このように、事件の当事者が直接本を書くということは、実に稀である。当事者自身の本としてはヨランド・ムカガサナが唯一の例といえよう。しかしもともと看護士だったこの女性の本には当然編集者の手が加わっている。 Yolande Mukagasana : La Mort ne veut pas de moi〔注:ヨランド・ムカガサナ「死は私を欲しがっていない(仮題)」。この女性はまたその後ルワンダに戻り、70人あまりの加害者、被害者にインタビューして、写真とともに編集した証言集を発表している Les Blessures du silence「沈黙の傷跡(仮題)」〕
そんな中、それでも「読み物」としての形をじゅうぶんに持ちながら、「記録」として現実を美化せずに、またセンチメンタリズムにも流されないちょうどいいバランスを保っているものとして、L’homme qui demanda du feu(Ivan Reisdorff イヴァン・レイストルフ:「火を求めた男(仮題)」)を挙げたい。この本は1978年に刊行された。つまりこのたびの大虐殺を語るものではない。50年代の事件の話だ。しかし最近の事件を受けて復刊されたものである。 http://www.amazon.fr/exec/obidos/ASIN/2804010759/