太極拳最高コミュの簡化二十四式太極拳　３１

七、運之於掌

　運というのは何を運ぶのでしょうか。運の字の意味を見てみますと、めぐらす、はこぶ、もちいる、めぐりあわせという意味に使われています。手の平で之を運ぶ、とは何を運ぶのでしょうか。
　これも推測の域をでませんが、勝手な解釈を試みます。気を運ぶのは手の平である。と。太極拳は気を扱う武術ですから、気のことを無視して話を進めるわけにはいきません。
　五のところの行之於腿で引用しました、太極拳論の「其根在脚発于腿、主宰于腰、形手指。由脚而腿而腰、総須完整一気」にあります通り、気の発する源は脚、腿にありとしていますが、実際には湧泉から吸引した地の気を脚、腿へ、続いて腰とありますが、腰ではなく丹田と考えると納得がいきます。丹田に貯めた気　(蓄勁)　を手指で発揮させると解釈するのが自然のような気がしますが、考えすぎでしょうか。
　ここで、先に引用しましたＷＨＯ　（世界保健機関）が太極拳の気について説明していますので、改めてご紹介しましょう。
　「太極　(中国音では　Ｔａｉ　ｃｈｉ　のみで太極拳の意味を持つ)　の字は大きな極または軸であり、さらに、至高の究極的存在を意味しています。太極拳は、気 (中国音でｑｉ、日本でｋｉ、サンスクリットのプラーナ　ｐｒａｎａ　に相当する)　を集中し、その流れを整えることで人を宇宙と交感させるために考案された、瞑想的な運動である。「気」　は物質となる以前のエネルギーで、大気中に存在している。
　太極拳は呼吸を整えたあと力を抜いた状態でゆっくり行われるバレーのような動きである。運動しているときは、腕を上げて伸ばしながら息を吸い、縮めて下げながら吐く。背骨はまっすぐに保ったままであるが、固くはない。その軸は常に体重がかかった方の足にある。太極拳を行っているとき、空気を輝かすようなエネルギーが両方の手のひらの間に漂うのが感じられる。そして、やり終わったときには、そのエネルギーが全身をおおうように感じるのである。あらゆる年齢層のすべての人に適した運動である。
　太極拳は病気を予防するセルフ・ケアの方法として有効ばかりではなく、治療にも用いられる」。　と。
　因みに、手の平で一番気を感ずることのできるのは「労宮・ろうきゅう」です。ここは手当の原点ともいうべき場所で、子どもさんが怪我をしたとか、お腹が痛いなどといったときにお母さんが手を当てたのはこの労宮です。お母さんが手を当てて、「痛いの痛いの飛んでけ」というと、不思議に痛みが消えたものです。