアル学を出ることになるが・・・?」

未だ変わらぬ歩調で歩き続けるガイン教官(の背中)をキースはいぶかしげな視線で見つめる。

それに気づいてるかのように、背中越しにガイン教官は口を開いた。

「これから郊外に出る。班員は各自自己紹介くらいしとくんだぞ。」

あっさりと口にされた事実に2人は驚いた。

「郊外!? わー、オレ郊外出るの初めてー」

「そっちか! 問題はそんなことじゃないだろ」

思わず漏らしたレイの感嘆にキースは迷わずつっこむ。

「ガイン教官! 僕達は入学してからまだ何も教えられていません、いわば素人もいいところ・・・そんな僕達がいきなり外に出るだなんて・・・自殺行為もいいところです」

「ふむ。キース、お前はなかなか頭が切れるらしい・・・早合点するな! これは任務といってもウッドコロニーの外壁近くをただ巡回するだけの他愛ない任務だ。魔物なんて早々出てはこないぞ。」

「・・・魔物が出てきたらどうするつもりですか?」

「もちろん戦闘だ! 当然だろうが?」

「僕達は素人なんですが・・・」

「だから早々出てこないと言ってるだろうが」

(だめだ話が通じてない・・・ほんとに教官か? ・・・)

キースは頭を抱えたくなった。まるでレイが二人いるみたいな錯覚を感じてしまう。

「まあ気休め程度に言っておくが、お前らは受験者の中ではトップクラスの実力だ。それにこの俺がいる。そんな危険なことはまずない! まっ、まずは緊張しすぎないことだな」

そういうとガイン教官は「がははっ」と派手に笑い飛ばす。

「オレの名前はレイ、こっちはキースよろしくね。」

レイは任務のことはあんまり気にならず、もう一人のチームメイトの女の子に自己紹介した。

「・・・メイア・リトライトよ、せいぜい私の足を引っ張らないようにしてよね。」

長髪の紫髪をさわやかに揺らしながら、メイアと名乗る女の子はレイの方には一度も視線をやらずに歩き続ける。

「え、あ、が、がんばるよ。」

レイは初対面の人物にたいしてあまりの言い方に面食らって思わずどもる。

「あ〜も〜、うざったいからそんなに話しかけないでくれない!?」

メイアは心底迷惑そうな顔をしながらレイに返した。

「ご、ごめん・・・」

「だ・か・ら〜・・・」

はきはきしないレイの態度がとことん気に入らないのかメイアはレイに突っかかっていく。

「リトライトさん、君はもしかして、あの『リトライト家』の人かい?」

そんなレイを見かねてキースは口をはさんだ。

「・・・そうよ! 何か文句ある?」

「いえ、何故リトライ家の人がここにいるのかと思いまして・・・」

「家は関係ないわ! 私は一人でも何でもできるのよ。」

メイアは目をつり上げ気味にしてキースをにらみつけた。

「・・・キース・・・リトライト家って?」

レイは二人の話についていけずにキースに尋ねる。

「君って奴は・・・リトライト家っていうのはこのウッドコロニーの商業関係の中心で活躍している名家でこのウッドコロニーの首脳会議にも出席するほどの権限を持っているほどだ、つまり名家中の名家=貴族って事・・・ウッドコロニーに住んでいてそんなことも知らないのか?」

キースは溜め息混じりにレイに教えてくれた。

「へぇ〜・・・すごいんだね、メイアって。」

「気安く呼ぶなっ!」

感心したレイはメイアの叱責をまるで気にしないで話を続けていく。

「あ〜、お前ら元気があるのはいいことだが、外に出るまではちゃんと体力とっとけよ」

ガイン教官は軽くたしなめるだけでずんずん歩いていく。

「・・・しかし、ガイン教官・・・先程『お前らは今回の受験者の中ではトップクラスの実力だ。』と言いましたが・・・まさかこれもですか?」

キースは心外そうにレイを指さすとガイン教官に話しかける。

「無論そんなわけないだろ。こいつは今回一番下だ。お前ら二人とバランスをとるのにこいつを入れたんだよ。まあ、俺がこいつをいじめたいという理由も少なくないがな・・・」

