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mixiバトン小説倶楽部コミュのリレー小説[喫茶屋domo voy]

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当たる事で有名だったとあるテレビ局の
人気美人お天気キャスターの予報が一月十七日、
よりにもよって私が自宅に
折畳み傘を忘れてしまった日に外れてしまった。
天気予報では晴れが続くと言っていたのだが、
自宅の近くの朝高駅まであと半ばというところで
水道管の蛇口から漏れだすような細かい雨が降りだし、
私が目的地につく頃には、雲の上で水を並々と入れた
洗面器をひたすらにひっくり返しているのではないかと
疑う程に雨量は上昇していた。
朝高駅のホームは地下にあるが故に雨の影響は受けない。
しかし、
私はいつまでもここに留まっている訳にはいかない。
雨が降っているならば降っているで少し様子を
見なければならないと思い、
地下ホームから地上の改札へと、
雨のなか駅へと駆け込んだ人たちの靴で濡れた
滑る階段を私は足取り重く昇り、鉛のような
重さになった定期券を改札に通した。
改札に配置されたガラス張りの自動ドアから
外の様子を眺めてみると、
朝高駅に付く前よりも雨は止むどころか、
むしろひどくなっている様子であった。
予想を外したキャスターをあまり責めてはいけないと
私は思っているが、このとき、
彼女のことが憎らしく思えてしかたがなかった。
しかし職務怠慢のキャスターにいくら文句を言っても、
現実雨は縦というよりも
横に降り続けているのだから仕様がない事も事実である。
 
それよりも、今からどうするか。
これが今一番考えるべき問題であった。

悲しいことに、この駅から自宅までは距離が
相当あるために「濡れてもいいから歩こう」という、
古代ギリシャの勇者でも思いつかないような愚行は
選択肢には無かった。
しかし、駅を出てすぐの場所に設置されている
タクシーの詰所には人気ドラマの撮影場所にたかる
ミーハーグループのような行列が出来ていて、
並ぶ気にすらならない。
しかも私の家の近くにバスは通っていない。

さて、こうなると私の選択肢は
そう残されている訳ではない。
仕方なく私は駅を出てすぐに着く喫茶店に入り、
時間を潰すことにした。
私は鞄を傘がわりに使い、頭の上を覆い、
濡れて色が少し濃くなった気がする
アスファルトを走り抜けた。
そうして三十秒もしないうちにその店には着く。

喫茶店の名前は「Domo Boy」。
日本語読みでドモヴォーイ、由来について
は私の感知することではない。
うまいコーヒーと静かな時間が過ごせればよい、
いつものように気むずかしい店長がいる
その売れない喫茶店へと私は入った。

コメント(7)

カランカラン・・。
ドアに付けられたベルが心地よい響きを立てる。
「いらっしゃ・・・うちは雨宿りのみの客はお断りだよ」
カウンターでコーヒー豆を挽いていたマスターがずぶ濡れになった私を見るなり言った。
「あぁ、それは残念。では、仕方なくその不味そうなコーヒーをいただいて行こう」
無論お互いに悪意は無い。こういうやりとりは私とマスターの「いつもの」儀式の様な物だ。

いつものお気に入りのカウンター席に座り、いつものエスプレッソを注文する。
学生時代から何ら変わる事の無いこの儀式は、疲れた私の心をずっと癒してくれていた。

「雨はまだ止みそうに無いのかい?」
そう言いながらマスターはずぶ濡れの私を見かねたのか、まだビニールに包まれた新品のタオルをくれた。
「ありがとう。・・・どうだろう、天気予報もこれだけ外れると気持ちのいい物だけどね」
たった一分足らずの道のりでよくここまで濡れた物だ。靴の中まで水浸しになっている。
タオルを取り出し体を拭きながらふと外を見ると、横殴りの雨はさらにその勢いを増し、道はさながら川の様になってしまっていた。
それはまるで数年前この地方を襲ったひどい豪雨災害を思い出させる風景だった。
風も益々強くなっている様で、時折大きな音を立ててその不安を煽った。

