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ニヤリ系コミュのSTAGE1 「ニヤリ イン ワンダーランド」(2)

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『あー、てすてす。スクランブルー、すくらんぶるぅー。そんな私はとってもブルー。各員戦闘配備、出撃準備が整い次第さっさと出撃し、隕石船を保護せよー。んーさっさとっつーかもう適当にやってって感じー』
 ドッグ内を警報とサヤカのやる気のなさそうな放送が鳴り響き、赤い回転灯が光をまき散らす。隊員達は無重力下の空間を飛び回って出撃の準備に追われる。
 ニヤリ部隊には専属の整備チームが存在しない。その為、出撃不能レベルの修理以外は全て自力で修理、整備する。普段の様相から想像するといい加減な整備だと思われがちだが、隊員達の整備は的確で手際も良い。隊員達の能力が高いのは皮肉にも、ニヤリ部隊の担当をしたいと思う整備士がいない故の副産物なのではあるが。
 それもあってニヤリ部隊の出撃直前は慌ただしい。その上雰囲気はお祭り騒ぎで「初期起動テスト完了よっしゃー」「ブラスター照準二ミリ狂ってるぞ責任者は出ていけー」「知るかコノヤロそれより電源よこせ」「ロリこめーじゃなくて乗り込めー」などというふざけたような叫び声がドッグ内を飛び交っている。
『んもぅ、おねーちゃんったら真面目にやるのー! えーと、ドラグーンJ2は先の先頭に於いて修理中のため出撃不能なので、護衛機のアレス、カットラスが主力となりますー。みんな、仲良く乗ってねー』
 やる気はあるようだが性格柄なのか、香澄ののんびりとした案内が放送された。一応戦闘前なのに緩いなぁと隊員たちが苦笑する。
「よっしゃ、俺アレス乗る!」
「まてー、俺もアレスの方がいいー」
「はいはい、ジャンケンで決めろー」
「待て待て、アレスはルート小隊長の小隊が優先だぞー。俺等は余ったのだけだぞー」
「へーい」
 隊員達はジャンケンで順番を決め、喜びや不満を漏らしながらも決まった機体に乗り込んでいく。けれど誰一人としてゴネない。このへんはドラグーンの席取りジャンケンと大差が無いらしい。人数があぶれて乗り込めなかったメンバーはドックから移動し管制や誘導の運営に回る。通信回線には「作戦失敗したらお前等全員晩飯抜き」「J2と一緒に吊す」などと罵声に近い励ましが飛ぶ。口は悪いがやたら手際は良く賑やか。
 そもそも戦艦であるクロノスには母艦としての機能が存在しない。彼らは突貫工事でクロノス内の格納庫を拡大し、ドラグーンおよび護衛機を無理矢理格納している。シリーズの中では比較的小型とは言えドラグーン一機を収納しているだけでも奇跡的なのに、アレス四機、カットラス八機の護衛機まで格納しているのである。そんな密集地帯を隊員達は飛び回り、無重力で不安定な格納庫内をこれまた突貫で作られたキャリアでアレスやカットラスを、まるでパズルゲームのようなノリと感覚で移動させては入れ替え出撃準備を整える。カットラスの主砲が編み目のように折り重なり、アレスのミサイルベイが段違いですれ違う。機体の特徴を利用し、わずかなへこみや角度を調整しながらスレスレで転回するが決して接触しない。もはや珍芸の域である。
『こちら嵐、ブリッジ聞こえますかー』
『はいはい、聞こえてるぞー』
『ってその声は隊長? 隊長は出撃せんの?」
『俺自ら出る程ではなーい。姫を助け出す仕事はお前等に任せて俺は悠然と待っていようではないか』
『了解。んで隊長、戦闘機はどうする? 追い払う? 潰す?』
『そんな事はきまっとる。面白い方で頼む』
『コマンダーオーダー出ましたー。コマンダーオーダー、面白い方、繰り返す、コマンダーオーダー、面白い方』
 嵐からの復唱に回線が笑い声で溢れた。ニヤリ部隊は通信回線を常時発信常時受信のパーティ方式を採用しているため、全員の声が同時に聞こえてくる。気合いの入った雄叫びや軽い悲鳴、独り言ですら聞こえてくるので深夏は煩わしく感じているのだが、他の隊員はあまり気にしていない。
 深夏が艦橋の最前方から宇宙空間を眺めると、アレスとカットラスが次々に宇宙空間へと射出されているのが一望できる。艦橋の放送には射出時に「嵐、いっきまーす」「やまなつ、出るっ」「達郎、やるぜっ!」「P、俺はやってない」などと下品な通信が続く。そこにサヤカの優先通信が割り込む。
『こちらサヤカ、みんな聞こえてるね? 射出された機体よりルート小隊長、久遠寺副長を先頭に二編成で隊列を組み誘導に従ってください。目標はまもなく有視界内に入ります。射出後クロノスは一時亜空間に待避します。作戦完了後は指定座標まで移動、そこで回収します。では作戦の成功を祈ります。ってか万が一にも失敗したら、お前等全員エクシアの大気圏に生身で放り込むからしっかりやってね♪』
 普段通り陽気なサヤカの声だったが、最後の一言で賑やかだった通信回線が一瞬で鎮まった。あーこりゃ相当怒ってるなーと一気に血の気が引いて真っ青になった淳の表情を見て香澄は苦笑する。それから宇宙空間を眺めている深夏を見かけ、インカムのマイクをミュートにする。
「みなっちゃんは行かないの?」
「んー? 行くまでもないだろ。先輩達で十分」
 一瞬だけ振り返って深夏は視線を戻す。そうは言うが本当は行きたくて仕方がないのだろうと香澄は思う。けれどそれを理性が邪魔をする。今更引き止められないし、自分だけ参加しなくても同罪だという事も判っているはず。ホント真面目で不器用なんだよなぁ。こういう時ぐらい諦めて楽しんじゃえばいいのに。まぁその辺がみなっちゃんらしいんだけどねー、と。
 不機嫌なのか不満なのか、深夏の仏頂面が可笑しくて香澄は口元を軽く緩ませる。だがすぐに引き締めるとオペレーター業務を再開、インカムをオンにする。
「では作戦開始です! さぁみんな、パーティを始めましょうか!」
『香澄っ!』
 姉の声に香澄は深夏に視線を向けて小さく舌を出す。