「なるほど」

キースはぽんっと手のひらをたたき素直に納得する。

「そんな・・・」

レイはすがるように声を上げた・・・





〈コロニー入り口〉





「さて、ここから外に出て外壁沿いを歩いていく。予定では明日の夕方には帰って来るつもりだ。」

ガイン教官は外壁と外壁の間に挟まれた部分に立っている大きな扉を前にして、三人に本日の日程を簡単に説明する。

「これの向こうにはついに外の世界が広がっているのか〜。なんかわくわくするな〜。」

扉を前に心躍らせているレイにはガイン教官の言葉は届いていない。

「レイ、あまり遠足気分にはならないことだ。外は中と違って魔物がいる、気を抜いていると命を落とすぞ・・・」

キースはあくまで冷静に見つめている。

「外の世界・・・」

メイアは外面こそ冷静だが、内面ではレイとあまり変わらない状態のようだ。

「・・・まあ、聞くより見た方が早いな。じゃあ、出るぞ!」

ガイン教官は言うと扉の前に立っていた門番の人に話しかけ扉を開けさせる。

思ったよりずっと重く厚い扉が重い音を立てて動き出した。



グゴゴゴゴッッ・・・・・・ 



ガイン教官は扉をくぐるとまた先頭をきって外壁近くの森の中へと歩き出す。

レイ達も急いでその後を行く。





森の中を歩くレイは初めて歩くトコを楽しげに歩いていた。

森の中はいたって静かで途中聞こえてくる動物達の鳴き声や鳥達のさえずり、木々のさざめきが心をより一層高鳴らせる。

「ねえねえキース、どこを見ても緑がいっぱいだね〜。なんだか木が生き生きしてるみたいだ〜。」

自然と言葉も弾んでいく。

「森の中歩いているのだから当然だ、それにコロニー内と違って外は整地されてないからな。」

キースはやはり冷静に答える。

それを気にした風もなくレイの足どりはますます軽くなる。

「はぁ〜、空気がおいしいー」

「別に中と変わらんだろ」

「・・・ちょっとは静かにしていられないの?」

そんなやりとりをしている間も森の中をぐんぐん入っていく。




ザッ ザッ ザッ ザ・・・




森の中を歩き出して3時間ほどたった頃、ガイン教官は不意に立ち止まる。

いきなりのことに気づかずレイは勢い余ってガイン教官の鍛えられた背中に顔からぶつかっていく。

「あてて、どうしたんですか?」

レイはぶつけた鼻を押さえながらガイン教官に尋ねる・・・が、返事は帰ってこない。

ガイン教官は眼だけを動かすようにして辺りを見回す。

その不審な行動にレイは呆然としていると、不意に左の草むらから何かが飛び出してきた。

「キース!」

ガイン教官は咄嗟にレイをかかえて飛び退きそれをかわすとともに、キースの名を叫ぶ。

果たして、キースはガイン教官に叫ばれた意味を理解すると一番後ろにいたメイアを押し飛ばして自らもそっちへと飛ぶ。

「きゃあっ!! いきなり何するの・・・」

メイアは抗議の声を上げるが飛び出してきたそれを確認すると、思わず息をのむ。

出てきた魔物は四本足で大地に立ち、牙だらけの口からだらだらと汚らしく唾液を垂れ流している1.5メートルを超える大トカ
ゲだった。

トカゲはすぐさままた草むらの中へと突っ込んでいき、獰猛な唸り声をあげてくる。

「ちっ、魔物だ! お前らいきなり実戦だ、俺がいるからって気を抜くなよ。実戦では自分の身を守るのは自分だけだ。囲ま
れてるぞ!」

ガイン教官は叫び腰にさしていた剣を抜き放つと草陰から赤く目を光らしてこちらをうかがっている魔物達に刃を向ける。

(うえぇぇ〜!? さっき俺がいるから大丈夫だって・・・)

