話は前後しますが、ビーチボーイズのツアーから降りると
間もなく、キャンベルにようやくソロ歌手としての
デビューの機会が訪れます。彼のプロデューサーに
収まったのは、フィル・スペクターのセッションでの
同僚であったアル・デロリーでした。キャンベルの
デビュー曲はプロテスト色の強いフォーク・ロックの
「Universal Soldier」、そして2曲目は
ブライアン・ウィルソン直系のポップスである
「Guess I'm Dumb」という具合に、当初のキャンベルの
音楽は焦点が絞りきれていない感がありましたが、
1967年の「By The Time I Get To Phoenix」によって
その音楽性を確立します。
「By The Time I Get To Phoenix」はジミー・ウェッブの
曲で、オリジナルはウェッブを見出した
ジョニー・リヴァースによるレコーディングです。
リヴァースがアルバムに収めたオリジナル・ヴァージョンを
キャンベル(デロリーという説あり)が聴いて、
カヴァーすることを決めたそうです。キャンベルの
カヴァー・ヴァージョンはリヴァースのオリジナルと
ほぼ同じ編曲ですが、キャンベルのマイルドな唱法によって
繊細さが格段に増しており、見事にグラミー賞の
ベスト男性ヴォーカル賞に輝きました。
「By The Time I Get To Phoenix」での華麗なストリングスを
バックに繊細な男心を描く作風はキャンベルの
トレードマークとなりました。その後もジミー・ウェッブの
「Wichita Lineman」や「Galveston」を初めとしていくつかの
ヒット曲を出しましたが、いずれもこのサウンド・スタイルの
楽曲です。この、ちっともカントリーっぽくないサウンドの
彼がなぜカントリー歌手と呼ばれるかというと、おそらくは
テレビのカントリー番組の司会役に抜擢されたからという
部分が大きいのでしょう。
それはともかく、このWEBサイトをご覧のみなさんには、
彼の音楽を聴く際にストリングスとヴォーカル以外に
もうひとつ注目して頂きたい点があります。それは、
セッション・ミュージシャン時代に培った素晴らしい
ギター・ワークです。彼の音楽にはストリングスの影に
埋もれがちになりながらも、必ず彼自身による
アコースティック・ギターが入っています。当たり前と
言えば当たり前なのですが、これがじつに素晴らしいのです。
どの曲のギターも見事なのですが、
私が最も気に入っているのは「If This Is Love」という
曲です。普段はストリングスにおされ気味ですが、
この曲ではキャンベルのギターが爆発しています。
彼のベスト盤は何種類も発売されていますが、この曲が
収められていないものは買ってはいけません!