「そんなに心配しなくてもいいみたいだぞ。ホラ」
眉間に皺を寄せながら不安気に外を見ている私を見て、マスターはテレビを見る様勧めて来た。
画面には例の美人お天気キャスターが予報を外した事の謝罪と、もうすぐ雨が上がる事を天気図を使ってしどろもどろになりながら必死に説明していた。
あまりの必死な姿に、先程までキャスターに抱いていた怒りがスッと消えていくのを感じるのだった。

「おや?マスター、このタオル、開店祝いの粗品なのか?」
すっかり水を吸って重くなったタオルを洗面所で絞った時、白い布地に大きくプリントされた
「祝 開店」
という文字に私はようやく気付いたのだった。マスターは恐らくこれが見せたかったのではないか。

「気付くのが遅いんだよ。・・・そうだ。ここの二階に出来る店の祝いの豪華粗品さ」
「豪華」と「粗品」という相反する言葉の響きに思わず吹き出しそうになったが、得意そうに言葉を続けるマスターの機嫌を損ねてはいけないと思い、そこは黙っていた。

「まだ誰にも配って無いレア物だ。大事にししてくれよ」
そのレア物はもう雨を吸って惨めな姿を晒している訳だが・・。そんな事は構わず疑問に思った事を聞いてみた。
「この店の二階って言えば、娘さんが暮らしているんじゃ無かったっけ?」
そう。マスターはまだ娘さんが小さい時に奥さんを亡くし、それ以来親一人子一人でずっと頑張ってきていた。
それだけに娘さんへの愛情は凄い。溺愛と言ってもいい位だ。
ある日娘さんが一人暮らしをしたいと言い出した時に、激怒するマスターと娘さんの間でかなり仲裁に苦労した覚えがある。
「だからうちの雛子が店を始めるのさ。じゃなかったら許可なんかするもんか」
「あぁ、成る程ね。おかしいと思った。・・・で、何の店を始めるの?彼女らしく可愛い小物屋かなんか?」

マスターはもうひとつタオルを取り出し、「タオルの裏を見てみろ」と言いながらこちらに放り投げて来た。
再び袋からタオルを取り出し文字を探す。真新しいタオルの裏には可愛らしい文字でこう、書かれていた。

              「時間旅行 ひなこトラベル」と。



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以下オフレコ:とりあえず続けてみました。こんなもんでどうでしょうか。変な話にしてしまってすみませんww
では続きをどなたかどうぞ。
「ただいま〜」
少女は意気消沈丸出しの帰りの挨拶を発しつつ、客が居るのも気付いて居ないのか(客と云っても私一人だけだが)真っ直ぐに奥の扉へと向かっていく。
「お帰り」
マスターは無愛想にそれだけ云った。溺愛しているわりには店に居る時は何時もこうなのだ。そして私も、
「おかえり」
と声を掛けた。
思わぬ声が聴こえたのだろう。少女は勢い良く振り返った。
や、と軽く手を振って少女に挨拶をする。
「晶さん!」
少女−雛子は私を見ると、ぱあっとその表情を輝かせた。そして私の傍へずぶ濡れのまま寄ってくる。その表情と風体からは、とてもじゃないが大学を出た女性とは思えないだろう。しかも才女と云うに相応しいなどとは果たして誰も思うまい。
そして私は、何故か雛子に懐かれていた。
「雛子ちゃん、今度お店始めるんだって?」
「あ、はいっ! そうなんですよ! 『時間旅行 ひなこトラベル』って云うんです!」
勢い込んで雛子は云う。
私はマスターから貰った新しい方のタオルを雛子の目の前に掲げ、
「随分変わったお店みたいだね」
といって濡れた髪を拭ってやる。
「全世界初! だと自負してます!」
私に髪を拭かせながらも小さい胸を張って力説する雛子に、私は、へぇ、と相手に不快感を与えない程度の相槌を打った。
「どうせ眉唾な道楽さ」
マスターがカップを拭きながら横槍を入れる。
そんな父にむくれながらあかんベーをする雛子。
「どうせお父さんには解りませんよーだ!」
マスターは溜息を吐きながら背を向け、拭いていたカップを一脚、棚へと戻す。そのカップは、いや、この店で使われている全てのカップはマスターが選りすぐったウェッジウッドの逸品なのだが、そんな事は微塵も感じさせない適度な気楽さを私は気に入っていた。
そんなマスターの仕草を眺めていると、雛子が満面の笑顔で声を掛けてきた。