レイもそれに習い、森に入る前にガイン教官から渡されていた剣を構える。

「こいつらは【リザード】、魔物の中でも繁殖能力がかなり高いトカゲタイプだ。間接攻撃などの類はないD級の魔物。せ
いぜい奴らの爪と牙にだけ注意しろ!」

ガイン教官は説明しながら草むらに突っ込んでいき一匹・2匹とどんどん切り捨てていく。

「す、すげーっ・・・」

ガイン教官がリザードの包囲網の一角を崩したおかげでリザードはかなり浮き足立っていた。



キシャーーーッ



感嘆していたレイに向かってリザードが一匹飛びかかってきた。

「う、うわっ!?」

驚きながらレイはリザードを近づかせないように剣をでたらめに振り回す。

そのめちゃめちゃっぷりにリザードは警戒するように、より体制を低くし唸り声をあげる。

すると、レイの横からもう一匹近づいてきて一際大きな唸り声をあげた。

「も、もう一匹きた!?」

横から襲いかかろうとしていたリザードに気がいった瞬間、その一瞬の隙をついて正面にいたリザードが飛びかかってきた。

「しまっ・・・」

レイは目を強くつぶり、痛みに耐えようと身を固くした。



・・・・・・



しかし、痛みはいくら待ってもこない。

ゆっくりと目を開けると、目の前で今まさに襲いかかろうとしてたリザードを切り捨てたキースがレイをかばうように立っていた。

「何をやってる。レイ! 集中しろ」

キースはレイに背を向けたまま怒鳴りつけた。

「あ、ごめん・・・」

そのときレイにはキースの背中がとても大きく見えた。

キースはすぐさま他のリザードに走っていきその背中に剣を突き立てる。

いきなり現れたキースを警戒するようにその周りを四匹のリザードが取り巻く。



キシャーーーッ キシャーーーッ 



キースはリザードにお構いなく取り巻きのうち、正面にいた一匹に斬りかかる。

しかし、多勢に無勢と実戦経験のなさからか、キースはもう息が上がっていた。

(クソッ・・・数が多い・・・)

キースが三匹相手に攻めあぐねていたとき、レイはキースの背後の草むらから赤く光る一対の眼に気がついた。

(まずい!!)

気づくのとリザードが動くのはほぼ同時だった。

リザードはまだ自分に気づいていないキースの背中にその鋭く尖った凶悪な爪を突き立てんと飛びかかる!!



やめろーーーーーーーーーー!!!!!

                        《ドクン》



周囲が真っ白い輝きに包まれていくのを感じる。



             《ドクン》



リザードの動きが、キースの動きがスローモーションのように見えた。



   《ドクン》



心臓の鼓動が、周りに聞こえそうなほど大きく、熱く、鳴り響く・・・



       ・・・我が名は『ノヴィス』主の魔の名なり・・・



       盟約のもとに我が意志を呼びかけたまえ・・・



       我は主の力を具現化するもの也・・・



胸の中で、頭の中で、誰かが語りかけてくる。

それと同時にレイの中で何かが解放されるのを感じた。


「やめろーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

レイの体は叫びに呼応するかように、眩しく光り輝いていった。

その場にいた者、キース・メイア・ガイン教官・リザード・・・

全員が例外なく森の木々を照らす光を、そしてその光をまとい光り輝くレイの体を凝視した。

「レイ・・・」「あいつ・・・」「レイ・ジーニアス・・・」

辺りがレイから放たれる光に飲まれ、レイが肩を揺らして息を吸っていることに気づいたときようやくガイン教官は我を取り戻した。

(こいつは予想以上だ、恐らくこの光はレイ・ジーニアスの体から漏れ出てた力が起こしているのだろう・・・)

