太極拳最高コミュの簡化二十四式太極拳　８５

　いよいよ三調の最後になります。
　最初の調身は、コンピューターでいえばハードの部分ですから、いってみれば眼で確認できる「技」の領域ですから、理解することは容易にできるのですが、ソフトの部分の調息、調心となりますと「術」の領域に入りますので、言葉で説明してもなかなか理解できないのが実情です。
　本当をいいますと、悟り、太極拳でいう「入静」は、それほど難しいことではないと思います。それは人間性の回帰にあろうかと思えるのです。本来の人間性を取り戻す。さて、どうしましょうか。
　私たちは今ここに生きているためには、両親があります。さらにその両親と、十代遡りますと１百万人、更に十代さかのぼりますと１０億人という、とてつもない数の人のＤＮＡを受け継いでいることになります。その情報には相当なものが詰まっているはずです。
　まず脳のことを考えてみましょう。人間の脳は三層に分かれていて、一番内側に位置しているのが爬虫類の脳と呼ばれる「脳幹」です。次の層が哺乳類の脳と呼ばれる「大脳辺縁系」で、別名を「旧皮質」と呼ばれています。一番外側に人間の脳とよばれる「大脳皮質」があり、「新皮質」とも呼ばれ人間の行動の殆どの領域を支配しています。
　脳幹は大脳基底核、間脳、中脳、橋、延髄で構成されています。これは脊髄の先端が隆起してできたものといわれていて、匂いや化学変化に反応する部分が臭覚を受け持つ鼻となり、光に反応する部分が目になるというように、細胞組織を形成し、人間の本能的な生命を維持するための食欲、種族を維持するための性欲などを受け持っています。
　この脳幹の部分に集積された過去の情報を呼び起こし、顕在的な情報として蘇らせる、これが入静の役割ではないかと愚考しています。俗に左脳とか右脳と呼ばれる大脳新皮質の、一切の思考回路を遮断して、人間が本来持っている自己正常化機能　(ホメオスターシス)　を、十分に発揮させようとするものです。
　自己改革こそ人生　！　
　大いなる改革をご期待申し上げます。