「晶さん、まだ開店前ですけど、わたしのお店、試してみませんか?」


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以下、オフレコ:まあ、ベタですがこんな感じでしょうか? 主人公に勝手に名前付けちゃいました。ちょっと短いですけど、次の方宜しくお願いします。
「残念ながら給料日前でね、手持ちは無いよ?」
冗談交じりでそう告げてみると
「勿論、晶さんならサービスですよ♪」
とにこやかに答え私の腕に絡んでくる。瞬間マスターから怒りのオーラのようなものを感じたが、あえてそこは無視を決め込むべきだろう。
「勝手にしろ。料金は後でちゃんと払って帰れよ」
背中を向けたままマスターはぶっきらぼうにそう答え、私は雛子ちゃんに腕をつかまれたまま2階へと連れて行かれた。

「…」
言葉が出ない。タイムトラベルと聞いていた私は、とてもあやしい、例えば占い師の館のような内装を予想していたが…ちゃんとした見栄えにびっくりした。確かマスターから聞いた話だと2階は3DKくらいの広さと聞いていたが、部屋をすべて潰してひとつのオフィスのような形に仕上げており、部屋の奥隅にひとつの、ちょっと古ぼけた木製のデスクがひとつと、そのデスクの向かい側にはカーテンでさえぎられたスペースがある以外は何も無い、それでいて手入れが届いているような綺麗さがあった。
「えへへ、ちょ〜っと頑張っちゃったから、今は何も無いんだけどね」
笑いつつそう言う雛子ちゃん。何を頑張ったかと言うと、恐らくはあの古ぼけたデスクだろう。私はそんなにアンティークに興味があるわけではなく、詳しい訳ではないがあれは年代物で相当な価値があるように見えた。それに相当な金が動けば、他が疎かになるのは必定。なるほど、何も無い訳か。
しかしあのカーテンのスペースは何だろう?
「晶さん、こっちこっち」
腕をつかまれ、たった今疑問に思っていたカーテンの前まで連れて行かれる。本気で何があるんだろうと、少々不安になり始めた時だった
「晶さん、これから始まる事はこの先、秘密でお願い出来ますか?素敵な時間を差し上げる代わりに、秘密を守っていただけますか?」
真剣な顔でまっすぐ私を見つめる雛子ちゃん。私は誠意を持って答えねばならないプレッシャーに襲われ、その瞳を見つめたまま
「わかった、約束するよ」
そう答えるので必死だった。
「良かった〜、晶さんならそういってくれると信じてました」
にこやかにそういうと、絡めていた私の腕をやっと開放し、目の前のカーテンをすらりと開く。そこには寝心地のよさそうなベッドがひとつ置いてあるだけだった。
「さぁ!横になってくださいませお客様♪」
ベッドに横になれと突然言われ、私はドギマギしてしまう
「ぇ?ちょっとそれは…」
「いいからいいから〜♪」
また強引に私の腕を掴むと、ベッドへ無理やり押し込んでしまう雛子ちゃん。その細腕のどこにそんなに力があるんだろうと思えるようなすごい力でベッドへ押し倒される私。正直童貞では無いが上から覗き込んでくる雛子ちゃんにものすごくドキドキしていた…
「さぁ、天井を見つめて、そのままゆっくりと目を閉じて下さい」
私の額に乗せられた雛子ちゃんの手の温もりがとても心地良くて、私は言われたままに目を閉じる…
「あなたに素敵な”時間”をプレゼントします」
雛子ちゃんの言葉が脳の奥底へ響く感覚がしたかと思うと、私は眠りに落ちていく感覚に襲われていた…




