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アンダルシア-Andalucia-コミュの〜風来坊とハポンの者の幻視の旅〜

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〜風来坊とハポンの者の幻視の旅〜

『アンダルシア紀行』(カミロ・ホセ・セラ)を読んだ。

※※※

風来坊の旅はなかなかいいものである。

それは(出自が未だに不明な)ジプシーのように放浪しながらも、かすかにその出自を明らかにしている箇所がある。
『遠い風来坊の生まれ故郷には、エストラムンディ(魔外境)と呼ばれる――悪い名前じゃない――村があり、そこにもトレ・デル・カンポという地区があった・・・』。

その旅の出で立ちは、『茶色のマント、伸び放題のひげ、古びたリュック、鉄の石突きのある杖』であり、けっこう伊達男のようだ。

とにかくさまざまな名で呼ばれる(代表はバル=居酒屋兼喫茶店か?)飲み屋と宿をめぐっては、その知恵をもってタダ酒、タダ飯にありつく才能ったら、もう適わないし、それでいて人に好かれるのである。

おそらく、この哲学者ともいえる博識者は歴史を垂直に飛び、降りて穴を掘るかと思えば、今度は水平に地域を横断し、歌にも詳しく帽子にもうるさい。

まあ、そういう意味では博識ではないにせよ、その風貌はわたしに似ている。



久しぶりに山田富士公園に行った。

確か「デンデリン」(たんぽぽ)が少ないのを不思議に思ってからだから、約半年ぶりである。
さっそく、公園の周囲を歩き始めたが、身体が鉛のようで重い。何周かしている内にあれやこれや考えていたら、いつもの5周回を超えて10周くらいしてしまったようだ。
周りは、木の葉が少し秋めいてちらほらと落ちる。
周回を止めて落ち着いてからソルジャートレーニングに入るが、身体がぎすぎす音を立てる。なのでこれ以上は止めた。
ふたりのおじさんが、別々にシートを敷き何やら食べている。酒も呑んでいたかもしれない。
細い小川を覗くと、たしかにザリガニがいた。囲った「蛍放流所」はそのままだ。何という花かは忘れたが、すっとした茎にみごとなオレンジ色をつけた花が、ところどころに咲いている。

私はつい、側の木製のベンチに仰向けに寝て、空を流れる雲を眺めていた。

★★

否、私はあのアンダルシア北部の川の石の上にまどろんで、川を見ていた。

『おや、ハポンの方かね』
いつの間にか、背後から忍ぶように風来坊は声をかけた。
『はい、そのとおりで』
『いたはや、遠くからお出ですなあ、観光でいらっしゃったので?』
『いえ、旅をしているのです』
『そばに座ってもよろしいかな、ハポンの方。わしも川を見るのが好きなので・・・』

―ほら、来たな、なんて思う。―

『ハポンの方なんて。ハポンの者でよろしいですよ、風来坊さん』
『おや、知っているのですか? どこぞで合ったのかしら・・・』
『そう、お会いしています。確かに、何処かで・・・ね』

夕刻の頃。マスが勢いよく跳ねている。
『おお、今日のマスはいつになく元気がいい。まるでハポンの方の到来を待ちこがれていたよう・・・』

―ほれ、来たなー
―わたしも日本ではなかなかの手練れ、ここでは軽く勝負と行こうー

『釣りはなさるので、ハポンの方』
『いえ、私は釣り師ですが、この旅では釣りはしません。竿も持っていませんし・・・』
『ふむっ、それは残念』

―そう簡単に、誰が風来坊さんにマスを釣ってあげようぞー

『あのマスは、とても無防備に跳ねているうぶな娘のようなので、簡単に釣れますね。跳んで空中の虫を捕らえているのですよ・・・』
『お詳しいなあ、ハポンの方』
『で、腹を満たしたのはいつ頃で・・・』

―やっぱり、来たな。でも、この風来坊とは少し付き合おうー

『この先の町、町ったってハポンの方が想像するものでもありませんが、よかったら、わたしが一献さし上げよう。いかが』
『もしかして、銀貨でも拾ったので?』
『おや、ご存じとはなあ。否、同じ旅するよしみと、あなたが遠方のハポンの方故に・・・』
『それではお言葉に甘えて、ご一緒いたします』