ガイン教官は冷静に考察すると、手近にいたリザードを切り捨てる。

「キース、メイア! ぼさっとするな! リザードはまだいるんだぞ!」

ガイン教官に呼ばれて我に戻ったキースとメイアはすぐさまリザード達に剣を向ける。



キシャーーーーーーッ



リザード達はレイの光を見て固まっていたが、仲間の悲鳴を聞いてビクリと震えると、逃げ出し始めた。

それはまるで、目の前のガイン達の剣からではなく、自らの体を照らしているレイの光から逃げるように・・・



「待て! キース・メイア、これ以上はいい、深追いはろくなことが起こらないからな」

ガイン教官はキース達に呼びかけると、次第に光が弱まっていくレイに近ずいていった。

「・・・レイ・ジーニアス・・・レイ・ジーニアス!」

光がおさまるとレイはキースの方に顔を向けわずかに口を動かし「よかった」と呟く。

するとレイは力が抜けたようにその場に崩れる。

慌ててキースが支える。

「レイ、レイ! 大丈夫か?」

しかし返事はない。

「ちょっと、そいつ大丈夫なの?」

意外なことにメイアが心配そうに覗き込んでくる。



   Zzzzzzzz・・・    Zzzzzzzz・・・



「寝てる・・・しかも英語で・・・この野郎・・・」

ホッとしたキースは心配した分その反作用のように怒りがむくむくと湧いてくる。

思わずぐーでレイの後頭部を殴る。



    ZzzzGuッ!zz・・・   Zzzzzzzz・・・


「あ、一瞬「ッ」が出た・・・」

レイがどうやら無事だと分かるとメイアも何故だか分からないがホッとした。

「心配するな。おそらくコントロールできない力が膨大に溢れ出てきて消費しただけだろうから疲れて眠っているだけだ・・・」

「教官さっきのはいったい・・・」

「俺にもまだよく分からんが、実技試験の時今のと似たようなことがあっただろ? あれじゃないか?」

「何故こんな事ができるんでしょう・・・」

「あ〜、それは【属性検査】やっただろ? あのとき潜在能力を引き出す盟約を結んだんだ。お前らもコツさえ掴めばもう使えるぞ」

「えっ?」

「キース、お前は俺と同じ炎・そしてメイア、お前は雷だったな?」

「はい」「ええそうだけど?」

「それがもう使えるって事だ・・・とりあえずレイ・ジーニアスがこれじゃあ、これ以上進む事はできんだろうから今日はここで野宿だ」

「はい」「ええ!? 聞いてないわよ!?」

想定していたんだろうキースは繭ひとつ動かさずに返事をする。がメイアは驚きを隠せない。

「何か不満か?」

「不満って、当たり前じゃない!! コテージは? コックは? ベッドは?」

やたら文句を並べてくるメイアをうるさそうに見るガイン教官。

「コテージ・・・ある分けないだろうが。コックは自分、満足いく料理ができればよし。できなければあきらめろ。ベッドなんてコテージと以下同文」

「えええええっっっっ!?」

メイアの絶叫が周囲に響く・・・

「私に男と一緒に夜を過ごせっと言うの?」

「安心しろ。俺はガキには興味ねぇし、キースは紳士だろう? レイは・・・ガキも同然なうえに、ほれこの通りすでに寝ている」

「でも・・・」

まだ食い下がろうとするメイアだが、この男に抗議しても無意味だと否応もなく理解してしまい口ごもる。

「ああ、ついでにメイア。お前俺の分も飯作れ」

「えええっ!?」

メイア再び絶叫

「なんでよ!? さっきあんた自分で『コックは自分』って言ってたじゃない!」

「黙れ、教官様に逆らうんじゃねぇー」

「横暴よー!!」

まだ文句をぶつくさいっているメイアを無視してガインは大きな木の下の根辺りにレイを寝かせるようにキースに言う。



こうしてレイ達の初任務の初日は更けていくのだった・・・






         第五話完



第六話へ   

コメント(1)

もう本当にお疲れ様です!
長い駄文は私にお任せ! のS木です。
やっと動き出したと思ったらまた中途半端という情けなさ・・・
確か次回は短いはずだけど・・・
ほっけみりんさんすいません!!
僕も自分で作っときながら設定忘れてました(恥)!!
キース黒髪なんだ〜、へ〜。メイアもさっぱりとした紫(さっぱり強調!!)なんだ〜・・・
毒々しい色じゃないのは良かった良かった(笑)

皆様、いつも読んでいただきありがとうございます。

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