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以下、オフレコ:自分なりの色々な思い込み部分を形にしたらどんどん変な方向へ…次の方スミマセンww
「いまからあなたの心の深い部分を移します」
その言葉を最後に目の前は真っ暗になった。
暗い。しかし冷たくはない。むしろ温かい。
雨に濡れて冷え切った体が嘘のようにほてっている。
目をつぶっている感覚はない。
だが・・・真っ暗だ。何もみえない。
寂しい。しかし風呂に入ってるかのように温かい。
「どうですか?晶さん。これがあなたの深層心理。あなたが求めている者です」
脳髄に響くように雛子ちゃんの声が聞こえる。
彼女は静かに、しかし少し興奮した声をだした。
「学生時代からあなたのことは知っていますが、驚きました。あなたは孤独求めている」
あたりだ。俺は何故かは知らないが自らを自らの手によって
孤独にすることが多かった。
暗い、一寸先で何をするかわからない、だから、常に刃物のように感覚を研ぎ澄ましていないと壊れてしまいそうな気がしていた。故に孤高を目指していたのかもしれない。
「けれども一人であるという寒さを嫌う。父の店に来ていることと、この温かいお湯のような感触が証拠です」
・・・確かにそうかもしれない。
感覚を研ぎ澄ますことに疲れたときは、いつもマスターの
コーヒーを飲む事で気を落ち着けていた。
しかし、今の状況ではそんなことはどうでも良かった。
自分の心の中を見られている気がしていた。
しかし何故か恥じらいの感覚も無かったし私はむしろ落ち着いていた。
気持ちが良い。私は思った。温かく、何か膜に包まれているような感覚。胎児の感覚はこのようなものなのだろうか?
「ふふ、あなたの深層心理は理解しました。」
悪戯っぽくわらう雛子ちゃんの声が聞こえた。
そのあと、少女のような純粋さを持った彼女とは真逆の、ひどく大人びたような声、しかし雛子ちゃんと同じ声が聞こえた。
「では始めましょう。遊戯を。夢を見せましょう。
 それでは、楽しい時を、お過ごしください。晶さん」



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以下オフレコ。
どうも、言い出しっぺのユウウです。
続編がまさかこんな形で発展していくとは思いませんでした。
もっと変になった気がしますがこれにて。
ちょっと・・・型月チックだなぁおい・・・orz
 冷たい感触が頬を刺激し、私は意識を取り戻した。
 目をゆっくり開ける。どうやら机に突っ伏して眠っていたようだ。
 目に入ってきた机は一人で使うにはだいぶ大きい代物で、私は首をひねる。
 (……どこだここは?)
 自分が今座っている椅子も、眠っていた机も、軽く見渡した光景も、すべて見覚えがなかった。
 (いったい何がどうなってるんだ)
 とりあえず原因となった雛子ちゃんを探すが、どこにもいない。わかったのは私が今いる部屋はダイニングキッチンと呼ばれる場所だということ。
 (私以外は……誰もいない、か)
 自嘲気味に笑う。これが私の求めていた孤独、孤高とやらなのか。あまりにも私らしくて、それがかえって私の自嘲を大きくさせた。
 (まったく、とんだピエロだな)
 下手に温もりを欲しがったからこんな寂しい気分になってしまうんだ。元からマスターや雛子ちゃんから温もりをもらおうとしなければこんな状況にはならなかった。
 陰鬱な感情が私を責め立てる。私はその暗い感情を心の奥底から吟味する。
(そうさ。これが私のあるべき姿。何を臆することがあるというのだ。この宵闇の感情こそが私の求めていたものじゃないか)
 この広い空間で一人きりというのが、余計に黒の感傷を増幅させる。
 (まったく。本当に楽しい時間だよ、雛子ちゃん)
 今はいない彼女に感謝の言葉を並べる。だがその言葉を受け取ってくれる人はここにはいない。それがわかっているからこそ、とても愉快だった。
 闇色の感情が私を塗りつぶす作業をひたすら繰り返している。
 その工程を、私は進んで受け入れていた。