歩くこと約1時間。
途中では風来坊とハポンの者のペアに、不思議がる顔がべたべたとまきつく。
とあるバル(居酒屋)に入る。
とたんにおんなの視線、男の視線が空気を変える。
『いい尻をしているなあ・・・』
『たしかに・・・』
『おなごはお好きで?』
『いえ、あなたほどには・・・』
『では、おとこは?』

―うるせぇ〜よー

『いえいえ、私は島国、否、日本の男にも女にも愛想をつかした者。だから旅してるんで・・・』
『風来坊さん、ワインのお礼にあのおなごは譲りましょう・・・』
『あれ、なんて律儀なハポンの方!』

―バルのおやじが口をはさむー

『ハポンの方は侍で?』
『はい、その子孫です』
『侍は腹切りをする勇猛な武者と聞いておりますが、今でも腹切りがあるんで?』

―そ〜ら来たー

周りの馬方たちも興味しんしんで、ざわざわしている。
『いえ、ちょっと前に勘違い者が腹を切ったのが最後でして、今はありません・・・』
『ん〜ん、見てみたかったのに・・・』
『真似ならできますが、ただではちょっと・・・』

―風来坊は、眼をぱちくりして、しかる後にんまりしたー

馬方たちは、おやじ、豪華な飯と宿を用意したらどうなんでい。またとない機会だ。けちるなよ!って口々に叫ぶ。

『ハポンの方、それでは約束します。見せておくんなさい・・・』
『駄目です。まず、食事を用意していただなければ、それとワインを2本ほど。それを食べたらいたしましょうぞ。腹が減っては戦はできぬ、というもの。それはここスペインでも同じでありましょう?・・・』
『確かに!』

―もう、ハポンの者と風来坊は喰った喰った、飲んだ、飲んだー

私は、やおら立ち上がり舞いを舞って後、かんたんに「腹切りの真似事」をした。やんやの拍手!
その夜、ふたりはいいベッドにありついた。
別々だったが、風来坊はあのおんなといい夢を見たに違いない。

―翌朝、遅くー

『ハポンの方はどちらに?』
『わたしはもはや帰ることのない旅・・・。あの日本からの使者像でも訪ねてみたいと・・・』
『それは、そうとう遠い西ですよ・・・』
『かまいません。それと風来坊さん、ついでに、わたしはあのスターリンの傀儡共産党の指導者に平手打ちを喰らわしたいのですが・・・』
『ええっ!』

―さすがに風来坊も驚いた様子であったー

わたしは風来坊がこういう姿勢をとって旅しているのも知っていたのだが、試してみたかったのだ。否、本当にそう思ったのだ。

風来坊はこういう姿勢でいた。ある男が聞いた・・・。
『―あんたはどちらの側で戦ったんだい?』
『―それ、あんさんには関係ないことでっしゃろ?』
『―いや失礼、そりゃそうだ。』

―風来坊はけげんそうに聞いたー

『ハポンの方、なにかその者たちに怨みでも? もう墓の中ですよ・・・』
『いえ別に、何となくね。歴史散歩でさあ。それなら墓につばを吐こうか・・・』
『なんと、まあ・・・』

―別れのふたまた道に来たー

『ハポンの方、昨夜は楽しかった。また、お会いしたいもんですなあ・・・』
『そうですね、道はつながっているというもの、あなたもお元気で風来坊さん・・・』
『ああ、そうだ、今度お会いしたら腹切りなどという無粋はやめて、わたしがカンタをやりましょう。風来坊さんにはバイラをお願いしますね・・・』
『うへえっ! なんとまあ芸達者で・・・・』

『これは些少だが、わたしの分の“つば代”にでもしていただければ・・・』
『了解・・・・・』

―川では、無防備にもマスがまた跳躍していたー
 
★★★

秋とはいえ、さっきのトレーニングのせいか、汗をかいていた。
わたしは今、所在を明らかにしておかなくてはならない身であった。とても、風来坊のように「拠点なき旅」はまだ出来そうになかった。

わたしにはいずれ“訪ねてくるひと”がいた。
それを待ってからでも遅くはない。
どうせみんな去ったのだ・・・。

遠いアンダルシアの旅は、竿を持たない釣り人の“ついには帰らぬ旅”には違いない。

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