『まもなく有効視界に入ります。距離二千。我々アレス隊は周辺の警戒にあたります』
 ドラグーンの護衛隊、アレス小隊長のルートから通信が飛ぶ。
『ニヤリ部隊了解、誘導感謝します。続いてニヤリ部隊各員に連絡、これより制圧作戦に入る。速やかに敵戦力を無効化し避難船を救助する』
『おー何かペケ、リーダーみたいだなー』
『ちゃかすなよ櫂海ちゃん。今回はまとめる人がみんな居残りだから軽くまとめただけさ。口うるさい深夏も居ないし』
『聞こえてますよペケジェーさん』
『おっといけね。それはともかく香澄ちゃん、四機で大きな風呂敷のような物を広げている。アレは何だ? 捕獲用か?』
『こちらからも確認できています。お察しの通り捕獲用のシートでしょう。太陽光を遮って動力を止めるのも兼ねてると思われます』
『随分原始的だな。ともあれ急がなきゃな』
『作戦はどうする? コマンダーオーダーは面白い方らしいけど』
『その声はテキンちゃんか? 判ってないなー。この状況なら急襲して追っ払って強奪して帰還がベターっしょ。ホントに姫がいたらご機嫌だぜ? そんじゃまーちゃちゃっとやっちまおう。全機ステルス解除、強襲用閃光弾用意、撃てっ!』
『イェア!』
 ペケジェーの号令と同時に四機のアレスが一斉にミサイルを発射する。十六発のミサイルは目的の船団に向かって直進すると途中で散開、一斉に爆発すると周囲を真っ白に染めた。
『ばっか、一斉に撃つ奴があるか! 真っ白じゃねぇか!』
『知るか! 大は小を兼ねるだ』
『ってかアレスに乗ってるのは誰だ? 誰がどの機体に乗ってるのかさっぱりわかんねーんだけどー?』
『んなこたどうでもいい。反撃受ける前に散開しとけー』
『へーい』
 密集していたアレスとカットラスが弾けるように散ると半包囲網を展開すると、真っ白になった宇宙に黒い影を引きながら、あらゆる角度から目標へと急接近する。複数のカットラスから放たれたツインレーザーが覆われる前のシートを打ち抜いた。
『敵機、隕石船を残して散開、数九。反撃来ます』
 光弾が閃光を切り裂きカットラス達を襲うが、隊員達は接近の速度を緩めぬまま難なくかわす。
『ほぅ、結構居るんだな。しかも見えてるとなると光学解析技術はあったと見る。武装はモノビームっぽい感じか。結構文明レベルは高いか?』
『感心してないで追い払うぞ。二対一で当たれ。手が開いてるヤツは妨害を。遊ぶのはいいが、くれぐれも当てるなよ。丁重にお帰り願え』
『ほいさー』
 戦闘は戦力と機動力の差により圧倒的なまでに優勢となった。俊敏な機動力を誇るカットラスは二機で一機の敵戦闘機を挟み込み、逃げたところを二機のカットラスが追い回す。どんなに機体を振ろうと二機のカットラスは張り付いて離れない。他の敵機にも同様に張り付き、一方が追い、もう一方がレーザーで妨害するなどの連携で進路を塞ぐ。そうやって行動範囲を狭めながら目的の隕石船から引き離し、その隙にアレス隊の数機が牽引ビームで隕石船を捕獲する。隕石船は逃げようとするが全く効果がない。
 敵機を追い払う役を担ったカットラス達は嫌がらせのように追いかけ回し、全ての敵機を一つの宙域に誘導する。敵機を合流させたところで急転回し、今度は複数のツインレーザーで威嚇射撃を行った。当てはしないが侵攻もできない、まるで格子のように飛び交うレーザーに敵機達はカットラスや隕石船に接近する事が出来ずに転回と反撃を繰り返す。良く言えば追い払っているが、悪く言えばおちょくっているように見えなくもない。
 やがて隕石船が有効視界外まで消えると侵攻を防いでいたカットラス達は一斉に煙幕ガスを噴きながら散開。交互に援護する事で敵機に近寄る事も追従する事も許さず、完全に置き去りにした所でクロノスからの指定座標に集結した。
 こうして彼等はまんまと隕石船だけを捕獲して逃亡する事に成功したのである。




編集制限の都合で短め。(3)に続く

コメント(1)

ブラボー!良くやった。
隕石は丁重に扱えー。
えーと、生身で大気圏突入とか無いよね?サヤカ…さん?

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