 「ただいま〜」
 不意に、幼い声が聞こえた。その声を聞くと、自然と微笑みが浮き上がってくる。
 (…なんだ?)
 先ほどまで自分を支配していたはずの感情が、朝霧のように儚く霧散してゆく。
 代わりに湧き上がってきたものは……温かいものだった。
 「パパ〜、ただいま〜」
 突如とした感情の激変に戸惑いながらも、ダイニングに入ってきた子供の姿を見る。
 「おかえり、修介」
 微笑みながら、私はその子供―私の息子、修介―に優しい言葉をかける。
 暗い感情は、微塵も残っていなかった。
 「ママはどうした?」
 「もうすぐ来るよ〜」
 ひまわりのように笑う息子につられて、私も笑う。
 (…おかしい)
 だが、笑顔の裏では戸惑いの波が暴れていた。どうして私はこの状況を受け入れていられるのか。私に息子はいない。それに、ママとは誰のことだ。そして…。
 (どうしてこんなに心地いいんだ)
 涙が出そうなくらい温かかった。もし先ほどのような一人きりの暗い感情が再び訪れたら、自身が壊れてしまいそうなほどに。
 「もう、修介ったらママを置いて先に行っちゃうんだから」
 私が自分の感情の抑揚を抑えようとしていると、修介の後ろから現れた女性が拗ねたように言った言葉が耳朶に柔らかく届く。
 視線を向けると、その女性は優しく微笑んだ。
 「ただいま晶さん」
 「ああ、おかえり」
 その女性―私の妻―は、雛子ちゃんだった。


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以下オフレコ。
しっぽ話に続いて投稿させてもらいました、ゼンです。
破滅的な文章を書いてたら止まらなくて自分にびっくりしました(笑)
この先どうなるのか、楽しみです♪
「見てー、安かったから沢山買い込んじゃった♪」
気がつけば彼女は両手いっぱいに買い物袋を抱え、にこやかに私を見つめていた。
「ほんとだ、何をそんなに買ったのやら」
少し呆れた風に言う、おかしい、私はそんなこと微塵も思っていない。つまりこれは?夢なのか?
「今日ね、晶さんと修介の好物のイクラが安かったの〜♪」
さもうれしそうにそういう雛子。確かにイクラは嫌いじゃないが、好物と言えるものでは無いはず。
「お!それは嬉しいバーゲンだ♪今夜はイクラ丼かな?」
私の声は、明るく、そして今まで誰に対しても出した事の無い少し高めの声でそう歌うように発言していた。自分自身、こんな声が出る事をはじめて気づいた。
「パパ見て〜、ママがテスト頑張ったからって、ご褒美買ってくれたの〜」
両手で抱えきれないくらい、大きな袋に入ったお菓子の山。修介はそれをどうにか抱えながら、にこやかに、そして自慢げに私の前へ歩いてくる。
「良かったなぁ修介!確かに、今度のテストは頑張ってた!!お前は私に似なくて正解だぞ〜?」
優しく妻、そして我が子へその眼差しを向ける。その瞳は、私のようであり、私ではなかった。
「や〜ね〜パパッたら。修介は二人のイイトコ取りだもんね〜♪」
ね〜と修介と雛子は顔と声を合わせて笑いあう。その時、私の心をすべて満たしたモノ…それは……

愛………

何故だろう、私は自慢ではないが、生まれてこの方誰かを心から好きになったことが無い。確かに学生時代は彼女はいたが、どちらかというとデートをしている回数よりは、Domo Boyでコーヒーを飲みながらマスターや雛子と話している方が多かったし、何より…
「ああ、そうか…今頃わかるなんてな…」
自嘲気味にふと笑みがこぼれてくる。学生時代から通い続ける喫茶店。そこのマスターも、看板娘の雛子も、私からすればすでに「家族」だった。「いつも行く馴染みの店」なんて感覚はすでに学生時からあったはずなのに、あの店に行く度に私はマスターに客扱いされていなかった。馴染みだからなのだろう、そう思っていた。でも違った。私は物心ついた頃から両親は既に離婚の状態。満足に愛してもらえなかった。それ故か、誰かを愛する事を自分から遠ざけていたような気がする。でも、今目の前にいる二人、そして行く度にぶっきらぼうに見せて、それでいてとても暖かいマスター、気がつけば私は彼らを愛していた。心から。
「ママ、これ開けて良い〜?」
修介が大袋を抱えたまま雛子へ聞くと、
「ええ、その代わりもうすぐ夕飯だから、食べるのは一つ二つくらいにしておいてね?」
はーいと元気に答えつつ、修介は自分の部屋へと急ぐ
「ねぇ、”あなた”」
雛子が私をあなたと呼ぶのは、二人っきりの時だけの事だと何故か私は知っていた。
「ん?」
「今、幸せ?」
「うん、とても幸せだ。愛するお前達がいるからな」
そう言いながら雛子を抱き寄せる私は、胸いっぱいに暖かい気持ちと、今更ながらな愛に気づき、気がつけばゆっくりと意識は遠退いていった…

「さん…晶さん?」
遠くから聞こえる雛子ちゃんの声…
「あ〜きらさ〜ん?」
体が動いている。揺すられてるのか…ああ、いけない、目を開けなくちゃ
「ん…私は…?」
私を覗き込むように上から見つめていた雛子ちゃん。
「ぐっすり寝てましたよ?大丈夫ですか〜?」
少し心配そうに見つめる雛子ちゃん。そうか、確かタイムトラベルがど〜とかって…
「どうでした?時間旅行の旅は?」
感想を言えといわんばかりに詰め寄ってくる雛子ちゃん。ちょっと距離が近い事に私は柄にも無くドキドキしてしまう…
「あぁ、うん、えっと…」
そこで言いよどむ、考えたら時間旅行という仕事をしているのだ、夢の内容は彼女が見せていたものでは?と。
「というか、君が見せた内容じゃ?」
率直に思った事を聞いてみたが、返ってきた答えは予想を遥かに上回っていた
「ん〜、何と言いますか。確かに[夢]そのものを見せるのは私の仕事です。ですが、その内容に関して私は一切関知出来ないし、指定も出来ないんですよ。本当にその人が持つ、[過去]か[未来]のどちらか幸せな方を提供するんですよ」
声が出なかった…それじゃあれは…私のこれからなのか?
記憶の中に残っている妻と息子。普通にドラマ等で見るアットホームな感じがそのままというような、あの家庭…あれはこれからの私たちなのか?そう思うと何故か突然、急にマスターのコーヒーが飲みたくなった
「そっか、ありがとう雛子ちゃん。とても素敵な時間を頂いたよ」
あの時、妻と息子に見せた笑顔が今私自身出来ているとは思わない。それでもこれからは、家族になるであろう目の前にいるこの人と、下の店でいつもぶっきらぼうにしているあの人に対しては、心で会話をしようと思った。
「!」
雛子ちゃんの顔が赤くなる。何故だろう?
「どうしたの雛子ちゃん、顔、赤いよ?」
伝えたら雛子ちゃんはそっぽを向いて
「だって、だって…晶さんがそんな笑顔するから…」
小声で何かを呟く雛子ちゃん
「え?何?聞こえな…」
「あー!それより夢の内容どんなだったんですか?教えて下さいよ〜」
今度は私が赤くなる番だった。言えない。今はさすがに言えないだろう…あんな事当人に語るにはもう少し時間が必要だ
「ぁ、私は急にマスターのコーヒーが飲みたい!そんな訳で〜」
ベッドから身を起こしそそくさと雛子ちゃんの脇を抜け、1階へ繋がる階段を目指す
「あ〜!!逃げた〜!!ちょ…あきらさ〜〜〜〜〜〜ん」
慌てて追いかけてくる雛子ちゃん。1階に下りたら降りたで
「騒がしくなりやがったなまた…」
カップを磨きながらそう呟くマスター。これからも私はここに来るだろう。この愛想のかけらも無いマスターと、自営業を始める社会に出たばっかりなとても明るい女の子がいる…

この[domo voy]へ…

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以下、アフレコ
何気なく続けてみたらこんな感じですw
これを最後ととってもOKですが、続きを書いてもOKです!
こんな感じで纏まって(?)しまったので、期待されていた方すみません^^;

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